確定申告の基礎知識

課税売上高とは?個人事業主向けに計算方法や確定申告書の確認場所を解説

監修 好川寛 プロゴ税理士事務所

課税売上高とは?個人事業主向けに計算方法や確定申告書の確認場所を解説

年間売上が1,000万円に近づき消費税のことが気になり始めた方や、確定申告書の「課税売上高」の欄で手が止まってしまった方もいらっしゃるかもしれません。

この記事では、個人事業主の方に向けて、課税売上高の基本的な意味から、売上高や所得との違い、納税義務の判定における役割までをわかりやすく解説します。

目次

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課税売上高とは?売上高や所得との違い

まずは、課税売上高が何のために必要なのか、その基本的な役割を解説します。

その上で、多くの事業主が混同しがちな「売上高」や「所得」といった用語との違いをわかりやすく解説していきます。

消費税の納税義務を判断するための金額

課税売上高とは、消費税を納める義務があるかどうかを判断するために用いられる金額のことです。

原則として、個人事業主の場合は2年前(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えると、その年は消費税の納税義務が発生します。この納税義務がある事業者を「課税事業者」と呼びます。

このように、課税売上高は消費税の納税において非常に重要な指標となります。

売上高・課税売上高・所得の違い

事業を行う上で、「売上高」「所得」といった言葉が出てきますが、これらと「課税売上高」は異なります。それぞれの関係性を理解することが重要です。

売上高・所得・利益との違い

  • 売上高
    事業活動によって得られた年間の総売上のことです。消費税の課税対象とならない取引(非課税取引・不課税取引)の売上もすべて含んだ金額を指します。
  • 課税売上高
    「売上高」のうち、消費税の課税対象となる取引の売上合計額を指します。土地の売却代金や住宅の家賃収入、給与や寄付金などは含まれません。
  • 所得
    年間の総売上である「売上高」から、仕入れや経費などを差し引いた事業の儲けの部分です。所得税の計算の基礎となる金額であり、消費税の計算で用いる課税売上高とは異なります。

自身の課税売上高は、確定申告書・決算書のここを確認

自身の課税売上高は、決算書(または収支内訳書)の1ページ目、左上にある「売上(収入)金額」の欄を確認します。この金額が、原則として課税売上高の基になります。


出典:国税庁「青色申告決算書」

※上記は、売上の大部分が消費税の課税対象である場合の最も基本的な確認方法です。不動産家賃収入(非課税)などが含まれる場合は、別途計算が必要になることがあります。

課税売上高の計算方法

ここでは、ご自身でいちから課税売上高を計算する必要がある方向けに、その具体的な方法を解説します。

課税売上高の計算式

課税売上高は、以下の計算式で算出します。

  • 課税売上高 = 
    消費税の課税対象となる取引の売上高 + 輸出取引などの免税売上高 - 売上に関する返品・値引き・割戻の合計額

計算に含めるもの・含めないもの

年間の総売上の中には、課税売上高の計算に「含めるもの」と「含めないもの」があります。

事業に関連する収入でも、消費税の性質上、対象外となる取引があるため注意が必要です。

▼ 計算に含める取引(例)


  • 課税取引

    商品の販売、サービスの提供など、対価を得て行う国内取引が該当します。
    事業用資産(車や備品など)の売却収入も含まれます。
  • 免税取引

    商品の輸出や、国際輸送、外国事業者へのサービス提供(国内で直接便益を受けるものは除く)などが該当します。


計算に含めない取引(例)


  • 非課税取引

    消費税の性格や社会政策的な配慮から課税対象とされていない取引です。

    例:土地の譲渡・貸付、住宅用の家賃収入、有価証券の譲渡、社会保険医療の給付など。
  • 不課税取引(課税対象外)

    消費税の課税要件を満たさない取引です。

    例:給与や賃金、寄付金、国や自治体からの補助金、保険金、配当金など。

計算は「税抜」「税込」どちらで行うか

課税売上高を計算する際は、原則として「税抜」の金額で計算します。

ただし、計算対象の年(基準期間)において免税事業者であった場合は例外です。その期間の売上には消費税という概念が含まれていないため、「税込」の売上金額がそのまま課税売上高となります。

課税売上高が1,000万円を超えたらどうなる?

年間の課税売上高が1,000万円を超えると、消費税を納める義務が発生します。

ここでは、具体的に「いつから」納税義務が始まるのか、その判定の仕組みについて、わかりやすく解説します。

消費税の納税義務が発生するタイミング

原則として、課税売上高が1,000万円を超えた年の「2年後」から、消費税の納税義務が発生します。

たとえば、2023年の課税売上高が1,000万円を超えた場合、2025年から消費税を納める「課税事業者」となります。すぐに翌年から義務が発生するわけではない、という点を押さえておきましょう。

納税義務の判定時期:「基準期間」と「特定期間」

消費税の納税義務は、主に「基準期間」の課税売上高で判定されますが、「特定期間」という特例的な判定ルールも存在します。いつの売上が、いつの納税義務に影響するのか、図で確認しましょう。

