確定申告の基礎知識

税理士に確定申告を依頼したときの費用はいくらかかる?サラリーマン・個人事業主のケース別に解説

監修 好川寛 プロゴ税理士事務所

税理士に確定申告を依頼したときの費用はいくらかかる?サラリーマン・個人事業主のケース別に解説

確定申告は1年間の帳簿付けや経費精算、確定申告書の作成など、さまざまな準備をしなければなりません。これらの確定申告の準備から申告までを税理士へ代行依頼することができます。

初めてで不安な人や、忙しく準備に時間を割けない人には、税理士への依頼もおすすめです。税理士への依頼の費用は、内容によって変動するため、事前に確認するようにしましょう。

本記事では、確定申告を税理士に依頼するときの費用相場や、費用に影響する要素について解説します。確定申告の基礎知識について知りたい人は、別記事「確定申告とは?全くわからない人向けに申告の流れ・対象者について解説!」をご確認ください。

目次

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確定申告を税理士に依頼すると費用はいくらかかる?

確定申告を税理士に依頼する場合の費用は、依頼者の状況や依頼する業務の範囲によって変動します。ここでは、最も一般的なケースである「個人事業主・フリーランス」に焦点を当て、具体的な費用相場を解説します。

以下はあくまで目安です。事務所・地域・内容により大きく変動します。正式な見積もりは個別に相談してご確認ください。

ケース1:個人事業主・フリーランスの費用相場

個人事業主やフリーランスの人が税理士に確定申告を依頼する場合、費用は主に「事業の売上規模」と「どこまでの業務を依頼するか」によって決まります。ご自身の状況に合わせて、以下の2つのケースから費用感を確認してください。

依頼範囲①:申告書作成のみ(スポット契約)

日々の記帳はご自身で行い、最終的な確定申告書の作成と提出のみを税理士に依頼するケースです。年に一度だけ依頼する形式のため、「スポット契約」とも呼ばれます。

年商費用相場(年間)
500万円未満5万円~10万円
500万~1,000万円10万円~15万円
1,000万円以上15万円~

ご自身で作成した帳簿に誤りがないか専門家の視点でチェックしてもらえるため、申告内容の正確性が向上します。

依頼範囲②:記帳代行+申告書作成(丸投げ)

日々の記帳から確定申告書の作成・提出まで、一連の作業をすべて税理士に依頼するケースです。

年商費用相場(年間)
500万円未満10万円~15万円
500万~1,000万円15万円~20万円
1,000万円以上20万円~

記帳代行まで依頼すると、ご自身は領収書や請求書、通帳のコピーなどを渡すだけで済むため、確定申告の煩雑な手続きから解放されます。これにより、本来の事業に集中する時間を確保できるという大きなメリットがあります。

ケース2:サラリーマン(会社員)の費用相場

副業による所得が年間20万円を超えた場合など、確定申告が必要になるサラリーマン(会社員)向けの費用相場です。

副業の所得規模費用相場(年間)
20万円~300万円3万円~8万円
300万円以上8万円~

ご自身で申告することも可能ですが、税理士に依頼することで、申告作業の手間を省けるだけでなく、適切な経費計上に関するアドバイスも受けられます。数万円の費用で、申告ミスによる追徴課税のリスクを回避できるメリットは大きいでしょう。

ケース3:不動産を売却した個人の費用相場

不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合の確定申告は、適用できる特例が複雑で、税額への影響も大きいため、税理士への依頼が強く推奨されます。

不動産の売却額費用相場
3,000万円未満10万円~15万円
3,000万~5,000万円15万円~20万円
5,000万円以上20万円~、または売却額の0.5%~1.0%

不動産売却の申告は専門性が非常に高く、特に「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」などの複雑な特例を確実に適用し、数百万円単位の税金の払い過ぎを防ぐためには、専門家への依頼が不可欠です。

確定申告の依頼費用に影響する要素

確定申告にまつわる業務を税理士に依頼する場合、依頼費用に影響する要素は以下のとおりです。

依頼者がサラリーマンであるか・個人事業主であるか

基本的に確定申告が必須の個人事業主のほうが、サラリーマンよりも費用が割高になる傾向があります。

個人事業主の場合、複数の契約先からの報酬があったり、経費計上する費用が多かったり、会計処理作業の負担が大きくなることが多いためです。

一方、サラリーマンは基本的に会社の年末調整があり、原則、個人で確定申告する必要がありません。

サラリーマンで確定申告が必要な場合でも、基本的に会社から交付される源泉徴収票の情報をもとに確定申告書を作成していくので、副業などをしていなければ事務的負担はさほどかからないと考えられます。

