監修 前田 昂平 公認会計士・税理士
延滞税とは、法定期限までに申告しなかった場合や、支払うべき税金を納付しなかった場合に、その保留期間に応じて発生する附帯税のことです。
延滞税は、期限から遅れた日数に応じて加算されるため、気づかず放置してしまうと負担額が大きくなることもあります。
本記事では、延滞税の基本的な考え方や、延滞税が課される主なケース、延滞税の税率や計算方法について解説します。
目次
- 延滞税とは?納付漏れで発生するペナルティ
- 延滞税が発生する主なケース
- 申告・納税が期限に遅れた場合(期限後申告)
- 申告した税額が不足していた場合(修正申告)
- 申告はしたが、納税だけ遅れた場合
- 税務調査などで申告漏れを指摘された場合(更正・決定)
- 延滞税だけじゃない?知っておきたい「附帯税」の種類
- 罰則的な意味合いが強い「加算税」とは
- 延滞税の計算方法|税率と計算期間
- 延滞税の計算式
- 計算の基礎となる「本税額」と「滞納日数」
- 延滞税の税率(割合)
- 延滞税の計算シミュレーション
- 1. 確定申告(納税額30万円)が3ヶ月(90日)遅れた場合
- 2. 修正申告で50万円の追加納税が発生(納期限から1年後)
- 延滞税の納付方法と納付書が届くタイミング
- 延滞税の納付書はいつ届く?
- 延滞税の納付方法
- まとめ
- 確定申告をかんたんに終わらせる方法
- よくある質問
延滞税とは?納付漏れで発生するペナルティ
延滞税とは、法定期限までに申告しなかった場合や、支払うべき税金を納付しなかった場合に、その保留期間に応じて発生する附帯税のことです。日数に応じて利息のように加算することで、期限内に正しく納税した人との公平性を保つための制度として機能します。
延滞税が発生する主なケース
延滞税が発生する主な4つのケースについて、詳しく解説します。
申告・納税が期限に遅れた場合(期限後申告)
期限内に申告や納税を行わなかった場合、延滞税が課されます。この場合、納付すべき税額に基づいて延滞税が計算されます。
たとえば、所得税であれば原則3月15日までに申告しなければなりません。この期限以降も申告を行わなかった場合、この翌日から延滞税が課されることになります。税金の納付を行わなかった場合も同様です。
前述のとおり、延滞税は延滞している期間に応じて課される附帯税です。申告を行わない場合、正当な理由が認められない限り無申告そのものに対して「無申告加算税」が課されます。
申告した税額が不足していた場合(修正申告)
申告した税額が不足していたために修正申告を行った場合、追加で納付が必要な税額に対して延滞税が課されることがあります。
この場合、附帯税である延滞税のほかに、申告額が過小だったことに対する「過少申告加算税」が課される可能性があります。ただし、税務調査を受ける前に自主的に修正申告をした場合は、過少申告加算税はかかりません。
とくに注意が必要なのは、期限内に申告していた場合でも後から不足が発覚したケースです。
申告はしたが、納税だけ遅れた場合
期限内に申告や納税を行わなかった、口座振替が行われなかったという場合、その額が納められるまでの日数に応じて延滞税が課されます。
納税額の一部は納めたが不足していた場合は、その不足分(未納分)をもとに税額が算出されます。
税務調査などで申告漏れを指摘された場合(更正・決定)
税務調査によって申告漏れが指摘され、更生や決定といった処分が下った場合、申告漏れ分に応じた延滞税が課されることがあります。この場合、処分のあった日付からではなく、本来申告すべき日から数えて延滞税が算出されることに注意が必要です。
ほかのケース同様、日数に応じた延滞税だけでなく、申告漏れそのものに「過少申告加算税」や「重加算税」などの附帯税もあわせて課される場合もあります。
延滞税だけじゃない?知っておきたい「附帯税」の種類
延滞税は、所得税や法人税などの「本税」とは別の性質を持つ、「附帯税」の扱いです。
附帯税は何らかの事由で本税とは別に課されるペナルティ的な税金の総称ですが、延滞税以外にもいくつか種類があります。
| 附帯税 | 加算税 | 無申告・過少申告・納付漏れに対するペナルティとして課される | 過少申告加算税 無申告加算税 不納付加算税 重加算税 |
|---|---|---|---|
| 延滞税 | 申告や納付の遅れ・漏れがあった場合に日数に応じて課される | ― | |
| 利子税 | 申告・納税の延長申請などがあった場合に延期される日数等に応じて課される | ― |
罰則的な意味合いが強い「加算税」とは
延滞税と混同されやすいものに「加算税」があります。加算税は、過少申告や無申告があった場合に課されるペナルティ(行政的制裁)の性質を持つ税金です。
