監修 好川寛 プロゴ税理士事務所

事業所得とは、農業や製造業、サービス業などの事業から生じる所得です。
会社員が副業による収入を得ている場合、その収入にかかる所得が「事業所得」と「雑所得」のいずれに該当するのかを判断するにあたっては、一定の判断基準があります。事業所得の基礎を理解し、正しく所得の申告を行いましょう。
本記事では、事業所得の定義や計算方法、雑所得との違いや判定基準、確定申告のやり方まで幅広く解説します。また副業による所得を事業所得として申告するメリットも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
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事業所得とは
事業所得とは、農業・漁業・製造業・卸売業・小売業・サービス業やその他の事業から生じる所得のことです。
全部で10種類ある所得区分のうちのひとつで、複数の区分の所得金額を足し合わせて所得税額を計算する課税方法である「総合課税」の対象となります。
事業所得も含めた各種所得について詳しくは、別記事「所得とは?収入との違いや種類別の計算方法を解説」をあわせてご確認ください。
出典:国税庁「No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)」
出典:国税庁「No.1300 所得の区分のあらまし」
事業所得の計算方法
事業所得の金額は、以下のように計算します。
事業所得額の計算方法
事業所得の金額 = 総収入金額(売上)− 必要経費の額
総収入金額は、1~12月に得た収入の合計額です。収入は取引が発生して売上が立った時点を基準として考えます。たとえば商品を販売する場合、実際に入金がなされた時点ではなく、商品を引き渡して取引が成立した時点を収入の計上時期とみなします。
また必要経費とは、収入を得るために直接必要となった費用のことです。
出典:国税庁「No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)」
事業所得金額の計算で経費計上できる費用
事業所得の金額を計算するにあたり、経費として計上できる費用には、主に以下のようなものがあります。
費用区分 | 内容例 |
---|---|
売上原価 | ・商品の仕入れ代金 ・原材料費 ・製造にかかる人件費や光熱費 など |
販売費 | ・広告宣伝費 ・業務上の移動にかかる旅費交通費 ・取引先との会食などにかかる接待交際費 ・商品の配送にかかる梱包費用や運送代 |
一般管理費 | ・事務所の家賃・水道光熱費 ・通信費 ・消耗品費(事務用品費) ・パソコンや設備などの対象資産に対する減価償却費 ・給与賃金 など |
なお、所得税や住民税といった個人の税金や、私的支出に該当する生活費や娯楽費、法令違反に関わる罰金・過料などは必要経費として認められません。
ただし、事業の支出と私的な支出が混在する費用、たとえば事務所兼自宅の家賃などは、事業所得を得るために必要であった事業使用部分を一定の方法で算出できる場合に限り、事業使用部分を経費として計上できます。この事業使用部分を算出する計算を「家事按分」といいます。
【関連記事】
家事按分とは?個人事業主が知っておくべき経費計上の仕方や計算方法についてわかりやすく解説
出典:国税庁「No.2210 必要経費の知識」
出典:国税庁「所得の種類・収入・必要経費の範囲等」
事業所得にかかる所得税の計算方法
事業所得は、所得に対して課される国税である「所得税」の課税対象となります。
事業所得にかかる所得税額は、以下のように求めます。
事業所得に関する所得税額の計算方法
- 総収入金額から必要経費を差し引いて事業所得額を求める
- 事業所得の額から「所得控除」の額を差し引き、課税対象となる所得金額を求める
- 課税所得金額に税率を適用する
- 必要に応じて税額控除の額を差し引く
ただし事業所得は「総合課税」の対象となるため、事業所得以外に総合課税の対象となる所得がある場合は、それらの所得金額を合計したうえで所得税額を求めます。
所得税の税率は、所得が多くなるほど段階的に高くなる仕組みで、5〜45%の範囲で以下のように決まります。
所得税率の速算表
課税対象の所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円〜1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円〜3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円〜6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円〜8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円〜17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円〜39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
