人事労務の基礎知識

失業保険(失業手当)のもらい方とは?条件や期間・金額を解説

公開日:2023/07/18

失業保険(失業手当)のもらい方とは?条件や期間・金額を解説

失業保険とは、離職後から再就職までの間、安定した生活を送りながら再就職活動を進められるよう、給付や職業紹介を通じて求職者を支援する制度です。

本記事では失業保険に関する注意点を含め、受給できる条件や手続きの方法、受給可能な日数や金額の計算方法についても詳しく解説します。

目次

労働保険の手続きや保険料の計算がラクに

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失業保険とは?

失業保険の正式名称は「雇用保険」です。失業保険とは、離職後から再就職までの間、安定した生活を送りながら再就職活動を進められるよう、給付や職業紹介を通じて求職者を支援する制度です。

雇用保険は公的な保険制度のひとつであり、加入者が失業した場合や自己都合により退職した場合などに、失業手当といわれる「基本手当」を受け取れます。
また、突然の解雇や予期せぬ倒産により離職せざるを得なかった離職者については、一般の離職者よりも給付日数や受給要件などについて免除や緩和などの措置もあります。

【関連記事】
社会保険と雇用保険の違いは?内容や加入条件の違いについて解説

失業保険を受け取れる条件

失業保険を受け取るためには、すぐに働ける能力があり、働く意思があるにも関わらず失業している状態であることが前提です。

そのため、ケガや出産などで、すぐに就職することが困難な状態であったり定年後の休養や結婚後の家事専念により、しばらく就職をしないのであれば失業手当は支給されません。
また、離職日前に勤務先で雇用保険に加入していなければ受給資格自体がなく、失業保険の支給には、離職の状況によって決められた加入期間が必要です。

失業保険が受け取れる離職者は、離職状況によって分けられており「一般被保険者」「特定受給者」「特定理由資格者」の3つがあります。

失業保険を受け取れる条件は離職状況により以下のように異なります。

一般被保険者は、以下2つどちらにも当てはまる場合に失業保険が支給されます。

一般保険者の場合

  1. いつでも就職できる能力があるが、本人やハローワークの努力によっても職業につけず「失業の状態」にある
  2. 離職の日以前2年間、被保険者期間(雇用保険の加入期間)が通算して12ヶ月以上ある

特定受給資格者は、以下の2つのどちらにも当てはまる場合に、失業保険の給付日数など考慮してもらいながら支給されます。

特定受給資格者の場合

  1. 倒産や解雇などの状況により離職した
  2. 離職の日以前1年間、被保険者期間(雇用保険の加入期間)が通算6ヶ月以上ある

ここでいう倒産とは、勤務先の移転・営業停止・短期間で大量の離職者が出たなど、物理的や状況的に離職せざるを得ない場合を指します。また、解雇とは散職者の責任ではない理由で離職させられた、または離職せざるを得なかった場合に適応されます。

特定理由離職者は、以下の2つのどちらにも当てはまる場合に、失業保険の給付日数など考慮してもらいながら支給されます。

特定理由離職者の場合

  1. 労働契約更新の合意を得られなかった、または、正当な理由においての自己都合による退職
  2. 離職の日以前1年間、被保険者期間(雇用保険の加入期間)が通算6ヶ月以上ある

正当な理由とは、体力や心身の障害や疾病、家族の看護など家庭事情の急変、通勤が困難な状況になるなど、離職者を取り巻く環境の変化によって離職を選ばざるを得ない場合をいいます。


出典:ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」

失業保険に含まれる給付の種類

失業保険に含まれる給付の種類を大きく分けると次の3つがあります。

  • 基本手当
  • 就業促進給付
  • 教育訓練給付金

離職者の状況によって変わる給付の対象や内容の違いを、種類ごとに解説します。

基本手当

「基本手当」は失業中の生活を支え、再就職を促進するための給付です。一般被保険者の給付日数については、離職時の年齢・被保険者期間・離職の理由などによって、90日〜360日の間で決められます。