延滞税と同様、附帯税の区分になりますが、申告や納付の遅れや漏れそのものにかかる点で異なります。
主な加算税の種類と内容は以下のとおりです。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 過少申告加算税 | 確定申告で申告した税額が実際に納めるべき税額よりも少なかった場合に課される |
| 無申告加算税 | 法定申告期限までに申告書を提出しなかった場合に課される |
| 不納付加算税 | 源泉所得税等の“預かった税金”を法定納期限までに納付しなかった場合に課される |
| 重加算税 | 隠蔽・仮装といった悪質な申告不正があったときに、無申告・過少申告等の代わりに課される、加算税の中で最も重いもの |
また、「利子税」も延滞税と混同されやすい税金です。利子税とは、納税者が税務署に対して納税の延長を申請し、その申請が認められた場合に課される税金です。これは、合法的に延長された納税期限に対する利息に相当します。
延滞税は延長の申請がなく、期限を過ぎてしまった際に課されるものなので、利子税とは性質が異なります。
【関連記事】
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延滞税の計算方法|税率と計算期間
延滞税の税率と計算方法について説明します。
延滞税の計算式
延滞税の基本的な計算式は以下のとおりです。
延滞税 = 本税額 × 延滞税の割合(年率) × 滞納日数 ÷ 365日
※本税額のうち10,000円未満は切り捨て
※計算された延滞税額が1,000円未満の場合は納付不要(免除)、100円未満の端数は切り捨て
計算の基礎となる「本税額」と「滞納日数」
「本税額」とは、延滞税の計算の基礎となる、未納の税額(本税)を指します。
「滞納日数」とは、法定納期限の「翌日」から、実際に全額を納付した「当日」までの日数のことです。
延滞税の税率(割合)
延滞税の税率は、滞納期間によって次の「2段階」の設定がなされています。
- 納期限の翌日から2ヶ月を経過する日まで:比較的低い税率
- 2ヶ月を経過した日以後:高い税率
税率は毎年の金利動向によって見直されており、2025年度中は次の税率が設定されています。
- 納期限までの期間および納期限の翌日から2月を経過する日までの期間:年2.4%
- 納期限の翌日から2月を経過する日の翌日以降:年8.7%
最新の税率は、国税庁のサイトで確認してください。
延滞税の計算シミュレーション
先に説明した計算式・税率を例に、具体的な延滞税のシミュレーションを示します。
1. 確定申告(納税額30万円)が3ヶ月(90日)遅れた場合
確定申告(納税額30万円)が3ヶ月(90日)遅れた場合、適用される税率の基準となる「2ヶ月」をまたぎます。この状況では「2ヶ月まで」と「2ヶ月を超えた期間(30日)」に期間を分け、それぞれ異なる税率での計算が必要です。
ここでは、以下の前提条件における具体的な税額の求め方を解説します。
- 本来の納税額(本税):30万円
- 滞納日数:90日(確定申告・納税ともに遅れたケース)
なお、国税庁の自動計算では最後にまとめて端数処理をしますが、わかりやすくするため途中の端数処理はせず、最後に合計した後に端数処理を行います。
STEP1. 計算の基礎となる本税額
30万円(1万円未満の端数はないため、そのまま)
STEP2. 計算期間の分類
滞納日数90日のうち、税率が低い「2ヶ月(60日)まで」と、税率が高い「2ヶ月経過後(30日)」に分ける
STEP3. 延滞税の計算
① 2ヶ月までの分(60日分):30万円 × 2.4% × 60日 ÷ 365日 = 1,183.5...円
② 2ヶ月経過後の分(30日分):30万円 × 8.7% × 30日 ÷ 365日 = 2,145.2...円
③ 合計額:1,183円 + 2,145円 = 3,328円(計算の途中では円未満を切り捨て)
STEP4. 最終的な延滞税額
ここまでで求めた合計額 3,328.7...円
100円未満を切り捨てるため、延滞税額は 3,300円 となる。
今回のケースでは、延滞税とは別に「無申告加算税」も発生する可能性があります。
2. 修正申告で50万円の追加納税が発生(納期限から1年後)
納期限から1年後で、修正申告で50万円の追加納税が発生している場合、ほぼ全期間が高い税率で計算されます。このように長期間放置したケースでは、延滞税が膨らみやすくなるため注意が必要です。
ここでは、以下の前提条件における具体的な税額の求め方を解説します。
- 修正申告による追加の納税額(本税):50万円
