確定申告の基礎知識

退職金の確定申告は必要?不要なケースや税金還付についてわかりやすく解説

監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

退職金の確定申告は必要?不要なケースや税金還付についてわかりやすく解説

退職金としてもらった所得は、基本的には確定申告する必要はありません。しかし、所得控除を受けたい場合や、公的年金等の収入の合計が400万円を超す場合などのケースでは、確定申告が必要です。

本記事では、退職金をもらったときに知っておきたい、確定申告の必要有無やした方がいいケースについて詳しく解説していきます。注意点や税金の計算方法も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

目次

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退職金とは

退職金とは、退職時に勤務先から支払われる手当のことです。

退職金は「退職手当」とも呼ばれ、その所得は給与所得ではなく「退職所得」として扱われます。退職所得のうち課税対象となるのは、退職所得から退職所得控除を差し引いた金額です。なお、退職所得控除の控除額は、勤務年数・退職事由によって変動します。

また、退職所得は、給与所得や事業所得のような総合課税ではなく、分離課税の対象となる所得です。分離課税とは、特定の所得を、給与所得や事業所得といったほかの所得と合算せず、それ単体で独立して税額を計算する課税方式のことです。

他の所得と分けて税額を計算することで、納税者の税負担が過度に重くならないよう配慮されているという特徴があります。これには長年の勤務に対する報酬という意味があるため、納税者の税負担が軽くなるよう配慮されている特徴があります。


出典:国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」

なお、総合課税や分離課税など、所得についてさらに詳しく知りたい方は、別記事「所得とは? 収入との違いや種類別の計算方法を解説」をあわせてご確認ください。

退職金の確定申告は原則不要

退職金を受け取った際、原則として確定申告を行う必要はありません。これは、「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出していれば、退職金の支給時に源泉徴収されるためです。

上記の手続きによって、退職金が支払われる際に退職所得控除が適用され、納めるべき所得税等・住民税は源泉徴収または特別徴収されます。


出典:国税庁「退職金と税」

退職金の確定申告が必要なケース

退職金の確定申告は原則不要ですが、年金形式でもらう場合における以下のケースでは、確定申告が必要です。

退職金の確定申告が必要なケース

  • 公的年金等にかかる雑所得以外の所得金額が20万円を超す場合
  • 所得控除を受けたい場合
  • 公的年金等の収入金額が400万円を超す場合

なお、退職金のもらい方には、一時金としてもらう方法と年金形式でもらう方法の2種類があります。それぞれの概要については、以下のとおりです。


退職金のもらい方の種類概要
一時金
※原則申告不要
・一般的な退職金のもらい方
・退職所得の受給に関する申告書を提出していない場合は確定申告することで払いすぎた税金の還付が受けられる
年金形式
※確定申告不要制度から外れると申告が必要
・何年にもわたって退職金をもらう方法
・基本的には源泉徴収されたうえで受け取れる
・雑所得などの所得と合算したうえで総合課税される
・以下に当てはまる場合は確定申告不要(しなくても損はしない)
・公的年金がすべて源泉徴収の対象である
・公的年金の収入金額の合計が年400万円以下である
・公的年金等にかかる雑所得以外の所得が年20万円以下である

なお、定年退職における退職金の確定申告について詳しく知りたい方は、別記事「定年退職したら確定申告は必要?確定申告が必要なケースとは」をあわせてご確認ください。

公的年金等にかかる雑所得以外の所得金額が20万円を超す場合

公的年金を受け取っている場合、公的年金等の収入金額が400万円以下であれば年金受給者の確定申告不要制度の対象となり、通常確定申告する必要はありません。

しかし、公的年金を受け取っている方で、公的年金等にかかる雑所得以外の所得金額が20万円を上回る場合は、この制度の対象から外れるため、確定申告が必要です。

公的年金等にかかる雑所得以外の所得には、事業所得や配当所得、不動産所得などの種類があります。これは退職所得とは別に確定申告が必要なケースで、個人事業主やフリーランスと同様の形で申告しなければなりません。

また、退職所得が源泉徴収されていない場合には、他の所得と合わせて確定申告する必要があります。


出典:政府広報オンライン「ご存じですか?年金受給者の確定申告不要制度」
出典:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」

