青色申告の基礎知識

個人事業主が経費にできるもの・できないものとは?

最終更新日:2021/01/19

個人事業主が経費にできるもの・できないものとは?

個人事業主が事業を行う上ではさまざまな費用が発生しますが、経費にできるものなのか、そうでないものか迷うことも少なくないと思います。

発生した費用の中でも経費にできるものとそうでないものの違いは、どこにあるのでしょうか。青色申告の損益計算書に沿ってご説明します。

目次

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経費とは

経費とは、単純に事業を行う上で要した費用のことです。事業所得、不動産所得、雑所得の計算においては、総収入または仕入に伴う費用、そして販売費、一般管理費、そのほか業務上必要とされるものが経費として認められます。

経費の計上に必要な証拠書類

事業を行う上で要した費用を経費として計上するためには、経費であることを裏づける証拠書類が必要になります。代表的な証拠書類は、取引先や物品を購入したお店が発行する領収書やレシートです。

すべてが経費として認められるわけではありませんが、日頃から領収書やレシートは忘れずに受け取り、保管する習慣を身につけておくといいでしょう。

証拠書類へ記載が必要な項目

領収書やレシートには法律上の決まった形式はありませんが、証拠書類としては、一般的に最低限下記の項目が記載されている必要があります。

  • 支払った日付
  • 支払った人の名前や会社名(宛名)
  • 支払い金額
  • 但し書き(具体的な支出内容)
  • 支払いを受けた人の名前や会社名と所在地

領収書が発行されない場合に代わりとなる書類

領収書を紛失してしまったり、領収書が入手できなかったりした場合には、支払いを客観的に証明する書類を用意することで、証拠書類の代わりとして認められることがあります。

例えば、クレジットカードを利用した場合のように領収書が入手できないときには、利用伝票が証拠書類となります。また、ATMで代金などを振り込んだ際に発行された振込明細書も、請求書や納品書といっしょに保管しておけば証拠書類となります

鉄道やバスなどの交通機関を利用して領収書が入手できなかった場合は、出金伝票を証拠書類とすることも可能です。

経費の証拠書類として認められる領収書以外の書類には、主に下記のような物があります。

<経費の証拠書類として認められる書類例>

  • レシート
  • 請求書
  • 納品書
  • 出金伝票
  • クレジットカード利用伝票
  • ATMの振込明細書や通帳の記録
  • インターネット通販の購入確認メールのプリントアウト
  • パーティーや冠婚葬祭の案内状
  • 祝儀袋や不祝儀袋の表書きのコピー

青色申告決算書で見る経費について

青色申告書では、確定申告の青色申告決算書として、損益計算書と貸借対照表を提出する必要があります。青色申告決算書には一般様式のほか、不動産所得様式、農業所得様式、現金主義様式がありますが、ここでは、一般様式の損益計算書に沿ってそれぞれの経費を見ていきましょう。
所得税青色申告決算書
出典:所得税青色申告決算書(一般用)【令和2年分以降用】

租税公課

租税公課とは、単純に税金のことを指します。必要経費として計上できるものは、消費税及び地方消費税、事業税のほか、固定資産税、印紙税、不動産取得税、登録印紙税などがあります。また、事業用で使用する自動車における税金、自動車税、自動車重量税、自動車取得税も経費計上可能です。

事業用と家庭用として自動車を使用している場合は、使用率などを鑑みて、按分したものを計上することができます。税金ではありませんが、事業で商工会議所や同業者組合に会費や組合費を支払っている場合は、租税公課として計上可能です。

なお、事業主自身に対する所得税や住民税、国民健康保険料、国民年金保険料は経費計上することはできません。ほかにも、延滞税や加算税、事業主個人の相続税や贈与税、交通違反の罰金も租税公課の対象にはならないので注意しましょう。

荷造運賃

荷造運賃は、商品発送で必要となる箱やガムテープのほか、運送料における経費のことです。

水道光熱費

水道や電気、ガスのほか、灯油購入分の経費が水道光熱費にあたります。自宅と事務所を完全に別にしている場合は問題ありませんが、個人事業主では自宅と兼用にしている方も少なくないでしょう。

