監修 北田 悠策 公認会計士・税理士
源泉徴収票は、1月1日から12月31日までの1年間の収入金額や天引きされた所得税額、社会保険料の金額などが記載された書類です。以前は確定申告の際に源泉徴収票の添付が必要でしたが、現在では添付が不要です。
ただし、確定申告書を作成する際には、源泉徴収票に記載された金額を確定申告書の第一表や第二表の該当項目に転記する必要があります。会社員などで源泉徴収票を受け取っており、確定申告を予定している方は、転記方法を押さえておきましょう。
本記事では、確定申告書への源泉徴収票の添付が不要となった背景や転記方法、紛失時の対処法などを紹介します。
【2024年度の確定申告は2025年2月17日(月)〜3月17日(月)まで!】
目次
- 確定申告書に源泉徴収票の添付は不要
- 確定申告書の作成時には源泉徴収票が必須
- 源泉徴収票とは
- 源泉徴収票の種類
- 源泉徴収票の主な項目の見方
- 支払金額
- 給与所得控除後の金額
- 所得控除の額の合計額
- 源泉徴収税額
- 控除対象配偶者の有無等・控除対象扶養親族等の数
- 社会保険料等の金額
- 生命保険料の控除額・地震保険料の控除額
- 源泉徴収票から確定申告書へ転記するときの書き方
- 確定申告書第一表への転記方法
- 確定申告書第二表への転記方法
- 源泉徴収票が2枚ある場合の確定申告書への転記方法は?
- 源泉徴収票がない場合の対処法
- 源泉徴収票を紛失したケース
- 源泉徴収票を受け取っていないケース
- 源泉徴収票の情報は確定申告書に自動入力できる
- 給与所得者で確定申告が必須の場合
- 給与を2ヶ所以上から受け取っている場合
- 給与所得・退職所得以外の所得が20万円を超える場合
- 給与所得者で確定申告したほうがよい場合
- 年末調整で適用できない控除を受ける場合
- 年末調整で控除の申告漏れがある場合
- 途中で退職して年末調整を受けなかった場合
- 退職金受給時に所定の手続きを行わなかった場合
- 確定申告を簡単に終わらせる方法
- まとめ
- よくある質問
確定申告書に源泉徴収票の添付は不要
会社員などの給与所得者は、以前は確定申告時に源泉徴収票を添付する必要がありましたが、2019年4月1日以降は不要となりました。手続きの簡素化を目的に添付が不要になった書類はほかにもあり、具体的には以下のとおりです。
確定申告時に添付が不要になった書類
- 給与所得・退職所得・公的年金などの源泉徴収票
- オープン型証券投資信託の収益の分配の支払通知書
- 配当等とみなされる金額の支払通知書
- 上場株式配当等の支払通知書
- 特定口座年間取引報告書 など
出典:国税庁「国税関係手続が簡素化されました」
確定申告書の作成時には源泉徴収票が必須
会社員が確定申告をする際は、給与収入・給与から天引きされた社会保険料・源泉徴収された所得税額を記入するため、源泉徴収票が必要です。
そのため、源泉徴収票の添付・提出は不要となりましたが、申告書を作成する際には手元に準備しておかなければなりません。確定申告書に手書きで記入する場合、国税庁サイトの「確定申告書等作成コーナー」で作成する場合のどちらでも源泉徴収票が必要です。
源泉徴収票を含め、確定申告で共通して必要となるものは、以下のとおりです。
確定申告に必要な書類一覧
- 確定申告書
- マイナンバーがわかる書類(マイナンバーカードなど)
- 本人確認書類(上記でマイナンバーカードを利用する場合は不要)
- 控除を受けるために必要な各種控除証明書
- 収入がわかる書類(源泉徴収票など)
- 口座番号がわかる通帳など(※ 税金の還付を受ける場合)
会社員が所得控除の適用を受けるために確定申告を行う場合、控除の種類によっては控除証明書の添付が求められるため、事前に確認・準備をしておきましょう。
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【2025年向け】確定申告の必要書類・添付書類は?準備するものをケース別にわかりやすく解説
源泉徴収票とは
源泉徴収票とは、1月1日から12月31日までの1年間の収入額や、支給時に源泉徴収された所得税額などが記載された書類です。給与や年金などを支払う際には、支払者が源泉徴収票を作成し、受給者へ交付する義務があります。
給与所得者である会社員などに対して、勤務先は「給与所得の源泉徴収票」を作成・交付しなければなりません。「給与所得の源泉徴収票」には年収額や源泉徴収税額のほか、天引きされた社会保険料の額や所得控除額なども記載されています。