所得控除を受けたい場合

所得税を納めるすべての人は、特定の要件を満たすことで所得控除が受けられます。所得控除は15種類あり、そのなかでも主な所得控除の例としてあげられるのは、以下のとおりです。

主な所得控除の種類

  • 医療費控除
  • 雑損控除
  • 社会保険料控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 扶養親族関連の各種控除
  • 寄附金控除

退職の有無に関わらず、年末調整では受けられなかった所得控除を受けるためには、確定申告が必要です。また、雑損控除・医療費控除・寄附金控除を自ら確定申告をすることで、控除しきれなかった税金は還付される可能性があります。


出典:国税庁「給与所得者の確定申告」

なお、所得控除についてさらに詳しく知りたい方は、別記事「確定申告の所得控除は15種類! 対象となる条件や控除額、税額控除との違いについて解説」をあわせてご確認ください。

公的年金等の収入金額の合計が400万円を超す場合

公的年金等の収入金額が400万円を上回る場合は、年金受給者の確定申告不要制度から外れるため、確定申告が必要です。これは退職所得を年金形式で受け取っている場合に当てはまるケースがあり、年間の年金受給額をしっかりと計算しておく必要があります。

また、年金形式で受け取っている退職所得が公的年金等の所得に含まれている場合、退職所得以外にも、公的年金をほかにも受給している場合は、受給金額の合計が確定申告の対象です。

たとえば、退職所得と厚生年金の合計が年間420万円となった場合には、合計金額を確定申告しなければなりません。


出典:政府広報オンライン「ご存じですか?年金受給者の確定申告不要制度」
出典:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」

確定申告をした方がいいケース

上述したとおり、退職金の確定申告は原則不要です。ただし、退職のタイミングなどによっては、確定申告を行うことで税金の一部が還付される場合もあります。主なケースは以下のとおりです。

確定申告をした方がいいケース

  • 転職先で年末調整したが前職の源泉徴収票を提出しなかった場合
  • 退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかった場合
  • 年の途中で退職して年末調整を行っていない場合
  • 不動産所得や事業所得があり、赤字が発生した場合
  • 生命保険料の支払いがあった場合
  • ふるさと納税を行った場合
  • 個人型確定拠出年金を行った場合
  • 住宅ローン控除を受けられる場合
  • 高額の医療費負担があった場合
  • 扶養家族がいるまたは家族の状況に変更があった場合
  • 災害や盗難等に遭った場合

なお、税金の還付について詳しく知りたい方は、別記事「還付金とは?還付の意味や対象者、申告のやり方をわかりやすく解説」をあわせてご確認ください。

転職先で年末調整したが前職の源泉徴収票を提出しなかった場合

原則として、以前の勤務先から受け取った給与が年間で20万円を下回っていれば、確定申告は不要です。

ただし、転職後の企業での年末調整時に、以前の勤務先の源泉徴収票を提出していない場合は、確定申告をすることで払い過ぎた所得税が還付される可能性があります。その場合、退職所得についても確定申告書に反映させなくてはなりません。

なお、転職ではなく退職によって無職になった場合でも、前の勤務先で年末調整を受けていない場合は確定申告する必要があります。

退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかった場合

上述したように、退職前に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合は、退職所得控除を加味した課税対象額の計算がされません。そのため、受け取る退職所得の全額に一律20.42%の所得税・復興特別所得税が源泉徴収されてしまいます。

この場合、受け取る退職所得額や各種条件によって異なりますが、一般的に確定申告を行うことで源泉徴収税の還付を受けることが可能です。


出典:国税庁「別紙 退職所得の源泉徴収税額の速算表」
出典:国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」

年の途中で退職して年末調整を行っていない場合

給与所得者は、毎月の給与や賞与の源泉徴収で所得税として納め、年末調整で正しい納税額を確定します。社会保険料控除・扶養控除・基礎控除などの所得控除も、年末調整時によって会社側が適用させます。

ただし、年の途中で退職し年末調整がされていない場合は、源泉徴収税として天引きされていた所得税が精算されません。また、所得控除の適用も受けられないため、所得税を納め過ぎている状態になる可能性があります。

この場合、退職所得を含めた確定申告を行うことで、払い過ぎた源泉徴収税の還付を受けることが可能です。なお、退職後に失業保険を受け取る場合、失業保険は所得税の課税対象ではないため、受け取った分の失業保険(給付)の申告は必要ありません。


