確定申告の基礎知識

分離課税とは?総合課税との違いや申告分離課税・源泉分離課税について解説

監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

分離課税とは?総合課税との違いや申告分離課税・源泉分離課税について解説

所得税には、所得を合算して累進課税される「総合課税」のほかに、独立した税率でほかの所得と区別して課税される「分離課税」があります。

本記事では、申告分離課税・源泉分離課税などの分離課税の種類や、総合課税との違い、分離課税の計算方法などを紹介します。

そのほか、記事の後半では、申告分離課税・総合課税・申告不要のいずれかを選択できる上場株式等の配当所得について、状況に応じてどの制度が有利かを解説します。

目次

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分離課税とは?総合課税との違い

分離課税とは、所得税の課税方法のひとつで、特定の所得について、ほかの所得と区別し独立した税率で税額を計算する方法です。

対象の所得の例としては、利子所得(銀行利息など)、株式や土地・建物の譲渡益、上場株式等の配当(申告方法を選択可)、先物取引に係る雑所得等が挙げられます。

給与所得や事業所得などはほかの所得と合算して税額を計算する総合課税の対象であり、分離課税とは計算方法が異なります。

分離課税には、源泉徴収として差し引かれる「源泉分離課税」と、確定申告が必要な「申告分離課税」の2種類があります。

次項以降で各課税方法の仕組みや対象の所得を詳しく解説します。

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源泉分離課税とは

源泉分離課税は、所得を受け取る際に、源泉徴収により一定の税率で税額が差し引かれる課税方式です。所得を受け取るタイミングですでに課税が完了しているため、確定申告は不要です。

源泉分離課税の対象となる所得は、主に以下が挙げられます。

源泉分離課税の対象となる主な所得

(1)利子所得に該当する利子等(総合課税または申告分離課税の対象となるものを除く)
(2)私募の特定目的信託のうち、社債的受益権の収益の分配に係る配当
(3)私募公社債等運用投資信託の収益の分配に係る配当
(4)懸賞金付預貯金等の懸賞金等
(5)次の金融類似商品の補てん金等
イ 定期積金の給付補てん金
ロ 銀行法第2条第4項の契約に基づく給付補てん金
ハ 一定の契約により支払われる抵当証券の利息
ニ 貴金属などの売戻し条件付売買の利益
(6)一定の割引債の償還差益

出典:国税庁「No.2230 源泉分離課税制度」

代表的なものには(1)の利子所得があり、銀行預金の利息などが該当します。

源泉分離課税の税率は、(1)~(5)の場合、収入金額等の20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)です。また(6)の場合、償還差益の18.378%(特定のものは16.336%)が課税されます。

出典:国税庁「No.2230 源泉分離課税制度」

申告分離課税とは

申告分離課税は、所得が発生した時点では課税されず、確定申告時にほかの所得と区別して、独立した税率で計算される課税方式です。

申告分離課税の対象となる所得は、主に以下が挙げられます。

申告分離課税の対象となる主な所得

  • 退職所得
  • 山林所得
  • 土地建物等の譲渡による譲渡所得
  • 株式等の譲渡所得等
  • 特定公社債等の利子等に係る利子所得
  • 一定の先物取引による雑所得等

出典:国税庁「No.2240 申告分離課税制度」

退職所得は、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、源泉徴収で課税が完結するため、原則は確定申告が不要です。ただし、申告書を未提出の場合は申告分離課税として確定申告で精算を行います。

株式等の譲渡所得は、原則として申告分離課税の対象です。ただし、特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合は、証券会社が税額を精算するため確定申告は不要です。また、NISA口座での取引は非課税扱いとなり、課税の対象外です。

