公開日:2017/09/18
最終更新日:2021/04/01

個人事業主の生活費は、経費として扱うことはできません。個人事業主が、事業で得られた売上を生活費として個人的に使った場合、「事業主貸」の勘定科目で計上する必要があります。
また、個人事業主は、家族が従業員として働いている場合、家族への給与も経費として扱うことができません。しかし、個人事業主が青色申告を行う場合は、家族に支払った給与を「専従者給与」として経費計上できます。
本記事では、個人事業主の生活費の扱い方や帳簿に記帳する際の仕訳方法のほか、個人事業主が青色申告を行った際に受けられる「青色事業専従者給与の特例」についてご紹介します。
目次
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個人事業主は自身の報酬やプライベートで使ったお金を経費にできない

法人の場合、経営者の給与は「人件費」に該当するため経費として扱うことができます。しかし、個人事業主においては、自身への報酬を経費として扱うことができません。
同様に、個人事業主が事業所得を生活費などプライベートで使った場合も、経費として扱うことができません。そのため、簿にプライベートで使ったお金について記帳するときは、事業で使ったお金と明確に区別することが大切です。
プライベートと事業のお金を分ける事業主勘定
個人事業主が、経費として扱うことができない生活費など、プライベートで使ったお金を帳簿上で処理するときは、「事業主勘定」を使います。
事業主勘定とは、個人事業主がプライベートで使ったお金と、事業の必要経費とを明確に区分して記帳することで、所得税を正しく計算できるようにするために設けられた勘定科目です。
事業主勘定は、お金をどうやりとりしたかによって、「事業主借」と「事業主貸」の2つを使います。事業主貸と事業主借は、事業主にお金を借りたのか、貸したのかという違いです。
個人事業主が事業の必要経費を自分のお金で支払ったり、自分のお金を事業資金に充当したりした場合は、「事業のお金を、事業主に借りた」と考えることができるため、そのお金の勘定科目は事業主借になります。
一方、個人事業主が事業用のお金を、生活費などプライベートで使ったときは、「事業のお金を、事業主に貸した」と考えることができるため、そのお金の勘定科目は事業主貸となるのです。
自分への報酬を給与所得として経費計上したいなら法人化を検討
事業主の方が、事業所得のうち自分への報酬を給与として経費計上したいという場合は、個人事業から法人成りする方法があります。法人化すれば、事業主への給与も経費として計上することが可能です。
個人事業から法人成りする方法やメリットについては、関連記事を参照してください。
【関連記事】
個人事業主が法人化(法人成り)するメリット・デメリットとは?
【2021年】個人事業か?会社か?個人事業開業と会社設立の手続き 税金比較
個人事業主が生活費を帳簿に記帳するポイント
続いては、個人事業主が生活費を帳簿に記帳する際のポイントをご紹介します。
生活費と経費が明確でない場合の帳簿の書き方や、生活費の管理の仕方についてもご紹介しましょう。
個人事業主の生活費は「事業主貸」に仕訳する
まずは、実際に個人事業主が事業用資金を生活費に使った場合、帳簿でどのように処理を行うべきなのかを解説します。
例えば、事業用の普通預金から生活費10万円を引き出した場合と、事業用の現金10万円を生活費に回した場合は、下記のとおりに記帳します。
■事業用の普通預金から生活費10万円を引き出した場合
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
20●●年●月●日 | 事業主貸 100,000 | 普通預金100,000 | 個人の生活費 |
■事業用の現金10万円を生活費に回した場合
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
20●●年●月●日 | 事業主貸 100,000 | 現金100,000 | 個人の生活費 |
なお、事業主貸が発生したときは借方に、事業主借が発生したときは貸方に記帳するのがルールです。
ちなみに、事業主貸という勘定科目は、帳簿上、経費ではなく「資産」に分類され、所得税の計算には影響しません。
事業とプライベートの費用を明確に分ける
個人事業主の中には、自宅を仕事場にしている方もいるでしょう。
仕事場が自宅を兼ねている場合、家賃や水道光熱費、通信費などについて、事業用として使用している分とプライベートで使用している分を合理的に分けて、事業用として使用している分を必要経費として計上することが可能です。これを、「家事按分」と呼びます。
