監修 前田 昂平 公認会計士・税理士
メルカリで得た売上金は、場合によっては確定申告が必要になることがあります。とくに営業目的で継続的に商品を販売している人、メルカリから得ている収入が大きい人、年金受給者や個人事業主は注意する必要があります。
本記事では、メルカリの売上金で確定申告が必要になるケース・不要なケース、確定申告のやり方、申告しなかった場合の罰則、注意すべきポイントについて解説します。
目次
- メルカリの売上金で確定申告が必要になるケース
- 営利目的で継続的に転売(せどり)を行っている場合
- 貴金属や美術品などの売却益が特別控除額を超える場合
- 年金受給者や個人事業主などの場合
- メルカリの売上金で確定申告が不要のケース
- 不用品を売却した場合
- 給与所得者の副業・雑所得が年間20万円以下の場合
- 損失が出ている場合
- 確定申告でメルカリの売上金を申告するやり方
- 1.所得区分の判断と必要書類の準備
- 2.確定申告書の作成
- 3.申告書の提出
- メルカリの売上金を確定申告しなかった場合の罰則
- 無申告加算税
- 過少申告加算税
- 重加算税
- 延滞税
- 確定申告の際の注意点
- 売上と所得(利益)の違いを理解する
- 経費の証拠(記録)を必ず保管する
- 事業所得か雑所得かの判断
- 住民税の申告漏れに注意
- まとめ
- 確定申告をかんたんに終わらせる方法
- よくある質問
メルカリの売上金で確定申告が必要になるケース
メルカリでの売買は、その目的や規模によって「事業所得」「雑所得」「譲渡所得」のいずれかにわけられ、場合によっては課税対象とみなされます。
確定申告が必要になる主なケースは以下のとおりです。
メルカリの売上金で確定申告が必要になる主なケース
- 営利目的で継続的に転売(せどり)を行っている場合
- 貴金属や美術品などの売却益が特別控除額を超える場合
- 年金受給者や個人事業主などの場合
それぞれ詳しく解説します。
営利目的で継続的に転売(せどり)を行っている場合
営利目的でメルカリを利用し、継続的に商品を転売している場合、得た利益は雑所得または事業所得とみなされ課税対象となります。
ここでいう継続的な転売とは、生活用の不用品処分ではなく、利益を得ることを目的とした反復・継続的な活動のことで、いわゆる「せどり」や「転売」といったものです。
これらの売上について、確定申告が必要かどうかの判断は以下のとおりです。
確定申告が必要になるライン
- 給与所得者(会社員など)で、メルカリを含む給与所得以外の所得(雑所得や事業所得)の合計が年間20万円を超える場合
- 専業主婦・学生などで、メルカリを含む所得の合計が基礎控除額(48万円)を超える場合
事業として認められるほどの規模(継続性、利益、帳簿の整備状況など)であれば「事業所得」となり、青色申告などの優遇措置を受けられる可能性があります。それ以外は、原則として「雑所得」として申告する必要があります。
貴金属や美術品などの売却益が特別控除額を超える場合
貴金属や美術品などの売却益が特別控除額を超える場合、譲渡所得とみなされます。
具体的には、メルカリで売却したものが、生活に通常必要な衣類や家具などではなく、貴金属、宝石、書画、骨董品、美術品などの「ぜいたく品」または「趣味で集めた高額品」に該当し、売却によって利益(譲渡益)が出た場合がこれにあたり、原則として課税対象とみなされます。
確定申告が必要になるかどうかの判断は以下のとおりです。
確定申告が必要になるライン
- 譲渡所得には年間50万円の特別控除があり、譲渡益の合計がこの50万円を超える場合、確定申告が必要になることがある
※譲渡所得には所有期間による課税方式の違いもある
売却したものが「生活に通常必要な動産」とみなされれば、課税対象外となる場合が多いといえます。しかし、高額なブランドバッグや時計など、1点が30万円を超えるような品物は譲渡所得の対象となる可能性が高いでしょう。
年金受給者や個人事業主などの場合
ここまで説明したケースのほか、年金受給者や個人事業主がメルカリで売上を得た場合も課税所得とみなされ、確定申告が必要になる可能性があります。
確定申告が必要になるかどうかの判断は以下のとおりです。
確定申告が必要になるライン
- 年金受給者などで、公的年金等の収入金額が400万円以下であり、かつ、メルカリを含む年金以外の所得(雑所得、事業所得など)の合計額が20万円を超える場合
- 個人事業主やフリーランスで、メルカリの売上も事業に関連するものであれば、事業所得として既存の所得に合算して申告が必要
メルカリの売上金で確定申告が不要のケース
メルカリで売上金を得ていても、必ずしも確定申告が必要になるわけではありません。以下のケースに該当する場合は、基本的に確定申告は不要です。
メルカリの売上金で確定申告が不要なケース
- 不用品を売却した場合
- 給与所得者の副業・雑所得が年間20万円以下の場合
- 損失が出ている場合
それぞれ詳しく解説します。
不用品を売却した場合
