確定申告の基礎知識

医療費控除をさかのぼって申告するやり方は?5年間の期限や申告方法を解説

監修 松浦 絢子(弁護士)

医療費控除をさかのぼって申告するやり方は?5年間の期限や申告方法を解説

確定申告済みの年の医療費は、申告期限から5年以内であれば「更正の請求」により医療費控除を適用できます。

また、年末調整を受けた場合でも、その課税年度の医療費については、翌年から5年以内であれば「還付申告」により医療費控除の適用が可能です。

どちらも5年間さかのぼって申告が可能ですが、期限の詳細や必要な手続きには違いがあります。

本記事では、医療費控除をさかのぼって申告する際の期限や手続き方法を解説します。

目次

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医療費控除は5年間さかのぼって申告できる

医療費控除をさかのぼって申告するときに必要な手続きと期限は、以下のとおりです。

「確定申告済み」の年の医療費をさかのぼって申告する場合「年末調整済み」の年の医療費をさかのぼって申告する場合
必要な手続き更正の請求還付申告
期限確定申告の期限から5年間課税年度の翌年から5年間
どれくらいさかのぼって申告できる?現在が2026年の場合
~3月16日:2020年の医療費まで
3月17日~:2021年の医療費まで
現在が2026年の場合
2021年の医療費まで
出典:国税庁「A1-2、H1-1 所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続」
出典:国税庁「No.2030 還付申告」

確定申告をした年の医療費控除をあとから申告する場合、更正の請求を行います。一方、確定申告をしていない場合は、年末調整をした人も含め、還付申告で対応します。

「確定申告済みの年」の医療費控除をさかのぼって申告する場合

確定申告が済んでいる年に支払った医療費を、あとから医療費控除として適用したい場合は、「更正の請求」という手続きを行います。

更正の請求は、確定申告で税額を多く申告してしまった場合や、還付される税額を少なく申告していた場合に、確定申告の期限後に修正を行うための手続きです。更正の請求によって医療費控除を適用すれば、その差額分の税金が還付されます。

更正の請求は、確定申告の期限から5年以内であれば実施が可能です。確定申告の期限は、課税年度の翌年3月15日で、期限が土日祝日の場合は翌開庁日が期限となります。

たとえば、2020年に支払った医療費の場合、この年の確定申告の期限は2021年3月15日(月)であるため、2026年3月16日(月)まで更正の請求が可能です(2026年3月15日は日曜日のため、翌開庁日が期限となります)。

なお、確定申告の義務のない人が還付を受けるために申告する「還付申告」に対して更正の請求を行う場合は、申告書を提出した日を起点に5年以内となります。

出典:国税庁「A1-2、H1-1 所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続」

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確定申告の申告漏れはさかのぼって申告できる?対象期間・必要書類・やり方を解説

「年末調整のみだった年」の医療費控除をさかのぼって申告する場合

確定申告を行わず年末調整のみだった年に支払った医療費を、あとから医療費控除として適用したい場合は、「還付申告」という手続きを行います。

還付申告とは、予定納税や源泉徴収で納めた所得税が、本来納めるべき金額より多かった場合に、確定申告をすることで還付を受けられる制度です。

還付申告の期限は、課税年度の翌年から5年間(翌年1月1日から5年後の12月31日)です。たとえば、2021年(1~12月)に支払った医療費は、2026年12月末まで申告できます。

つまり、現在が2026年とすると、2021年1月1日の医療費までさかのぼって申告できます。

出典:国税庁「No.2030 還付申告」

医療費控除の対象となる費用

医療費控除の対象となる具体的な費用は、以下のとおりです。

カテゴリ医療費控除の対象となる費用例
通院
入院
・病院での診療費/治療費/入院費
・入院時の部屋代(差額ベッド代を除く)/食事代
・通院にかかった交通費
・治療のためのリハビリ/マッサージ費用
・医師等の送迎費用
・介護保険の対象となる介護費用
医薬品
医療器具
・医師の処方箋をもとに購入した医薬品の費用
・治療に直接必要な医療器具の購入費用(松葉杖・コルセット・補聴器など)
歯科治療・歯の治療費(保険適用外の費用を含む)
・治療目的とした歯列矯正費用
眼科治療・レーシック治療(視力回復レーザー手術)費用
・オルソケラトロジー治療(角膜矯正療法)費用
・医師の治療が必要な症状がある場合の眼鏡・コンタクト購入費用
妊娠・出産・妊娠と診断されてからの定期検診や検査、通院にかかる費用
・病院に支払う入院中の食事代
・不妊治療費用
出典:国税庁「No.1122 医療費控除の対象となる医療費」