出典:国税庁「No.1910 中途退職で年末調整を受けていないとき」

生命保険料の支払いがあった場合

生命保険料や個人年金保険料など、保険料を支払っている方は、生命保険料控除が適用されます。生命保険料控除を受けることで所得税・住民税が軽減され、確定申告で還付を受けられる可能性があるため、必ず確認しておきましょう。

なお、生命保険料の還付を受けるには、例年10月から11月頃に保険会社から送られてくる生命保険料控除証明書が必要です。確定申告時に添付する必要があるため、無くさないように保管しておいてください。

生命保険料控除について詳しく知りたい方は、別記事「年末調整の生命保険料控除とは?書き方や計算方法についてわかりやすく解説」をあわせてご確認ください。


出典:国税庁「No.1140 生命保険料控除」

ふるさと納税を行った場合

退職して退職金を受け取った年にふるさと納税を行った方は、寄附金控除を受けられます。寄付金控除を適用するためには確定申告が必要であるため、還付金を受け取るために忘れずに申告しましょう。

ただし、ふるさと納税で寄附金控除を受けられるのは、ワンストップ特例制度を利用しない場合のみです。また、ふるさと納税だけではなく、市区町村などへの寄付を行った場合も寄附金控除は受けられます。

確定申告で寄附金控除を受ける方法について詳しく知りたい方は、別記事「確定申告で寄附金控除を受ける方法とは?控除対象や算出方法も解説」をあわせてご確認ください。


出典:総務省「よく分かる!ふるさと納税」

個人型確定拠出年金の拠出を行った場合

iDeCo等の個人型確定拠出年金の拠出を行った場合は、掛金全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となります。比較的控除額が大きい制度であるため、必ず確定申告を行って控除申請しましょう。

なお、iDeCoの制度について詳しく知りたい方は、別記事「iDeCo(個人型確定拠出年金)は確定申告が必要?対象と申請方法について解説!」をあわせてご確認ください。


出典:厚生労働省「iDeCoの概要」

住宅ローン控除を受けられる場合

住宅ローン控除を適用できる方は、確定申告が必要な初年度に加えて、退職し年末調整を受けていない年にも確定申告を行いましょう。住宅ローン控除は、初年度で自ら確定申告した次年度からは、勤務先の年末調整で控除が受けられます。

ただし、退職して年末調整を受けなくなると住宅ローン控除を自分で適用させる必要があるため、忘れずに確定申告してください。なお、住宅ローン控除を受けるための確定申告について詳しく知りたい方は、別記事「住宅ローン控除を受けるための確定申告のやり方や必要書類を解説」をあわせてご確認ください。


出典:国税庁「No.1213 認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」

高額の医療費負担があった場合

1月から12月にかけて支払った医療費が「10万円」または「総所得金額 × 5%」を超える場合は、いずれか少ない方の金額を医療費控除として適用できます。医療費控除を利用して確定申告すると、還付金を受け取れるため、忘れずに確定申告しましょう。

なお、医療費控除を受けるには医療機関に支払った領収書などの添付書類が必要です。詳しくは別記事「医療費控除とは?確定申告のやり方・計算方法についてわかりやすく解説」をあわせてご確認ください。


出典:国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」

扶養家族がいるまたは家族の状況に変更があった場合

扶養家族がいる方や、年の途中に扶養親族が増えた場合など家族の状況に変更があった方は、扶養控除や配偶者(特別)控除が受けられます。これらの控除が適用できる場合には、確定申告をすることで還付金を受けることが可能です。

なお、退職後に公的年金を受け取る場合は、「扶養親族等申告書」を提出することで自動的に控除が受けられるため、確定申告は必要ありません。


出典:国税庁「A2-6 公的年金等の受給者の扶養親族等の申告」

扶養控除や配偶者控除について詳しく知りたい方は、別記事「扶養控除とは?配偶者控除との違いや控除金額から申告書の書き方まで紹介」をあわせてご確認ください。

災害や盗難等にあった場合

年内に災害や盗難などに遭った場合は、雑損控除を受けられる可能性があります。雑損控除が適用される場合は、確定申告することで税負担が軽減されるため、必ず申告しましょう。

