
個人事業主が事業を行う上で日常的に発生した費用は経費として計上ができます。
確定申告で正しく経費計上を行うことによって、課税対象となる所得金額が抑えられ節税につながります。ただし、経費として認められるにはさまざまな条件をクリアしていなければなりません。
本記事では、個人事業主の確定申告で必要経費として計上できるものの代表例や事業主貸と事業主借の違い、不正計上におけるペナルティなどについて解説します。
目次
- 個人事業主の経費とは
- 経費にできるかどうかの判断基準
- 税務署から指摘を受けても正当な事業関連性を主張できること
- 出費金額が経費として常識の範囲内の金額であること
- 個人事業主自身のための出費ではないこと
- 経費の計上に必要な証拠書類とは
- 証拠書類として必要な項目
- 領収書がない場合に代わりとなる書類
- 経費にできる費用と該当する勘定科目
- 経費の勘定科目は自分で追加できる
- 個人事業主が経費計上できない出費の具体例
- 家賃や通信費などの一部を経費にする家事按分の方法
- 家事按分を合理的に説明する方法
- 青色申告は家賃や光熱費などを経費として計上しやすい
- 経費の不正計上によるペナルティ
- 過少申告加算税
- 重加算税
- 法改正による2023年分確定申告からの変更点
- 簿外経費(後出し経費)が認められなくなる
- 帳簿不備にはペナルティが課せられる
- 2023年提出(令和4年分)の確定申告アップデート情報
- まとめ
- 確定申告を簡単に終わらせる方法
- よくある質問
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個人事業主の経費とは
経費とは、事業を行う上で発生した費用を指します。事業所得・不動産所得・雑所得の計算においては、仕入にともなう費用または販売費、一般管理費など業務上必要とされるものが経費として認められます。
個人事業主の経費に該当するものには以下のようなものがあげられます。
個人事業主が経費にできるものの例
- 仕事に使うためのPCやガジェット類
- 各種ツールの購入費
- オフィスのレンタル費
- 取引先までの交通費やガソリン代
- 出張に必要な宿泊費など
経費はその年に得た収入から差し引くことができ、確定申告時に正しく経費計上を行うことによって、課税対象となる所得金額が抑えられ節税につながります。
しかし、確定申告の際に必要経費を計上することで節税につながりますが、節税を強く意識しすぎるあまり不正計上を行うとペナルティが科せられるので注意しましょう。具体的なペナルティに関しては、記事の後半で説明します。
経費にできるかどうかの判断基準
個人事業主の支出は事業とプライベートが曖昧になりやすく、経費にすべきかどうかの判断に悩むことがあります。
国税庁では、経費について以下のように定義しています。
事業所得、不動産所得および雑所得の金額を計算する上で、必要経費に算入できる金額は、次の金額です。
- 1.総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
- 2.その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
出典:国税庁「No.2210 やさしい必要経費の知識」
経費として計上できるかどうかの一般的な判断基準は以下のとおりです。
税務署から指摘を受けても正当な事業関連性を主張できること
税務署から「事業に関係する経費であることの証明」を求められた際に、事業に関わる費用であると客観的に証明できることが、経費計上できるかどうかの判断基準のひとつとなります。
たとえば、飲食代(接待交際費)であれば、「取引先または見込客の誰と」「どのような必要性があって飲食したのか」を明確にできなければなりません。
発行された領収書を保管する際に、「打ち合わせ」「営業」といった支出の理由を書き添えておくなど、経費とする理由や必要性を確実に記載し取りまとめておくことが重要です。
出費金額が経費として常識の範囲内の金額であること
個人事業主の経費に上限はなく、事業に関わる支出であれば経費として計上できます。しかし、売上規模に対して出費の額が大きすぎるなど妥当性に欠ける場合は、税務署から指摘を受ける可能性があります。
たとえば、年間の売上が500万円の個人事業主が、1回2万円程度の接待交際費を1年間に数回出費したのであれば、経費として常識の範囲内とみなされる可能性が高いです。
しかし、同じ売上の個人事業主で1回10万円以上の接待交際費を毎月出費していたら、不自然な出費として税務署から指摘が入る可能性が高まるでしょう。