不用品の売却は、メリカリの用途として最も一般的なケースといえます。不用品の例には、家具、衣類、家電、日常的に使用していた車などが挙げられます。このような生活に通常必要となる動産を売却して得た利益は、所得税法上、非課税と定められています。
ただし、貴金属・美術品等の例のように、1点が30万円を超えるような高額品は課税対象とみなされます。その場合、譲渡所得として申告が必要になる可能性があります。前述のとおり譲渡所得50万円の特別控除もあるため、課税対象になる場合は確認してください。
給与所得者の副業・雑所得が年間20万円以下の場合
会社員などの給与所得者が副業としてメルカリでの転売などを行い、メルカリを含む給与所得以外の所得(雑所得)の合計が年間20万円以下である場合は、所得税の確定申告は不要です。
ただし、住民税については、20万円以下であっても申告が必要となります。住民税の申告は市区町村役場で行います。所得税の確定申告をした場合は、別途、住民税の申告をする必要はありません。
損失が出ている場合
転売目的で仕入れを行ったものの、売上が仕入れ値を下回り、結果として損失(赤字)が出ている場合は所得が発生していないため、原則として確定申告は不要になります。
ただし、事業所得として青色申告を行っている場合などは、損失を他の所得と相殺(損益通算)したり、翌年以降に繰り越したりできるので、赤字でも確定申告を行うメリットがあります。
確定申告でメルカリの売上金を申告するやり方
メルカリの売上金が課税対象となる場合、以下の手順で確定申告を行いましょう。
1.所得区分の判断と必要書類の準備
まず、メルカリの売上がどの所得区分に該当するかを判断します。
雑所得または事業所得の場合(継続的な転売による利益)の計算方法
売上金額 - (商品の仕入れ代金 + 送料 + 販売手数料などの経費) = 所得金額
ここでの必要書類は、売上や経費を証明する帳簿や記録(売上明細、領収書など)のことです。メルカリの「売上履歴」や銀行口座の入出金履歴などを活用して、正確な記録書類・データを作成します。また、商品の仕入れ代金にはその年に購入してまだ売れていない商品の代金は含まれません。
譲渡所得の場合(高額品の売却益)の計算方法
(売却金額 - 取得費 - 譲渡費用) - 50万円(特別控除) = 課税対象となる譲渡所得
ここでの必要書類は 売却した商品の購入時の領収書や契約書、売却時の明細などです。
2.確定申告書の作成
1で確認した内容をもとに確定申告書を作成します。
確定申告書の作成方法には、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用して作成する、税務署で申告書を入手して必要事項を記入するといった方法があります。確定申告書には次のような内容を記載します。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 雑所得の場合 | 確定申告書(B様式)の「雑所得」欄に記入 |
| 事業所得の場合 | 確定申告書(B様式)に加え、「青色申告決算書」または「収支内訳書」を添付 |
| 譲渡所得の場合 | 確定申告書(B様式)の「譲渡所得」欄に記入 |
記載ミスや漏れを防ぎ、効率的に確定申告書を作成するには、会計ソフトの活用するのもおすすめです。
3.申告書の提出
作成した確定申告書は、以下のいずれかの方法で管轄の税務署に提出します。
- e-Tax(電子申告): インターネットを通じて自宅から提出できる
- 郵送: 所轄の税務署宛に送付する
- 窓口提出: 税務署の窓口に持参する
確定申告のやり方をより詳しく知りたい場合は、別記事「確定申告のやり方をわかりやすく解説! 個人事業主や会社員が自分でやるには?」をご覧ください。
メルカリの売上金を確定申告しなかった場合の罰則
確定申告が必要であるにもかかわらず、意図的に申告を怠ったり、所得を過少に申告したりした場合は、税務署による税務調査の対象となり、ペナルティ(罰則)が課せられます。
とくに近年は、国税庁によるフリマアプリなどの取引のチェック体制が強化されており、個々の取引データや銀行口座の入出金履歴も確認される可能性があるため、無申告や過少申告が発覚するリスクが高まっています。実態に基づいて正しく申告することが重要です。
ここでは、確定申告をしなかった場合の具体的な罰則について解説します。
無申告加算税
無申告加算税とは、確定申告の期限までに申告をしなかった場合に課されるペナルティの意味合いを持つ税金です。原則として、本来申告・納付すべき税額に対して15%(50万円を超える部分は20%)の税率が加算されます。
税務調査の通知が来る前に自主的に申告した場合は、加算税の税率が5%に軽減されます。
過少申告加算税
過少申告加算税は、確定申告は行ったものの所得を少なく申告していた(本来納めるべき税額より少ない額を申告していた)場合に課されるペナルティ的意味合いを持つ税金です。
