監修 北田 悠策 公認会計士・税理士
外国税額控除は、外国で得た所得に課税された際に、外国と日本での二重課税を軽減するための制度です。
海外投資を行っている人や海外勤務で給与所得を得ている人などは、外国で所得税を源泉徴収されたうえで、日本でも所得税が課される可能性があります。二重課税を回避するためにも、外国税額控除制度の正しい理解が重要です。
本記事では、外国税額控除の仕組みや対象となる条件・所得、外国税額控除額の計算方法を解説します。また、外国税額控除の適用で必要な確定申告の方法もあわせて紹介します。
目次
外国税額控除とは
外国税額控除とは、日本に居住地がある人が外国で所得を得た際に、外国と日本の双方で税金を納める「二重課税」を回避するための制度です。
日本では、居住者に対して居住地国課税(国外所得を含む全世界所得に課税する方式)を採用しており、国外で得た所得にも所得税が課されます。
一方、国外には源泉地国課税(所得が生じた国で課税する方式)を採用する国もあります。
たとえば、源泉地国課税の国の外国証券から配当金を受け取った場合、その配当金には外国と日本の両方で所得税が課されます。
外国税額控除が適用されれば、外国で支払った税額を日本の税額から控除できるため、二重課税の軽減が可能です。
外国税額控除は個人だけでなく法人が対象となる制度もあり、法人の場合は法人税法で別途規定されています。
出典:国税庁「No.1240 居住者に係る外国税額控除」
出典:内閣府「税制調査会 第27回 資料(第2部5章)」
外国税額控除の対象となる条件
外国税額控除の対象となるのは、日本と外国の両方で所得に課税される(二重課税が発生する)場合です。適用を受けるための主な条件は以下のとおりです。
- 日本国内に居住地があること(居住者であること)
- 外国で生じた所得があり、その国で外国所得税を納めていること
- 確定申告を行うこと
居住者とは、日本国内に住所がある人、または過去1年以上にわたり日本に居所(実際に住んでいる場所)がある人を指します。
外国税額控除は、居住者のうち外国で生じた所得があり、その国で所得税を納めた人が対象です。
また、外国税額控除は年末調整では申請できないため、確定申告が必要です。
なお、非居住者でも日本に恒久的施設があり、その施設に関連する国内所得に日本と外国の双方で課税される場合は、外国税額控除の対象となります。
外国税額控除の対象となる税金
外国税額控除の対象となるのは、外国の法令に基づき課税された税のうち、日本の所得税に相当すると認められる税金で、その範囲は以下のとおりです。
・超過所得税その他個人の所得の特定の部分を課税標準として課される税
・個人の所得またはその特定の部分を課税標準として課される税の附加税
・個人の所得を課税標準として課される税と同一の税目に属する税で、個人の特定の所得につき、徴税上の便宜のため、所得に代えて収入金額その他これに準ずるものを課税標準として課されるもの
・個人の特定の所得につき、所得を課税標準とする税に代え、個人の収入金額その他これに準ずるものを課税標準として課される税
具体的には、国外で生じた利子所得や配当所得、不動産所得、事業所得などが挙げられます。
外国税額控除の対象とならない税金
外国で納付した税であっても、以下の税は外国所得税には該当しないため、外国税額控除の対象外です。
・税を納付する人が、その税の納付後、任意にその金額の全部または一部の還付を請求できる税
・税を納付する人が、税の納付が猶予される期間を任意に定めることができる税
・複数の税率の中から税を納付することとなる人と外国もしくはその地方公共団体またはこれらの者により税率を合意する権限を付与された者との合意により税率が決定された税のうち一定の部分
・外国所得税に附帯して課される附帯税に相当する税その他これに類する税
また、外国所得税に含まれる税でも、「通常の取引と認められない取引」に該当する場合は、外国税額控除の対象外となります。
外国税額控除額の計算方法
外国税額控除では、所得税の控除限度額と実際に支払った外国所得税額を比較し、少ないほうの金額が控除上限額として適用されます。外国税額控除額の計算手順は以下のとおりです。
各手順の詳しい内容を解説します。
1 所得税の控除限度額を計算する
外国税額控除での所得税の控除限度額は、以下の計算式で求められます。
所得税の控除限度額 = 所得税額 × (国外所得金額 ÷ 所得総額)
たとえば、外国税額控除の適用を受ける年の所得総額が500万円で、そのうち国外所得金額が200万円、その年分の所得税額が572,500円の場合、控除限度額は以下のとおりです。
所得税の控除限度額 = 572,500円 × 2,000,000円 ÷ 5,000,000円 = 229,000円
このように、所得税の控除限度額は、所得総額のうち国外で得た所得金額が占める割合に応じて決まります。今回のケースでは、国外所得金額の占める割合が所得総額の40%を占めていたため、所得税額の40%が限度額になります。
2 所得税の控除限度額と外国所得税額を比較する
所得税の控除限度額と外国所得税額(外国で支払った所得税額)を比較し、控除可能な金額を算出します。
外国所得税額が控除限度額を下回る場合、外国所得税額の全額が外国税額控除の対象です。たとえば、所得税の控除限度額が22万9,000円、外国所得税額が20万円であれば、日本で支払う所得税額から20万円を差し引くことができます。
一方、外国所得税額が控除限度額を超える場合は、その年分の所得税の控除限度額と、以下のうち少ないほうの金額の合計額が外国税額控除額となります。
控除額が上限を超えた際の計算方法
- 外国所得税額から控除限度額を差し引いた金額
- 復興特別所得税の控除限度額
復興特別所得税の控除限度額は、所得税の控除限度額と同様に税額に国外所得の割合を掛けて算出します。
復興特別所得税の控除限度額 = 復興特別所得税額 × (国外所得金額 ÷ 所得総額)
3 住民税の控除額を計算する
