監修 羽場 康高 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級

近年、将来に向けた資産形成のためにNISA口座を開設する人が増加しています。NISAとは、少額から投資ができる個人投資家向けの税制優遇制度です。
NISAで得た利益には税金がかからないため、原則として確定申告の必要はありません。ただし、配当金の受取方法などによっては、確定申告が必要となるケースもあります。
本記事では、NISAを利用している場合に確定申告が必要なケースや新旧NISAの違い、NISAの税金に関するポイント・注意点を解説します。
目次
- NISAとは
- 新NISAと旧NISAの違い
- 新NISA・旧NISAともに原則として確定申告が不要
- NISAでも確定申告が必要なケース
- 配当金を「株式数比例配分方式」以外の方法で受け取っている場合
- 旧NISAの非課税期間が終了して課税口座へ払い出された場合
- NISAを始める前に知っておくべきポイント・注意点
- 非課税枠の範囲内なら購入回数に上限はない
- 元本割れの可能性がある
- 非課税の場合は損益通算や繰越控除ができない
- NISAの利益は配偶者控除・扶養控除に影響しない
- ジュニアNISAは18歳未満でも非課税で引き出せる
- NISAの始め方
- 1.金融機関の口座を開設する
- 2.NISA口座を開設する
- 3.投資したい金融商品を選択して注文する
- まとめ
- 確定申告をかんたんに終わらせる方法
- よくある質問
NISAとは
NISA(ニーサ)とは、少額からの投資を行う個人投資家向けの「少額投資非課税制度」です。
通常、金融商品の利益には20.315%の税金(所得税等・住民税)がかかります。しかし、NISAは毎年一定額の範囲内で購入した金融商品から得た利益が非課税になる点が特徴です。
NISAの投資枠には「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の2つがあり、年間投資枠や投資対象商品などが異なります。成長投資枠では240万円、つみたて投資枠では120万円を上限として、年間合計360万円まで非課税での投資が可能です。
出典:金融庁「NISAを知る」
新NISAと旧NISAの違い
NISAには新NISAと旧NISAがあり、主な違いは以下の通りです。
項目 | 旧NISA | 新NISA | ||
---|---|---|---|---|
一般NISA | つみたてNISA | 成長投資枠 | つみたて投資枠 | |
併用 | 不可 | 可 | ||
年間投資上限額 | 120万円 | 40万円 | 240万円 | 120万円 |
非課税 保有限度額 | − | 1,800万円 (うち成長投資枠1,200万円) | ||
非課税保有期間 | 5年 | 20年 | 無期限 |
出典:金融庁「NISAを知る」
新NISAでは、旧NISAの一般NISAが「成長投資枠」に、つみたてNISAが「つみたて投資枠」に引き継がれ、両枠を併用できるようになりました。
また、18歳未満の未成年者向けの少額投資非課税制度としてジュニアNISAもありましたが、2023年12月末をもって廃止されました。
出典:金融庁「2023年までのNISA」
新NISA・旧NISAともに原則として確定申告が不要
NISA口座で運用して得た売却益や配当金・分配金は非課税となるため、原則として確定申告が不要です。
特定口座や一般口座で運用した場合、株式や投資信託で得た利益には20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税金が課され、原則として自身での計算・確定申告と納付が必要です。ただし、源泉徴収ありの特定口座では、申告不要制度を選択できます。
一方、NISAで得た利益は一定期間非課税になるため、原則として確定申告の必要がありません。
口座の種類 | 確定申告の要否 |
---|---|
一般口座 | 必要 |
特定口座(源泉徴収あり) | 原則不要 |
特定口座(源泉徴収なし) | 必要 |
NISA口座 | 不要 |
なお確定申告とは、1年間(1月1日~12月31日まで)の所得と、それに対する所得税額を計算し、税務署に申告・納税する手続きです。源泉徴収や予定納税で納めた税額が本来の税額より少なければ追加で納税し、払いすぎていれば還付されます。
出典:国税庁「No.2020 確定申告」
NISAでも確定申告が必要なケース
新NISA・旧NISAともに原則として確定申告は不要ですが、以下のいずれかに該当する場合は、確定申告が必要です。
NISAで確定申告が必要なケース
- 配当金を「株式数比例配分方式」以外の方法で受け取っている場合
- 旧NISAの非課税期間が終了して課税口座へ払い出された場合
制度を正しく理解し、申告漏れがないように確定申告を行いましょう。
配当金を「株式数比例配分方式」以外の方法で受け取っている場合
NISAで購入した上場株式の配当金などを非課税で受け取るには、証券会社での事前の手続きが必要です。配当金の受取方法として「株式数比例配分方式」を選択し、証券会社の取引口座で配当金を受け取ることが条件となります。
