監修 羽場 康高 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級

確定申告や年末調整で生命保険料控除を適用すると、所得税・住民税の税負担を軽減できます。控除額は、1年間に支払った保険料の金額に応じて決まり、上限額は新契約と旧契約で異なります。
生命保険料控除を受けるには、手続きの流れや書類の書き方、必要書類の種類などを事前に確認し、確定申告や年末調整で忘れずに申告しましょう。
本記事では、生命保険料控除の計算方法や確定申告・年末調整における申告手続きの方法について解説します。
目次
生命保険料控除とは
生命保険料控除とは、支払った生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料などのうち、一定額をその年の所得から控除する制度です。
社会政策的な観点や「個人の事情への配慮」の観点から税負担を調整するために設けられた、16種類の「所得控除」のひとつにあたります。
生命保険料控除を適用すると、所得税・住民税の税負担が軽減されます。
出典:国税庁「No.1140 生命保険料控除」
確定申告・年末調整で生命保険料控除の対象になる保険料
確定申告・年末調整で生命保険料控除の対象になる保険契約は「生命保険契約」「介護医療保険契約」「個人年金保険契約」の3種類です。
生命保険契約 | ・生存または死亡に基因して一定額の保険金が支払われる保険契約 例:定期保険、終身保険 など |
---|---|
介護医療保険契約 | ・疾病または身体の傷害等により保険金が支払われる保険契約 ・入院・通院など医療費支払事由に基因して保険金が支払われる保険契約 例:医療保険・がん保険・介護保険 など |
個人年金保険契約 | ・年金の受取人が、保険料もしくは掛金の払い込みをする者、またはその配偶者となっている契約 ・年金の支払を受けるまでに10年以上の期間にわたって定期に保険料を支払う契約 ・年金受取人の年齢が原則として満60歳になってから支払われるとされている10年以上の定期または終身の年金 例:個人年金保険 など |
どの保険契約に該当するかは、保険会社から届く証明書で確認可能です。生命保険料控除の対象になる保険契約の詳細な要件は、国税庁サイト「No.1141 生命保険料控除の対象となる保険契約等」で確認できます。
生命保険料控除の対象になる保険料は、実際にその年に支払った保険料です。未払いの保険料は控除の対象になりません。一時払の場合は、保険料を支払った年に控除対象となります。
また、妻が契約している保険の保険料を夫が支払っている場合、夫が生命保険料控除の対象となります。ただし、保険金の受取人が第三者の場合は控除の対象になりません。
なお、国民健康保険や国民年金の保険料は、生命保険料控除ではなく、別の制度である社会保険料控除の対象です。
出典:国税庁「No.1140 生命保険料控除」
新制度と旧制度の違い
生命保険料控除の対象になる保険契約は、契約締結日が2012年1月1日以後であれば新制度、2011年12月31日以前であれば旧制度に分類されます。
新制度と旧制度では、控除上限額が異なります。
新制度の控除上限額 | 旧制度の控除上限額 | |
---|---|---|
一般生命保険料控除 | 所得税:4万円 住民税:2万8,000円 | 所得税:5万円 住民税:3万5,000円 |
介護医療保険料控除 | 所得税:4万円 住民税:2万8,000円 | ― |
個人年金保険料控除 | 所得税:4万円 住民税:2万8,000円 | 所得税:5万円 住民税:3万5,000円 |
旧制度では、2つの区分をあわせて所得税で最大10万円、住民税で最大7万円の控除を受けることができます。
新制度では、3つの区分をあわせて所得税で最大12万円の控除が受けられます。住民税の各区分の控除上限額は2万8,000円ですが、合計の控除上限額は7万円です。
出典:生命保険文化センター「税金の負担が軽くなる「生命保険料控除」」
生命保険料控除の控除額の計算方法
生命保険料控除の控除額は、2012年以降に加入した新契約か、それより前に加入した旧契約かによって計算方法が異なります。
新契約の場合・旧契約の場合・両方に加入している場合の3つのケースについて、計算方法を解説します。
新契約(2012年1月1日以降に契約)の場合
新契約における生命保険料控除の控除額は、以下のように計算します。
【所得税】
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
2万円以下 | 支払保険料等の全額 |
2万円超 4万円以下 | 支払保険料等 × 1/2 + 10,000円 |
4万円超 8万円以下 | 支払保険料等 × 1/4 + 20,000円 |
8万円超 | 一律4万円 |
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
1万2,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
1万2,000円超 3万2,000円以下 | 支払保険料等 × 1/2 + 6,000円 |
3万2,000円超 5万6,000円以下 | 支払保険料等 × 1/4 + 14,000円 |
5万6,000円超 | 一律2万8,000円 |
たとえば、医療保険に加入し月々5,000円(年間6万円)の保険料を支払った場合の控除額は、所得税で3万5,000円、住民税で2万8,000円です。
出典:生命保険文化センター「税金の負担が軽くなる「生命保険料控除」」
出典:国税庁「No.1140 生命保険料控除」
旧契約(2011年12月31日以前に契約)の場合
旧契約における生命保険料控除の控除額は、以下のように計算します。
【所得税】
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
2万5,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
2万5,000円超 5万円以下 | 支払保険料等 × 1/2 + 12,500円 |
5万円超 10万円以下 | 支払保険料等 × 1/4 + 25,000円 |
10万円超 | 一律5万円 |
【住民税】
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
1万5,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
1万5,000円超 4万円以下 | 支払保険料等 × 1/2 + 7,500円 |
4万円超 7万円以下 | 支払保険料等 × 1/4 + 17,500円 |
7万円超 | 一律3万5,000円 |
個人年金保険に加入し、月々6,000円(年間7万2,000円)の保険料を支払った場合の控除額は、所得税で4万3,000円、住民税で3万5,000円です。
出典:生命保険文化センター「税金の負担が軽くなる「生命保険料控除」」
出典:国税庁「No.1140 生命保険料控除」
新契約と旧契約の両方に加入している場合
一般生命保険料控除と個人年金保険料控除は、新契約と旧契約の両方に加入している場合、制度ごとに控除額を計算し、その合計額が控除されます。
ただし、新旧制度の合計額を合算して適用する場合、控除上限額は所得税で4万円、住民税で2万8,000円です。
なお、旧制度のみを適用した場合の控除上限額は、所得税で5万円、住民税で3万5,000円です。そのため、旧制度のみに絞ったほうが控除額が大きくなり、結果として税負担をより軽減できることがあります。
また、新制度・旧制度を通じた生命保険料控除の合計控除上限額は、所得税で12万円、住民税で7万円となっています。
出典:生命保険文化センター「税金の負担が軽くなる「生命保険料控除」」
生命保険料控除の申請で必要な証明書の取得方法
確定申告や年末調整で生命保険料控除の適用を受けるためには、「生命保険料控除証明書」が必要です。
該当する保険に加入している場合は、保険会社から10〜11月ごろに、ハガキまたは封書で証明書が送付されます。
証明書を紛失した場合でも、保険会社に申請すれば再発行が可能です。ただし、再発行には時間がかかることがあります。証明書を紛失した場合は、早めに再発行の手続きを行いましょう。
確定申告で生命保険料控除を申告するやり方
個人事業主は、確定申告で生命保険料控除を申告することで、控除を受けられます。
以下では、確定申告で生命保険料控除を申告する手続きの流れや、書類の書き方を解説します。
手続きの流れ
生命保険料控除を申告する場合は、確定申告書の第一表と第二表に必要事項を記入し、生命保険料控除証明書を添えて提出します。
なお、e-Taxで確定申告を行う場合、控除証明書の添付は不要です。
出典:国税庁「所得税及び復興特別所得税についてよくある質問」
確定申告書の書き方
確定申告書の第一表と第二表には、生命保険料控除に関する記入欄があります。保険料額や控除額を記入します。
第一表
1年間に支払った保険料をもとに控除額を計算し、確定申告書第一表「所得から差し引かれる金額」の項目にある「生命保険料控除」欄に記入します。記入するのは所得税の控除額のみで、住民税の控除額は記入不要です。