個人事業主自身のための出費ではないこと
業務に関する書籍や企画のための資料として使う書籍ならば「新聞・図書費」などの名目で経費にできることもあります。また、業務内容などから英語の使用が明らかであれば英会話講座の授業料を「研修費」として計上できるケースもあります。
どのような場合でも、事業に関する出費、収入を得るための出費であるという事実を明確に証明できるようにしましょう。
経費の計上に必要な証拠書類とは
事業を行う上で発生した費用を経費として計上するためには、それらが経費に該当することを明確に裏づける証拠書類が必要です。
証拠書類として必要な項目
証拠書類として代表的なものには、取引先や物品を購入したお店が発行する領収書やレシートがあげられます。
法律上、領収書やレシートには法律上の決まった形式はありません。ただし、一般的な証拠書類として、下記の項目が記載されている必要があります。
経費の証拠書類として必要な項目
- 支払った人の名前や会社名(宛名)
- 支払った金額
- 但し書き(具体的な支出内容)
- 支払いを受けた人の名前や会社名と所在地
- 支払った日付
領収書がない場合に代わりとなる書類
領収書を紛失したり入手できなかったりした場合や、バス・電車代や慶弔費などの領収書が発生しない出費の場合、支払いを客観的に証明する書類があれば、証拠書類の代わりとして認められることがあります。
たとえば、クレジットカード利用時なら利用伝票が証拠書類となります。ATMで代金を振り込んだ際に発行された振込明細書も、請求書や納品書とセットにしておくことで証拠書類となります。
交通系ICカードを利用している場合は、利用履歴を印刷すれば交通費として計上することが可能です。クレジットカードや交通系ICカードは、あらかじめ仕事用とプライベート用を分けておくと、領収書などを整理する手間を省くことにもつながります。
領収書とレシートのほかにも、経費の証拠書類として認められる書類には下記のようなものがあります。
経費経費の証拠書類として認められる書類例
- 納品書
- 出金伝票
- クレジットカードの利用伝票
- ATMの振込明細書や通帳の記録
- インターネット通販の購入確認メールのプリントアウト
- パーティーや冠婚葬祭の案内状
- 祝儀袋や不祝儀袋の表書きのコピー
日頃から領収書やレシートは少額でも忘れずに受け取る習慣を身につけ、受け取った領収書やレシートは、月別にファイリングしておきましょう。
自分が管理しやすいように保管しておくと、確定申告の準備時など、後から必要になった際にスムーズに見つけることができます。
【関連記事】
確定申告の必要書類とは?ケース別に詳しく解説
経費にできる費用と該当する勘定科目
勘定科目とは、経費を帳簿に記帳する際に取引内容を区分するものです。区分することで、それぞれの支出の大まかな使い道が分かりやすくなります。
ここでは、経費計上時によく使用される18種類の勘定科目を紹介します。
租税公課
租税公課とは、国や地方に納める税金(租税)と、公共団体へ納める会費や罰金など(公課)を合わせた勘定科目です。
経費になるものの例としては、以下のようなものがあります。
- 消費税および地方消費税
- 個人事業税
- 固定資産税
- 印紙税
- 不動産取得税
- 登録印紙税
- 事業用として使用する自動車における税金
- 商工会議所や同業者組合に支払う会費や組合費など
税金でも、事業主個人が支払う所得税や住民税、国民健康保険料、国民年金保険料は経費計上できません。また、申告や納税が遅れた際に発生した延滞税や加算税、事業主個人の相続税や贈与税、交通違反の罰金も対象外となります。
荷造運賃
荷造運賃とは、事業を営む上で発生した荷物の運賃や梱包費用のことです。
- 宅配便や郵便物の梱包費用や運送料
- 商品発送で必要となる箱やガムテープといった梱包資材
水道光熱費
水道や電気、ガスのほか、灯油購入分の経費が水道光熱費にあたります。事務所と自宅を完全に分けている場合は、事務所で使用した全額を計上できますが、自宅を仕事場として使用している場合は、事業で使用している割合を按分して計上する必要があります。
なお、事業によってはガスや水道代が認められないこともあります。あくまで、事業で必要な経費かどうかが重要です。
家事按分については後述「家賃や通信費などの一部を経費にする家事按分の方法」を参考にしてください。
旅費交通費
事業を行う上でかかった交通費や宿泊費、出張手当は旅費交通費として経費計上できます。
- 電車やバス、タクシーでの移動費
