監修 松浦 絢子(弁護士)
準確定申告は、死亡した人の生前の所得を相続人が代理で確定申告する手続きです。準確定申告では、通常の確定申告とは異なる書類の提出も必要になります。
具体的には準確定申告書が必須になるほか、確定申告書付表、委任状、準確定申告の確認書などの提出が求められることがあります。
申告書は通常の確定申告と同じ様式で作成しますが、記入方法が異なる部分もあり、申告にあたっては書き方も理解しておくことが必要です。
本記事では、準確定申告の必要書類や、申告書の書き方・取得方法を解説します。
目次
準確定申告とは
準確定申告は、死亡した人の生前の所得を相続人(包括受遺者を含む)が代理で確定申告する手続きです。
準確定申告の対象になるのは、所得税の納付または還付がある場合です。納付に関しては義務となるため、必ず準確定申告を行わなければなりません。一方で、還付申告は義務ではなく、還付を受けられるときに任意で行います。
申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内です。申告期限を過ぎると加算税や延滞税が科せられる場合があります。
なお、還付申告の期限は、対象となる年の翌年から5年間です。還付申告の期限のルールは、通常の確定申告と共通となります。
出典:国税庁「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」
【関連記事】
準確定申告とは?必要書類や期限、しなかった場合のペナルティについて詳しく解説
準確定申告の必要書類
準確定申告の必要書類は、以下のとおりです。
準確定申告の必要書類
- 準確定申告書
- 死亡した者の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表
- 相続人全員の本人確認書類
- 死亡した人の源泉徴収票
- 控除申請のための書類
- 委任状(準確定申告書用)
- 準確定申告の確認書
準確定申告書や本人確認書類のほか、確定申告書付表、委任状、準確定申告の確認書などの提出が必要になることがあります。
準確定申告書
死亡した人の生前の所得や税額を申告するために、準確定申告書を提出します。
準確定申告書としては通常の確定申告書と共通の様式を使用し、「申告書」の文字横の余白部分に「準確定」と記入します。
確定申告書の様式は、国税庁ホームページからダウンロードが可能です。
準確定申告書は、確定申告書等作成コーナーでは作成できません。手書き、またはe-Taxソフト等で作成する必要があります。
準確定申告書の記入方法は、「準確定申告書の書き方は?」で詳しく紹介しています。
死亡した者の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表
相続人が複数人いる場合やe-Taxで申告する場合は、確定申告書付表の提出が必要です。確定申告書付表には、各相続人の氏名や住所などを記入します。
確定申告書付表の様式は、国税庁ホームページの「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」からダウンロード可能です。
各項目の記入方法は「確定申告書付表の書き方」で詳しく紹介します。
出典:国税庁「所得税及び復興特別所得税の準確定申告のe-Tax対応について」
相続人全員の本人確認書類
準確定申告では、全ての相続人のマイナンバーを準確定申告書に記入するとともに、本人確認書類の提示または写しの添付が必要です。
本人確認書類は、以下のいずれかの方法で提示します。
本人確認書類の提示方法
- マイナンバーカード(個人番号カード)を持っている場合:カードの表面および裏面の写しを添付
- マイナンバーカードを持っていない場合:「番号確認書類(通知カード、マイナンバー入り住民票の写しなど)」と「身元確認書類(運転免許証、パスポートなど)」の両方を提示
死亡した人の源泉徴収票
亡くなった人の所得金額を確認するためには、源泉徴収票が必要です。源泉徴収票は亡くなった人の勤務先から相続人に交付されるので、忘れずに受け取ってください。
なお、亡くなった人が個人事業主である場合、請求書や領収書など事業に関わる帳票書類を保管する必要があります。
控除申請のための書類
死亡した人の各種控除を申請する際は、通常の確定申告と同様に、控除証明書などの添付書類が必要になることがあります。
たとえば、医療費控除の場合は医療費控除の明細書を添付します。また、5年間、対象となる医療費が記載された医療費通知や領収書の保管が必要です。
なお、生命保険料控除、地震保険料控除、寄附金控除などの適用を受ける場合は、紙ではなく、電子的交付で控除証明書を受け取ることが可能です。マイナポータルや保険会社のマイページなどで交付が受けられます。
出典:国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
【関連記事】
医療費控除とは?確定申告のやり方・計算方法についてわかりやすく解説
委任状(準確定申告書用)
相続人が複数いる場合、準確定申告により還付金を代表者がまとめて受け取る際は、委任状の提出が必要です。一方、納付(税金を支払う)の場合や、相続人が1人の場合、またはそれぞれが個別に還付金を受け取る場合には、委任状の提出は不要です。
準確定申告書用の委任状の様式は、国税庁ホームページの「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」からダウンロードできます。
準確定申告の確認書
準確定申告書をe-Taxで提出する場合は、相続人が2人以上いるときに各相続人が内容確認・署名した「確認書」をPDF化して送信する必要があります。
国税庁ホームページの「所得税及び復興特別所得税の準確定申告のe-Tax対応について」から申告方法を確認でき、確認書の様式のダウンロードも可能です。
準確定申告書の書き方は?
