確定申告の基礎知識

元入金とは?計算方法から仕訳、マイナス時の対策までわかりやすく解説【2025年最新版】

監修 好川寛 プロゴ税理士事務所

元入金とは?計算方法から仕訳、マイナス時の対策までわかりやすく解説【2025年最新版】

元入金とは、個人事業主が事業のために用意した元手を示す勘定科目です。青色申告で貸借対照表を作成する際に必須となりますが、計算方法が複雑な上、事業の状況によってはマイナスになることもあり、処理に戸惑う方も少なくありません。

本記事では、個人事業主として知っておきたい元入金の基本的な考え方から、具体的な計算・仕訳方法、そして元入金がマイナスになった際の適切な対処法までをわかりやすく解説します。

目次

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元入金とは何か

元入金(もといれきん)とは、個人事業主が事業を始めるために最初に用意した元手となるお金や資産のことです。事業用の運転資金だけでなく、パソコンや車といった事業に使う備品なども含まれます。

これは、事業という名前の独立した貯金箱のようなものです。最初に事業主自身がその貯金箱に入れたお金が元入金にあたります。

会計上、元入金は事業の純粋な資産(純資産)を表します。これは、事業がもつすべての資産(預金・備品など)から、すべての負債(借入金・買掛金など)を差し引いた残りの金額です。つまり、誰かに返す必要のない、事業が本当に所有している財産がいくらあるかを示す数値といえます。

元入金・事業主貸・事業主借の関係性

元入金がどのように増えたり減ったりするのかを理解するために、「お金のバスタブ」をイメージしてみてください。この3つの勘定科目の関係性は、バスタブへの給水と排水にたとえることができます。

元入金・事業主貸・事業主借の関係性

元入金:バスタブに溜まっている水の量
現在の元入金の残高は、バスタブに溜まっている水の量、つまり事業がもつ純粋な資産の量を示します。

利益・事業主借:蛇口から注がれるお湯
蛇口からお湯が注がれると、バスタブの水位が上がります。これと同じように、事業で利益が出たり、事業主が個人のお金を事業に追加(事業主借)したりすると、元入金は増加します。これらは資産を増やす要因です。

事業主貸:排水口から抜けていく水
排水口から水が抜けると、水位は下がります。同様に、事業主が事業用のお金を生活費などプライベートな目的で引き出す(事業主貸)と、元入金は減少します。これは資産を減らす要因です。

この関係性から、「事業主貸」(排水)の金額が、「年間の利益」(給水)の金額を上回ると、元入金(水位)は減少します。

もしその状態が続き、元々溜まっていた水の量以上に水が抜けてしまうと、バスタブは空になり、元入金はマイナスになります。

【関連記事】
事業主貸とは?事業主借との違いや仕訳方法、具体例を解説

資本金との違い

元入金は法人の「資本金」に相当するものですが、会計上の性質や扱い方が異なります。個人事業主として活動するうえで、この違いを理解しておくことが重要です。

主な違いは、「金額が毎年変動するかどうか」と「利益が合算されるかどうか」という点です。


比較ポイント元入金(個人事業主)資本金(法人)
金額の変動毎年の損益や事業主貸・借によって毎年変動します。増資や減資といった法的な手続きを行わない限り、基本的に固定される。
利益の扱いその年の損益は、翌年の元入金に合算される。その年の利益は「利益剰余金」として扱われ、資本金とは区別される。
マイナスの可能性事業が赤字の場合など、マイナスになることがある。資本金がマイナスになることはない。

元入金の計算方法

元入金は期末の決算時に、その年の事業活動の結果を反映して金額を更新します。翌期のスタートラインとなる元入金の金額は、以下の計算式で算出されます。

  • 期末の元入金 = 期首の元入金 + 事業主借 - 事業主貸 + 当期純利益

この計算式に具体的な数字を当てはめてみましょう。


元入金の計算例

  • 期首の元入金: 1,000,000円
  • 当期純利益(青色申告特別控除前): 3,000,000円
  • 事業主借(事業主が個人資金を追加した額): 500,000円
  • 事業主貸(事業主が生活費などで引き出した額): 2,000,000円

