
2020年(令和2年)にひとり親控除制度がはじまりました。これにより、扶養している子どもがいるひとり親であれば、一律35万円の所得控除を受けられます。
これまで、類似した制度として寡婦控除がありましたが(2019年以前)、ひとり親のうち夫と離婚、または夫を亡くしたあとに新たに結婚せずに子どもを扶養している人のみが控除の対象でした。
しかし、新たに適用が開始されたひとり親控除では、寡婦控除の対象外だった未婚のひとり親も所得控除を受けられるようになりました。
本記事では、ひとり親控除の概要と申請方法、ひとり親控除の導入に伴い改正された寡婦控除との違いについて解説します。
目次
- ひとり親控除とは
- ひとり親控除導入の背景
- ひとり親控除の基本条件
- ひとり親控除で受けられる控除額
- 寡婦控除とは
- 寡婦控除で受けられる控除額
- ひとり親控除と寡婦控除との違い
- ひとり親控除の申請方法
- 年末調整で申請する場合
- 確定申告で申請する場合
- ひとり親控除を受けられるか判断するポイント
- 1年(1月1日〜12月31日)の途中までひとり親だったケース
- 1年(1月1日〜12月31日)の途中でひとり親となったケース
- ひとり親で養育費を受け取っているケース
- 離婚し、子どもと別居しているが養育費を支払っているケース
- 同一生計の子どもが16歳以上のケース
- 2023年提出(令和4年分)の確定申告アップデート情報
- まとめ
- 確定申告を簡単に終わらせる方法
- よくある質問
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ひとり親控除とは
2020年(令和2年)より施行されたひとり親控除とは、扶養している子どもがいるひとり親が所得税や住民税の控除を受けられる制度です。
これにより、扶養している子どもがいるひとり親であれば、一律35万円の所得控除を受けられます。
出典:国税庁「No.1171:ひとり親控除」
ひとり親控除導入の背景
以前は未婚の女性や男性が子どもをひとりで扶養していても、離婚または死別により独身となったケースでしか税制優遇である寡婦(夫)控除を受けることができませんでした。
ひとり親の家庭において経済的負担は大きく、婚姻歴の有無で区別したり親が男性か女性かによって差があったりするのは不平等であるとされ、婚姻歴や男女の差を問わない「ひとり親控除」が導入されました。
ひとり親控除が導入されたことで寡夫控除は廃止となっており、後述する寡婦控除についても内容が見直されています。
ひとり親控除の基本条件
ひとり親控除を受けられるのは、以下の要件すべてに当てはまる人です。
ひとり親控除を受けるための条件
- 控除を受ける年の12月31日の時点で結婚していない、または配偶者の生死が不明である
- 事実婚の関係にある人がいない
- 生計を同一にする子どもがいる(その子どもが他の人の同一生計配偶者や扶養家族ではなく、その年の総所得が48万円以下である場合に限定される)
- 所得金額が合計で500万円以下である
出典:国税庁「No.1171:ひとり親控除」
その年の途中までの状況ではなく、あくまで12月31日の時点で要件を満たしているかどうかがポイントとなります。
ただし、条件に挙げられているように、事実婚の相手がいる場合はひとり親控除は利用できません。事実婚であるかどうかは、住民票の続柄に「夫(未届)」または「妻(未届)」の記載があるかどうかで判断されます。
生計を同一にする子どもが進学などの理由で同居していない場合でも、仕送りなどにより生活している事実があれば条件を満たしていると判断されます。
ひとり親控除で受けられる控除額
ひとり親控除に該当した場合は、以下の金額がそれぞれ所得から控除されます。
ひとり親控除で受けられる控除額
- 所得税:一律35万円
- 住民税:一律30万円
なお、給与や公的年金などの源泉徴収で適用が可能です。
寡婦控除とは
ここでは、令和2年(2020年)分以後の寡婦控除について解説します。
寡婦控除とは、原則としてその年の12月31日の現況で、「ひとり親」に該当せず、以下の要件のどちらかに当てはまる場合に適用される所得控除です。