準確定申告では、通常の確定申告と共通の申告書様式を使用し、「申告書」の横の余白部分に「準確定」と記入します。
記入方法の多くは通常の確定申告と同じですが、住所・氏名欄や個人番号の記入方法など、一部異なる点があるため、押さえておきましょう。
「住所」「氏名」の欄の記入方法
申告書第一表の上部にある「住所」「氏名」欄には、死亡した人の住所・氏名を記入し、氏名の頭に「被相続人」と記入します。
さらに相続人が1人だけで申告書付表の提出を省略する場合、「住所」「氏名」欄は2段に分けて、以下のように記入します。
| 上段 | ・死亡した人について記入 ・氏名上部に死亡年月日を記入 |
|---|---|
| 下段 | ・相続人について記入 ・相続人の氏名を記入する際には、氏名の頭部に「相続人」と書いて署名する(相続人全員の署名が必要) |
個人番号の記入方法
準確定申告では、相続人全員の個人番号(マイナンバー)を準確定申告書または申告書付表に記入します。死亡した人の個人番号は記入不要です。
相続人が1人で申告書付表の提出を省略する場合は、申告書上部の余白に相続人の個人番号を記入します。
一方、相続人が2人以上の場合は準確定申告書ではなく、申告書付表「5 相続人等に関する事項」欄の「個人番号」欄に各相続人の個人番号を記入します。
出典:国税庁「死亡した者の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表」
確定申告書付表の書き方は?
確定申告書付表の各項目の書き方は、以下のとおりです。
| 項目 | 記入内容 | |
|---|---|---|
| 1 死亡した者の住所・氏名欄 | 準確定申告書に記載した住所地を記入 | |
| 2 死亡した者の納める税または還付される税金 | 準確定申告書の「第3期分の税額」欄に記載した金額を転記 | |
| 3 相続人等の代表者の指定 | 相続人のうち死亡した人の国税に関する書類を代表して受領する人を記入 | |
| 4 限定承認の有無 | 限定承認(相続で得た財産を限度に債務を引き続く手続き)をしているときに「限定承認」を丸で囲む | |
| 5 相続人等に関する事項 | 住所 | 相続人が申告書付表を提出するときの住所地を記入 |
| 氏名 | 申告書付表で申告する相続人が署名 | |
| 個人番号 | 相続人が2人以上いる場合には相続人の個人番号を記入 | |
| 相続分…B | ・法定相続分により財産を取得している人は「法定」、遺言による指定相続分により財産を取得している人は「指定」の文字を丸で囲んだ上、この割合を記入 ・子や直系尊属、兄弟姉妹が2人以上いる場合や相続人のほか包括受遺者がいる場合などには、各人の相続分の割合の合計が1となるように調整した上、各人の割合を記入 | |
| 相続財産の価額 | ・各人が相続や包括遺贈により取得する積極財産の相続時の時価を記入 ・相続財産の分割がまだ行われていないときは、積極財産の総額に各人の相続分(相続分…Bに記載の各人の割合)を乗じた金額をそれぞれ記入 | |
| 6 納める税金等 | 各人の納付税額 | ・「2 死亡した者の納める税金または還付される税金」欄が黒字の場合に記入 ・納める税金に各人の相続分(相続分…Bに記載の各人の割合)を乗じた金額を記入 |
| 各人の還付金額 | ・「2 死亡した者の納める税金または還付される税金」欄が赤字の場合に記入 ・還付される税金が相続人や包括受遺者の協議により分割されているときはその割合により請求できる還付金額を記入。そうでないときは各人が相続や包括遺贈により取得する財産の相続分に応じて求めた金額を記入 ・相続人や包括受遺者が受領すべき還付金の受領を相続人の代表者等に委任する場合、申告書付表とは別に委任状の提出が必要 | |
| 7 還付される税金の受け取り場所 | ・銀行などの預金口座への振り込みを希望する場合は、銀行などの名称、預金の種類、口座番号を記入 ・ゆうちょ銀行の貯金口座への振り込みを希望する場合は、貯金総合通帳の記号番号を該当する項目に記入 | |
確定申告書付表の各項目の書き方は、死亡した者の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表の様式のページからも確認できます。
準確定申告の手続きの流れ
準確定申告の手続きは、以下の流れで進めていきます。


連署で1通を提出する場合は、相続人全員の署名が必要になるため、まずは相続人全員に申告が必要になることを連絡しましょう。その後は必要書類を準備し、相続人全員の署名を済ませたうえで実際に税務署へ申告します。
申告書類の提出先は、被相続人の死亡当時の納税地を管轄する税務署です。税務署へ直接持参する方法のほか、郵送やe-Tax(電子申告)でも提出できます。
準確定申告の手順は、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】
準確定申告とは?必要書類や期限、しなかった場合のペナルティについて詳しく解説
相続人が複数人いるときの手続き方法は?