特定受給資格者と特定理由離職者についての給付日数は一般被保険者より多く設定されています。

就業促進給付

「就業促進給付」は再就職後に受けられる手当で、以下の4つの手当があります。

就業促進給付の手当の種類

  • 再就職手当
  • 就業促進定着手当
  • 就業手当
  • 常用就職支度手当

「再就職手当」は、基本手当の受給資格がある中、所定給付日数の3分の1以上残る段階において安定した職に就けた場合に、一定の条件のもとで支給される手当です。

「就業促進定着手当」は、「再就職手当」の支給を受けた人が再就職先に6ヶ月以上継続して雇用され、かつ1日の賃金が離職前(雇用保険給付を受ける以前)に比べて低下している場合において給付されます。

「就業手当」は、基本手当の受給資格がある中、所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上残る段階において、再就職手当の支給対象とならない形で再就職した場合に、一定の条件のもとで支給される手当です。

「常用就職支度手当」は、基本手当の受給資格がある中、所定給付日数の3分の1未満である場合や高年齢受給資格者・特例受給資格者・日雇い受給資格者の4タイプが対象です。そして、対象となる4タイプの中から障害などで就職が困難でありながらも安定した職業に就いた場合、一定の条件のもとで支給されます。

教育訓練給付金

「教育訓練給付金」には、以下の4つの給付があります。

  • 一般教育給付金
  • 専門実践教育訓練給付金
  • 特定一般教育給付金
  • 教育訓練支援給付金
    (※令和7年3月31日までの時限措置)

教育訓練給付金は、離職者だけではなく、一定の要件を満たす雇用保険の被保険者(在職者)も対象です。

「一般教育給付金」

一般教育給付金は、専門実践教育訓練や特定一般教育訓練に該当しない、教育訓練が対象です。

対象者

  • 受講開始日に雇用保険の支給要件期間が3年以上(初回支給は1年以上)ある
  • 被保険者資格を喪失した離職翌日以降、1年以内である
  • 前回の教育訓練の受講から3年以上経過している

支給額
一般教育給付金の支給額は教育訓練費の20%(上限10万円)

「専門実践教育訓練給付金」

専門実践教育訓練給付金は、中長期的な視点でキャリア形成に役立つ専門的な教育訓練が対象です。

対象者

  • 受講開始日に雇用保険の支給要件期間が3年以上(初回支給は2年以上)ある
  • 被保険者資格を喪失した離職翌日以降、1年以内(延長がない場合)である
  • 前回の教育訓練の受講から3年以上経過している
    ただし、雇用保険期間が初回支給であれば2年以上

支給額
専門実践教育訓練給付金の支給額は教育訓練費の50%(上限120万円)

「特定一般教育給付金」

特定一般教育給付金は再就職やキャリア形成を早期に進めるために有用な教育訓練が対象です。支給対象者は「一般教育給付金」と同様ですが、一般教育訓練に比べて、キャリアアップや就職しやすい講座として指定されているため、給付率が高くなっています。

また、専門実践教育訓練は中長期的な視点での教育訓練ですが、特定一般教育給付金は、キャリアアップや就職に、すぐに結びつきやすい教育訓練です。

対象者

  • 受講開始日において雇用保険の支給要件期間が3年以上(初回支給は1年以上)ある
  • 被保険者資格を喪失した離職翌日以降、1年以内(延長がない場合)である
  • 前回の教育訓練の受講から3年以上経過している

特定一般教育訓練給付金の支給額は、教育訓練経費の40%(上限20万円)

「教育訓練支援給付金」

教育訓練支援給付金は令和7年3月31日までの時限措置としての制度です。

対象者

  • 45歳未満の離職者
  • 専門実践教育訓練給付金の対象である
  • 教育訓練支援給付金の受給資格が決定される以前に離職となり、雇用保険に加入していない、または教育訓練給付を受けた経験がない

教育訓練支援給付金の支給額は、基本手当日額の80%(1日あたり)