- 夫と離婚したあとに結婚しておらず、合計所得金額が500万円以下で扶養親族がいる人
- 夫が死亡している、または夫が生死不明であり、合計所得金額が500万円以下の人。この場合は、扶養親族の有無は問わない
※要件を満たしても、事実婚の関係にあたる人がいる場合には寡婦控除の対象外となる
出典:国税庁「No.1170 寡婦控除」
これまで男性のひとり親には寡夫控除がありましたが、性別の違いによる税制上の扱いを公平にするという観点から廃止となり、ひとり親控除へ統合となりました。
寡婦控除が要件を見直して残されているのは、子どもがいない女性への負担を考慮するためといった理由によるものです。
寡婦控除で受けられる控除額
寡婦控除に該当した場合は以下の金額がそれぞれ所得から控除されます。
寡婦控除で受けられる控除額
- 所得税:一律27万円
- 住民税:一律26万円
なお、給与や公的年金などの源泉徴収で適用が可能です。
ひとり親控除と寡婦控除との違い
一部要件が重複しているひとり親控除と寡婦控除ですが、それぞれの控除の要件には以下のような違いがあります。
ひとり親控除 | 寡婦控除 | |
婚姻の事実の有無 /結婚歴 | 現在夫または妻がいない(結婚歴の有無は問わない) または配偶者が生死不明な状態 現在、事実婚にあたる人がいない | 夫と離婚または夫を亡くした後、再婚していないまたは夫が生死不明な状態 現在、事実婚にあたる人がいない |
扶養要件 | 生計を同一にする子どもがいること また、その子どもの総所得金額が48万円以下 | 扶養親族(親、祖父母、孫)がいる(離婚した場合) ※夫と死別した場合には扶養親族の有無は問われない |
所得税の控除額 | 35万円 | 27万円 |
住民税の控除額 | 30万円 | 26万円 |
控除対象者の性別 | 男性・女性 | 女性 |
所得制限 (合計所得金額) | 500万円以下 | 500万円以下 |
ひとり親控除は、結婚歴がなくても所得控除が利用できるという点が寡婦控除とは大きな違いです。これにより、今まで控除が受けられなかった未婚のひとり親が所得控除を受けられるようになりました。
ただし、両方の条件に該当している場合でもこれらの控除を併用することはできません。その場合は、より控除額が大きいひとり親控除を利用します。
ひとり親控除が導入された際、ひとり親控除の要件に合わせてこれまでの寡婦控除の要件が一部見直されました。これまでは寡婦控除の対象者で扶養親族がいる場合、納税者本人の所得に制限はありませんでした。しかし、2019年より寡婦控除の対象者で扶養親族がいる場合、さらに所得金額の合計が500万円以下であることも求められるようになりました。
そのため、今まで寡婦控除の対象であった人でも、ひとり親控除と寡婦控除両方の対象から外れ、控除対象外となってしまうことがあります。今まで寡婦控除を利用していた人や新たに寡婦控除の対象となりうる人は、改めて控除の要件を確認するようにしましょう。
ひとり親控除の申請方法
ひとり親控除の申請方法は年末調整か確定申告のどちらかで、申請者の所得税の納税方法によって異なります。
年末調整で申請する場合
公務員や会社員であれば、11月~12月頃に行われる勤務先の年末調整で申請をします。その場合は、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の「ひとり親」の項目をチェックしましょう。

年末調整で申請を忘れてしまった場合や、年末調整の申請後からその年の12月31日までの間にひとり親控除の対象者となった場合には、別途個人で確定申告をする必要があります。
確定申告で申請する場合
個人事業主やフリーランス、年末調整で申請できなかった人は、確定申告で控除の申請を行います。
確定申請書の第一表と第二表に以下のように記載します。
-
確定申告書第一表:
「寡婦控除・ひとり親控除」の欄に「350,000」、区分に「1」と記入する - 確定申告書第二表:
「本人に関する事項」欄の「ひとり親」に〇をつける
ひとり親控除が受けられるか判断するポイント