NISAで発生した配当金を「株式数比例配分方式」以外の下記の方法で受け取ると課税対象となり、確定申告が必要です(源泉徴収ありの特定口座では、申告不要制度を選択可能)。
NISAの利益を課税対象で受け取る方法
- 配当金受領証方式:ゆうちょ銀行や郵便局で受け取る
- 個別銘柄指定方式:指定の銀行口座で受け取る
配当金が課税対象となる受取方法にすると、確定申告においてほかの口座で発生した損失との損益通算などができるため、節税につながることもあります。
出典:一般社団法人 投資信託協会「NISAを検討されている方へ〜NISAの始め方」
出典:日本証券業協会「NISA口座における上場株式の配当金等受取方式に関する注意事項」
旧NISAの非課税期間が終了して課税口座へ払い出された場合
旧NISAでの運用を継続している場合、非課税期間終了後は自動的に課税口座(特定口座または一般口座)に払い出されるため、確定申告が必要となることがあります。非課税期間終了後、新NISAへの移管はできません。
旧NISAの非課税期間
- 一般NISA:最長5年
- つみたてNISA:最長20年
- ジュニアNISA:最長5年※
ただし、非課税期間終了前に売却すれば、確定申告は不要です。また課税口座のうち、特定口座(源泉徴収あり)に払い出された場合は、原則として確定申告の必要がありません。
※18歳になる前に非課税期間が終了した場合でも、 18歳になるまでは継続管理勘定で非課税のまま保有できます。
出典:金融庁「2023年までのNISA」
NISAを始める前に知っておくべきポイント・注意点
NISAは一定額の範囲内での投資によって得た利益が非課税になる制度ですが、注意点を把握せずに始めると税制上の優遇を十分に活かせない可能性があります。NISAで資産運用を始める前に、以下のポイント・注意点を理解しておきましょう。
NISAを始める際のポイント・注意点
- 非課税枠の範囲内なら購入回数に上限はない
- 元本割れの可能性がある
- 非課税の場合は損益通算ができない
- NISAの利益は配偶者控除・扶養控除に影響しない
- ジュニアNISAは18歳未満でも非課税で引き出せる
非課税枠の範囲内なら購入回数に上限はない
NISAでは、年間の非課税投資額が最大360万円(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円)と定められており、この範囲内であれば何度でも株式などを購入できます。
また新NISAでは、NISA口座で商品を売却すると、翌年以降に売却した商品の取得金額の分だけ非課税投資枠が復活します。
たとえば、100万円で購入した商品が120万円に値上がりした時点で売却すると、100万円分の非課税枠が翌年に復活するため、より柔軟な資産運用が可能です。
出典:金融庁「NISAを知る」
元本割れの可能性がある
NISAは投資であるため、購入した金融商品が購入時の価格を下回るリスクがあります。どのようなリスクがあるかを理解し、長期・分散・積立投資を心がけましょう。
また、旧NISAの非課税期間が経過し課税口座に払い出された場合、非課税期間の最終営業日の価格が課税口座での購入価格とみなされます。たとえば、購入時が1株5,000円、非課税期間終了時が1株4,500円の場合、「4,500円」が課税口座での購入価格となります。
このように元本割れした状態で課税口座に払い出され、その後の運用で実際の購入価格まで戻した場合でも、投資家にとって実質利益は出ていません。しかし、払い出し後に増加した資産額は「運用益」として課税対象になります。
非課税の場合は損益通算や繰越控除ができない
NISA口座で得た利益や損失は、損益通算や繰越控除の対象にはなりません。
項目 | 内容 | |
---|---|---|
損益通算 | 一定期間の利益と損失を相殺すること | |
繰越控除 | 損失を翌年以降に繰り越して翌年以降の利益と相殺すること |
たとえば、A証券会社の課税口座で30万円の損失があり、B証券会社の課税口座で30万円の利益があったとします。この場合、確定申告を行えば、損益通算としてA証券会社での損失とB証券会社での利益の相殺が可能です。
さらに、損益通算を行っても控除しきれない損失がある場合は、繰越控除として、翌年以降の利益と相殺することもできます。損失を相殺することで課税所得を減らせるため、結果として節税につながります。
しかし、NISA口座で得た利益は非課税となり、また損失が出た場合も税務上はなかったものとみなされるため、損益通算や繰越控除はできません。したがってNISA以外の口座で利益が発生した場合は、その利益分が課税対象となります。
ただし、NISA口座で損益通算や繰越控除ができないのは、株式の売却損益や配当金などを非課税で受け取った場合に限られます。配当金受領証方式や個別銘柄指定方式で受け取った場合は課税対象となり、確定申告によって損益通算や繰越控除が可能です。
出典:国税庁「No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」