自宅兼事務所の場合は、事業で使用している割合から按分する必要があるので注意しましょう。なお、事業によっては、ガスや水道代が認められないこともあります。あくまで、事業で必要な経費かどうかが重要です。

旅費交通費

事業で必要な電車やバス、タクシーでの移動のほか、駐車料金や有料道路料金、出張手当、宿泊費を計上することができます。なお、ガソリン代は旅費交通費でも計上可能ですが、別途燃料費や車両費として計上することも可能です。

通信費

事業で使用する電話代、インターネット料金のほか、切手代やはがき、商品以外の配送料が通信費に含まれます。携帯電話などプライベートでも使用している場合は、全額経費ではなく按分する必要があるので注意しましょう。

広告宣伝費

広告宣伝費には、新聞やテレビなどにおける宣伝のための費用のほか、細かなものでは広告のための手ぬぐいやカレンダーなどが挙げられます。

接待交際費

接待交際費には、取引先との飲食やお中元・お歳暮の費用、慶弔見舞金などが含まれます。なお、個人事業主においては混同されがちですが、事業とは関係のない親族への慶弔見舞金などは含むことができません。

損害保険料

事業用として使用している店舗の火災保険料、自動車の自動車保険料などが損害保険料にあたります。事業と家庭の両方に関わる保険については按分できますが、完全に家庭用の場合には経費として計上はできません。

また、事業主個人の生命保険料や傷害保険料、地震保険料は経費計上できません。ただし、確定申告書の生命保険料控除として所得控除は可能です。

修繕費

修繕費は、店舗や自動車などにおける修理代が該当します。不動産所得の場合は、賃貸物件の原状回復費用も含まれます。

消耗品費

消耗品費は、文房具や事業用で使用する家具、パソコンなどです。取得価格10万円を超える場合は備品となり、消耗品費では計上できません。

減価償却費

建物や自動車、機械など、取得価格が高額な備品は決められた一定の年数にわたって、毎年経費計上することとされています。減価償却費とは、備品の償却残高がある場合に用いられる勘定科目です。

福利厚生費

福利厚生費は、主に会社で払った従業員の食事代、慶弔見舞金、健康診断など従業員のために使った経費です。事業主のみが対象の場合や、事業主と専従者のみが対象の場合は適用されません。

給料賃金

給料賃金は、従業員に対して支払われた給与や賞与で、事業主や専従者は含みません。事業主の場合は事業主貸、専従者の場合は専従者給与として別途処理します。

外注工賃

外注工賃は、外部に発注したことで発生した報酬などを指します。

利子割引料

受取手形における割引料のほか、事業で借りている借入金の利息などが利子割引料になります。借入金の元金や個人の借入金は計上できません。なお、借入金の元金は、別途負債として計上します。

地代家賃

地代家賃は、事務所や倉庫、事業のための駐車場における費用で、管理費や共益費、20万円未満の更新料と礼金を含めることができます。なお、自宅兼事務所の場合は、按分の必要があります。

貸倒金

貸倒金は、回収ができなくなってしまった売掛金や貸付金、受取手形の額です。

雑費

雑費は、ほかの経費に該当しない場合に使用されます。

専従者給与

個人事業主が、配偶者や親族といっしょに事業を行い、給与を支払っている場合、原則としてその給与は経費として認められません。しかし、一定の要件を満たすことにより、給与の経費計上が認められるようになります。これを専従者給与といいます。

経費として計上するには、青色申告による確定申告や、専従者給与に関する届出を行うなど、一定の条件を満たす必要があります。

家事按分で家賃や光熱費の一部を経費にする

個人事業主で自宅を仕事場にしている場合は、家賃や光熱費の一部を業務の必要経費として計上することができます。ただし、家庭と業務で使用が混ざっていて明確には分けられないため、業務として使用している分を一定の比率で区分して計上します。これを家事按分といいます。

