確定申告の基礎知識

所得税や消費税の振替納税とは? 手続きや確定申告分・予定納税分の振替日などを解説!

監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

所得税や消費税を納付する方法のひとつに「振替納税」があります。

振替納税では、利用開始の手続きが完了すると、以後は金融機関の口座から自動的に引き落とされるため、納付漏れの防止につながります。また、納期限によっては引き落としまでに一定の猶予があるため、資金繰りに余裕が生まれる点も魅力です。

本記事では、所得税や消費税の納付で利用できる「振替納税」について詳しく解説します。振替納税の利用を開始するための手続きや、確定申告分・予定納税分の振替日などを紹介するので、ぜひ参考にしてください。

目次

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振替納税とは

振替納税とは、納税者名義の預貯金口座から引き落としによって国税を納付する仕組みです。

振替納税を利用するには、事前に利用開始に関する手続きを行わなければなりません。具体的には、e-Taxで振替依頼書を電子的に提出するか、税務署または指定する預貯金口座の金融機関に紙の依頼書を提出することが必要です。

出典:国税庁「G-2-1 申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続による納付」

振替納税は所得税や消費税の納付で利用可能

振替納税は、全ての税目で利用できるわけではありません。利用できるのは主に個人(個人事業主を含む)で、利用可能な税目は、所得税と消費税に限定されています。以下で、それぞれの振替納税に関して詳しく説明します。

なお、本記事で解説している「振替納税」は国税の制度です。これとは別に、住民税・固定資産税・軽自動車税などの地方税についても、各自治体が独自に実施している口座振替(自動引き落とし)制度があります。詳細は各自治体のHPを参照してください。

所得税(確定申告分・予定納税分)の振替納税

申告所得税・復興特別所得税に関しては、期限内に申告された確定申告分(本来分・延納分)、および予定納税分(第1期・第2期分)を振替納税できます。納付金額の制限はなく、手数料は無料です。

給与や報酬を支払う側(企業など)が納める「源泉所得税」に関しては、振替納税できません。

出典:国税庁「G-2-1 申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続による納付」

消費税(確定申告分・中間申告分)の振替納税

個人事業主が納める消費税・地方消費税に関しては、期限内に申告された確定申告分・中間申告分を振替納税できます。納付金額の制限はなく、手数料は無料です。

企業(法人)が納める消費税・地方消費税に関しては、振替納税を利用できません。

出典:国税庁「G-2-1 申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続による納付」

振替納税の利用を開始する手続き

振替納税を利用するには、利用開始の手続きが必要です。以下では、e-Taxで電子的に実施する方法、および紙の振替依頼書を提出する方法に関して詳しく説明します。

e-Taxで振替依頼書を提出する方法

e-Taxで振替納税の利用開始手続きを実施する場合、まずは「e-Taxソフト(Web版)」にログインします。パソコンだけではなく、スマートフォンやタブレットからもログイン可能です。

続いて、メインメニュー画面の「申請・納付手続を行う」を選択します。そして、画面の案内に従って必要事項(口座名義など)を入力・選択し、納期限までに預貯金口座振替依頼書を電子的に作成・送信してください。

出典:国税庁「G-2-1 申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続による納付」
出典:国税庁「振替依頼書オンライン提出の流れ」

紙の振替依頼書を提出する方法

紙による手続きで、振替納税の利用を開始することも可能です。

まずは、国税庁公式Webサイトから「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」の様式(ひな型)をダウンロードしてください。その後、プリンターで印刷し、記載要領を参考にして必要事項を記入します。

記入が完了したら、納期限までに「納税地を所轄する税務署」または「振替依頼書に記入した金融機関」に提出してください。

出典:国税庁「G-2-1 申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続による納付」
出典:国税庁「記載要領」

振替納税の取りやめや口座変更の手続き

振替納税の利用を取りやめる場合は、「振替納税の取りやめ申出書」を税務署に提出(持参または郵送)する必要があります。申出書の様式(ひな型)は、国税庁公式Webサイトからダウンロード可能です。

口座を変更したい場合は、新たに「振替依頼書」を提出してください。

出典:国税庁「G-2-1 申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続による納付」
出典:国税庁「振替納税の取りやめ申出書」

振替納税に対応している税金の納期限と振替日

振替納税を利用するのであれば、納期限と振替日(口座から引き落とされる日)の関係を理解しておくことが重要です。以下では、所得税および消費税の納期限と振替日を紹介します。

所得税(確定申告分・予定納税分)の納期限と振替日

2025年分に関しては、確定申告延納分や予定納税分の納期限と振替日が同じです。しかし、確定申告分は、納期限から振替日までに一定の猶予期間が設けられています。

下表に、申告所得税および復興特別所得税(確定申告分・確定申告延納分・予定納税分)の法定納期限と振替日の関係をまとめました。

  
区分法定納期限振替日
予定納税第1期2025年7月31日2025年7月31日
予定納税第2期2025年12月1日2025年12月1日
確定申告●2026年3月16日2026年4月23日
確定申告延納2026年6月1日2026年6月1日