上記のケースでは、期末の元入金は以下のようになります。

1,000,000円 + 500,000円 - 2,000,000円 + 3,000,000円 = 2,500,000円

この2,500,000円が、翌期の期首元入金となります。

元入金の仕訳方法

元入金の勘定科目を使って仕訳を行うのは、主に「開業時」と「決算時」の2つのタイミングです。ここでは、それぞれの仕訳方法を具体例とともに解説します。

開業時の仕訳

事業を始めるにあたり、事業用の銀行口座に自己資金を入金した場合の仕訳です。

【例】事業用口座に自己資金100万円を入金して事業を開始した。

借方金額貸方金額
普通預金 1,000,000円元入金 1,000,000円

このとき、摘要欄には「開業資金」と記載しておくと、後で見返した際に分かりやすいです。

決算時の繰越処理

決算日(個人事業主の場合は12月31日)には、その年の事業活動の最終結果を元入金に合算するための「繰越処理」を行います。この処理が必要な理由は、損益や事業主貸・借といったその年だけの数値をリセットし、翌年を新たな状態でスタートさせるためです。

処理は、以下の2ステップで行います。

ステップ①:その年の利益(または損失)を元入金に振り替える

まず、損益計算書で確定したその年の利益(または損失)を元入金勘定に振り替えます。

【例】当期純利益300万円を元入金に振り替えた。

借方金額貸方金額
損益 3,000,000円元入金 3,000,000円

ステップ②:事業主貸と事業主借を元入金に振り替える

次に、期中に発生した事業主借と事業主貸の残高を元入金に振り替えて、両方の勘定科目をゼロにします。

【例】年間の事業主借50万円と事業主貸200万円を元入金に振り替えた。

借方金額貸方金額
事業主借 500,000円元入金 500,000円
元入金 2,000,000円事業主貸 2,000,000円

これらの処理を経て、元入金の期末残高が確定し、翌期の帳簿へと引き継がれます。

元入金がマイナスになる原因と対処法

元入金がマイナスになること自体は違法ではありませんが、事業の財務状況を示すサインでもあります。ここでは、その原因を正しく理解し、具体的な対処法を解説します。

マイナスになる主な2つの原因

元入金がマイナスになる原因は、主に2つです。「お金のバスタブ」で考えると、蛇口から注がれるお湯(利益・事業主借)よりも、排水口から出ていく水(経費・事業主貸)が多くなっている状態です。

元入金がマイナスになる主な2つの原因

  1. 事業の赤字

    売上から経費を差し引いた利益がマイナス、つまり赤字の状態です。バスタブにたとえるなら、そもそも蛇口から出てくるお湯の量が少なく、経費として出ていく水の量をまかなえていないため、水位(元入金)が下がってしまいます。
  2. 事業主貸の増加

    事業で利益が出ていても、事業主が生活費などで引き出す「事業主貸」の金額がその利益を上回っている状態です。バスタブの蛇口から十分なお湯が出ていても、排水口がそれ以上に大きく開いていれば、水位(元入金)は減ってしまいます。

マイナスのままだとどうなる?

元入金がマイナスのまま確定申告をしても、税務上の罰則はありません。しかし、第三者からの信用という観点では注意が必要です。

金融機関から融資を受ける際、決算書の提出を求められます。その際に元入金がマイナスだと、資産よりも負債が多い状態、あるいは事業資金の管理がうまくいっていないと見なされ、