なお、雑損控除の確定申告時には損失を受けた証明書やそれによる支出を示す領収書などの添付書類が必要になるため、しっかりと用意することが重要です。雑損控除について詳しく知りたい方は、別記事「雑損控除」をあわせてご確認ください。

退職金(退職所得)にかかる税金の種類

退職所得は、給与所得などとは異なり、税制上の負担が軽減される仕組みが設けられています。しかし、実際に課税されないわけではありません。

退職所得にかかる税金は、主に「住民税」と「所得税」の2種類です。以下で、それぞれどのような税金なのかを解説します。

住民税

住民税とは、都道府県や市区町村に納める地方税です。支払った金額は、公共施設・上下水道・ごみ処理・学校教育といった行政サービスの活動費に充てられています。

住民税には「所得割」と「均等割」の2種類があり、納めるべき住民税を算出する計算方法は、以下のとおりです。


種類計算方法
所得割所得金額 × 10%(都道府県民税4% + 市区町村民税6%)
均等割4,000円(都道府県民税1,000円 + 市区町村民税3,000円)

「所得割」は、個人の所得金額に応じて課せられます。所得金額とは、収入から必要経費を差し引いた金額です。所得金額に関わらず一律に課税される「均等割」は、地域社会の会費的な役割があります。

なお、実際は上記の基準をもとに、都道府県・市区町村が各自の判断で税率を定めます。


出典:総務省「個人住民税」

住民税について詳しく知りたい方は、別記事「住民税とは?いつ・いくら納税するのか計算方法や税率などわかりやすく解説」をあわせてご確認ください。

所得税

所得税とは、個人の所得に対して課税される国税です。個人の所得税には「累進課税制度」が採用されているため、所得金額が多いほど税額も増えます。

課税所得金額に応じた税率・控除額は、以下のとおりです。

所得税率の速算表

課税対象の所得金額税率控除額
1,000円〜1,949,000円5%0円
1,950,000円〜3,299,000円10%97,500円
3,300,000円〜6,949,000円20%427,500円
6,950,000円〜8,999,000円23%636,000円
9,000,000円〜17,999,000円33%1,536,000円
18,000,000円〜39,999,000円40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円
出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」
出典:国税庁「所得税のしくみ」
出典:国税庁「個人の方に係る復興特別所得税のあらまし」

なお、所得税について詳しく知りたい方は、別記事「所得税の計算方法は?税率・控除についてわかりやすく解説【令和6年最新】」をあわせてご確認ください。

退職金(退職所得)にかかる税金の計算方法

退職所得にかかる所得税・住民税は、以下の手順で計算します。

退職金(退職所得)にかかる税金の計算方法

  1. 退職所得控除額を計算する
  2. 退職所得を計算する
  3. 退職所得の税額を算出する
  4. 住民税を算出する

ここでは、以下の条件を例に実際に計算方法を解説していくので、参考にしてみてください。

【想定する条件】


  • 勤続30年
  • 定年退職
  • 退職金2,000万円

①退職所得控除額を計算する

退職所得控除額は勤続年数20年を基準に、金額が変動します。


勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円(80万円以下の場合は80万円) × 勤続年数
20年超800万円 + 70万円 × (勤続年数 - 20年)
出典:国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」

今回は勤続30年を想定しているため、退職所得控除額は以下のように計算できます。

8,000,000円 + 700,000円 × (30年 - 20年)= 15,000,000円

なお、勤続年数に1年未満の端数がある場合は、たとえ1日のみでも「1年」として計算します。そのため、仮に30年と2ヶ月勤務した場合は、端数の2ヶ月が「1年」にカウントされるため、計算式は以下のとおりです。

8,000,000円 + 700,000円 ×(31年 - 20年)= 15,700,000円

また、障害状態が原因で退職せざるを得ない場合は、退職所得控除額に100万円が上乗せされます。

②退職所得を計算する

課税対象になる退職所得は、一般的に以下の方法で計算します。

【課税退職所得金額の計算方法】

(退職金(源泉徴収される前の金額)- 退職所得控除額)× 1/2 = 課税退職所得金額

今回の想定である「退職金2,000万円」に先ほど算出した退職所得控除額を適用することで、以下の退職所得が導き出されます。

(20,000,000円 - 15,000,000円)× 1/2 = 2,500,000円

ただし、退職手当が「特定役員退職手当等」に該当する場合は注意が必要です。

役員等としての勤続年数が5年以下の人が勤続年数に応じた退職金を受け取る場合は、退職金の額から退職所得控除額を差し引いた額が退職所得の金額になります。そのため、上記の計算式における「2分の1計算」は適用されません。