「給与所得の源泉徴収票」は、以前は書面での交付が義務付けられていましたが、現在は電子データでの交付も可能です。メールで配付している企業や、給与明細システムを通じて従業員がダウンロードできるようにしている企業もあります。
【関連記事】
源泉徴収票とは?見方やいつ発行されるのかなどについてわかりやすく解説【2025年(令和7年)最新】
出典:国税庁「1. 基本的な事項」
出典:国税庁「源泉所得税の改正のあらまし」
源泉徴収票の種類
源泉徴収票には「給与所得の源泉徴収票」「退職所得の源泉徴収票」「公的年金等の源泉徴収票」の3種類があり、届く時期は一般的に以下のとおりです。
| 源泉徴収票の種類 | 発行時期 |
|---|---|
| 給与所得の源泉徴収票 | 12月の年末調整後〜1月末 |
| 退職所得の源泉徴収票 | 退職後1ヶ月以内 |
| 公的年金等の源泉徴収票 | 1月中旬〜下旬 |
「給与所得の源泉徴収票」と「退職所得の源泉徴収票」は、企業が給与や退職金を支払った際に作成し、従業員や退職者に交付します。企業は「給与所得の源泉徴収票」を翌年の1月31日までに交付しなければなりません。
従業員が退職する場合には、退職後1ヶ月以内に「給与所得の源泉徴収票」と「退職所得の源泉徴収票」を交付します。途中退職で年末調整を受けられない場合や転職先で年末調整を受ける場合には、退職先の源泉徴収票が必要です。
「公的年金等の源泉徴収票」は日本年金機構が作成し、公的年金の受給者に交付する源泉徴収票です。法律上の交付期限は翌年の1月31日ですが、一般的には1月中旬~下旬頃には届きます。
「令和6年分公的年金等の源泉徴収票」の送付は、令和7年1月8日(水曜)から16日(木曜)にかけて順次送付されることが日本年金機構から周知されていました。
書面(はがき)だけでなく、マイナポータルやねんきんネットでも源泉徴収票の内容の確認が可能です。
出典:e-Gov法令検索「所得税法|第二百二十六条」
出典:日本年金機構「「令和6年分公的年金等の源泉徴収票」の送付について」
源泉徴収票の主な項目の見方
源泉徴収票から確定申告書へ正しく転記するには、源泉徴収票の見方を理解しておくことが重要です。「給与所得の源泉徴収票」の主な項目は、以下のとおりです。
給与所得の源泉徴収票の主な項目
- 支払金額
- 給与所得控除後の金額
- 所得控除の額の合計額
- 源泉徴収税額
- 控除対象配偶者の有無等・控除対象扶養親族等の数
- 社会保険料等の金額
- 生命保険料の控除額・地震保険料の控除額
それぞれの見方を解説します。
支払金額
「支払金額」欄には、1月1日から12月31日までの1年間に支払われた給与や賞与の総額が記載されています。支払金額には残業代や諸手当なども含まれており、税金や社会保険料が引かれる前のいわゆる「額面」と呼ばれる金額が記載されます。
ただし、1ヶ月あたり15万円以内の通勤定期券代などの非課税手当は含まれません。また、1年間で実際に支払われた給与額が記載されるため、1月に支給される前年の12月に働いた分の給与は含まれず、翌年の源泉徴収票に記載されます。
給与所得控除後の金額
「給与所得控除後の金額」欄には、「支払金額」から給与所得控除額を差し引いた金額が記載されています。給与所得控除額は給与などの収入金額に応じて異なり、以下の計算式で求められます。
| 給与などの収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除額 |
|---|---|
| 190万円以下 | 65万円(最低保障額) |
| 190万円超〜360万円以下 | 収入金額 × 30% + 8万円 |
| 360万円超〜660万円以下 | 収入金額 × 20% + 44万円 |
| 660万円超〜850万円以下 | 収入金額 × 10% + 110万円 |
| 850万円超 | 195万円(上限) |
(※)本表は令和7年分(2025年分)の所得税から適用される給与所得控除額です。
出典:国税庁「No.1410 給与所得控除」
出典:国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)」
給与所得控除は、給与所得者にも必要経費が存在するという前提に基づき、その経費に相当する金額を収入から差し引ける制度です。給与所得者の所得税額は、年収に直接税率をかけるのではなく、給与所得控除額などを差し引いた後の金額に対して税率を適用して計算します。
所得控除の額の合計額
「所得控除の額の合計額」欄には、年末調整で適用された所得控除の合計額が記載されています。所得控除とは、納税者の個別の事情に応じて税負担を調整するための制度です。