一方で、一般口座や特定口座(源泉徴収なし)の場合は、申告分離課税として確定申告が必要です。

出典:国税庁「退職金と税」
出典:国税庁「No.1476 特定口座制度」
出典:国税庁「No.1535 NISA制度」

上場株式等の配当等は確定申告や課税方法を選択できる

上場株式等の配当は、確定申告や課税方法について選択が可能です。

上場株式等の配当は支払時に所得税・復興特別所得税15.315%と住民税5%が源泉徴収されるため、確定申告を行わなければ申告不要制度により課税が完了します。

確定申告を行う場合は、申告分離課税または総合課税を選択して申告できます。

申告分離課税を選択すると、20.315%の税率(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)で一律に課税されます。また、申告分離課税では、株式の譲渡損失との損益通算が可能です。

一方、総合課税を選択すると、税額控除として配当控除が受けられ、ほかの所得と合算したうえで累進課税の税率(5%〜45%)が適用されます。

申告分離課税の計算方法

申告分離課税の計算方法は、所得の種類ごとに異なります。代表的なケースである株式の譲渡と土地・建物の譲渡を例に説明します。

株式を譲渡したとき

株式の譲渡所得は、以下の式で計算できます。

譲渡所得 = 総収入金額(譲渡価額)-(取得費 + 委託手数料等)

申告分離課税の場合は、税率20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)で課税されます。

課税される金額 = 譲渡所得 × 税率20.315%

株式の譲渡による所得は「譲渡所得等」に区分され、株式の譲渡益や配当などを合算して計算します。

先物取引については、株式とは区分が異なり、取引にかかる所得を合算したものを「雑所得等の金額」として取り扱います。そして、その金額に対して、税率20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)が課税されます。

出典:国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」
出典:国税庁「No.1522 先物取引に係る雑所得等の課税の特例」

土地や建物を譲渡したとき

土地や建物の譲渡所得は、以下の式で計算できます。

課税譲渡所得金額 = 収入金額 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額

収入金額は、土地や建物を売ったときに買主から受け取る代金です。未経過の固定資産税や都市計画税を買主から精算して受け取った場合はその金額も含まれます。

土地や建物を譲渡したときの特別控除額は、以下のとおりです。

譲渡の種類特別控除額
収用等により土地建物を譲渡した場合5,000万円
マイホーム(居住用財産)を譲渡した場合
(被相続人の居住用財産(空き家)の場合)
3,000万円
(3,000万円または2,000万円)
特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合2,000万円
特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合1,500万円
特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合
(2009年・2010年に取得した土地等の場合)
1,000万円
農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合800万円
低未利用土地等を譲渡した場合(2020年7月1日から2025年12月31日までの間が対象)100万円
出典:国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」

譲渡所得の税額は、以下の式で計算できます。

  • 長期譲渡所得の税額 = 課税長期譲渡所得金額 × 20.315%
  • 短期譲渡所得の税額 = 課税短期譲渡所得金額 × 39.63%

長期譲渡所得では20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)、短期譲渡所得では39.63%(所得税・復興特別所得税30.63%、住民税9%)の税率が適用されます。

長期譲渡所得は、譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年を超える土地や建物を譲渡したことによる所得のことです。所有期間が5年以内の場合は、短期譲渡所得に分類されます。

出典:国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」

上場株式等の配当所得は「分離課税」と「総合課税」のどちらが得?

上場株式等の配当所得には「申告分離課税」「総合課税」「申告不要」の3つの選択肢があります。どの制度が有利になるかは、所得水準や損失の有無によって異なります。

以下では、それぞれの制度が有利になるケースについて解説します。

申告分離課税が有利なケース

申告分離課税が有利なケースは、以下が挙げられます。

申告分離課税が有利なケース

  • 所得が多い場合(課税所得が695万円超など)
  • 株式の譲渡損失がある場合

申告分離課税を選択すると、ほかの所得と区別して一律20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税率で課税されます。

高所得者でも累進課税のように税率が上がることはなく税率は一定のため、高所得になるほど申告分離課税が有利になる傾向があります。具体的には、課税所得が695万円を超えると、総合課税より申告分離課税が有利になりやすいです。