- 滞納日数:365日(本来の納期限の翌日から、修正申告分を納付する日まで
今回も途中に端数処理をせず、最後に合計した後に端数処理を行います。
STEP1. 計算の基礎となる本税額
50万円(1万円未満の端数はないため、そのまま)
STEP2. 計算期間の分類
滞納日数365日のうち、「2ヶ月(60日)まで」と、「2ヶ月経過後(305日)」に分けます。
※この「2ヶ月」は、本来は実際の暦(例:3/16~5/15)の日数でカウントしますが、シミュレーションのしやすさから、本記事では60日として計算します。
STEP3. 延滞税の計算
① 2ヶ月までの分(60日分):500,000円 × 2.4% × 60日 ÷ 365日 = 1,972.6...円
② 2ヶ月経過後の分(305日分):500,000円 × 8.7% × 305日 ÷ 365日 = 36,335.6...円
③ 合計額:1,972円 + 36,335円 = 38,307円
STEP4. 最終的な延滞税額
ここまでで求めた合計額 38,307円
→100円未満を切り捨てるため、延滞税額は 38,300円
この例では1年間の滞納で、本税50万円に対して約3.8万円もの延滞税が発生しています。早期に納付をしないことで、多額の延滞税が発生する可能性があるので注意しましょう。
また、このケースでは税務調査の通知前に自主的に修正申告したため「過少申告加算税」は免除されていますが、原則として「延滞税」は免除されません。
延滞税の納付方法と納付書が届くタイミング
延滞税の対象となる事由が発生した場合、いつ納付書が届くのか、どのように納付できるのかについて解説します。
延滞税の納付書はいつ届く?
延滞税の納付書は、納付期限を過ぎた後、限後申告や修正申告、または更正・決定がなされて延滞税額が確定した後に税務署から送付されます。
具体的なタイミングは納付状況や税務署の処理状況によりますが、本税の納付書のタイミングとは別に送られてくるケースが一般的です。
延滞税の納付方法
延滞税の納付方法は、他の税金と同様にいくつかの種類から選択できます。
主な納付手段は、以下のとおりです。
- 送られてきた納付書を使い、金融機関や税務署の窓口で納付
- コンビニ納付(バーコード付き納付書の場合)
- e-Tax(ダイレクト納付、インターネットバンキング)
- クレジットカード納付(※別途手数料が発生する可能性あり)
- スマートフォンアプリ
延滞税は、日数に応じて加算される附帯税です。1日でも早く納付することが、延滞税を最小限に抑える唯一の方法になります。
まとめ
延滞税は、申告や納税が遅れた場合に発生する利息のような附帯税です。
長期間にわたると、高い税率が適用されるほか、日数に応じて負担額が増えるため、気づいた時点で早めに手続きをすることが大切です。
また、延滞税と合わせて課される可能性が高い加算税など、ほかの附帯税についても知識を持っておくと、適切な対応が可能になります。
確定申告をかんたんに終わらせる方法
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よくある質問
延滞税と加算税の違いは?
延滞税とは、法定期限までに申告しなかった場合や、支払うべき税金を納付しなかった場合に、日数に応じて発生する附帯税のことです。
一方、加算税は、過少申告や無申告があった場合に課されるペナルティ(行政的制裁)の性質を持つ税金で、延滞税と同様、附帯税の区分になりますが、申告や納付の遅れや漏れそのものにかかる点で異なります。
詳しくは、記事内の「罰則的な意味合いが強い『加算税』とは」をご覧ください。
確定申告が遅れると、延滞税はいくらになる?
確定申告が遅れた場合、「本税額 × 延滞税の割合(年率) × 滞納日数 ÷ 365日」で延滞税を計算します。このときの税率は、滞納期間によって異なります。
詳しくは、記事内の「延滞税の計算方法|税率と計算期間」で解説しています。
延滞税の納付書はいつ届く?
延滞税の納付書は、納付期限を過ぎた後、限後申告や修正申告、または更正・決定がなされて延滞税額が確定した後に送付されます。
詳しくは、記事内の「延滞税の納付書はいつ届く?」をご覧ください。
参考文献
▶︎ 国税庁「延滞税の割合」
監修 前田 昂平(まえだ こうへい)
2013年公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人に入所し、法定監査やIPO支援業務に従事。2018年より会計事務所で法人・個人への税務顧問業務に従事。2020年9月より非営利法人専門の監査法人で公益法人・一般法人の会計監査、コンサルティング業務に従事。2022年9月に独立開業し現在に至る。