- 駐車料金や有料道路料金
- 出張手当
- 宿泊費
なお、ガソリン代は旅費交通費でも計上可能ですが、別途燃料費や車両費として計上することも可能です。
通信費
事業で使った通話代やインターネット料金は通信費として経費計上できます。携帯電話などプライベートでも使用している場合は、全額経費ではなく按分する必要があるので注意しましょう。
- 事業で使用する電話代
- インターネット料金
- 切手、はがき代
- 商品以外の配送料
広告宣伝費
事業の広告に関する必要は広告宣伝費になります。
- 新聞、雑誌、Web、テレビなどの広告掲載費
- フライヤー、ポスター、カタログなどの印刷費
- 宣伝を目的とした手ぬぐいやカレンダー
接待交際費
接待交際費は、取引先への接待や贈答にかかる費用を指します。なお、個人事業主において混同されがちですが、事業とは関係のない親族への慶弔見舞金などは含むことができません。
- 取引先との飲食代
- お中元、お歳暮
- 慶弔見舞金
また、接待交際費は税務調査でも指摘されやすい科目です。経費として計上できる範囲を超えていないか確認しましょう。
損害保険料
損害保険料とは、事業用として使用している店舗や事務所に関わる各種保険を指します。
- 店舗や事務所の火災保険料
- 自動車の自動車保険料など
事業と家庭の両方に関わる保険については按分できますが、完全に家庭用の場合には経費として計上はできません。
また、事業主個人の生命保険料や傷害保険料、地震保険料は経費計上できません。ただし、社会保険料などと同様、一部を生命保険料控除として所得から差し引けます。
修繕費
修繕費には、店舗や自動車などにおける修理代が該当します。不動産経営をしている場合は、賃貸物件の原状回復費用も含まれます。
- 店舗やオフィスなどの建物、店舗の修理代
- 自動車、機械、器具などの修理代(減価償却資産にあたらないもの)
- 賃貸物件の原状回復費用(不動産経営をしている場合)
消耗品費
取得価額が10万円未満もしくは、使用可能期間(法定耐用年数)が1年未満の消耗品は消耗品費として計上できます。
10万円を超える場合は備品となり、消耗品費では計上できません。また、プライベートでも使用できる雑貨や洋服、書籍も対象外です。
- 文房具
- 事業用として使用する家具
- 取得価格が10万円以下のパソコンなど
減価償却費
購入費用が10万円以上かつ1年以上使用可能な固定資産は、法定耐用年数に従って分割し、計上することとされています。これを減価償却といいます。
減価償却費とは、備品の償却残高がある場合に用いられる勘定科目です。
【関連記事】
減価償却とは?確定申告前に知っておきたい基礎知識と計算方法
福利厚生費
福利厚生費は、主に会社で払った従業員のために使った費用を指します。事業主本人のみ、または事業主本人と専従者のみが対象になる場合は適用されません。
- 従業員の食事代
- 慶弔見舞金
- 健康診断代金
- 社員旅行
- 忘年会、新年会費用
給料賃金
給料賃金は、従業員に対して支払われる給与や賞与を指します。事業主や専従者の給与や賞与は給料賃金ではなく、事業主賃・専従者給与で処理をします。
出典:国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」
【関連記事】
青色申告の専従者給与 家族への給与支払いで節税効果を高める方法
外注工賃
外注工賃は、修理加工などで外部に注文して支払った加工賃や報酬のことです。業務委託契約していたり人材派遣会社に派遣料を支払ったりした場合の外注費もこれに含まれます。
- 業務委託のデザイナーにしたデザイン料
- 清掃業者に事務所の清掃を依頼した際に支払う費用
- 営業の代行を委託している場合に委託先に支払う費用など
利子割引料
受取手形における割引料のほか、事業のための借入金の利息などが利子割引料になります。借入金の元金や個人の借入金は計上できません。なお、借入金の元金は、別途負債として計上します。
地代家賃
地代家賃は、事業のために使用した事務所や倉庫、駐車場における費用です。管理費や共益費、20万円未満の更新料と礼金を含めることができます。
自宅兼事務所の場合は、水道光熱費等と同じく按分の必要があります。按分の割合は、物件の専有面積に占める仕事部屋の面積で算出するなどの方法があります。
貸倒金
貸倒金は、回収ができなくなってしまった売掛金や貸付金、受取手形の額です。
雑費
雑費は、ほかの経費に該当しない場合に使用されます。
- 事業に関わる移転(引越し)代
- クリーニング費用
- 書籍代
- 銀行の振込手数料など