所得控除には以下の16種類があり、その内訳は源泉徴収票の下部に記載されています。
所得控除一覧
| 控除の種類 | 適用条件 | 控除額 |
|---|---|---|
| 雑損控除 | 災害や盗難、横領によって損害を受けた | 「(損害金額 + 災害等関連支出の金額 − 保険金等の額)− 総所得金額等 × 10%」と「(災害等関連支出の金額 − 保険金等の額)− 5万円」のいずれか多い方 |
| 医療費控除 | 一定額以上の医療費を支払った ※生計を同じくする配偶者やその他の親族も含まれる | (支払った医療費 − 保険金などで補填される金額)− 10万円※ ※その年の総所得金額が200万円未満の人は総所得金額 × 5% |
| 社会保険料控除 | 健康保険料や国民年金保険料などの社会保険料を支払った ※生計を同じくする配偶者やその他の親族も含まれる | 支払った保険料の合計 |
| 小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済の掛金を支払った | 支払った掛金の合計額 |
| 生命保険料控除 | 生命保険や介護医療保険、 個人年金保険で支払った保険料がある | 支払った保険料の合計額に応じて一定の方法で計算した金額 (最大12万円) |
| 地震保険料控除 | 地震保険料を支払った | 支払った保険料の合計額に応じて一定の方法で計算した金額 (最大5万円) |
| 寄附金控除 | ふるさと納税をはじめ、国・自治体や認定NPO法人などに対して寄附をした | 「寄附金支出合計額」と「総所得金額等 × 40%」のいずれか少ない方から2,000円差し引いた額 |
| 障害者控除 | 納税者や控除対象配偶者、扶養親族が障害者である | 一人につき、 ・障害者27万円 ・特別障害者40万円 ・同居特別障害者75万円 |
| 寡婦控除 | その年の12月31日時点で「ひとり親」に該当せず、合計所得金額500万円以下など一定の要件を満たす寡婦 ※寡夫控除は2020年度分よりひとり親控除に変更 | 27万円 |
| ひとり親控除 | 納税者が一定の要件を満たすひとり親である | 35万円 |
| 勤労学生控除 | 学校に行きながら働いている ※ただし、合計所得金額が75万円以下 | 27万円 |
| 配偶者控除 | 納税者の合計所得が1,000万円以下で、生計を同じくする配偶者の合計所得が48万円以下である (給与のみの場合は給与収入が103万円以下) | 納税者本人の所得金額と控除対象配偶者の年齢に応じた金額 ・一般控除対象配偶者は最大38万円 ・老人控除対象配偶者は最大48万円 (控除対象配偶者のうち年齢が70歳以上) |
| 配偶者特別控除 | 納税者の合計所得が1,000万円以下で、配偶者の合計所得が48万円超133万円以下である | 納税者本人の所得金額と控除対象配偶者の所得金額に応じた金額 最大38万円 |
| 扶養控除 | 16歳以上の子どもや両親などを扶養している | ・一般控除対象扶養親族は38万円 ・特定扶養親族は63万円 (扶養親族が19歳以上23歳未満) ・老人扶養親族は最大58万円 |
| 基礎控除 | 原則、すべての人に適用 | 納税者の所得金額に応じた金額 (最大48万円) |
| 特定親族特別控除 | ⽣計を同じくする特定親族(19歳以上23歳未満、合計所得金額が58万円超123万円以下)がいる | 特定親族の合計所得金額に応じた金額 (特定親族一人につき、最大63万円) |
出典:国税庁「No.1100 所得控除のあらまし」
毎月の給与や賞与から天引きされた社会保険料は社会保険料控除の対象となり、全額が「所得控除の額の合計額」に含まれます。配偶者(特別)控除や扶養控除は、控除の対象となる家族がいる場合に適用される所得控除です。
そのほか、生命保険料控除や地震保険料控除など、年末調整時に従業員が申請すると適用される所得控除もあります。ただし、雑損控除・医療費控除・寄附金控除は年末調整では適用されないため、源泉徴収票に記載される所得控除の合計額には含まれません。
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税金の控除制度とは? 所得控除・税額控除の種類や違いを解説
出典:国税庁「No.1100 所得控除のあらまし」
源泉徴収税額
「源泉徴収税額」欄には、毎月の給与や賞与から源泉徴収(天引き)された所得税額が記載されています。
勤務先で年末調整を受ける場合、1年間の給与収入をもとに勤務先が所得税額を計算し、給与支給時に源泉徴収したうえで従業員に代わって納税をします。