失業保険で受け取れる金額の計算方法

失業保険で受け取れる1日あたりの金額を「基本手当日額」といいます。基本手当日額は離職前6ヶ月の月収や離職時の年齢によって給付率が変わります。

基本手当日額の計算方法は以下のとおりです。

基本手当日額の計算方法

基本手当日額の計算方法


  • 離職直前の半年の月給(賞与除く)÷ 180(6ヶ月×30日)=賃金日額
  • 賃金日数 × 給付率=基本手当日額

離職時の年齢が60歳〜64歳の場合は、下記2つの計算式に当てはめ、低いほうの金額


  • 基本手当日額=0.8×賃金日額-0.35×{(賃金日額-5,030)÷6,090}×賃金日額
  • 基本手当日額=(0,05×賃金日額)+4,448

上述したように、離職時の月収や年齢によって、次のように基本手当日額と賃金日額の上限額について定められています。


受給年齢
(離職時)
賃金日額
(w円)
給付率基本手当日額
(y円)
基本手当日額
上限額
29歳以下2,657円以上
5,030円未満
80%2,125円
~4,023円
5,030円以上
12,380円以下
80%~50%4,024円
~6,190円
12,380円超
13,670円以下
50%6,190円
~6,835円
6,835円
30歳~44歳2,657円以上
5,030円未満
80%2,125円
~4,023円
5,030円以上
12,380円以下
80%~50%4,024円
~6,190円
12,380円超
15,190円以下
50%6,190円
~7,595円
7,595円
45歳~59歳2,657円以上
5,030円未満
80%2,125円
~4,023円
5,030円以上
12,380円以下
80%~50%4,024円
~6,190円
12,380円超
16,710円以下
50%6,190円~8,355円8,355円
60歳~64歳2,657円以上
5,030円未満
80%2,125円
~4,023円
5,030円以上
11,120円以下
80%~45%4,024円
~5,004円
11,120円超
15,950円以下
45%5,004円
~7,177円
7,177円
出典:厚生労働省「雇用保険の基本手当(失業給付)を受給される皆さまへ」

基本手当日額の計算例

例:離職時の年齢30歳/控除前の給与総支給額(賞与のぞく)30万円

基本手当日額の計算例

離職直前の半年の月給(賞与除く)÷ 180(6ヶ月 × 30日)=賃金日額

(30万円 × 6ヶ月)÷ 180 = 10,000円(賃金日額)

給付率が80%〜50%に該当するため、下記の計算式に当てはめて計算します。

基本手当日額 = 0.8 ×賃金日額 - 0.3 × {(賃金日額 - 5,030) ÷ 7,350}×賃金日額

0.8 × 10,000円 - 0.3 × {(10,000円 - 5,030) ÷ 7,350} × 10,000円
=8,000円 - 2,028円
=5,972円

基本手当日額 = 5,972円

失業保険を受け取れる日数および期間

雇用保険の受給期間は、原則、離職した次の日から1年間です。所定給付日数が330日であれば1年と30日となり、所定給付日数が360日であれば1年と60日です。

もし、所定給付期間に病気や出産などにより30日以上働けない状況になった場合は、働けない期間分受給期間を最大3年まで伸ばすことが可能です。

また、所定給付日数330日と360日においての最長期間は3年30日と3年60日です。

受給期間中であれば申請することで延長が可能ですが、早期申請が原則となります。申請は管轄のハローワークで行いますが、、郵送や代理人による申請でも問題ありません。

給付日数は、年齢や被保険者であった期間によって異なります。

雇用保険の
加入期間
~1年
未満
1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
30歳未満90日90日120日180日
30歳~34歳120日180日210日240日
35歳~44歳150日180日240日270日
45歳~59歳180日240日270日330日
60歳~64歳150日180日210日240日

失業保険を受け取る際の手続き

失業保険を受け取る際の手続きの流れ

失業保険を受ける際の手続きの流れは以下のとおりです。

失業保険を受け取る流れ

  1. 離職時に事業主から、離職票-2(3枚複写の3枚目)と必要書類をもらう
  2. 「離職理由」などの必要事項を交付された離職票-2(3枚複写の3枚目)に記入後、所轄のハローワーク(または地方運輸局)に必要書類と共に提出
  3. 所轄のハローワーク(または地方運輸局)から、受給資格決定の通知をもらう
  4. 受給説明会に参加し、認定日に提出する必要書類を受け取る
  5. 必要回数の求職活動を行う
  6. 4週に1回、ハローワークの窓口に行き、失業の認定を受ける
  7. 失業保険(基本手当)を受け取る