家事按分には合理的な説明が必要

家事按分は、合理的に説明できる場合に認められます。合理的に説明できる場合とは、住居の1室を仕事のための専用スペースとして使用している場合や、リビングの一部をパーティションで区切って仕事用に割りあてているといった事実がある場合です

あるいは、専用スペースを設けてはいないが、自宅で過ごしているうちの8時間は業務をしているという場合は、時間での按分も可能です。

家事按分の計算方法

例えば、賃貸マンションの家賃が月あたり20万円で賃貸面積が60平方メートルの場合の、家事按分の計算方法を見てみましょう。

仕事場として使用している面積が15平方メートルであれば、下記のように計算します。

仕事場の面積の割合=15平方メートル÷60平方メートル=25%(事業用の按分割合)
家賃20万円×0.25=5万円

家賃20万円を25%で按分した5万円が、事業用の地代家賃として認められる可能性があります。

次に、業務時間で割り出す場合も見てみましょう。例えば、1ヵ月(30日とする)のうち、業務時間が1日9時間で10日間業務をする場合、下記の計算になります。

業務使用の割合=(業務時間9時間×10日=90時間)÷(24時間×30日=720時間)=12.5%(事業用の按分割合)
家賃20万円×0.125=2万5,000円

家賃20万円を12.5%で按分した2万5,000円が、事業用の地代家賃として認められる可能性があります。

同様に、電気代やガス代、インターネット使用料、携帯電話代、自動車のガソリン代、車検費用なども家事按分することができます。

なお、賃貸ではなく持ち家の場合にも家事按分が可能です。対象となるのは、建物部分の減価償却費、住宅ローンの利息、固定資産税、火災保険料などです。ただし、住宅ローンの利息は、事業用の家事按分が2分の1を超えると住宅ローン控除が受けられなくなるので注意が必要です。

経費にできるかどうかの基準とは?

個人事業主が出費を行った際、経費にすべきかどうか判断に悩むことがあります。経費として計上できるかどうかについては、一般的に下記のような判断基準があります。

税務署から指摘を受けても正当な事業関連性を主張できること

税務署から「経費として証明できますか?」と指摘された際に、明らかに事業に関わる費用であることを客観的に証明できることが必要です。

例えば、飲食代(接待交際費)であれば、取引先または見込客の誰と、どのような必要性があって飲食したのかを明確にできなければなりません。

出費金額が経費として常識の範囲内の金額であること

一般常識から見て出費金額が不自然に大きいと、税務署から指摘を受ける可能性があります。例えば、年間売上が500万円の個人事業主が、取引先に対する接待交際費として1回2万円程度を年数回出費したのであれば、常識の範囲内の経費とみなされる可能性が大きいでしょう。

しかし、1回数十万円の接待交際費を毎月費やしていたとなれば、売上規模に対して不自然な出費として税務署から指摘を受ける可能性があります。

個人事業主自身のための出費ではないこと

個人事業主とはいえ、自分自身のための私的な出費は経費に計上できません。また、個人事業主への福利厚生という概念はないため、自分自身が通うトレーニングジムやヨガ教室の会費のほか、自分自身の健康診断や人間ドックなどの費用は経費計上できません。

個人事業主が経費計上できない出費の具体例

個人事業主の出費のうち、経費として計上できない出費にはさまざまなものがあります。先にご説明したトレーニングジムや健康診断など事業主自身のための費用も含めて、経費にできない出費の具体例を見てみましょう。

個人事業主自身の生活や健康管理のための出費

個人事業主自身の給与や年金、保険料などは経費として計上できません。また、健康維持のためにトレーニングジムへ通っても、その費用は経費に計上できません。事業主自身の健康診断や人間ドックの費用も同様です。なお、従業員の給与や健康診断は経費として計上できます。