所得税で控除しきれなかった外国所得税がある場合には、残額が住民税の控除限度額を超えない範囲で控除されます。
住民税の控除限度額 = 所得税の控除限度額 × 30%
30%の割合は道府県民税と市町村民税で構成されており、居住地によって内訳が異なります。
| 道府県民税 | 市町村民税 | |
|---|---|---|
| 政令指定都市以外に住所がある人 | 12% | 18% |
| 政令指定都市に住所がある人 | 6% | 24% |
なお、住民税でも控除しきれなかった分は、翌年以降3年間にわたって繰越控除が認められています。また、過去3年間に控除余裕額(控除限度額が外国所得税額を上回った差額)がある場合は、控除余裕額の範囲内で控除が可能です。
外国税額控除を確定申告するやり方
外国税額控除を受けるためには、確定申告が必要です。以下では、外国税額控除の確定申告に必要な書類や記載例、提出方法を解説します。
外国税額控除の確定申告に必要な書類
外国税額控除の適用を受けるには、確定申告書に必要事項を記入し、金額を証明する書類を添付する必要があります。提出が必要な書類は以下のとおりです。
確定申告で提出する主な書類
- 確定申告書
- 外国税額控除に関する明細書
- 外国所得税が課されたことを証明する書類
- 国外源泉所得の計算に関する明細書
確定申告書と外国税額控除に関する明細書は、国税庁のWebサイトからダウンロードできます。
外国所得税が課されたことを証明する書類には、現地で発行された納税証明書や源泉徴収票、証券会社が発行した年間取引報告書などが含まれます。
国外源泉所得の計算に関する明細書は、国外所得が多数あって計算が複雑な場合に、その計算過程を記入するための書類です。
外国税額控除の確定申告の記載例
外国税額控除は、確定申告書の第一表に記載します。申告書への記載例は以下のとおりです。
外国税額控除は、「税金の計算」部分にある「外国税額控除等㊻~㊼欄」に、外国税額控除に関する明細書で算出した金額を転記します。
たとえば、外国所得税が控除限度額を下回り、復興特別所得税からも控除する場合は、区分の項目に「1」を記入します。
外国税額控除の提出方法
外国税額控除を含む確定申告は、以下のいずれかの方法で所轄税務署に提出します。
確定申告の提出方法
- 所轄税務署受付への提出
- 所轄税務署または業務センターへの郵送
- e-Taxで申告
申告書の提出期限は、通常、申告年度の翌年の2月16日から3月15日までです。確定申告書とともに、外国税額控除に関する明細書などの必要書類を添付します。
外国税額控除の確定申告をe-Taxでするやり方
e-Taxを利用すると、税務署に赴くことなくオンラインで申告できます。
パソコンやスマホでe-TaxのWebサイトにアクセスし、確定申告書等作成コーナーで「作成開始」を選択すると、申告書の作成が可能です。表示される案内にしたがい、住所や氏名、収入などを入力します。
確定申告書等作成コーナーで確定申告する際に、外国税額控除を入力するのは「控除の入力」画面です。表示される項目のなかから「外国税額控除等」を選択し、必要項目を入力します。
外国税額控除の項目を入力し、ほかの書類作成を終えたら、マイナンバーカードで電子署名を行い、オンラインで提出します。
外国税額控除を確定申告する際の注意点
外国税額控除には、適用を受ける際に注意すべき点がいくつかあります。特に、対象外となるケースや適用される控除額に関しては事前に内容を把握しておきましょう。
外国税額控除の対象とならない税金がある
外国税額控除は、日本の所得税と同様の性質をもつ外国の所得税が対象です。外国で支払った税金であっても、付加価値税や関税、固定資産税、延滞税などは外国税額控除の対象外です。
また、NISA口座で受け取った配当金には日本の所得税が課されないため、外国所得税が課されていても外国税額控除の対象とはなりません。
外国税額控除は限度額と支払税額の少ないほうが適用される
外国税額控除は控除限度額を上限とし、外国で支払った所得税分の控除が受けられる制度です。
ただし、控除限度額の計算が必要となり、年末調整では適用を受けられないため、確定申告を行わなければなりません。外国税額控除によって二重課税を軽減できますが、計算が複雑である点や手続きに手間がかかる点はデメリットになり得ます。
まとめ
外国税額控除は、国際間での二重課税を防ぐための制度で、日本で支払う所得税から外国ですでに納付した所得税を差し引けます。日本に居住地があり、外国でも所得がある人は、外国税額控除の対象となるか確認しましょう。
特に複数の国外所得がある場合には外国税額控除の限度額の計算が複雑になることがあります。疑問点や不明点は、税務署や税理士などの専門家に相談することも検討しましょう。
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よくある質問
外国税額控除とは?
日本に居住地がある人が外国で所得税を支払った際に、日本の所得税から控除限度額の範囲内で控除できる制度です。外国と日本で所得税が二重課税される事態を避けるために設けられています。
詳しくは「外国税額控除とは」をご覧ください。
外国税額控除で税金はいくら戻る?
控除限度額の範囲内で、支払った外国所得税を日本の所得税額から控除できます。たとえば、外国所得税が控除限度額を下回る場合、支払った外国所得税の全額が控除の対象です。
詳しくは、記事内「外国税額控除額の計算方法」をご覧ください。
外国税額控除の適用を受けるためには?
外国税額控除の要件を満たしたうえで、確定申告が必要です。確定申告書の該当する項目に必要事項を記入し、外国税額控除に関する明細書や外国所得税が課されたことを証明する書類などを添付して提出します。
詳しくは、記事内「外国税額控除を確定申告するやり方」をご覧ください。
監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。