確定申告分の正確な振替日は、後日、国税庁公式Webサイトの「主な国税の納期限(法定納期限)及び振替日」に掲載される予定です。

出典:国税庁「主な国税の納期限(法定納期限)及び振替日」

消費税(確定申告分・中間申告分)の納期限と振替日

2025年分に関して、個人事業主が納める確定申告分の消費税・地方消費税の納期限は2026年3月31日で、振替日は2026年4月30日です。

下表に、中間申告分の法定納期限と振替日の関係をまとめました。

  
中間申告が必要な回数区分法定納期限振替日
年1回のケース中間1回目2025年9月1日2025年9月29日
年3回のケース中間1回目2025年6月2日2025年6月26日
中間2回目2025年9月1日2025年9月29日
中間3回目2025年12月1日2025年12月25日
年11回のケース中間1~3回目2025年6月2日2025年6月26日
中間4回目2025年6月30日2025年7月24日
中間5回目2025年7月31日2025年8月26日
中間6回目2025年9月1日2025年9月29日
中間7回目2025年9月30日2025年10月24日
中間8回目2025年10月31日2025年11月26日
中間9回目2025年12月1日2025年12月25日
中間10回目2026年1月5日2026年1月28日
中間11回目2026年2月2日2026年2月27日

消費税・地方消費税に関しては、いずれの納期限分も振替日までに一定の猶予期間が設けられています。

出典:国税庁「主な国税の納期限(法定納期限)及び振替日」
出典:国税庁「中間申告分の納期限及び振替日について」

振替納税で引き落としになっているかどうかの確認方法

振替納税が実施されたかどうかを確認するには、通帳や出入金履歴を閲覧してください。税務署名で引き落とされている記録があれば、納税は正常に完了していると判断できます。

直近1年間にe-Taxで申告書を提出した場合は、e-Taxにログインして振替納税の結果を確認することも可能です。

まずは、「e-Taxソフト(Web版)」にログインします。その後、「マイページ」の「還付・納税関係」メニューから「振替納税結果を確認する」ボタンを選択すると、結果が表示されます。

税務署や金融機関の処理状況によっては、振替納税の実施(引き落とし)から結果の表示までに2週間程度かかることがあります。

出典:国税庁「振替納税結果確認について」

振替納税のメリット

振替納税では、取りやめを依頼しない限り、次回以降も自動的に振替納税が実行されるため、納付忘れを防ぐことができます。また、手数料がかからず、納付金額の制限もありません。

納期限によっては振替日までに猶予期間が設けられており、資金準備の時間を確保できる点も魅力です。

出典:国税庁「G-2-1 申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続による納付」

振替納税のデメリット・注意点

初回の振替納税では、納期限までにe-Taxまたは紙の書面で振替納税の利用開始手続きを行う必要があります。なお、制度対象外となっている一部金融機関や支店の口座は利用できません。

口座残高が不足している場合は、振替納税が実行されず、延滞税がかかります。事前に口座残高を確認し、必要な金額を入金してください。

転居などで納税地を所轄する税務署が変更された場合は、改めて預貯金口座振替依頼書を提出しなければなりません。

この手続きは、申告所得税または消費税の申告書にある振替継続希望欄に「○」を記入して提出する方法でも代替可能です。そのほか、「所得税・消費税の納税地の異動または変更に関する申出書」を提出する方法でも手続きが可能です。

振替納税以外の納付方法

国税の納付方法は、振替納税のほかにも複数あります。各納付方法の特徴を把握し、状況に応じて適切な方法を選択してください。

ダイレクト納付

ダイレクト納付とは、e-Taxで申告書を提出後、即時または指定日に預貯金口座から引き落とすことにより国税を納付する方法です。原則として全種類の税金に対応しており、領収証書は発行されません。手数料は無料です。

e-Taxの受信通知から、「今すぐに納付される方」「納付日を指定される方」「自動ダイレクト納付」のいずれかを選択することでダイレクト納付を実行できます。

利用可能な金融機関の一覧および納付可能額は、国税庁公式Webサイトの「利用可能金融機関一覧(ダイレクト納付)」に掲載されています。

利用するためには、事前に「国税ダイレクト方式電子納税依頼書兼国税ダイレクト方式電子納税届出書」を税務署に提出しなければなりません。

紙で提出する方法以外に、e-Taxによる手続きも可能です。手続きが完了するまでに、書面提出では1ヶ月程度、e-Taxでは1週間程度の時間がかかります。

出典:国税庁「G-2-2 ダイレクト納付(e-Taxによる口座振替)の手続」

インターネットバンキング・ATMによる納付

インターネットバンキングやATMで利用可能な「ペイジー(Pay-easy)」を活用して国税を納付する方法もあります。

原則として全種類の税金に対応しており、領収証書は発行されません。金融機関によっては、手数料が発生するケースがあります。

ペイジーで納税する際には、以下に示す2種類の方式を選択可能です。

ペイジーで納税する際の方式

  • 登録方式:e-Taxに納付情報を事前登録することで発行される「納付区分番号」を用いてペイジーで納付する方式
  • 入力方式:事前登録せず、納付区分番号に相当する番号(納付目的コード)を手で入力してペイジーで納付する方式