なお、役員等としての勤務年数とは、勤続年数のうち役員等として働いた期間(1年未満切り上げ)を指します。ここでいう「役員等」に該当する役職の例は、以下のとおりです。

【役員等の役職例】


  • 企業の取締役
  • 執行役
  • 監査役
  • 理事
  • 清算人
  • 国会議員
  • 地方公共団体の議員
  • 国家公務員
  • 地方公務員

また、退職手当等が「短期退職手当等」に該当している場合は、短期勤続年数に対して退職手当等として支払いを受けます。

短期勤続年数は、勤務期間により計算した勤続年数が「5年以下」の場合が対象です。勤続年数内に役員等としての勤務期間がある場合、役員等の勤務期間を含めて計算しなければなりません。

この場合、特定役員退職手当等に該当しないものについて、退職金の額から退職所得控除額を差し引いた額が300万円を上回る部分は、上記の計算式における「2分の1計算」は不要です。


出典:国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」

③退職所得の所得控除額を計算する

退職所得の所得税額を求める計算式は、以下のとおりです。

【退職所得における所得税の計算方法】

(課税退職所得金額 × 所得税率 - 控除額)× 102.1% = 退職金の所得税額

上記の計算式を①と②で算出した数字に当てはめると、退職所得の税額が算出可能です。なお、税額に1円未満の端数がある場合は「切り捨て」とします。

【今回のケースにおける退職所得の所得税額】

(2,500,000円 × 10% - 97,500円)× 102.1% = 155,702円(端数切捨て)

課税退職所得金額から源泉徴収すべき所得税・復興特別所得税の額は、退職所得金額に応じて変動します。詳しい控除額については、以下の速算表を参考にしてください。


課税退職所得金額(A)所得税率
(B)
控除額(C)税額=((A)×(B)-(C))×102.1%
195万円超330万円以下10%9万7,500円((A)× 10% - 9万7,500円)
330万円超695万円以下20%42万7,500円((A)× 20% - 42万7,500円)× 102.1%
695万円超900万円以下23%63万6,000円(A)× 23% -63万6,000円)× 102.1%
900万円超1,800万円以下33%153万6,000円((A)× 33% - 153万6,000円)× 102.1%
1,800万円超4,000万円以下40%279万6,000円((A)× 40% - 279万6,000円)× 102.1%
4,000万円超45%479万6,000円((A)× 45% - 479万6,000円)× 102.1%

※課税退職所得金額(A)に1,000円未満の端数があるときは、これを切り捨てます。


出典:国税庁「別紙 退職所得の源泉徴収税額の速算表」

④住民税を算出する

最後に、退職所得に係る住民税を算出します。住民税の「所得割」は、課税退職所得金額に住民税率を乗じることで算出できます。具体的な計算方法は、以下のとおりです。

【住民税の計算方法】

課税退職所得金額 × 住民税率(10%) = 所得割

次に、②で算出した課税対象の退職所得金額を、上記の計算式に当てはめて住民税を算出しましょう。

【今回のケースにおける住民税の所得割】

2,500,000円 × 10% = 250,000円

上述したように、住民税には所得割のほかに「均等割」があります。均等割は所得金額に関わらず、一律で「4,000円」負担するのが原則です。今回のケースの場合は、所得割と均等割をあわせた納めるべき住民税額は、「25万4,000円」となります。

最後に、①の計算式で算出した所得税額と住民税をあわせて、今回納めるべき税金の総合計額をみてみましょう。

【今回のケースで納めるべき税金の合計】

155,702円(所得税)+ 254,000円(住民税)= 409,702円

まとめると、勤続30年で定年退職する人が退職金2,000万円を受け取った場合、退職所得にかかる税金は「40万9,702円」です。

退職金の確定申告に関する注意点・特殊なケース

退職金を受け取る際には、以下のような特殊なケースが発生する可能性があります。それぞれの状況における注意点について詳しく解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