美容整形・人間ドック・健康診断の費用など、美容目的や健康増進を目的としたものについては医療費控除の対象外です。

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医療費控除とは?確定申告のやり方・計算方法についてわかりやすく解説

医療費控除の計算方法

医療費控除は、以下の計算式で算出できます。

■1年間の総所得金額等が200万円以上の医療費控除の計算式

1年間の総所得金額等が200万円以上の医療費控除の計算式


■1年間の総所得金額等が200万円未満の医療費控除の計算式

1年間の総所得金額等が200万円未満の医療費控除の計算式


医療費控除の適用により、その控除額に相当する分だけ課税所得が減少し、所得税が軽減されます。修正前後の所得税額を計算することで、その差額分の還付金額が算出可能です。

出典:国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」

医療費控除をさかのぼって申告するやり方

医療費控除をさかのぼって申告するときの手続き方法を確認しましょう。以下では、更正の請求・還付申告のやり方をそれぞれ紹介します。

確定申告済みの年の分の申告方法【更正の請求】

更正の請求で医療費控除を適用するための手続き方法は、主に以下の2つです。

確定申告済みの年の分の申告方法【更正の請求】

  • 確定申告書等作成コーナーで作成して申告する
  • 書面で作成して申告する

確定申告書等作成コーナーで作成して申告する

確定申告書等作成コーナーとは、国税庁が提供する、インターネットで確定申告書を作成するためのサービスです。

確定申告書等作成コーナーでは、更正の請求書も作成できます。スマホでは更正の請求書は作成できないので、パソコンから作成しましょう。

手続きを開始するには、国税庁 確定申告書等作成コーナーのトップ画面にアクセスします。下にスクロールして「新規に更正の請求書・修正申告書を作成する」をクリックしましょう。

確定申告書等作成コーナーで更正の請求書を作成する流れ

  1. トップ画面にアクセス(「新規に更正の請求書・修正申告書を作成する」をクリック)
  2. 事前確認(マイナンバーカードの所有状況、手続きの種類の選択など)
  3. 更正の請求書の作成
  4. 更正の請求書の送信・印刷

「作成する更正の請求書・修正申告書の選択」の画面では、更正の請求をする年分を選択し、「所得税の更正の請求書・修正申告書」をクリックします。

「修正項目の選択」の画面では、「所得から差し引かれる金額(所得控除)の修正項目」のプルダウンを開き、「医療費控除」にチェックを入れて「次へ」をクリックします。

次の画面で医療費控除について「訂正する」をクリックし、画面に沿って必要な情報を入力します。

確定申告書等作成コーナーで更正の請求を作成した際は、そのままe-Taxで送信が可能です。画面に沿って入力を進め、作成・送信まで行いましょう。

また、更正の請求では、請求の事実を証明する書類の提出が必要です。医療費控除の場合は、支払った医療費の全ての領収書や医療費通知を提出します。添付書類の提出は、e-Taxから「イメージデータによる提出」が可能です。

添付書類のe-Taxからの提出方法についての詳細は、国税庁e-TaxのWebサイトの添付書類のイメージデータによる提出についてから確認できます。

出典:国税庁 確定申告書等作成コーナー よくある質問「申告の内容を間違えていたときはどうすればいいですか?」
出典:国税庁 確定申告書等作成コーナー「申告の内容を間違えていた場合の手続」
出典:国税庁「A1-2、H1-1 所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続」
出典:国税庁e-Tax「イメージデータで提出可能な添付書類(申請・届出等(申告所得税関係))」
出典:国税庁e-Tax「添付書類のイメージデータによる提出について」


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書面で作成して申告する

書面で更正の請求書などを作成のうえ、税務署に持参または郵送して提出することも可能です。更正の請求書の様式は、国税庁のWebサイトからダウンロードできます。

「請求の目的となった申告又は処分の種類」「更正の請求をする理由、請求をするに至った事情の詳細等」は、たとえば、以下のような内容を記入します。

記入欄書き方
請求の目的となった申告又は処分の種類令和○年分確定申告
更正の請求をする理由、請求をするに至った事情の詳細等令和〇年〇月〇日に診察を受けた際、△△病院に支払った医療費□□円について記載漏れがあり、医療費控除額が過少となっていたため

「請求額の計算書」では、主に以下の項目を記入します。

請求額の計算書の主な記入項目(更正の請求書)

  • 総合課税の所得金額
  • 所得から差し引かれる金額(医療費控除)
  • 課税される所得金額
  • 税額
  • 差引所得税額
  • 復興特別所得税額
  • 所得税及び復興特別所得税の額
  • 申告納税額
  • 第3期分の税額(納める税金/還付される税金)
  • この請求前の第3期分の税額
  • 第3期分の税額の差額