新たに納付することになった税額に対して、原則として10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%)の税率が加算されます。
重加算税
重加算税は、所得隠しや仮装・隠蔽などの悪質な事実が認められた場合に課される、最も重いペナルティです。税率が非常に高く、意図的な不正とみなされた場合に課税されます。
課される税率は、無申告の場合で納付すべき税額に対して40%、過少申告の場合で不足する税額に対して35%です。
延滞税
延滞税は、申告期限までに申告しなかった場合、また、納期限までに税金を納めなかった場合に、その未納期間に応じて課される利息に相当するペナルティです。
本来の期限の翌日から、申告・納付されるまでの日数に応じて計算されます。税率は、年度によって変動し、高率になることもあります。
【関連記事】
追徴課税とは?計算方法や対象期間、払えない場合について解説
確定申告の際の注意点
確定申告をする際は、次のポイントを押さえることが重要です。それぞれ詳しく解説します。
売上と所得(利益)の違いを理解する
確定申告の対象となるのは「売上金」ではなく「所得(利益)」です。確定申告する際には、売上から商品の仕入れ代金、メルカリの手数料、送料、梱包材費、振込手数料など、販売活動にかかった経費を差し引くことができます。
この経費を漏れなく計上することで、課税される所得を適正な額に抑えることが可能です。
経費の証拠(記録)を必ず保管する
経費を計上するためには、それを証明する証拠が必要になります。
いつ、どこで、何を、いくらで仕入れたか、送料や手数料はいくらかがわかるように、領収書やレシート、銀行やクレジットカードの利用明細、メルカリの取引画面の履歴などをしっかり保存・記録しておきましょう。
事業所得か雑所得かの判断
販売の規模が大きくなり、本業に準ずるような利益や活動がある場合、「雑所得」ではなく「事業所得」として申告できる可能性があります。
青色申告を行うことで、最大65万円の青色申告特別控除を受けられる、赤字を翌年以降に繰り越せる(純損失の繰越控除)、家族への給与を経費にできる(青色事業専従者給与)などの税制上の優遇が得られます。
これは事業としての継続性、営利性、活動の規模、帳簿の整備状況などから総合的に判断する必要があるため、ご自身での判断に悩む場合は税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
住民税の申告漏れに注意
給与所得者の場合、雑所得が年間20万円以下であれば所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は必要になると地方税法で定められています。
所得税の確定申告をした場合は住民税の申告は不要ですが、確定申告をしない場合は別途、お住まいの市区町村役場に住民税の申告を行わなくてはいけません。これを怠ると、後で住民税の追徴課税を受けることになります。
まとめ
メルカリの売上金について確定申告が必要かどうかの判断は、売上金の額や取引の実態、その他の収入状況によって異なります。
確定申告を怠るとさまざまな罰則が科される可能性があるため、確定申告の要不要をしっかり確認し、適切な申告を行いましょう。
確定申告をかんたんに終わらせる方法
確定申告の期間は1ヶ月です。それまでに正確な内容の書類を作成し、申告・納税しなければいけません。
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よくある質問
メルカリで不用品を売ったら確定申告が必要?
不用品の売却は税法上非課税と定められています。ただし、売却したものが高額な場合は課税対象とみなされることがあります。
詳しくは記事内「不用品を売却した場合」をご覧ください。
メルカリでいくら稼いだら確定申告が必要?
メルカリを通して得た所得について、確定申告が必要になるラインは、状況や取引する物品によって異なります。
たとえば、給与所得者がメルカリを含む給与所得以外の所得(雑所得や事業所得)の合計が年間20万円を超える場合、専業主婦・学生などがメルカリを含む所得の合計が基礎控除額(48万円)を超える場合は確定申告が必要です。
詳しくは記事内「メルカリの売上金で確定申告が必要になるケース」で解説しています。
メルカリの売上金を確定申告しないとバレる?
近年は国税庁によるフリマアプリのチェック体制が強化されているため、無申告や過少申告の発覚リスクは高いといえます。
詳しくは記事内「メルカリの売上金を確定申告しなかった場合の罰則」をご覧ください。
監修 前田 昂平(まえだ こうへい)
2013年公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人に入所し、法定監査やIPO支援業務に従事。2018年より会計事務所で法人・個人への税務顧問業務に従事。2020年9月より非営利法人専門の監査法人で公益法人・一般法人の会計監査、コンサルティング業務に従事。2022年9月に独立開業し現在に至る。