融資審査で不利になる可能性があります。金融機関によっては「経営管理能力が低い」という印象を与えかねません。

マイナスを解消する具体的な仕訳方法

元入金のマイナスは、事業に個人の資金を追加投入することで解消できます。具体的には、「事業主借」という勘定科目を使って仕訳を行います。

このように帳簿付けをすることで、期末の決算処理の際に元入金と相殺され、マイナスを解消できます。

【例】個人の預金から事業用の口座に50万円を補充した。

借方金額貸方金額
普通預金 500,000円事業主借 500,000円

この仕訳により「事業主借」が増え、決算時に元入金を増加させる要因となります。これにより、計算上のマイナスを解消することが可能です。

元入金をマイナスにしないための管理方法

元入金のマイナスは、個人の資金を投入すれば解消できます。しかし、より重要なのは、そもそもマイナスにしないための予防策です。

ここでは、どんぶり勘定から脱却し、健全な財務状況を維持するための具体的な資金管理術を3つ紹介します。

事業用とプライベート用の口座・クレジットカードを完全に分ける

個人事業主の資金管理における最も効果的で、すぐに始められる第一歩は、事業とプライベートの銀行口座やクレジットカードを明確に分けることです。お金の流れが混ざってしまうことが、どんぶり勘定の根本的な原因となります。

口座を分けることで、以下のような具体的なメリットが生まれます。

口座を分けるメリット

  • 経費の計上漏れがなくなる
  • 確定申告の作業が劇的にラクになる

「事業主貸」に上限ルールを設ける

個人事業主には法人における「役員報酬」のような給与の定めがありません。そのため、事業用の資金を無計画に生活費などに充ててしまうと、利益が出ているにもかかわらず元入金がマイナスになることがあります。

これを防ぐために、「毎月〇〇万円まで」のように、事業から引き出す生活費(事業主貸)に自主的な上限ルールを設けましょう。これは、事業の利益の中から自分自身に給与を支払うという、法人の役員報酬に近い考え方です。この規律をもつことが、事業の持続可能性を大きく高めます。

定期的に貸借対照表をチェックする習慣をつける

問題の早期発見には、定期的な財務状況のチェックが不可欠です。会計ソフトなどを活用し、「月に一度」など頻度を決めて貸借対照表を確認する習慣をつけましょう。

特に注目すべきは「純資産の部」にある元入金の金額です。「お金のバスタブ理論」でいうところの「バスタブの水位」が、危険なレベルまで減っていないかをモニタリングすることが重要です。これにより、マイナスに陥る前の段階で資金繰りの問題に気づき、早めに対策を打つことができます。

まとめ

元入金の金額は、その年の損益や、事業用資金と個人資金のやり取り(事業主貸・事業主借)によって毎年変動します。これは事業の財務状況を示す重要な指標であり、正確な青色申告のためにも、その仕組みを正しく理解しておくことが不可欠です。

日々の記帳を正確に行い、適切な決算整理を行いましょう。もし、複雑な計算や繰越処理に不安がある場合は、会計ソフトを導入したり、税理士といった専門家に相談したりすることも有効な選択肢です。

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よくある質問

開業時の元入金はいくらに設定するのが適切ですか?

法律上の決まりはなく、0円で事業を始めることも可能です。しかし、事業が軌道に乗るまでの運転資金として、事業開始に必要な初期費用に加えて、3〜6ヶ月程度の経費をまかなえる金額を目安に設定することをおすすめします。

詳しくは「開業時の仕訳」で解説しています。

元入金が多すぎることによるデメリットはありますか?

個人事業主の場合、元入金が多すぎることによる税務上のデメリットは特にありません。むしろ、元入金が多いことは自己資本が潤沢であることを意味し、金融機関からの融資審査などでは、事業の安定性を示すポジティブな要素として評価される可能性があります。

詳しくは「元入金とは何か」で解説しています。

白色申告の場合、元入金の処理は必要ですか?

必須ではありません。白色申告では、元入金を記載する貸借対照表の提出義務がないためです。そのため、開業資金を元入金ではなく「事業主借」として処理することも可能です。

詳しくは「元入金の仕訳方法」で解説しています。

参考文献

監修 好川寛(よしかわひろし)

プロゴ税理士事務所。元国税調査官。国税(調査・相談2万件・審判実務)×民間(事業会社実務・PdM)の複眼的な視点が強み。クリエイター/IT・SaaS等の現代的ビジネス、海外取引・非居住者税務に明るい。

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