また2037年までは、復興特別所得税として所得税額に2.1%をかけた金額を所得税とあわせて申告・納付します。
所得税の計算方法について詳しくは、別記事「所得税の計算方法は?税率・控除についてもわかりやすく解説」をあわせてご確認ください。
出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」
出典:国税庁「No.1200 税額控除」
「事業所得」になるか「雑所得」になるかの判断基準
雑所得とは、事業所得を含む9種類の所得のいずれにも該当しない所得です。
得た所得が「事業所得」と「業務にかかる雑所得」のどちらに該当するかについては慎重な判断が求められますが、国税庁による通達や過去の判例をもとに一定の判断基準を示すことができます。
法令解釈通達では、注釈として事業所得・業務にかかる雑所得の判断基準を以下のように説明しています。
事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。
また過去には、事業所得として申告された「執筆・講演などの業務」による所得が事業所得として認められず、雑所得と判断された例がありました。この判例においては、「事業所得に該当するか」を判断する基準として、以下のような見解が示されています。
事業所得への該当有無の判断基準
- 営利性と有償性があること
- 自己の危険と計算において計画的に行う業務であること
- 反復継続して遂行されていること
- 肉体的・精神的労力をかけ、また人的・物的設備をもって行われていること
- 職歴や社会的地位などが客観的に認められていること など
出典:国税庁「○ 法第 35 条((雑所得))関係」
つまり、生計を立てられる規模で継続的・計画的に独立して行っている業務による所得は事業所得に、片手間や趣味の業務による所得の場合は雑所得に、分類され得ると言えます。
【関連記事】
雑所得とは? 計算方法や必要書類を理解して確定申告をしよう
給与所得者の副業は、一般に「雑所得」になる
事業所得と業務にかかる雑所得の判断基準を踏まえ、サラリーマンなどの給与所得者による以下のような副業の対価は、一般に「雑所得」に該当します。
- 休日を利用して書いたエッセイに対する原稿料
- 読者モデルとして活動して得た撮影料
- 趣味で作ったハンドメイド作品をフリマアプリで売って得た収益
- アフィリエイトによる少額の報酬 など
所得が少額で継続性がないもの、余暇を利用した趣味・小遣い稼ぎの範囲にとどまる活動である点などが、判断の基準です。
給与所得者の副業を「事業所得」で申告できる場合
仮に給与所得者による業務であっても、以下のような観点で「事業として成立している」とみなされれば、事業所得としての申告が可能です。
- 営利目的で本人の責任で行われ、一定の収入規模に至っているか
- 反復継続して行われているか
- 人的・物的な労力が費やされているか
- 社会的地位が客観的に認められるような業務か
副業を「事業所得」で申告するメリット
副業による所得を「事業所得」で申告することで、以下のようなメリットが得られます。
副業による所得を事業所得として申告するメリット
- 給与所得などとの損益通算ができる
- 青色申告特別控除の適用を受けられる
- 青色事業専従者給与を経費計上できる
- 純損失の繰越しと繰戻しができる
- 30万円未満の少額減価償却資産の特例を利用できる
1.給与所得などとの損益通算ができる
副業による所得が事業所得と認められていれば、副業が赤字だった場合に、給与所得など異なる区分の所得金額から損失金額を控除できます。これを「損益通算」といいます。
損益通算の対象となる所得は事業所得・不動産所得・譲渡所得・山林所得に限られ、雑所得の場合は対象外です。雑所得では赤字が出ても損益通算ができないため、損失をほかの所得から差し引いて税負担を軽減することはできません。
出典:国税庁「No.2250 損益通算」
2.青色申告特別控除の適用を受けられる
確定申告の方法として青色申告を選択できるのは、事業所得・不動産所得・山林所得のある人のみです。副業による所得が事業所得と認められている場合、確定申告で青色申告を選択し、さまざまな税制上の優遇措置の適用を受けることができます。
優遇措置のひとつが、所得金額から一定額を控除できる「青色申告特別控除」です。複式簿記による記帳を行い、確定申告書に必要書類を添付して期日までに提出するなどのいくつかの要件を満たせば、最大65万円の所得控除が受けられます。
【関連記事】
青色申告特別控除とは?控除を受ける条件と節税効果について解説
出典:国税庁「No.2072 青色申告特別控除」
3.青色事業専従者給与を経費計上できる
「青色事業専従者給与」も、副業による事業所得を青色申告で申告・納付することによって享受できるメリットのひとつです。青色申告では、配偶者や親族に支払った一定の要件を満たす給与を「青色事業専従者給与」として全額経費計上できます。