第二表
1月1日~12月31日の1年間に支払った保険料の額を、確定申告書第二表「生命保険料控除」の項目の「支払保険料等の計」欄に記入します。保険料の種類ごとに、支払額を分けて記入してください。
「うち年末調整等以外」欄には、「支払保険料等の計」に記載した金額のうち、給与所得の源泉徴収票に記載されていない金額を記入します。年末調整を受けていない個人事業主などは、「支払保険料等の計」欄に記載した金額を転記します。

年末調整で生命保険料控除を申告するやり方
会社員などの給与所得者は、年末調整で生命保険料控除を申告すると控除の適用を受けられます。
以下では、年末調整で生命保険料控除を申告する手続きの流れや、申告書の書き方を解説します。
手続きの流れ
年末調整で生命保険料控除を適用するには、「給与所得者の保険料控除申告書」を勤務先に提出する必要があります。勤務先から配布される申告書に記入し、所定の期限までに提出しましょう。
給与所得者の保険料控除申告書の書き方
保険料控除申告書の左側に、「生命保険料控除」の項目と、一般の生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料の3つの区分が設けられています。
保険会社から届く控除証明書を確認のうえ、該当する区分の欄に保険会社名や保険料額などを記入してください。
出典:国税庁「A2-3 給与所得者の保険料控除の申告」
まとめ
一般生命保険・介護医療保険・個人年金保険に加入している場合、生命保険料控除の対象となることがあります。控除を適用すれば、税負担の軽減が可能です。
控除額は、新契約と旧契約で計算方法が異なります。
生命保険料控除を受けるには、確定申告や年末調整での手続きが必要です。確定申告の場合は確定申告書の第一表・第二表に、年末調整の場合は給与所得者の保険料控除申告書に、必要事項を記入して提出します。保険会社から届く控除証明書を確認しながら記入しましょう。
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よくある質問
確定申告・年末調整で生命保険料控除の対象になる保険料とは?
確定申告・年末調整で生命保険料控除の対象となる保険契約は、「生命保険契約」「介護医療保険契約」「個人年金保険契約」の3種類です。生命保険料控除の対象になる保険料について、詳しくは「確定申告・年末調整で生命保険料控除の対象になる保険料」をご覧ください。
生命保険料控除の控除額の計算方法とは?
生命保険料控除の控除額の計算方法は、新契約・旧契約、また所得税・住民税で異なります。生命保険料控除の控除額の計算方法について、詳しくは「生命保険料控除の控除額の計算方法」をご覧ください。
監修 羽場康高(はば やすたか) 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級
現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。