ただしサラリーマンでも、副業の規模が大きくなったり、仕訳の数が増えたりすると、依頼費用が高額になることがあるので注意が必要です。

サラリーマンが確定申告をする代表的なケースは下記のとおりです。

  • その年の給与所得が2,000万円を超える人
  • 副業をしていてその所得が20万円を超える人
  • その年に会社の年末調整を受けられなかった人
  • ふるさと納税や医療費控除など、年末調整の対象外である控除を受けたい人

売上金額

一般的に、売上金額が大きくなると仕訳の数や確定申告にかかる手間が増えていくため、税理士への依頼費用を売上金額に応じて変動する税理士事務所が多い傾向です。

取引数・仕訳数

確定申告には1年間のお金の取引を記録した帳簿が必要です。記帳代行も依頼するかどうかで費用が変動します。さらに取引件数や仕訳の数が多いほど手間がかかるため、より費用がかかる可能性があります。

少しでも費用を抑えたい人は、自分で記帳したものを税理士にチェックのみしてもらうようにするとよいでしょう。

依頼の種類

税理士への依頼が確定申告のみのスポットでの依頼なのか、顧問契約なのかでまた料金は大きく変わってきます。

顧問契約は確定申告のみのスポット依頼よりも高額になりますが、確定申告まわりの代行以外にも、日々の会計処理作業を任せたり、財務関連の相談をできたりとさまざまなサポートを受けることができます。

申告の種類(青色申告・白色申告)

確定申告には青色申告白色申告の2種類があります。

青色申告は白色申告に比べて事前の手続きが必要だったり、複式簿記での記帳が必要だったりと手間がかかるため、税理士に依頼する場合には青色申告のほうが費用が高くなります。

申告の種類(青色申告・白色申告)


なお、青色申告をできるのは、不動産所得・事業所得・山林所得がある人のみです。そのほかの所得のみの場合は白色申告しか選べないので注意しましょう。

確定申告を税理士に依頼するメリット・デメリット

税理士への依頼を検討する上で、具体的なメリットとデメリットを深く理解することは、後悔のない選択をするために不可欠です。それぞれの項目が、あなたのビジネスや生活にどのような影響を与えるのか、解像度高く見ていきましょう。

メリット1:確定申告にかかる時間と手間を削減できる

確定申告を自力で行う場合、一般的に20時間から40時間ほどの作業時間が必要とされます。

この40時間を本業の新しいプロジェクトにあてたり、その時間を使って家族と旅行に行ったり、趣味に没頭したりすることもできます。

税理士への依頼は、単なる外注ではなく、「時間を買う」という投資でもあるのです。特に、領収書の整理や会計ソフトへの入力といった、単純ながらも時間のかかる作業から解放されるインパクトは大きいです。

メリット2:正確な申告で追徴課税などのリスクを回避できる

「自分でやったけど、本当にこれで合っているだろうか…」確定申告を終えた後、このような漠然とした不安を感じる人は少なくありません。

税法の解釈を間違えたり、計算ミスをしたりすると、数年後に税務署から「申告漏れ」の指摘を受け、本来納めるべき税金に加えて、ペナルティとして「過少申告加算税」や「延滞税」が課される可能性があります。

税理士に依頼する最大のメリットのひとつは、この「後からやってくるかもしれない恐怖」から解放される、精神的な安心感にあるといえるでしょう。また、申告書に税理士の署名があることは、税務署に対する信頼性の証にもなります。

メリット3:適切な節税アドバイスを受けられる可能性がある

税理士の価値は、正確な申告という「守り」だけではありません。たとえば、「この支出は経費にできるだろうか?」と迷う項目について的確なアドバイスをもらえたり、青色申告の特典を最大限に活用する方法を教えてもらえたりします。

自分では気づかなかった控除の適用や、将来を見据えた節税対策(例:小規模企業共済への加入)など、プロの視点だからこそ可能な提案を受けられる可能性があります。

ただし、このような積極的な節税提案は、申告だけを単発で依頼する「スポット契約」よりも、年間を通じて事業の状況を把握してくれる「顧問契約」の方が受けやすい傾向にあります。

デメリット1:費用がかかる

当然ですが、税理士に依頼すれば、ご自身で申告する場合にはかからない費用が発生します。前の章で解説した通り、依頼内容によっては数万円から数十万円のコストがかかることを認識しなければいけません。