雑所得では、生計を同じくする家族に対して給与を支払っても、必要経費として収入金額から差し引くことはできません。
【関連記事】
青色申告の専従者給与とは?経費にできる条件や届出書の書き方、年末調整について解説
出典:国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」
4.純損失の繰越しと繰戻しができる
副業による事業所得を青色申告によって申告・納付する場合には、赤字(純損失)を翌年以降に繰り越し、最大3年にわたってその年の所得金額から控除することができます。
また、前年の所得も事業所得として青色申告を行っていた場合、赤字を前年に繰り戻してその所得金額から控除し、払い過ぎた前年分の所得税の還付を受けることも可能です。
副業による所得が雑所得とみなされる場合は、青色申告が選択できないため、純損失の繰越し・繰戻しによる税負担の軽減はできません。
出典:国税庁「No.2070 青色申告制度」
5.30万円未満の少額減価償却資産の特例を利用できる
事業のために購入した10万円を超える資産は、通常は数年かけて経費計上(減価償却)する必要があります。
しかし、個人事業主や一定の中小企業などに該当する青色申告者の場合、2006年4月1日から2026年3月31日までに取得した30万円未満の資産に限り、一括で経費とすることができます(年間の上限は合計300万円)。
副業による収入が事業所得として認められれば、青色申告を選択することでこの少額減価償却資産の特例が利用できるようになり、資産を取得した年の所得を圧縮して税負担を軽減できます。
出典:国税庁「No.2070 青色申告制度」
事業所得の確定申告のやり方
毎年1月1日から12月31日までの間に生じた事業所得を含む所得は、翌年2月16日から3月15日までの間(開始日・終了日が土日祝日などの場合は翌平日が開始日・終了日)に確定申告を行います。
給与所得者で、副業による事業所得が20万円を超える場合、主に以下のような書類を用意します。また必要書類の作成にあたっては、申告方法に応じて作成・保管している帳簿書類を参照します。
会社員が副業の確定申告を行う際の主な必要書類
- 確定申告書
- 源泉徴収票
- 副業の所得が分かる書類(青色申告決算書または収支内訳書)
- 適用を受ける控除関係の書類
- 本人確認書類、マイナンバー確認書類
- 銀行口座が分かるもの(還付を受ける場合)
確定申告書の提出方法は、主に以下の3通りです。
確定申告書の提出方法
- 税務署の窓口に持参して提出する
- 税務署に郵送で提出する
- e-Tax(電子申告)を用いてオンライン上で提出する
窓口や郵送で書面により提出する場合は、国税庁のウェブサイトから確定申告書をダウンロードし、印刷・記載して提出します。電子申告の場合は、画面の案内に従って必要事項を入力することで、書類の用意は不要で申告できます。
【関連記事】
確定申告のやり方をわかりやすく解説!個人事業主や会社員が自分でやるには?
【2025年最新版】確定申告チェックリスト|必要書類や見るべきポイントを解説
まとめ
事業所得は、製造業・卸売業・小売業・サービス業など対価を得て継続的に営む事業から生じる所得です。
所得が雑所得ではなく事業所得と認められるかどうかは、営利性・継続性・事業規模といった基準から総合的に判断され、副業であっても、規模や活動実態によっては得た所得を事業所得として申告できます。
事業所得として認められれば、損益通算を行えたり、青色申告を選択して青色申告特別控除・専従者給与・赤字の繰越しといった優遇措置を活用できたりと、節税効果が期待できます。
正確な申告と税負担の軽減を両立させるために、制度の仕組みや要件を正しく理解し、必要に応じて専門家への相談を検討しましょう。
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よくある質問
事業所得とは?
事業所得とは、農業・漁業・製造業・卸売業・小売業、サービス業などの事業から生じる所得を指します。事業で得た総収入金額から必要経費を差し引いた金額が、事業所得にあたります。
詳しくは、記事内「事業所得とは」をご覧ください。
副業は事業所得と雑所得のどちらになる?
副業の所得が事業所得となるか雑所得となるかは、営利性・継続性・規模・自己責任性などの観点から総合的に判断されます。生活の糧として成り立つ規模で、独立して反復継続的に行われていれば事業所得となり得ますが、趣味の範囲や単発の収入にとどまる場合は雑所得に分類される傾向にあります。
詳しくは、記事内「「事業所得」になるか「雑所得」になるかの判断基準」をご覧ください。
監修 好川寛(よしかわひろし)
元国税調査官。国税局では税務相談室・不服審判所等で審理事務を中心に担当。その後、大手YouTuber事務所のトップクリエイターの税務支援、IT企業で税務ソフトウェアの開発に携わる異色の税理士です。