相続人が複数いる場合の準確定申告は、代表者を決めて手続きを進めることが一般的です。この場合、連署で1通の準確定申告書を提出します。ただし、相続人の氏名を付記して個別に準確定申告書を提出しても差し支えありません。
また、還付金を代表者が受け取るときは委任状の提出が必要です。e-Taxで提出する場合は、全員の署名がある確認書を提出します。
出典:e-Gov法令検索「所得税法施行令(昭和四十年政令第九十六号)」
まとめ
準確定申告では、準確定申告書や相続人全員の本人確認書類のほか、確定申告書付表、控除証明書、委任状、確認書などが必要になることがあります。
通常の確定申告書を使いますが、上部に「準確定」と記し、一部、氏名・住所・個人番号の記載ルールが異なります。
準確定申告は、相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内が期限です。必要書類を確認し、期限内に正しく手続きを行いましょう。
確定申告をかんたんに終わらせる方法
確定申告の期間は1ヶ月です。それまでに正確な内容の書類を作成し、申告・納税しなければいけません。
ほかにも、青色申告の場合に受けられる特別控除で、最大65万円を適用するためにはe-Taxの利用が必須条件であり、はじめての人には難しい場面が増えることが予想されます。
そこでおすすめしたいのが、確定申告ソフト「freee会計」の活用です。
freee会計は、〇✕形式の質問で確定申告に必要な書類作成をやさしくサポートします。また、所得額や控除額の計算は自動で行ってくれるため、計算・入力ミスの削減できるでしょう。
ここからは、freee会計を利用するメリットについて紹介します。
1.銀行口座やクレジットカードは同期して自動入力が可能!
確定申告を行うためには、1年間のお金にまつわる取引を正しく記帳しなければなりません。自身で1つずつ手作業で記録していくには手間がかかります。
freee会計では、銀行口座やクレジットカードの同期が可能で、利用した内容が自動で入力されていきます。
日付や金額を自動入力するだけでなく、勘定科目も予測して入力してくれるため、日々の記帳がほぼ自動化でき、工数削減につながります。
2.現金取引の入力もカンタン!
会計ソフトでも現金取引の場合は自身で入力し、登録しなければなりません。
freee会計は、現金での支払いも「いつ」「どこで」「何に使ったか」を家計簿感覚で入力できるので、毎日手軽に帳簿付けが可能です。
自動的に複式簿記の形に変換してくれるため、会計処理の経験がない人でも正確に記帳ができます。
さらに有料プランでは、チャットで確定申告について質問ができるようになるので、わからないことがあったらすぐに相談できます。また、オプションサービスには電話相談もあるので、直接相談できるのもメリットの1つです。
freee会計の価格・プランについてはこちらをご覧ください。
3.〇✕形式の質問に答えるだけで各種控除や所得税の金額を自動で算出できる!
各種保険やふるさと納税、住宅ローンなどを利用している場合は控除の対象となり、確定申告することで節税につながる場合があります。控除の種類によって控除額や計算方法、条件は異なるため、事前に調べなければなりません。
freee会計なら、質問に答えることで控除額を自動で算出できるので、自身で調べたり、計算したりする手間も省略できます。
4.確定申告書を自動作成!
freee会計は取引内容や質問の回答をもとに確定申告書を自動で作成できます。自動作成した確定申告書に抜け漏れがないことを確認したら、税務署へ郵送もしくは電子申告などで提出して、納税をすれば確定申告は完了です。
また、freee会計はe-Tax(電子申告)にも対応しています。e-Taxからの申告は24時間可能で、税務署へ行く必要もありません。青色申告であれば控除額が10万円分上乗せされるので、節税効果がさらに高くなります。
e-Tax(電子申告)を検討されている方はこちらをご覧ください。
freee会計を使うとどれくらいお得?
freee会計には、会計初心者の方からも「本当に簡単に終わった!」というたくさんの声をいただいています。
税理士などの専門家に代行依頼をすると、確定申告書類の作成に5万円〜10万円程度かかってしまいます。freee会計なら月額980円(※年払いで契約した場合)から利用でき、自分でも簡単に確定申告書の作成・提出までを完了できます。
余裕をもって確定申告を迎えるためにも、ぜひfreee会計の利用をご検討ください。
よくある質問
準確定申告の添付書類は?
準確定申告の必要書類は、以下が挙げられます。
準確定申告の必要書類
- 準確定申告書
- 死亡した者の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表
- 相続人全員の本人確認書類
- 死亡した人の源泉徴収票
- 控除申請のための書類
- 委任状(準確定申告書用)
- 準確定申告の確認書
詳しくは、記事内「準確定申告の必要書類」をご覧ください。
準確定申告書のダウンロードはどこからできる?
準確定申告専用の様式は存在せず、通常の確定申告書と共通の様式を使用します。確定申告書の様式は、国税庁ホームページからダウンロードが可能です。
申告書上部の「申告書」の文字の横にある余白部分には「準確定」と記入します。
詳しくは、記事内「準確定申告書」をご覧ください。
監修 松浦 絢子弁護士
松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。