経費の勘定科目は自分で追加できる
勘定科目の種類や名称に法律はなく、事業内容によって上記以外の項目をある程度自由に追加することが可能です。
たとえば、営業などで車を頻繁に使用する場合、ガソリン代・駐車場代・車検代などを「車両費」としてまとめることができます。また、飲食店などで取引先や仕事仲間と打ち合わせをする機会が多い場合は「会議費」として計上し「接待交際費」と分類する方法もあります。
決算書にある勘定科目だけで帳簿づけをすると特定の科目の金額が多くなり、具体的な用途がわからなくなってしまいます。
勘定科目を追加することは、特定の科目の金額が多くなることを防止するだけでなく、取引内容を明確にできたり事業にかかる費用を管理しやすくなったりさまざまなメリットがあります。
ただし、毎年決まった勘定科目で記帳するという決まりがあり、駐車場代などを「雑費」と分類したのであれば、その年以降から「車両費」を新たに追加することはできません。
個人事業主が経費計上できない出費の具体例
ここでは、経費として計上できないさまざまな出費の具体例を紹介します。
個人事業主自身の生活や健康管理のための出費
個人事業主本人の給与や年金、各種保険料などは経費として計上できません。
個人事業主には「福利厚生」という概念がないため、事業主自身の健康診断・人間ドックなどの費用は、経費として計上できないことになっています。また、事業主本人が通うトレーニングジムやヨガ、稽古などのレッスン料金なども同様です。
ただし、従業員の給与や健康診断は経費として計上できます。
個人事業主の私的な買い物や飲食代
プライベートの飲食代・書籍代・交通費・衣類の購入費など、明らかに事業と関係がない私的な買い物は経費にできません。
たとえば、個人事業主が業務上使用するスーツの代金などは、普段着としても着用できるという見解から、経費として認められないことが多く、業務にのみ使用するユニフォームや作業着であれば経費として計上できる場合があります。
そのほか、カフェで作業をした際に発生した飲食費については、会議や作業など、業務上の理由により発生した飲食費であれば経費として認められ、業務外の空き時間での利用や休憩での利用については経費として認められません。
私的な理由による出費を経費にとして計上すると税務トラブルの原因となる可能性があるため、注意が必要です。
個人事業主が個人として納める税金
住民税や所得税は事業と関係なく、あくまで個人が納める税金です。そのため、経費として計上することはできません。
ただし、事業用に支払った印紙税、個人事業税、自宅(持ち家)で仕事をしている場合の家事按分した固定資産税は経費計上が可能です。
個人事業主の家族への給料
個人事業主と生計を同一にする家族への給料は、経費として計上できません。給料を経費にする際は、開業手続きをして青色申告を行い、家族を青色事業専従者として届け出る必要があります。
青色申告者の事業専従者として給与の支払を受ける人または白色申告者の事業専従者である人は、控除対象配偶者や扶養親族にはなれません。
出典:国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」
資産として減価償却できる物品
事業用に購入したパソコンなどの備品は、10万円以上の場合は固定資産扱いとなるため、法定耐用年数に応じて減価償却費とする必要があります。
このとき、使用可能な期間(耐用年数)から購入費用を分割して経費計上をするため、1年にまとめて全額経費として計上することはできません。
また、経年劣化しないものや時間によって価値が変動しないものは固定資産に含まれず、減価償却の対象とならないため、経費計上の対象外となります。
【関連記事】
減価償却を行うメリットと計算方法
家賃や通信費などの一部を経費にする家事按分の方法
個人事業主で自宅を仕事場にしている場合、家賃や光熱費の一部は業務の必要経費として計上することができます。
しかし、プライベートと業務で使用した費用を明確に分類するのは困難です。そこで、経費全体のうち業務として使用している分を一定の比率で区分して経費計上します。これを「家事按分」といいます。
家事按分に法的なルールはありません。しかし、税務署から説明を求められた際に按分の明確な根拠を示せるようにしておくことが大切です。
家事按分を合理的に説明する方法
家事按分が可能なものとして、具体的には以下のような費用が該当します。そして家事按分が認められるのは、これらを事業で使用していると合理的に説明できる場合のみとなります。
家事按分できる費用の例
- 家賃