課税所得が695万円を超えると、一般的に総合課税で所得税・住民税・配当控除を反映した実効税率よりも、申告分離課税の一定税率のほうが低くなります。

また、株式の譲渡損失がある人も、申告分離課税が有利になることがあります。申告分離課税では、株式の譲渡損失との損益通算ができ、損失は最長3年間繰り越して翌年以降の利益と相殺が可能なためです。

出典:国税庁「No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」
出典:国税庁「No.1250 配当所得があるとき(配当控除)」

総合課税が有利なケース

総合課税が有利なケースは、以下が挙げられます。

総合課税が有利なケース

  • 所得が少ない場合(課税所得が695万円未満など)

総合課税を選択すると、税額控除として配当控除が受けられ、ほかの所得と合算したうえで累進課税の税率(5%〜45%)が適用されます。

配当控除の控除率は、課税所得が1,000万円以下の場合、以下のとおりです。

課税所得が1,000万円以下の場合の配当所得の控除率

  • 剰余金の配当等に係る配当所得の場合:10%
  • 証券投資信託の収益の分配に係る配当所得の場合:5%
  • 一般外貨建等証券投資信託の収益の分配に係る配当所得の場合:2.5%

出典:国税庁「No.1250 配当所得があるとき(配当控除)」

課税所得が1,000万円を超える場合は、超過部分の控除率が半分に引き下げられます。

総合課税では所得に応じて税率が上がるため、少額投資や低所得者であるほど有利になる傾向があります。これは、所得が低い場合、控除を考慮した総合課税の税率が申告分離課税の一定税率よりも低くなることが多いためです。

課税所得が695万円未満であれば、申告分離課税より総合課税が有利になりやすいです。

出典:国税庁「No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」

申告不要制度が有利なケース

申告不要制度が有利なケースは、以下が挙げられます。

総合課税が有利なケース

  • 所得が多い場合(課税所得が695万円超など)
  • 株式の譲渡損失がない場合

上場株式等の配当所得等には、20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税率で自動的に源泉徴収が行われます。確定申告をしない場合は、この税率で課税が完結します。

税率は申告分離課税と同じであり、高所得者にとっては総合課税と比較して有利になる傾向があります。具体的には、申告分離課税と同様に課税所得が695万円を超えると総合課税より有利になりやすいです。

また、申告不要制度を利用すれば、源泉徴収で納税が完結し、確定申告の手続きが不要です。

ただし、株式の譲渡損失との損益通算は利用できないため、損益通算を行いたい人は申告分離課税を選ぶ必要があります。

出典:国税庁「No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」

今後は仮想通貨が分離課税になる?

2025年11月現在、仮想通貨の売買による利益は雑所得として総合課税の対象です。

仮想通貨の売買益は、給与所得や事業所得などと合算した金額に対して累進課税の税率で課税され、分離課税の対象にはなりません。

2025年7月には、仮想通貨の業界団体「日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)」が税制改正要望書を金融庁に提出するなど、仮想通貨の税制改正を求める動きが見られます。

今後、株式の取引と同様に分離課税が選択できるようになる可能性もありますが、現時点では仮想通貨の税制改正は実現していません。

出典:国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)」

【関連記事】
仮想通貨(暗号資産)で確定申告は必要?所得税の計算方法についてわかりやすく解説

まとめ

分離課税とは、ほかの所得と区別して課税される方式で、源泉徴収される源泉分離課税と、確定申告が必要な申告分離課税の2種類があります。

分離課税の計算方法は所得の種類によって異なるため、該当する所得がある場合はその計算方法を理解しておくことが重要です。

上場株式等の配当所得については、申告分離課税・総合課税・申告不要の3つの選択肢があります。どの制度が有利になるかは、所得などの状況によって異なります。

上場株式等の配当を受け取っている人は、どのようなケースでどの課税方法が有利になるかを理解しておきましょう。

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詳しくは、記事内「源泉分離課税とは」「申告分離課税とは」をご覧ください。

監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)

神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。

北田 悠策

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