「源泉徴収税額」欄に記載された税額は勤務先が納付するため、原則として従業員本人による確定申告は不要です。ただし、副業など本業以外にも所得がある場合、源泉徴収税額の計算にそれらの所得が反映されず、実際の税額との間に差が生じることがあります。
「源泉徴収税額」欄に記載の税額はあくまで給与をもとに計算した税額です。正しい税額との差額を精算するため、確定申告が必要になることがあります。
控除対象配偶者の有無等・控除対象扶養親族等の数
「控除対象配偶者の有無等」欄には、配偶者(特別)控除の対象となる配偶者がいれば〇が記載されます。「控除対象扶養親族等の数」欄には、扶養控除の対象となる家族の人数が記載されます。「老人」欄は70歳以上の親族が、「特定」欄は19歳以上23歳未満の親族が対象です。
配偶者(特別)控除や扶養控除の対象となる親族とは、その年の12月31日時点で納税者と同一生計であるなど、法定の要件を満たす人を指します。
控除対象となる親族には、年間の合計所得金額に関する以下の要件があります。
年間の合計所得金額に関する要件
- 配偶者控除・扶養控除:合計所得58万円以下(給与収入のみの場合は123万円以下)
- 配偶者特別控除:合計所得58万円超~133万円以下(給与収入のみの場合は123万円超~201万5,999円以下)
出典:国税庁「No.1191 配偶者控除」
出典:国税庁「No.1195 配偶者特別控除」
出典:国税庁「No.1180 扶養控除」
社会保険料等の金額
「社会保険料等の金額」欄には、給与や賞与から天引きされた社会保険料額が記載されます。
さらに、「給与所得者の保険料控除申告書」で申告した給与から天引きされない社会保険料も年末調整で控除の対象となり、「所得控除の額の合計額」欄に反映される仕組みです。
控除対象には健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険などに関する保険料のほか、同一生計の家族の保険料を支払った場合も含まれ、いずれも全額が「所得控除の額の合計額」欄に反映されます。
出典:国税庁「No.1130 社会保険料控除」
生命保険料の控除額・地震保険料の控除額
「生命保険料の控除額」欄および「地震保険料の控除額」欄には、「給与所得者の保険料控除申告書」に基づいて計算された各種控除額が記載されます。
生命保険料控除の対象となるのは生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料、地震保険料控除の対象となるのは地震保険料・旧長期損害保険料です。控除額には上限があり、生命保険料控除は最大12万円、地震保険料控除は最大5万円までが所得控除として適用されます。
出典:国税庁「No.1140 生命保険料控除」
出典:国税庁「No.1145 地震保険料控除」
源泉徴収票から確定申告書へ転記するときの書き方
確定申告書にはいくつかの種類がありますが、その中で申告者が必ず提出するのは第一表と第二表です。
たとえば、会社員が医療費控除の適用を受ける場合や、年末調整で申請し忘れた所得控除を申告する場合には、一般的に第一表と第二表を提出します。
以下では、源泉徴収票から確定申告書の第一表・第二表への転記方法を解説します。手元に源泉徴収票を用意して実際に確定申告書に記入しながら確認してください。
確定申告書第一表への転記方法
確定申告書の第一表には、収入金額・所得金額・所得控除額・源泉徴収税額などを記入します。
以下の確定申告書の画像に示された①〜⑦の箇所に、源泉徴収票の画像上で同じ番号が付された欄の数字を転記してください。




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確定申告書第二表への転記方法
第二表は、第一表で記入した内容の詳細を記入するための用紙です。以下の確定申告書と源泉徴収票の画像を参照し、同じ番号が付された対応箇所を確認してください。




第二表の「所得の内訳(所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額)」欄では、「所得の種類」「種目」に「給与」と記入します。「給与などの支払者の「名称」及び「法人番号又は所在地」等」「収入金額」「源泉徴収税額」に関しては源泉徴収票から転記してください。
第二表の右上の欄には、社会保険料・生命保険料・地震保険料などの支払額を記載します。生命保険料や地震保険料は、保険会社から送付される控除証明書などを確認のうえ、支払額を記載してください。
源泉徴収票が2枚ある場合の確定申告書への転記方法は?