利用するためには、事前に金融機関でインターネットバンキングに対応した口座を開設し、e-Taxの利用開始手続きを実施しなければなりません。対応している金融機関および納付可能額は、ペイジー公式Webサイトの「利用できる金融機関」で確認できます。

出典:国税庁「G-2-3 インターネットバンキング等からの納付手続」

クレジットカード納付

クレジットカード納付とは、「国税クレジットカードお支払サイト」で、クレジットカードを利用して国税を納付する方法です。

事前手続きは不要で、原則として全種類の税金に対応しています。一度に納付可能な金額は1,000万円未満(かつ、ご利用になるクレジットカードの決済可能額以下)で、領収証書は発行されません。納付金額に応じて決済手数料が発生します。

利用可能な国際ブランドは、Visa・Mastercard・JCB・American Express・Diners Clubの5種類です。クレジットカードによっては、一括払いのほか、分割払いやリボ払いを選択できる場合もあります。

出典:国税庁「G-2-4 クレジットカード納付の手続」

スマホアプリ納付

スマホアプリ納付とは、e-Tax経由で「国税スマートフォン決済専用サイト」にアクセスし、 スマホ決済アプリを利用して国税を納付する方法です。

事前手続きは不要で、原則として全種類の税金に対応しています。納付可能な金額は30万円以下(かつ、決済アプリで設定されている上限金額以下)で、領収書は発行されません。決済手数料は無料です。

2025年10月中旬時点では、PayPay・d払い・au PAY・メルペイ・Amazon Pay・楽天ペイのアプリで納税が可能です。

出典:国税庁「G-2-5 スマホアプリ納付の手続」

コンビニ納付

コンビニ納付とは、納付用の「QRコード」または「バーコード付納付書」を用いて、コンビニで国税を納付する方法です。

「QRコード」は、国税庁公式Webサイトにある「コンビニ納付用QRコードの作成開始」のボタンから作成・出力可能です。「バーコード付納付書」は、税務署で入手できます。

事前の手続きは不要で、原則として全種類の税金に対応しています。納付可能な金額は30万円以下で、領収証書は発行されませんが、払込金受領証は発行されます。手数料は無料です。

「QRコード」には、以下のコンビニが対応しています。

納付用の「QRコード」に対応しているコンビニ

  • ローソン・ナチュラルローソン・ミニストップ(いずれも「Loppi」端末設置店舗のみ)
  • ファミリーマート(マルチコピー機端末設置店舗のみ)

「バーコード付納付書」には、より多くのコンビニが対応しています。具体的なコンビニ名は、国税庁公式Webサイトの「コンビニ納付(バーコード)納付が可能なコンビニエンスストア」で確認可能です。

出典:国税庁「G-2-6 コンビニ納付(QRコード)」
出典:国税庁「G-2-7 コンビニ納付(バーコード)」

窓口納付

窓口納付とは、所轄の税務署か金融機関(日本銀行歳入代理店)の窓口で、納付書を用いて現金で国税を納付する方法です。全種類の税金に対応しており、納付金額の制限がなく、領収証書が発行されます。事前の手続きは不要で、手数料もかかりません。

納付書は、税務署や金融機関の窓口で入手できます。なお、コンビニ納付で用いる「バーコード付納付書」も利用可能です。

金融機関によっては、タイミングにより納付書が在庫切れとなっている場合があります。税務署の窓口で納付可能な時間帯は、8時30分~17時(土日祝日を除く)とされています。

出典:国税庁「G-2-8 現金に納付書を添えて納付(金融機関又は税務署の窓口)」

【関連記事】
確定申告の納税は7種類から選べる! おすすめと支払時の注意点について解説

まとめ

振替納税とは、納税者名義の預貯金口座からの引き落としで国税を納付する仕組みです。所得税および消費税が振替納税での納付に対応しており、手数料がかからず納付金額の制限もありません。

利用開始の手続きを完了すると、自動的にそれ以降も振替納税が実行されるため、納付忘れを防げます。納期限によっては振替日までに一定の猶予期間が設けられており、資金準備の時間を確保できる点も振替納税のメリットです。

振替納税以外にもさまざまな納付方法があるため、それぞれの特徴を正しく把握したうえで状況に応じた方法を選択しましょう。

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よくある質問

振替納税の利用が可能な税金の種類は?

振替納税は、以下に示す所得税・消費税を納付する際に利用可能です。

振替納税が可能な税金の種類

  • 申告所得税・復興特別所得税:期限内に申告された確定申告(3期)分・延納分・予定納税(1期・2期)分
  • 個人事業主が納める消費税・地方消費税:期限内に申告された確定申告分・中間申告分

振替納税の利用が可能な税金の種類に関して詳しく知りたい場合は、記事内「振替納税は所得税や消費税の納付で利用可能」をご確認ください。

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監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)

神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。

北田 悠策

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