退職金の確定申告に関する注意点・特殊なケース

  • 退職金を受け取る本人が亡くなった場合
  • 1年間で複数回の退職金を受け取る場合
  • 退職後に失業手当を受け取る場合

退職金を受け取る本人が亡くなった場合

退職金を受け取る本人が亡くなった場合は、相続人に退職所得が支払われることがあります。亡くなった後、3年以内に支払いが確定した「退職手当金等」を相続する者が受け取った場合は、相続税の課税対象です。

ただし、死亡退職金には非課税枠が設けられており、法定相続人1名あたり500万円は非課税となります。これを元にした非課税限度額の計算方法は、以下のとおりです。

【非課税限度額の計算方法】

5,000,000円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額

【法定相続人が3人の場合の非課税限度額】

非課税限度額:5,000,000円 × 3(法定相続人の数) = 15,000,000円

なお、法定相続人の数は、相続の放棄をした人も相続人の数に含みます。法定相続人の中に養子がいる場合の法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までです。


出典:国税庁「No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金」

1年間で複数回の退職金を受け取る場合

複数の企業に所属していたなどの理由で、同じ年に2回以上の退職金を受け取る場合は「退職所得の受給に関する申告書」の記入や提出時に注意が必要です。

同時に2つ以上の企業(支払者)に申告書を提出する際は、申告書に順番を記載して提出しなければなりません。また、すでに受け取り済みの退職金がある場合は、支払者の名称・退職金額・源泉徴収税額などを申告書に記入し、受け取り済みの源泉徴収票を添付して勤務先に提出してください。

退職後に失業手当を受け取る場合

退職後に改めて就職活動を行う場合は、失業手当が受け取れる可能性があります。失業手当は課税対象外の生活保障制度の給付であるため、確定申告は不要です。

ただし、失業手当の不正受給が判明すると過払い返還や延滞金、最悪の場合は詐欺罪等の処罰対象となることがあります。そのため、就職の意志がない場合は失業手当の受給は必ず避けましょう。


出典:厚生労働省「基本手当について」

なお、失業手当について詳しく知りたい方は、別記事「失業保険(失業手当)とは?もらえる条件と期間や手続き、金額の計算方法について解説」をあわせてご確認ください。

退職金の確定申告の流れ

退職金に係る確定申告が必要またはしたほうがいい方に向けて、確定申告の流れを解説していきます。確定申告の一般的な手順は、以下のとおりです。

退職金の確定申告の流れ

  1. 必要書類の準備
  2. 申告書の作成
  3. 申告書の提出
  4. 納税または還付の手続き

確定申告を行うにあたって、源泉徴収票・医療費控除の明細書・寄附金受領証明書など、申告に必要な書類も早めに集めておきましょう。自営業者や副業収入がある場合は、売上や経費の帳簿も必要です。

また、確定申告書は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」や専用ソフトを利用して作成できます。記入する収入額や控除の内容は、誤りがないように正しく入力してください。還付される金額がある場合は、振込先の情報も必要です。

確定申告書が作成でき、添付書類が用意できたら、以下のいずれかの方法で提出してください。

確定申告書の提出方法

  • e-Taxでオンライン提出する
  • 税務署へ郵送する
  • 税務署へ直接持参する

確定申告の期限は、原則として確定申告をする所得がある年の翌年の3月15日までとなっています。また、申告だけではなく税金の納付期限も3月15日となっているため、期限に遅れないように申告・納税しましょう。

なお、確定申告の具体的な手続きについて詳しく知りたい方は、別記事「確定申告のやり方をわかりやすく解説!個人事業主や会社員が自分でやるには?」をあわせてご確認ください。

まとめ

退職金は原則として確定申告が不要な所得ですが、場合によっては確定申告しなければならないことがあります。主なケースとしてあげられるのは、退職所得以外の雑所得などの所得が20万円を超えている場合です。

ほかにも、退職所得の受給に関する申告書を提出していない場合は、確定申告することで払いすぎた税金の還付が受けられます。退職金における確定申告の概要をきちんと把握し、税制上不利になってしまわないように準備しておきましょう。

確定申告をかんたんに終わらせる方法

確定申告の期間は1ヶ月です。それまでに正確な内容の書類を作成し、申告・納税しなければいけません。

ほかにも、青色申告の場合に受けられる特別控除で、最大65万円を適用するためにはe-Taxの利用が必須条件であり、はじめての人には難しい場面が増えることが予想されます。

そこでおすすめしたいのが、確定申告ソフト「freee会計」の活用です。

freee会計は、〇✕形式の質問で確定申告に必要な書類作成をやさしくサポートします。また、所得額や控除額の計算は自動で行ってくれるため、計算・入力ミスの削減できるでしょう。
ここからは、freee会計を利用するメリットについて紹介します。

1.銀行口座やクレジットカードは同期して自動入力が可能!