- 水道光熱費
- インターネット使用料
- 携帯電話代
- 自動車のガソリン代
- 車検費用など
具体的には「住居の1室を仕事のための専用スペースとして使用している」、「リビングの一部をパーティションで区切って仕事用に割りあてている」など、明確な事実がある場合を指します。
もしくは「専用スペースを設けてはいないものの、自宅での時間のうち6時間は業務をしている」といった時間による按分も可能です。
家賃が月20万円で賃貸面積60㎡のマンションを例に、使用面積と業務時間それぞれで家事按分を計算してみましょう。
家事按使用面積で家事按分した場合の計算例
例:仕事場として使用している面積が15㎡の場合
- 事業で使用した面積の割合を求める
・15㎡ ÷ 60㎡ = 25% - 家賃のうち事業に使用している分を算出する
・200,000円(家賃)× 0.25 = 50,000円(1ヶ月あたり)
業務時間で家事按分した場合の計算例
例:1ヶ月(30日)のうち、業務時間が1日9時間で10日間業務をする場合
-
業務用の按分割合を求める (業務時間 ÷ 1ヶ月の総時間)
・90時間 ÷ 720時間(24時間 × 30日)= 12.5% -
家賃のうち事業に使用した分を算出する
・200,000円(家賃) × 0.125 = 25,000円
なお、賃貸だけではなく、持ち家の場合にも家事按分が可能です。
対象となるのは、建物部分の減価償却費、住宅ローンの利息、固定資産税、火災保険料などです。住宅ローンの利息については、事業用の家事按分が2分の1を超えると住宅ローン控除の適用対象外になってしまうので注意しましょう。
【関連記事】
家事按分とは?個人事業主が知っておくべき経費計上の仕方や計算方法についてわかりやすく解説
青色申告は家賃や光熱費などを経費として計上しやすい
確定申告をする際、青色申告と白色申告いずれの場合も家事按分で経費計上が可能です。しかし、白色申告の方が家事按分として認められるための条件が厳しくなっています。
白色申告の場合は「対象の業務利用の割合が50%を超えていること」「事業用と個人用が明確に区分されること」が条件です。
一方、青色申告の場合は、業務を遂行するにあたって必要であることが認められさえすれば、どのような経費でも計上することができます。青色申告は帳簿が詳細な複式簿記のため、帳簿に基づいた税務調査が行われ経費が推計されるため、実態よりも課税金額が高くなるリスクが少なくなります。
上記以外にも、青色申告にはさまざまな節税メリットがあります。できるかぎり節税をしたい人は青色申告がおすすめです。
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青色申告とは? 節税メリットや必要な手続きをわかりやすく解説
経費の不正計上によるペナルティ
納税義務のある税額よりも少なく申告した場合や、意図的に経費や所得を隠ぺいすると、脱税として指摘され、加算税を支払うことになる可能性があります。なお、加算税は損金として算入できず、会計処理上の扱いは「租税公課」となります。
不正計上に課されるペナルティには、以下があります。
過少申告加算税
本来支払うべき税額より少ない額を申告した場合に加算されるのが「過少申告加算税」です。期限内に確定申告をして税金を支払った場合でも、申告内容に問題があれば対象となります。
自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税を課税されずに済む場合があります。過少申告にも延滞税が課されるので、申告内容に問題点を見つけた際にはできるだけ早く修正申告をしましょう。
過少申告加算税の追徴課税額は、基本的に増差額×10%で算出されます。ただし、新たに納める税金が、当初の申告納税額と50万円のいずれか大きい金額を超えている場合、超えている部分の税率は15%となります。
出典:国税庁「No.2026 確定申告を間違えたとき」
重加算税
「重加算税」は、架空の経費計上や領収書の偽造など、意図的に税金をごまかそうとしたと判断されると課される税金です。
ほとんどの場合、重加算税が課されるのは税務調査で問題が判明するケースです。違反が認められると修正申告や更正処分が行われますが、再調査の請求や不服申し立ても可能です。
しかし、申請には期限があり、重加算税にも延滞税が加算されますので、いずれの場合にも指摘を受けた際には素早い対応が必要となります。
重加算税の税額は、増差額をもとに計算します。増差額とは、本来納めるはずだった税額から当初申告した税額を差し引いた金額です。