個人事業主の私的な買い物や飲食代

明らかに事業には関係のない私的な買い物は経費にできません。例えば、プライベートな飲食代や書籍代、交通費、衣類の購入費などです。ただし、同じ出費でも業務に必要であることが証明できれば経費にできます。例えば、事業に関わる企画立案やプレゼン資料作成のための参考資料として購入した書籍代であれば経費になります。

注意しなければならないのは、私的な目的で出費したにもかかわらず経費にできそうだからと計上してしまわないことです。後日、税務トラブルの原因となる可能性があります。

個人事業主が個人として納める税金

個人事業主が納める住民税や所得税は、事業と関係なく個人で納める税金のため、経費に計上できません。ただし、事業用に支払った印紙税、個人事業税、自宅(持ち家)で仕事をしている場合の家事按分した固定資産税は経費として計上できます。

個人事業主の家族への給料

個人事業主と生計を一にする家族への給料は、経費として計上できません。ただし、確定申告を青色申告で行い、家族を青色事業専従者として届け出れば給料を経費にすることができます。

資産として減価償却できる物

事業用に購入したパソコンなどの備品で10万円未満の物は、全額をその年の経費として計上できます。一方、10万円以上の場合は固定資産として計上した上で、法定耐用年数に応じた減価償却費とする必要があります。

また、賃貸物件への入居時に支払う敷金は退去時に戻ってくるため、資産とみなされ経費としては計上できません。礼金は20万円未満であれば地代家賃として経費に計上できますが、20万円以上の場合は資産とみなされ、5年間または契約期間のいずれかで減価償却します。

個人事業主のスーツ代

スーツは仕事で着用することが一般的なため経費に計上できそうですが、普段着としても使えるという見解から経費として認められにくいとされています。業務上不可欠で、業務にだけ使うという明確な区分けがあれば経費として計上できる場合もあります。

二次会の飲食代

接待交際費としての飲食代が認められているのは一次会までです。二次会以降の飲食代は経費として認められません。

青色申告は白色申告より節税効果が高い

個人事業主が確定申告を行う際には青色申告と白色申告を選べますが、青色申告のほうが節税効果は高くなります。青色申告には、主に次に挙げるような税制上の特典があります。

青色申告特別控除

青色申告には一定の条件を満たすことで最高65万円の青色申告特別控除があります。白色申告には、この特別控除はありません。

青色事業専従者給与

個人事業主が配偶者や家族に給与を支払った場合、白色申告では専従者控除として配偶者は86万円、ほかの親族は1人50万円までしか控除されません。

一方、青色申告では、一定の条件を満たせば、青色事業専従者給与として給与額の上限なく経費にすることが可能です。その条件とは、青色申告者と生計を一にしている配偶者その他の親族であることや、その年の12月31日時点で15歳以上であることなどです。

個人事業主側は、「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出していることや、届出に記載した範囲内の給与を支払っていることなどが必要です。

純損失の繰越し・繰戻し

青色申告は、純損失(赤字)の繰越しができます。これは、ある年に赤字を出した場合、青色申告ではその赤字を翌年以降3年間にわたって繰越して黒字と相殺でき、納税負担を軽減することができるというものです。

また、ある年が赤字で、前年は黒字で納税していた場合には、赤字を繰戻して前年分の納税から還付を受けることができます。なお、この場合には、前年の確定申告も青色申告で行っている必要があります。

少額減価償却の特例

パソコンや机などの備品を購入した場合、白色申告では年間10万円までしか経費として認められず、使用期間にわたって減価償却する必要があります。

一方、青色申告では、30万円未満の備品であれば、年間で合計300万円まではその年の経費として計上でき、税金を安くすることができます。

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まとめ

個人事業主が事業を行う上で、経費は必ず発生するものです。ただし、帳簿上、すべての出費が経費として認められるわけではなく、経費として計上できる条件があります。また、自宅で仕事をしている場合には、家賃やインターネット料金などを家庭用と事業用とに適切に按分することで、経費として算入することも可能です。

経費の種類や、青色申告と白色申告の控除の違いなどを知って、日頃から節税効果につながる帳簿記帳や書類保管をするようにしましょう。

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