給与所得の源泉徴収票や公的年金等の源泉徴収票が複数枚ある場合は、源泉徴収票ごとに記入が必要です。
第二表の「所得の内訳(所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額)」欄に、支払金額および源泉徴収税額を転記してください。
源泉徴収票がない場合の対処法
確定申告の際に、手元に源泉徴収票がなくて困ることがあるかもしれません。よくあるケースごとに対処法を紹介します。
源泉徴収票を紛失したケース
勤務先から発行された源泉徴収票を紛失した場合、勤務先の担当者に依頼して再発行してもらうことができます。
源泉徴収票がメールで交付される企業もあるため、その場合はまず源泉徴収票が添付されたメールが残っていないか確認しましょう。
給与明細システムを利用している場合、従業員自身で源泉徴収票を再度ダウンロードして印刷できる可能性があります。
源泉徴収票を受け取っていないケース
企業から源泉徴収票が交付されず、交付を依頼しても対応してもらえない場合は、源泉徴収票不交付の届出の手続きを行いましょう。
「源泉徴収票不交付の届出書」は、源泉徴収票の交付期限が過ぎた後であればいつでも提出できます。 交付期限は、年の中途退職なら退職後1ヶ月以内、それ以外の場合は翌年の1月31日までです。
出典:国税庁「F5-4 源泉徴収票不交付の届出手続」
源泉徴収票の情報は確定申告書に自動入力できる
2024年2月(2023年分の所得税の確定申告)から、e-Taxを利用した電子申告で、「給与所得の源泉徴収票」の情報が確定申告書に自動入力されるようになりました(マイナポータル連携)。
国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」で、マイナンバーカードを使って申告する際に利用できます。
マイナポータル連携の主な条件は、勤務先が確定申告対象の従業員の源泉徴収票をe-Taxまたは認定クラウドなどにより税務署へ提出していることです。
確定申告書の作成開始後に手順に沿ってマイナポータル連携を利用し、給与所得の源泉徴収票情報を取得しましょう。
出典:国税庁「給与所得の確定申告がさらに簡単に!【利用者用ページ】」
給与所得者で確定申告が必須の場合
給与所得者は勤務先で年末調整を受けられるため、原則として自分で確定申告をする必要はありません。ただし、給与所得者でも確定申告が必要となるケースがあります。
以下では、確定申告が必要となる主なケースを紹介します。
給与を2ヶ所以上から受け取っている場合
2ヶ所以上から給与の支払を受けている人のうち、「年末調整されなかった給与」と「給与所得・退職所得以外の所得」の合計額が20万円を超える人は確定申告が必要です。
副業やダブルワークで給与を複数の勤務先から受け取っている場合、年末調整はひとつの勤務先でしか受けられません。
年末調整は、主たる給与を支給する勤務先で行われることが一般的です。主たる勤務先以外からの給与は年末調整の対象とならないので、税額を正しく精算するには確定申告が必要です。
【関連記事】
副業による雑所得で確定申告が必要なケースは?事業所得との違いを解説
出典:国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」
出典:国税庁「No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収」
給与所得・退職所得以外の所得が20万円を超える場合
1ヶ所から給与支払を受けている場合でも、給与所得・退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人は、確定申告をしなければなりません。
事業経営を行っていて事業所得がある人や不動産収入がある人など、給与所得以外で年間20万円超の所得があれば確定申告が必要です。
出典:国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」
給与所得者で確定申告したほうがよい場合
会社員などの給与所得者は、確定申告の義務がなくても申告をしたほうがよい場合があります。確定申告をすることで、税金の還付を受けられる場合もあるので、以下に該当する人は確定申告を行いましょう。
年末調整で適用できない控除を受ける場合
16種類ある所得控除のうち、雑損控除・医療費控除・寄附金控除(※)に関しては年末調整で手続きができません。これら3つの所得控除の適用を受けるには確定申告が必要です。適用すれば税負担を軽減できる可能性があります。
(※)例外はありますが、ふるさと納税の場合は「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の利用により年末調整のみで控除が受けられます。
雑損控除は、災害・盗難・横領により控除対象となる資産について損害を受けたときに適用できます。納税者本人の資産だけでなく、同一生計の家族でその年の総所得金額等が58万円以下の人の資産も対象です。
医療費控除は、納税者が本人や同一生計の家族のために支払った医療費が一定額を超える場合に適用されます。