この費用を「単なる出費」と捉えるか、先ほど解説した「時間の創出」や「リスク回避」といったメリットを得るための「投資」と捉えるかが、判断の分かれ目になります。

デメリット2:自社の経営状況を把握しにくくなる場合がある

日々の売上や経費の入力、資金繰りの計算などを全て税理士に任せきりにしてしまうと、「今月は利益が出ているのか、赤字なのか」「どの経費がかさみがちなのか」といった、事業の健康状態を示す数字に対する感覚が鈍ってしまう可能性があります。

これを防ぐためには、たとえ確定申告を丸投げしていても、税理士から毎月提出される試算表などの報告書には必ず目を通し、「なぜこの数字になっているのか」を質問する習慣をつけることが非常に重要です。税理士を「下請け業者」ではなく、「経営のパートナー」として活用する意識を持ちましょう。

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確定申告を税理士に依頼するか判断するポイント

ここまで費用相場を解説してきましたが、「結局、自分は税理士に依頼すべきなのか?」と悩む人も多いでしょう。このセクションでは、あなたが最適な選択をするための4つの判断軸を提示します。

判断ポイント1:事業の売上規模で判断する

ひとつの明確な分岐点として「売上1,000万円」が挙げられます。このラインを超えると、所得税に加えて消費税の申告義務が発生し、税務が格段に複雑になります。

そのため、売上が1,000万円を超える場合は、専門家である税理士への依頼を検討してみましょう。

判断ポイント2:本業の忙しさ・時間価値で判断する

確定申告には、記帳や書類作成など多くの時間がかかります。一度、ご自身の時間価値(時給)を計算してみてください。

確定申告にかかる時間(例:30時間)にあなたの時給を掛けた金額が、税理士費用を上回るなら、依頼した方が合理的といえるでしょう。

判断ポイント3:求める節税効果の大きさで判断する

どの程度の節税を目標とするかも、重要な判断基準です。

数十万円単位の大幅な節税を積極的に狙いたいなら、年間を通じて節税対策の相談ができる顧問契約が有効です。一方、数万円程度の控除漏れを防ぎたい、というレベルであれば、申告のみを依頼するスポット契約や、会計ソフトを使った自力申告も選択肢になります。

判断ポイント4:経理知識の有無や学習意欲で判断する

ご自身の性格や今後の事業との向き合い方も考慮しましょう。

数字が苦手で、今後も経理業務を自分で学びたくないという方は、税理士への依頼がおすすめです。逆に、事業主としてお金の流れを肌感覚で把握したいという方は、最初は苦労しても自分でやってみることも貴重な経営経験になります。

信頼できる税理士を探すには?

税理士を探す方法としては主に知人に紹介してもらうか、インターネット検索の2ケースがあります。

相談時には、明確な料金体系を提示しているかどうか、顧問をお願いした場合にどの程度のアドバイスをもらえるのかを確認しましょう。過去の実績を見て、自社が属する業界に強い税理士事務所かどうか、判断する方法もあります。

基本料金は比較的安価であっても、税理士によっては細かくオプションメニューを設定していることがあります。結果として、月々の税理士費用が高額になってしまうケースがあるため注意しましょう。

事前に何をどの程度まで税理士に依頼したいのか、自身ではっきりと線引きしたうえで、税理士事務所が提示するそれぞれの金額と内容を比較することが重要です。

できるだけ税理士費用を抑えたいのであれば、決算と確定申告のみを依頼できる事務所に絞って探しましょう。

まとめ

確定申告を税理士に依頼することで、日々の記帳や決算書類の作成などの事務作業の手間を削減できます。依頼費用の相場を把握し、コストと効果のバランスを考慮して税理士への依頼を検討しましょう。

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よくある質問

確定申告を税理士に頼むといくらくらいかかりますか?

依頼内容や事業規模によって費用は異なります。

たとえば、個人事業主(年商500万円未満)が申告書作成のみを依頼する場合は5万円~10万円、副業があるサラリーマン(所得300万円未満)の場合は3万円~8万円程度が目安です。

詳しくは「確定申告を税理士に依頼すると費用はいくらかかる?」で解説しています。

確定申告を税理士に丸投げするといくらくらいかかりますか?

記帳代行から申告まで全てを依頼(丸投げ)する場合、個人事業主(年商500万円未満)で10万円~15万円程度が相場です。

領収書を渡すだけで作業が完了するため、本業に集中できるメリットがあります。

詳しくは「ケース1:個人事業主・フリーランスの費用相場」で解説しています。

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参考文献

監修 好川寛(よしかわひろし)

プロゴ税理士事務所代表。20年以上のキャリアをもつ国税OB税理士。税務調査や複雑な税務判断に精通し、幅広い税務相談に対応。クライアントの事業を深く理解し、長期的な視点で最適な税務戦略を支援しています。

監修者 好川寛

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