基準期間とは

基準期間とは、原則として「前々年」のことを指します。この2年前の課税売上高が1,000万円を超えているかどうかで、現在の年の納税義務を判定するのが基本ルールです。

特定期間とは

特定期間とは、原則として「前年の1月1日から6月30日までの半年間」のことを指します。

基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円以下でも、この特定期間の課税売上高が1,000万円超に加え、給与等の支払金額1,000万超の場合は、その年から課税事業者となります。これは、売上が急に伸びた事業者に対応するための特例ルールです。

課税事業者になる場合に必要となる手続き

課税事業者になることが決まったら、いくつかの手続きが必要です。ご自身の状況に合わせて、必要な対応を確認していきましょう。

「消費税課税事業者届出書」を提出する

基準期間や特定期間の課税売上高が1,000万円を超えたことにより課税事業者となる場合は、「消費税課税事業者届出書」を、納税地を管轄する税務署に提出する必要があります。

この届出書は、課税事業者となる事由が発生した場合、速やかに提出することとされています。

納税方法を選択する

消費税の納税額の計算方法には、「原則課税」と「簡易課税」の2種類があります。どちらを選択するかで納税額や経理の事務負担が変わるため、ご自身の事業内容に合わせて選択することが重要です。

原則課税とは

原則課税とは、受け取った消費税額から、仕入れや経費で支払った消費税額を差し引いて納税額を計算する方法です。

簡易課税制度とは

簡易課税制度とは、受け取った消費税額に、事業の種類ごとに定められた「みなし仕入率」を掛けて、支払った消費税額を概算で計算する方法です。

この制度を利用するには、基準期間の課税売上高が5,000万円以下であることと、事前に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出していることが必要です。


制度原則課税(一般課税)簡易課税制度
計算方法預かった消費税 - 支払った消費税預かった消費税 - (預かった消費税 × みなし仕入率)
メリット・大規模な設備投資など、支払った消費税が多い場合に納税額が少なくなる(還付の可能性もある)。・支払った消費税を細かく計算する必要がなく、事務負担が少ない。
デメリット・仕入れや経費にかかる消費税を正確に集計する必要があり、事務作業が煩雑になる。・実際の経費が少なくても一定額を控除できる一方、多額の設備投資をしても納税額に反映されない。
選択のポイント輸出業や、大きな設備投資を予定している事業者経理の事務負担を軽減したい事業者

インボイス制度(適格請求書発行事業者)に登録する場合

課税売上高が1,000万円以下であっても、「適格請求書発行事業者」の登録申請を行うことで、自らの意思で課税事業者になるという選択肢もあります。

2023年10月に始まったインボイス制度では、課税事業者である買手側が仕入税額控除を受けるために、売手側からの適格請求書(インボイス)の保存が必要となります。ご自身の取引先が課税事業者である場合、取引を継続するためにインボイスの発行が求められる可能性があるため、この制度への登録も重要な検討事項となります。

まとめ

消費税の納税義務の判定には、課税売上高の正しい理解が不可欠です。売上高との違いや基準期間の考え方など複雑な部分もありますが、納税に関わるため間違いがあってはなりません。事業主として制度をしっかり把握し、ご自身の状況に応じた適切な対応を行いましょう。

課税売上高の計算や消費税申告は、会計ソフトを利用するとミスなく効率的に進められます。また、ご自身の判断に不安がある場合や、インボイス制度への対応に迷う場合は、税理士などの専門家に相談することも有効な選択肢です。

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よくある質問

赤字でも課税売上高が1,000万円を超えたら納税義務はありますか?

納税義務はあります。消費税は、事業の利益(所得)に対してではなく、売上に対して課される税金です。

そのため、たとえ事業が赤字であったとしても、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えていれば、消費税の納税義務が発生します。

詳しくは「課税売上高とは?売上高や所得との違い」で解説しています。

年の途中で1,000万円を超えた場合はどうなりますか?

その年の納税義務には、すぐに影響しません。

納税義務の判定は、あくまで年間の合計額で行われます。たとえば、2023年の途中で課税売上高が1,000万円を超えても、その瞬間に2023年の納税義務が発生するわけではありません。2023年1年間の課税売上高の合計が1,000万円を超えたかどうかで、2年後の2025年の納税義務が判定されます。

詳しくは「課税売上高が1,000万円を超えたらどうなる?」で解説しています。

補助金や助成金は課税売上高に含まれますか?

含まれません。

国や地方自治体から受け取る補助金や助成金は、商品やサービスの対価として得るものではないため、消費税の課税対象外(不課税取引)です。したがって、課税売上高の計算に含める必要はありません。

詳しくは「課税売上高の計算方法」で解説しています。

参考文献

監修 好川寛(よしかわひろし)

プロゴ税理士事務所。元国税調査官。国税(調査・相談2万件・審判実務)×民間(事業会社実務・PdM)の複眼的な視点が強み。クリエイター/IT・SaaS等の現代的ビジネス、海外取引・非居住者税務に明るい。

監修者 好川寛

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