寄附金控除は、国や地方公共団体・公益社団法人・認定NPO法人などに寄附した際に適用を受けられるものです。
| 所得控除の種類 | 控除額 |
|---|---|
| 雑損控除 | 以下のいずれか多い方の金額 ・(損害金額 + 災害等関連支出の金額 − 保険金等の額)−(総所得金額等)× 10% ・(災害関連支出の金額 − 保険金等の額)− 5万円 |
| 医療費控除 | (支払った医療費 − 保険金などで補填される金額)− 10万円(※) (※)その年の総所得金額等が200万円未満の人は10万円ではなく「所得金額 × 5%」 |
| 寄附金控除 | 「寄附金支出合計額」と「総所得金額等 × 40%」のいずれか少ない方から2,000円を引いた額 |
出典:国税庁「No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)」
出典:国税庁「No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」
出典:財務省「令和 7 年度税制改正の概要」
年末調整で控除の申告漏れがある場合
年末調整で所得控除の申告漏れがあった場合でも、確定申告を行えば所得控除を適用できます。
たとえば、生命保険料控除や地震保険料控除の証明書を紛失し、保険会社に再発行を依頼したものの、年末調整の期限に間に合わなかった場合が挙げられます。その場合でも、届いた保険料控除証明書を用いて確定申告をすれば控除を適用可能です。
また、確定拠出年金の掛金を払ったにもかかわらず、小規模企業共済等掛金控除の申請を忘れるケースもあります。このような申告漏れも、確定申告により源泉徴収された税金の還付を受けられる可能性があります。
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税金の控除制度とは? 所得控除・税額控除の種類や違いを解説
途中で退職して年末調整を受けなかった場合
年の途中で退職して年末調整を受けていない場合、源泉徴収によって税金を納め過ぎている可能性があります。正しい金額との差額を精算し、還付を受けるには確定申告が必要です。
出典:国税庁「No.1910 中途退職で年末調整を受けていないとき」
退職金受給時に所定の手続きを行わなかった場合
退職金を受け取る際に、「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出していれば、源泉徴収のみで課税が完結し、確定申告は原則不要です。しかし、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合は、確定申告が必要となります。
出典:国税庁「退職金と税」
確定申告をかんたんに終わらせる方法
確定申告の期間は1ヶ月です。それまでに正確な内容の書類を作成し、申告・納税しなければいけません。
ほかにも、青色申告の場合に受けられる特別控除で、最大65万円を適用するためにはe-Taxの利用が必須条件であり、はじめての人には難しい場面が増えることが予想されます。
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2.現金取引の入力もカンタン!
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3.〇✕形式の質問に答えるだけで各種控除や所得税の金額を自動で算出できる!
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余裕をもって確定申告を迎えるためにも、ぜひfreee会計の利用をご検討ください。
まとめ
確定申告書を提出するときに源泉徴収票の添付は不要です。しかし、確定申告書を記入する際は、源泉徴収票に記載された給与収入額などを転記するため、手元に源泉徴収票の用意が必要です。
源泉徴収票を紛失して手元にない場合は、勤務先に再発行を依頼しましょう。なお、再発行を依頼してから源泉徴収票が届くまでに時間がかかることもあります。確定申告の期限に間に合うように、勤務先の担当者への依頼や確定申告の準備は早めに行いましょう。
よくある質問
確定申告書に源泉徴収票の添付は不要?
以前は確定申告書を提出する際、給与所得者は源泉徴収票の添付が必要でしたが、現在では添付は不要です。
詳しくは、記事内「確定申告書に源泉徴収票の添付は不要」をご覧ください。
アルバイトで源泉徴収票がないと確定申告はできない?
確定申告書には給与収入額や給与所得額などを記入する欄があり、記入する金額を確認するためには勤務先から発行される源泉徴収票が必要です。
アルバイトの場合も確定申告をするためには、勤務先から源泉徴収票を受け取っておく必要があります。
詳しくは、記事内「確定申告書の作成時には源泉徴収票が必須」をご覧ください。
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監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。
