最終更新日:2021/11/26
監修 アトラス総合事務所
企業は、源泉徴収という形で、従業員の納税義務を代行して果たしています。そのため、源泉徴収額の計算や、源泉徴収票の発行は、企業にとって重要な業務です。
本記事では、源泉徴収にまつわる基本的な情報や源泉徴収票の見方について、わかりやすく解説していきます。令和2年度より、給与所得控除額や所得控除額が変更されていますので、必ず確認するようにしましょう。

目次
源泉徴収票とは
源泉徴収票とは、「1年間にいくら給料を支払い、所得税をいくら納めたか」が記載された書類です。
給与金額と納税額に加えて、配偶者控除や扶養控除・各種保険控除(生命保険料・社会保険料)などが記載されています。

引用元:国税庁
源泉徴収票は従業員ごとに作成されますが、タイミングはおもに次の3パターンです。
(1)従業員の退職時
従業員が退職したときに、1月1日〜退職時点までの給与に基づいた源泉徴収票を発行する義務があります。 これは従業員自身の確定申告や、次の職場での年末調整に使われることになります。
(2)年末調整の計算後
年末調整の計算が完了したら、源泉徴収票を発行しなければなりません。いわば、年末調整の「最終報告書」として作成するのです。
従業員と税務署にそれぞれ1部ずつ、市区町村に2部提出されるので、会社は従業員1人につき合計4枚作成する必要があります。
(3) 従業員の収入証明が必要な時
従業員が自動車や住宅の購入の際に、高額なローンを組む時や子供を保育園に入れる時などは、収入証明が必要になります。収入を証明する書類として、源泉徴収票は有効なため、従業員から発行を求められるケースがあります。
また、源泉徴収票についてはyoutubeでも解説しております。動画で簡単に源泉徴収票を知りたい方は下記リンクよりご覧ください。

<源泉徴収票の提出先と提出する部数>
従業員:1部
税務署:1部
市区町村(給与支払報告書として):2部
こちらは、「税務署提出用」の書式です。「従業員提出用」とはマイナンバーの記載項目があるかないかが異なります。