「請求額の計算書」の各欄に記入するのは、修正後の金額です。たとえば、医療費控除を10万円⇒15万円に修正する場合は、医療費控除の欄には150,000円と記入します。

各欄の記入を進め、「請求額の計算書」の右下の最後のところで「この請求前の第3期分の税額」と「第3期分の税額の差額」をそれぞれ記入して、還付される金額を計算します。

「還付される税金の受け取り場所」まで記入を済ませ、税務署へ提出しましょう。

また、更正の請求では、請求の事実を証明する書類の提出が必要です。医療費控除の場合は、支払った医療費の全ての領収書や医療費通知を添付します。

出典:国税庁「A1-2、H1-1 所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続」

確定申告を行わず年末調整のみだった年の分の申告方法【還付申告】

還付申告は、以下の方法で手続きが可能です。

確定申告を行わず年末調整のみだった年の分の申告方法【還付申告】

  • 確定申告書等作成コーナーで作成・送信する
  • 書面で作成して提出する

還付申告書といった書類はなく、通常の確定申告書の様式に記入して提出することで手続きできます。

確定申告書等作成コーナーでの作成・送信は、パソコンのほかスマホからも可能です。以下では、スマホで還付申告する方法を紹介します。

スマホから申告する

スマホから還付申告を行う場合は、国税庁の確定申告書等作成コーナーのトップ画面にある「作成開始」をタップします。

「作成開始」を選択後の画面では、「作成する申告書等の選択」の項目があります。「所得税」を選択しましょう。

作成のための事前準備(手続きの種類の選択など)をしたうえで、実際に申告書を作成・提出する流れとなります。画面に沿って作成後、e-Taxからそのまま提出が可能です。確定申告書等作成コーナーで作成した申告書を印刷して、書面で提出することもできます。

出典:国税庁 確定申告書等作成コーナー「印刷した申告書等の提出方法・提出期限」

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今年分の確定申告で医療費控除を申請する方法

今年分の医療費控除を申請するには、確定申告が必要です。個人事業主だけでなく、年末調整を受けた会社員も、医療費控除を受けるには確定申告を行う必要があります。

書面で提出する場合、確定申告の流れは次のとおりです。

医療費控除の申請手順(確定申告)

  1. 医療費控除の対象となる通知書や領収書をまとめ、1年間の支払総額を確認
  2. 医療費控除額を計算
  3. 確定申告書と医療費控除の明細書を作成
  4. 必要書類をそろえ、税務署に提出

上記の手続き方法のほか、確定申告書等作成コーナーで作成してe-Taxなどで提出することも可能です。

確定申告の期限前であれば、すでに申告を済ませていても、改めて確定申告書を提出すれば、訂正申告が可能です。訂正申告のための特別な手続きはなく、通常の確定申告をやり直すことで、申告内容が最新のものに上書きされます。

確定申告の手順の詳細は「確定申告で医療費控除を受けるには?やり方・計算方法をわかりやすく解説」で解説しています。

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まとめ

個人事業主などが確定申告済みの年の医療費をさかのぼって申告する場合は、更正の請求が必要です。期限は確定申告の期限から5年間となります。

一方、会社員などが年末調整済みの年の医療費をさかのぼって申告する場合、還付申告が必要です。期限は課税年度の翌年から5年間となります。

これらの手続きは、それぞれ確定申告書等作成コーナーから作成・送信が可能です。還付申告はスマホからでも作成・送信ができます。必要な手続きや期限を把握して、期限内に申告を行いましょう。

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よくある質問

e-Taxで医療費控除をさかのぼって申告するやり方は?

確定申告済みの個人事業主などが、医療費控除をさかのぼって申告するには「更正の請求」という手続きを行います。

一方、年末調整済みの会社員が、医療費控除をさかのぼって申告するには「還付申告」という手続きを行います。

どちらも確定申告書等作成コーナーで作成後、e-Taxなどで提出が可能です。詳しくは「確定申告済みの年の分の申告方法【更正の請求】」「確定申告を行わず年末調整のみだった年の分の申告方法【還付申告】」をご覧ください。

スマホで医療費控除をさかのぼって申告するやり方は?

年末調整済みの会社員が還付申告で医療費控除をさかのぼって申告する場合、確定申告書等作成コーナーからスマホで申告書の作成・提出が可能です。

一方で、確定申告済みの個人事業主が更正の請求で医療費控除をさかのぼって申告する場合、確定申告書等作成コーナーからスマホで手続きはできません。

スマホから医療費控除をさかのぼって申告する手続き方法について詳しくは「スマホから申告する」をご覧ください。

監修 松浦 絢子弁護士

松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。

松浦 絢子弁護士

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