家事按分する場合、事業に必要な部分を明らかに区分する必要があるため、家賃であれば事業用とプライベート用、それぞれの床面積の使用割合を、電気代であれば使用時間を目安に按分比率を決めるのが一般的です。
例えば、自宅スペースの3割程度のスペースを仕事で使用している場合、家賃を家事按分すると「事業3:プライベート7」となります。この場合、家賃が10万円として、30%にあたる3万円が必要経費、70%にあたる7万円がプライベートな生活費であるとみなすことが可能です。
この家賃10万円が事業の口座から引き落とされる場合は、3万円を「地代家賃」、残りの7万円は「事業主貸」として帳簿に記帳します。なお、経費が発生したときは、借方に記帳するのがルールです。
■家賃を事業用の普通預金口座から支払った場合(按分比率:30%)
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
20●●年●月●日 | 地代家賃 30,000 | 普通預金 100,000 | 自宅兼事務所の家賃 (按分比率:30%) |
事業主貸 70,000 |
また、家賃10万円がプライベートの口座から引き落とされた場合は、経費については上記と同様に「地代家賃 30,000」と記帳して、貸方に「事業主借 30,000」と記帳します。なお、プライベートな出費である7万円については、事業とは関係ないので記帳の必要はありません。
■家賃をプライベート用の普通預金口座から支払った場合(按分比率:30%)
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
20●●年●月●日 | 地代家賃 30,000 | 事業主借 30,000 | 自宅兼事務所の家賃 (按分比率:30%) |
個人事業主がつける帳簿のひとつである「仕訳帳」の書き方について、詳しくは関連記事を参照してください。
【関連記事】
仕訳帳作成のための基礎知識
個人事業主が生活費を管理する方法
法律上、個人事業主は事業に使う口座と、生活費に使う口座とを分ける必要はありません。個人事業主は、仕事で稼いだお金で食事するなど、事業の売上を必要に応じて生活費として使うことが可能です。
しかし、事業のお金をプライベートで自由に使いすぎて赤字になったり、資金繰りが厳しくなったりするリスクもあります。そのため、毎月一定額を生活費にするというルールを決めて、必要に応じて生活費の額を調整するのがおすすめです。
確定申告時の事業主貸と事業主借の会計処理

引用元:国税庁
確定申告で青色申告を行う場合、青色申告決算書を作成し、確定申告書などとともに提出する必要があります。青色申告決算書の4ページ目の貸借対照表には、事業主貸と事業主借の金額を記載する欄があるので、それぞれ集計した金額を記帳しましょう。
また、その年の決算を終え、次の年に帳簿づけをスタートする際には、事業主借と事業主貸が0になっている必要があります。そのため、確定申告時には事業主借と事業主貸を相殺したのち、残高の差額を「元入金」に振り替える作業を行います。
元入金とは個人事業主のみが使用する勘定科目であり、個人事業主が開業するにあたって、あらかじめ用意した開業資金や準備金のことです。元入金は法人での資本金にあたりますが、金額が毎年変わるという点で資本金とは異なります。
事業が赤字であったり、売上の多くを生活費として使ってしまったりした場合、元入金がマイナスになることがあります。元入金がマイナスでも帳簿上では問題ありませんが、銀行から借り入れをしたいときにスムーズに借りられない可能性もあるので注意しましょう。
なお、翌期首の元入金の額は、下記の計算式で算出します。
翌期首の元入金の額=事業主借の期末残高+元入金の期末残高+青色申告特別控除前の所得金額-事業主貸の期末残高
翌期首の元入金を、下記のケースで具体的に計算してみましょう。
<今期末の帳簿>
・事業主貸の期末残高:600万円
・事業主借の期末残高:200万円
・元入金の期末残高:100万円
・青色申告特別控除前の所得金額:100万円
事業主借の期末残高(200万円)+元入金の期末残高(100万円)+青色申告特別控除前の所得金額(100万円)-事業主貸の期末残高(600万円)=翌期首の元入金の額(-200万円)
翌期首の元入金の額は-200万円になるため、翌期首の帳簿は、事業主貸や事業主借は0円、元入金は-200万円としてスタートすることになります。なお、会計ソフトを利用すれば、事業主貸と事業主借の合計金額や元入金が、自動で計算されます。
事業主貸と事業主借は、どのようなときに使う?