離職証明書の提出など、会社が行う雇用保険関連の手続き

事業主は従業員から退職の意思を受けた場合、「雇用保険の資格喪失届」「雇用保険被保険者離職証明書」を作成しなければなりません。

離職した日から、10日以内に雇用保険被保険者資格喪失届と雇用保険被保険者離職証明書(離職証明書)を所轄のハローワーク(または地方運輸局)に提出します。

労働者名簿・タイムカードもしくは出勤簿・賃金台帳・退職理由を確認できる退職届も添付しましょう。離職票の記載が正しいかの確認書類として必要です。

事業主が期日以内に手続きを済ませなかったり、離職者から請求されているにも関わらず離職票を発行しなかったりすることは雇用保険法違反です。6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

【関連記事】
離職票・退職証明書とは?概要や離職証明書との違いをわかりやすく解説

失業保険に関する注意点

失業保険では受給期間中にアルバイトをしていたなど、虚偽の発言や行為があった場合、受給したお金を返すだけではなく、それ以上の返還を求められる可能性もあります。 たとえ知らずにしてしまったとしても罰則を受ける場合があるため、注意点を解説します。

不正受給をした場合

どのような理由があろうと、働いたことを申告せずに手当を受けたり嘘の申告をしたりするなどの不正な行為をすると、現実に給付を受けたかに関わらずすべて不正受給とみなされます。

不正受給をすると、給付金を受ける権利をすべてなくします。不正行為とされるのは、主に次の7つです。

不正受給と判断される例

  1. 就職・就労の申告もれ(収入がなくても申告が必要)
  2. 就職日や求職活動の実績を偽って申請
  3. 内職・手伝いをしたこと。得た収入の申告漏れ
  4. 自営業を始めた、または準備をしたが申請しない
  5. 名義だけだとしても役員や顧問、非常勤にて就任の申告漏れ
  6. 雇用保険と重複して受け取れない労災保険や休業補償給付などを受けた
  7. 就職ができる状態ではないことを申告しなかった

求職活動の実態がなければ失業保険は受け取れない

4週間に1回、失業認定を行う日に求職活動の実態がない場合、失業保険は受け取れません。求職活動活動として認められるのは、主に次の5つです。

求職活動と認めらる活動

  • 求人への応募
  • ハローワーク開催のセミナー・職業相談・紹介
  • 届け出や許可のある民間事業者が開催するセミナー・職業紹介・相談
  • 公的機関が開催するセミナー・職業相談・紹介
  • 再就職に役立つ国家試験や検定など

出典:愛知ハローワーク「求職活動について」

基本手当を受けるには、次の認定日の前日までに上記の求職としてみなされる活動を2回以上行うことが必要です。

ただし、応募書類郵送・筆記試験・面接の選考過程や認定対象期間が7日以上14日未満となる場合や、障害などで就職困難な受給資格者は、1回以上の求職活動があれば失業認定されます。

まとめ

失業保険は生活を安定させながら再就職への活動ができるだけではなく、教育訓練によってさらなるキャリアアップを目指すことも可能です。

また、一定の条件に当てはまれば再就職後の支援もあります。ただし、不正に受給しようとすれば、受給額の返還だけでなくペナルティを課される可能性もあります。

しっかりと求職活動をしながら再就職に役立つ資格や検定にも挑むなど、再就職に向けて失業保険をうまく活用しましょう。

よくある質問

失業保険の受給日数は?

基本手当の所得給付日数は、雇用保険の加入期間と年齢や離職理由で決まります。

詳しくは、記事内の「失業保険を受け取れる日数および期間」にて、ご覧ください。

失業保険はいくらもらえる?

正確な金額は離職票に基づいて計算されますが、控除前の給与総支給額(賞与除く)からのおおまかな目安は次のとおりです。

  • 平均月額15万:月額約11万
  • 平均月額20万:月額約13.6万(離職時60歳~65歳未満は月額約13万)
  • 平均月額30万:月額約16.5万(離職時60歳~65歳未満は月額約13.5万)

計算式など詳しくは記事内の「失業保険で受け取れる金額の計算方法」にて、ご覧ください。

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