ひとり親控除は条件を満たせば適用となりますが、ひとり親控除に該当したタイミングや自身の状況によっては適用となるケースとならないケースがあります。
1年(1月1日〜12月31日)の途中までひとり親だったケース
1年の途中まで未婚のひとり親であっても、その年の途中で結婚または事実婚の状態にある場合はひとり親控除は受けられません。
これは、ひとり親控除の基本条件に「その年の12月31日時点で」という条件が含まれているためです。
そのため、1年の大半がひとり親の状態であっても、その年の12月31日までの間に結婚した場合もしくは事実婚の状態になった場合は、ひとり親控除の対象とはなりません。
現在ひとり親である人で、今後婚姻届を提出する予定がある場合には、ひとり親控除申請の内容や婚姻届の提出時期などに注意しましょう。
1年(1月1日〜12月31日)の途中でひとり親となったケース
離婚や配偶者の死亡により1年の途中でひとり親となった場合は、その年の12月31日時点で結婚しておらず、扶養する子どもがいればひとり親とされます。
結婚せずに子どもが生まれた場合にも、12月31日時点で独身で子どもを扶養してればひとり親控除の対象となるため、忘れずに申請しましょう。
また、年末調整を実施したあと、離婚や出産によってひとり親控除の基本条件に該当した場合には、あとから確定申告を行うことでひとり親控除を受けられます。
ひとり親で養育費を受け取っているケース
離婚後に元配偶者から養育費の支払を受けている場合は、ひとり親控除の対象外となる可能性があるため注意が必要です。
養育費を支払っている元夫または元妻が子どもの扶養者であると、その子どもは元夫または元妻の扶養親族とされ、養育費を受け取っている元妻または元夫の扶養親族とは認められない場合があります。
養育費を受け取っている側はひとり親控除を受けられない可能性がありますので、疑問があれば必要に応じて税理士や税務署の相談窓口などで事前に確認しましょう。
離婚をして子どもと別居しているが養育費を支払っているケース
上記に記載されている通り、自身の子どもが離婚した元妻または元夫と同居している場合でも、養育費を支払っていればひとり親控除が適用される場合があります。
適用されるのは、状態的に生活費や学費を送金しており、養育費の支払い目的が子どもの扶養義務を履行するため、かつ支払が子どもの成人または大学卒業までと決められている場合などです。
ただし、財産分与や慰謝料と養育費がまとめて支払っていて養育費の具体的な金額が不明な場合や、子どもと同居している元妻や元夫も控除対象にあたる場合にはどちらか一方しかひとり親控除の適用を受けられないため注意が必要です。
同一生計の子どもが16歳以上のケース
子どもの年齢が16歳以上の場合、扶養控除が適用されますが、この場合でもひとり親控除は変わらず適用されます。
ひとり親控除の場合、基本条件が満たされていれば子どもの年齢は問われません。子どもの年齢に関わらず控除の要件に該当する場合は忘れずに申告しましょう。
2023年提出(令和4年分)の確定申告アップデート情報
2023年(令和4年分)提出の確定申告アップデート情報
確定申告期間:2023年2月16日(木)〜2023年3月15日(水)まで
※ 所得税 / 贈与税の申告・納税期間:2023年3月15日(水)まで
※ 個人事業者の消費税等の申告・納税期間:2023年3月31日(金)まで
<2023年(令和4年分)から変わること>
詳しくは国税庁ホームページ「令和4年分 確定申告特集」をご参照ください。
まとめ
ひとり親控除は、現在独身であり、生計を同一にする子どもがいるシングルマザーやシングルファザーが利用できる制度です。
ひとり親控除の申請は、会社員であれば年末調整で、確定申告をする人であれば確定申告書の申告用紙にそれぞれ必要事項を記入するだけで申請が完了します。控除の種類によって求められる証明書などの提出も不要です。
自身がひとり親控除の対象なのか分からず悩んでいる方は、税理士などに相談するのも一つの手です。ひとり親控除の要件に当てはまる人は申告を忘れずに行いましょう。
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