確定申告を行うためには、1年間のお金にまつわる取引を正しく記帳しなければなりません。自身で1つずつ手作業で記録していくには手間がかかります。

freee会計では、銀行口座やクレジットカードの同期が可能で、利用した内容が自動で入力されていきます。

日付や金額を自動入力するだけでなく、勘定科目も予測して入力してくれるため、日々の記帳がほぼ自動化でき、工数削減につながります。

freee会計 管理画面イメージ4

2.現金取引の入力もカンタン!

会計ソフトでも現金取引の場合は自身で入力し、登録しなければなりません。

freee会計は、現金での支払いも「いつ」「どこで」「何に使ったか」を家計簿感覚で入力できるので、毎日手軽に帳簿付けが可能です。

自動的に複式簿記の形に変換してくれるため、会計処理の経験がない人でも正確に記帳ができます。

freee会計 管理画面の例1

さらに有料プランでは、チャットで確定申告について質問ができるようになるので、わからないことがあったらすぐに相談できます。また、オプションサービスには電話相談もあるので、直接相談できるのもメリットの1つです。

freee会計の価格・プランについてはこちらをご覧ください。

3.〇✕形式の質問に答えるだけで各種控除や所得税の金額を自動で算出できる!

各種保険やふるさと納税、住宅ローンなどを利用している場合は控除の対象となり、確定申告することで節税につながる場合があります。控除の種類によって控除額や計算方法、条件は異なるため、事前に調べなければなりません。

freee会計なら、質問に答えることで控除額を自動で算出できるので、自身で調べたり、計算したりする手間も省略できます。

freee会計 管理画面の例2

4.確定申告書を自動作成!

freee会計は取引内容や質問の回答をもとに確定申告書を自動で作成できます。自動作成した確定申告書に抜け漏れがないことを確認したら、税務署へ郵送もしくは電子申告などで提出して、納税をすれば確定申告は完了です。

また、freee会計はe-Tax(電子申告)にも対応しています。e-Taxからの申告は24時間可能で、税務署へ行く必要もありません。青色申告であれば控除額が10万円分上乗せされるので、節税効果がさらに高くなります。

e-Tax(電子申告)を検討されている方はこちらをご覧ください。

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freee会計を使うとどれくらいお得?

freee会計には、会計初心者の方からも「本当に簡単に終わった!」というたくさんの声をいただいています。

税理士などの専門家に代行依頼をすると、確定申告書類の作成に5万円〜10万円程度かかってしまいます。freee会計なら月額980円(※年払いで契約した場合)から利用でき、自分でも簡単に確定申告書の作成・提出までを完了できます。

余裕をもって確定申告を迎えるためにも、ぜひfreee会計の利用をご検討ください。

よくある質問

退職金を受け取ったら確定申告は必要?

退職金を受け取った場合は、原則として確定申告は不要です。しかし、所得控除を受けたい場合や一定金額以上の収入を別で得ている場合などでは、確定申告しなければなりません。

詳しくは記事内「退職金の確定申告が必要なケース」をご覧ください。

退職金にかかる税金はどうやって計算する?

退職金にかかる税金は、退職所得控除と退職所得の金額を主に使って計算していきます。控除には退職所得控除とは別の所得控除もあるため、計算する際はご注意ください。

詳しくは記事内「退職金(退職所得)にかかる税金の計算方法」をご覧ください。

退職金にかかる税金には何がある?

退職金には、主に住民税と所得税といった2種類の税金がかかります。それぞれ所得額に応じて金額が変わるため、仕組みについてきちんと理解しておきましょう。

詳しくは記事内「退職金(退職所得)にかかる税金の種類」をご覧ください。

freee会計で電子申告をカンタンに!

freee会計は〇✕形式の質問で確定申告に必要な書類作成をやさしくサポート!口座とのデータ連携によって転記作業も不要になり、入力ミスも大幅に削減します。

freee会計の電子申告で簡単・ミスなく・確実に