続いては、どのようなときに事業主貸、事業主借を使うことになるのか、それぞれの具体例を見ていきましょう。また、事業用の現金やクレジットカードから、生活費の出費にあてた場合の仕訳の方法もご紹介します。
事業主貸を使うケース
事業主貸を使うケースとしては、事業用のお金を生活費や事業とは関係のない出費にあてた場合が挙げられます。
<事業主貸を使う例>
・事業用の口座から生活費を引き出した
・現金売上を生活費に使った
・事業用のクレジットカードで生活用品を購入した
・事業用の口座から国民年金保険料や所得税、住民税を支払った
例えば、事業用の普通預金口座から生活費のために5万円を引き出した場合、帳簿には下記のように記帳します。
■事業用の普通預金口座から5万円を引き出した場合
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
20●●年●月●日 | 事業主貸 50,000 | 普通預金 50,000 | 個人の生活費 |
また、事業用のクレジットカードを使って、個人的な買い物をすることもあるでしょう。その場合も、事業主貸を使用して帳簿上の処理を行います。
■事業用のクレジットカードで個人的な買い物をした場合
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
20●●年●月●日 | 事業主貸 10,000 | 未払金10,000 | 個人の買い物のため支出 |
事業主借を使うケース
事業主借を使うケースとしては、個人のお金から事業用の支払いを行ったり、事業用の口座に入金したりした場合などが挙げられます。
<事業主借を使う例>
・個人のお金を事業資金に充当した
・個人用のクレジットカードで事務用品を購入した
・仕事の交通費を個人のお金で支払った
・事業用の口座に売上以外の入金をした
例えば、個人の生活費から3万円を事業用の普通預金口座に入金した場合は、下記のように事業主借の勘定科目で仕訳します。
■個人の生活費から3万円を事業用の普通預金口座に入金した場合
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
20●●年●月●日 | 普通預金 30,000 | 事業主借 30,000 | 個人の生活費から事業用口座へ入金 |
青色申告なら配偶者や親族の給与を経費計上できる
確定申告を青色申告で行った方は、一定の要件を満たすことで「青色事業専従者給与の特例」を受けることができます。青色事業専従者給与の特例とは、生計をともにしている配偶者や親族への給与を経費として計上することができる制度です。青色事業専従者給与の特例を受けるには「青色事業専従者給与に関する届出書」を管轄の税務署に提出する必要があります。
なお、青色事業専従者給与の特例が適用となった場合、青色専従者給与について帳簿に記帳する際の勘定科目は「専従者給与」となります。
青色申告専従者給与の詳細については関連記事を参照してください。
【関連記事】
青色申告の専従者給与 家族への給与支払いで節税効果を高める方法
確定申告(青色申告)を簡単に終わらせる方法
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まとめ
事業用のお金から個人事業主の生活費として支出した場合は、勘定科目の事業主貸を使って帳簿の処理を行います。
帳簿をつけるときは、事業用のお金とプライベート用のお金は分けて管理することが必要です。個人事業主には会社員のような給与はありませんが、青色申告を行って、青色事業専従者給与の特例が適用されれば、生計をともにする配偶者や親族に支払う給与は経費として認められます。
青色申告に必要な複式簿記による記帳は面倒と思われがちですが、会計ソフトを使えば簡単に処理することが可能です。青色申告をスムーズに行いたい方には、「確定申告ソフトfreee」の活用をおすすめします。
よくある質問
Q1.「事業主貸」「事業主借」とは?
「事業主貸」と「事業主借」は個人事業特有の勘定科目です。事業用のお金を生活費に使ったときは「事業主貸」を使い、必要経費を個人のお金で支払ったときは「事業主借」を使います。
Q2.家事按分とは?
仕事場が自宅兼事務所である場合は、家賃や水道光熱費などで事業として使用する比率分を必要経費として計上することが可能です。これを「家事按分」といいます。
例えば、家賃の按分比率については、事業とプライベートのそれぞれで使用している床面積の割合を目安にするなど、合理的に決める必要があります。
Q3.事業主貸と事業主借の会計処理はどうすればいい?
確定申告時の会計処理では、その期の事業主貸と事業主借を相殺して、残額を元入金に振り替えることで、翌期首の事業主貸と事業主借を0にします。会計ソフトを使用している場合は、事業主貸と事業主借の金額は年が変わる際に自動的に計算され、「元入金」という勘定科目に集約されます。