過少申告や不納付があった場合には「過少申告加算税」または「不納付加算税」に代えて35%、無申告の場合には「無申告加算税」に代えて40%の税率で課税されます。
短期間に故意に誤った申請や隠ぺいが繰り返された場合には、税額が10%増える制度が導入されるなど、加算税の中で最も重いペナルティです。
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法改正による2023年分確定申告からの変更点
2021年の閣議決定により施行された税制改正大綱によって、2023年分の確定申告から税務調査がより厳しいものとなりました。
簿外経費(後出し経費)が認められなくなる
簿外経費とは「後出し経費」ともよばれ、確定申告の際に隠ぺいや無申告を税務署から指摘された申告者が、納税すべき所得税を減らすことを目的として帳簿に記載されていなかった経費を後から申告することを指します。
2023年の確定申告提出分からは、帳簿から明確に経費であることを証明できないものや、取引に必要な支出であることが証明できない経費については損金不算入とされ、経費計上できなくなりました。
出典:財務省「令和4年度税制改正の大綱(1/8)」
帳簿不備にはペナルティが課せられる
申告者が税務署から帳簿の提出を求められた際、何らかの理由で帳簿の提出ができなかったり、帳簿の記載が不十分であったりした場合、2023年の確定申告分からはペナルティが科せられることになりました。
このペナルティには過少申告加算税と無申告加算税が適用されます。具体的な額は以下のとおりです。
条件 | 過少申告加算税等の割合 |
・帳簿を提出できない
・提出した帳簿の売上金額または収入金額の1/2以上の記載がない | +10%加重 |
・提出した帳簿の売上金額または収入金額の1/3以上の記載がない | +5%加重 |
2023年提出(令和4年分)の確定申告アップデート情報
2024年提出(令和5年分)の確定申告アップデート情報
所得税の確定申告期間:2024年2月16日(金)〜2024年3月15日(金)
消費税の確定申告期間:2024年2月16日(金)〜2024年4月1日(月)
※ 贈与税の申告・納税期間:2024年3月15日(金)まで
<2024年(令和5年分)の確定申告のポイント>
- 「源泉徴収票・国民年金基金掛金・iDeCo・小規模企業共済掛金」が追加されるなど、マイナポータル連携をすることで自動入力できる対象が増えます。
- 国税庁の確定申告書等作成コーナーでも、消費税の申告書を作成できるようになる予定です。今回、インボイス登録によって課税事業者になり、消費税の納付が必要になった方はチェックしましょう!
詳しくは国税庁ホームページ「令和5年分 確定申告特集」をご参照ください。
まとめ
個人事業主として事業を行う以上、経費は必ず発生します。しかし、経費には計上できる範囲や条件があり、全ての出費が経費として認められるわけではありません。
確定申告を通して、不適切な支出や不明瞭な申告があれば税務署から指摘が入り、場合によっては申告内容の修正や追徴課税が発生する可能性もあります。
正しい経費計上をすることで、ペナルティによるマイナスを避け、社会的信用の維持にもつながります。帳簿付けや申告内容に不安があるならば、税務署の担当部署や税理士、利用している会計ソフトのサポートなどに相談してみましょう。
確定申告のやり方について詳しく知りたい方は、別記事「確定申告のやり方が分かる! 必要書類の準備から提出まで徹底解説」をあわせてご確認ください。
確定申告を簡単に終わらせる方法
確定申告には青色申告と白色申告の2種類があります。どちらを選択するにしても、期限までに正確な内容の書類を作成し申告しなければいけません。
確定申告書を作成する方法は手書きのほかにも、国税庁の「確定申告等作成コーナー」を利用するなどさまざまですが、会計知識がないと記入内容に悩む場面も出てくるでしょう。
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よくある質問
個人事業主の経費はいくらまで?
個人事業主の経費に上限はなく、事業に関わる支出であれば経費として計上できます。しかし、売上規模に対して出費の額が大きすぎるなど妥当性に欠ける場合は、税務署から指摘を受ける可能性があります。詳しくは こちらをご覧ください。
個人事業主は何を経費できる?
基本的に事業に関わる支出であれば経費として計上できます。経費を記帳するときは勘定科目を用いて支出ごとに区分します。代表的なものをこちらで解説しています。