引用元:国税庁
源泉徴収票というと、横長の小さな紙を思い浮かべる方が多いでしょう。実はその小さな紙は、この正式な書式から従業員個人に向けて必要な情報のみを抜き出して凝縮させた、いわば「ミニチュア版」なのです。よく見ると、共通している欄も少なくありません。
源泉徴収票の見方
(1)支払金額
支払金額は、給与、残業代(時間外手当)、ボーナス(賞与)ほか、各種手当などを含めた額面の給料の総額です。1年分の合計額が記載されているので、年収とほぼ等しくなります。 ここで注意が必要なのが、次の2点です。
・通勤費などの非課税扱いとすべき手当は、支払金額の中に算入してはなりません。通勤費のほか、出張などでの交通滞在費なども所得税が課されない手当ですので、間違って源泉徴収の支払金額に含めないようにしましょう。
・年の途中で、他の会社から転職してきた従業員からは、前職の源泉徴収票を回収する必要があります。前職の支払金額や徴収額の情報がなければ、その年の支払金額を確定することができません。
すでに述べたとおり、企業は退職者に源泉徴収票を発行する必要がありますので、もしも未発行である場合は前の会社に請求し、発行してもらうようにしましょう。
(2)給与所得控除後の金額
年末調整では、「給与所得控除」という控除があります。
これは「会社だけでなく従業員にも必要経費がある」との考えのもと、一定額を経費として年収から差し引くことで、払うべき税金を安くするという制度です。給与所得控除はそれぞれの年収(支払金額)に応じて金額が変わります。
平成29年分から令和元年分は、下記の控除額でした。
給与などの収入金額 | 給与所得控除額 |
162万5,000円以下 | 65万円 |
162万5,000円超180万円以下 | 収入金額×40% |
180万円超360万円以下 | 収入金額×30%+18万円 |
360万円超660万円以下 | 収入金額×20%+54万円 |
660万円超1,000万円以下 | 収入金額×10%+120万円 |
1,000万円超 | 220万円 |
参考:源泉徴収のしかた 平成29年版
令和2年分以降は、控除額が変更されています。
給与などの収入金額 | 給与所得控除額 |
180万円以下 | 収入金額×40%-10万円 55万円に満たない場合は55万円 |
180万円超360万円以下 | 収入金額×30%+8万円 |
360万円超660万円以下 | 収入金額×20%+44万円 |
660万円超850万円以下 | 収入金額×10%+110万円 |
850万円超 | 195万円(上限) |
参考:源泉徴収のしかた 令和2年版
「給与所得控除後の金額」には、年収に応じた控除額を差し引いた金額が記載されます。
(3)所得控除の額の合計額
上でみた「給与所得控除」以外の控除の合計額が、ここに記載されています。この合計額には大きく分けて、次の2つが含まれています。
・これまで毎月の給与計算で控除してきた金額
毎月給料から天引きされてきた、健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料、企業共済掛金などの年間合計額です。前職分があればそれも含まれています。
・年末調整で初めて控除される金額
配偶者控除や基礎控除など、年末調整で初めて登場する控除です。源泉徴収票の下部には、その内訳が記載されています。
例えば、以下のような控除があります。
控除の種類 | 控除が受けられる場合 | 控除額 |
社会保険料控除 | 健康保険料、国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料、国民年金保険料、国民年金基金の掛金、厚生年金保険料などを支払った場合に適用される控除。生計を一にする配偶者その他の家族も含まれる。 | 支払った保険料の合計 |
小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済等の掛金を支払った場合に適用される控除 | 支払った掛金の合計額 |
生命保険料控除 | 生命保険や介護医療保険、 個人年金保険で、支払った保険料がある場合に適用される控除 | 一定の方法で計算した金額 (最高12万円) |
地震保険料控除 | 地震保険料を支払った場合に適用される控除 | 一定の方法で計算した金額 (最高5万円) |
障害者控除 | 納税者や同一生計配偶者、扶養親族が障害者である場合に適用される控除 | 一人につき、 ①障害者27万円 ②特別障害者40万円 ③同居特別障害者75万円 |
寡婦(寡夫)控除 | 納税者の合計所得が500万円以下で、配偶者と死別または離婚して扶養親族がいる場合に適用される控除 ※寡夫控除は、令和2年分より、ひとり親控除に変更 |
27万円 |
ひとり親控除 | 納税者の合計所得が500万円以下で、納税者がひとり親であるときに適用される控除 ※ひとり親控除は令和2年分の所得税から適用 |
35万円 |
勤労学生控除 | 学校に行きながら働いている場合に適用される控除 ※ただし、合計所得金額が75万円以下 |
27万円 |
配偶者控除 | 納税者の合計所得が1,000万円以下で、配偶者の合計所得が48万円以下の場合に適用される控除 | ①一般控除対象配偶者:最大38万円 ②老人控除対象配偶者:最大48万円 (控除対象配偶者のうち年齢が70歳以上) |
配偶者特別控除 | 納税者の合計所得が1,000万円以下で、配偶者の合計所得が48万円超133万円以下である場合に適用される控除 | 配偶者の合計所得によって 最大38万円 |
扶養控除 | 合計所得が48万円以下である16歳以上の子供や両親などを扶養している場合に適用される控除 | ①一般の控除対象扶養親族:38万円 ②特定扶養親族:63万円 (扶養親族が19歳以上23歳未満の方) ③老人扶養親族:最大58万円 |
基礎控除 | 納税者の合計所得が2,500万円以下である場合に適用される控除 | (1)合計所得 2,400万円以下:48万円 (2)合計所得 2,400万円超2,450万円以下:32万円 (3)合計所得 2,450万円超2,500万円以下:16万円 |
参考:国税庁『No.1100 所得控除のあらまし』
詳しくは下記のページもご参照ください。
【関連記事】
年末調整とは?その流れと必要な作業
(4)源泉徴収税額
1年間で徴収した所得税の合計額が記載されています。
「(2)給与所得控除後の金額」から「(3)所得控除の額の合計額」を差し引くと、課税対象となる金額が算出されます。この金額に税率をかけたものが、この「(4)源泉徴収税額」となるのです。
<所得税の速算表>
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
194万9千円まで | 5% | 0円 |
195万円〜329万9千円まで | 10% | 9万7,500円 |
330万円〜694万9千円まで | 20% | 42万7,500円 |
695万円〜899万9千円まで | 23% | 63万6,000円 |
900万円〜1,799万9千円まで | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円〜3,999万9千円まで | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
※税額は「所得金額×税率-控除額」の式で求められる
以上をまとめると、こうなります。

なお、先に述べた「退職時に発行される源泉徴収票」の場合、年末調整がまだ行われていないので、②や③は空欄のままになっています。
参考:国税庁『No.2260 所得税の税率』
源泉徴収票と給与支払報告書の違い
源泉徴収票のうち、市区町村に提出する2枚のことを「給与支払報告書」と呼びます。源泉徴収票とフォーマットはほぼ同じですが、「普通徴収か特別徴収か」を選ぶ項目がある点が微妙に異なります。
住民税は、この給与支払報告書に基づいて計算されることになります。詳しくは下記のページもあわせてご覧ください。
【関連記事】
「給与計算における住民税の計算・更新・納付について解説」
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まとめ
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