NISAの利益は配偶者控除・扶養控除に影響しない
NISA口座で利益を得ても、配偶者控除・扶養控除を適用できるかどうかの判定には影響しません。
これは、配偶者控除や扶養控除では、控除の適用可否が配偶者や親族の合計所得金額に左右される一方で、NISAで得た利益はその合計所得金額に含まれないためです。
また、配偶者控除の控除額は、控除を受ける納税者自身の合計所得金額に応じて変動します。ただし、NISAで得た利益は合計所得金額に含まれないため、控除額に影響することはありません。
出典:国税庁「No.1191 配偶者控除」
出典:国税庁「No.1180 扶養控除」
ジュニアNISAは18歳未満でも非課税で引き出せる
ジュニアNISAが2023年12月31日で終了したことで、18歳未満の払い出し制限がなくなりました。
2023年以前のジュニアNISAでは、原則として18歳までは口座からの払い出しができず、制限に反して18歳未満が払い出しを行うと一部の利益が課税対象となり、確定申告が必要でした。
2024年1月以降は、口座開設者本人が18歳に達していなくても非課税で払い出しが可能です。ただし、口座の解約を伴わない部分的な払い出しには、引き続き18歳まで制限が設けられており、完全に自由な払い出しが可能となったわけではありません。
【関連記事】
ジュニアNISAはいつまで利用できる?廃止後の代わりはどうなる?
NISAの始め方
NISAで運用を開始するまでの流れは以下の通りです。
NISAの始め方
- 金融機関の口座を開設する
- NISA口座を開設する
- 投資したい金融商品を選択して注文する
1.金融機関の口座を開設する
NISAを始めるには、証券総合口座(銀行の場合は投資信託口座)の開設が必要です。NISAを取り扱っている証券会社や銀行に行くか、オンライン・郵送でも手続きが行えます。
なお、開設できるNISA口座は、1人につき1口座に限られます。購入できる商品や手数料などを比較し、口座を開設する金融機関を選びましょう。
すでに証券総合口座または投資信託口座をもっている人は、そのまま②の手順に進んで問題ありません。
出典:一般社団法人 投資信託協会「NISAについてのQ&A」
2.NISA口座を開設する
NISAを運用するには、NISA口座を開設する必要があります。
NISA口座は金融機関で手続きするだけでは開設できず、税務署の審査が必要です。口座開設の申請を行ってから1週間~3週間程度かかるため、余裕をもって申請しましょう。
なお、一般的にNISA口座の開設は、手順①の証券総合口座(投資信託口座)と同時に申し込むことが可能です。
3.投資したい金融商品を選択して注文する
NISA口座が開設できたら、投資したい株式や投資信託の金融商品を選びます。
金融商品には上場株式・投資信託・ETF・REITなどがあり、取り扱いは金融機関によって異なります。
また、NISAの投資枠によっても購入できる金融商品は異なります。つみたて投資枠は国が認めた一定の投資信託(旧つみたてNISAと同様)のみ購入できますが、成長投資枠では株式も購入可能です。
購入したい金融商品が見つかったら、内容を確認のうえ注文手続きを行いましょう。
出典:一般社団法人 投資信託協会「NISA(ニーサ・少額投資非課税制度)ってなに?」
まとめ
NISA口座で得た利益は非課税であるため、確定申告の必要がありません。
ただし「配当金受領証方式」「個別銘柄指定方式」で配当金を受け取っている場合は、課税対象となり、原則として確定申告が必要です。これらの方式を選択すると、譲渡損失との損益通算や繰越控除が可能です。
また、旧NISAの非課税期間が終了して課税口座へ払い出されると、確定申告が必要となることがあります。正確に税金を納め、税制上の優遇措置を最大限活かすためにも、NISAにまつわる税金や確定申告の取り扱いを正しく理解しましょう。
確定申告のやり方について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】
確定申告とは?全くわからない人向けに申告の流れ・対象者について解説!
確定申告をかんたんに終わらせる方法
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よくある質問
NISAとは?
NISAとは、毎年一定額内で購入した金融商品の利益が非課税になる「少額投資非課税制度」です。
詳しくは、記事内「NISAとは」をご覧ください。
旧NISA(つみたてNISAや一般NISA)は確定申告が必要?
NISAで得た運用益は非課税となるため、新NISA・旧NISAどちらも基本的に確定申告は必要ありません。しかし、確定申告が必要になるケースもあります。
詳しくは、記事内「新NISA・旧NISAともに原則として確定申告が不要」「NISAでも確定申告が必要なケース」で解説しています。
監修 羽場康高(はば やすたか) 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級
現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。
