確定申告の基礎知識

固定資産税とは?支払月・支払方法やいくら課されるのかを徹底解説!

監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

固定資産税とは?支払月・支払方法やいくら課されるのかを徹底解説!

固定資産税とは、土地・家屋などの不動産や事業用の償却資産(機械・装置・船舶・航空機など)に課される税金で、地方税の一種です。

毎年1月1日の時点でこれらの資産を所有している人は、定められた期限内に資産の所在する市町村(東京23区内にある固定資産に関しては東京都)に納税しなければなりません。滞納を続けると、財産を差し押さえられる可能性があります。

本記事では、不動産や償却資産を保有している人に向けて、固定資産税の仕組みや計算方法をわかりやすく解説します。

また、納付先・支払時期・支払方法・特例措置に関しても詳しく紹介するので、ぜひ参考にしてください。

目次

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固定資産税とは

固定資産税とは、土地・家屋、事業用の償却資産(機械や備品など)に課される地方税の一種です。

固定資産の種類は、大きく3つに分けられます。

固定資産税とは


普段利用されていない遊休・未稼働状態の償却資産でも、いつでも稼働できる状態であれば、固定資産税が課されます。

出典:総務省「固定資産税」

都市計画税との違い

都市計画税とは、都市計画事業や土地区画整理事業を実施する市町村が、都市計画区域内にある土地・家屋に対して課す税金です。なお、償却資産には課されません。徴収された都市計画税は、都市計画事業や土地区画整理事業を遂行するために用いられます。

都市計画税が使途が定められた「目的税」であるのに対し、固定資産税は使途が定められていない「普通税」です。そのため、両者は課税対象と税金の使われ方が異なります。

出典:総務省「都市計画税」

固定資産税の納税義務者

固定資産税の納税義務者は、毎年1月1日の時点で固定資産(土地・家屋・償却資産)を所有している人です。土地・家屋・償却資産に関して、それぞれ所有者(納税義務者)とみなされる人を以下にまとめました。

固定資産の種類所有者(納税義務者)とみなされる人
土地原則、登記簿や土地補充課税台帳に所有者として登録されている人
家屋原則、登記簿や家屋補充課税台帳に所有者として登録されている人
償却資産原則、償却資産課税台帳に所有者として登録されている人
出典:総務省「固定資産税」

所有者(納税義務者)が死亡した場合、納税義務は相続人に引き継がれます。

出典:総務省「固定資産税」
出典:東京都「相続があったとき」

固定資産税の納付先

固定資産税の納付先は原則として、固定資産の所在する市町村です。ただし、東京23区内に関しては、東京都が納付先となります。固定資産税は、市町村では市町村税として、東京都では都税として納めます。

また、固定資産税は普通税で、使途が定められていません。納められた税金は、学校・公園・道路など日常生活で利用される公共施設の整備や、介護・福祉サービスの実施など、多様な目的で使用されます。

固定資産税の支払月(いつ納付するのか)

納付時期(支払月)は、自治体によって異なります。一般的には、年4回に分けて納付する仕組みが採用されており、「4月・7月・12月・翌年2月」や「6月・9月・12月・翌年2月」などの例があります。また、一括での納付も可能です。

詳細は各自治体の公式Webサイトで確認するか、税務担当部署にお問いあわせください。

出典:東京都「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」
出典:大阪市「固定資産税」

固定資産税の支払方法(何で払うことが可能か)

固定資産税は、納税義務者に送付される納付書を自治体の税務担当部署や金融機関に持参するか、口座振替で支払います。また、インターネット(地方税お支払サイト)で納付することも可能です。

出典:大阪市「納付場所・納付方法」

地方税お支払サイトとは、納付書に印刷されているeL-QRやeL番号を用いて、各種地方税を納付できるWebサイトです。地方税共同機構によって運営されており、クレジットカードやスマートフォン決済アプリなどの手段で納付できます。

eL-QRは納付書に印刷されているQRコード、eL番号は納付書に印字されている番号です。

出典:地方税共同機構「地方税お支払サイトとは」

自治体によっては、上記以外の納付方法が用意されていることもあるため、各自治体の公式Webサイトで詳細を確認してください。

納付書の送付時期は、自治体によって異なりますが、毎年4月~6月に送付されます。納付書は、固定資産税課税台帳に所有者として登録されている人に送付され、たとえ実際にその資産に居住していなくても対象となります。

固定資産税の計算方法

固定資産税の税額は、課税標準額(固定資産税評価額をもとに算出)に税率をかけて求められます。固定資産税評価額は、土地・家屋・償却資産の資産価値に応じて市町村が決定します。

基本的な計算式

固定資産税の基本的な税額の計算式は、以下のとおりです。

固定資産税の税額 = 固定資産の評価額(課税標準額)× 1.4%(標準税率)

標準税率は1.4%ですが、自治体によっては異なる税率が適用されるケースがあります。具体的な税率は、各自治体の公式Webサイトなどで確認可能です。

固定資産税の課税標準額は、納税通知書に添付されている課税明細書で確認できます。なお、課税標準額のもととなる固定資産税評価額は、原則として課税台帳で確認します。

出典:総務省「固定資産税」

たとえば、固定資産の評価額(課税標準額)が1,000万円の場合、固定資産税額は1,000万円×0.014=14万円と算出されます。

固定資産評価額(課税標準額)の決め方

固定資産の評価は、総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づき、各自治体が実施します。

市場価格が変動する土地や家屋に関しては、3年ごとに評価が見直される仕組みです。償却資産に関しては、経過年数に応じた価値の減少(減価)を考慮して評価額が算出されます。

各資産の評価方法は以下のとおりです。

種類評価方法
土地畑・田など、地目ごとに売買実例価格などを基礎として評価額を算出(宅地は地価公示価格などの7割を目途に評価額を算出)
家屋再建築価格で評価額を算出
償却資産取得価額を基礎として、取得後の経過年数に応じた価値の減少(減価)を考慮して評価額を算出
出典:総務省「固定資産税」
出典:総務省「固定資産評価のしくみについて」

再建築価格とは、「評価時点で評価対象と同一の家屋を同一の場所に新築するために必要な建築費」に経年減点補正率を乗じて算出される金額です。経年減点補正率とは、建築後の年数経過に応じて生じる減価を基礎として定められた率です。

上記方法で算定された評価額に基づき、必要に応じて負担調整措置を講じたうえで、課税標準額が決定されます。負担調整措置とは、評価額が急激に上昇した場合に、税負担がゆるやかに上昇するように調整する措置です。

出典:総務省「固定資産税」
出典:総務省「固定資産評価のしくみについて」
出典:富里市「地目別の評価方法 ● その他の宅地評価法 (標準地比準方式)」

固定資産評価額(課税標準額)の確認方法

固定資産の評価額を確認する方法は、以下の3種類があります。

固定資産評価額の確認方法

  • 納税通知書に記載されている課税標準額を確認
  • 各市町村(東京23区に関しては都税事務所)にある「固定資産課税台帳」を閲覧
  • 各市町村(東京23区に関しては都税事務所)で「固定資産評価証明書」を取得

固定資産評価額は、各市町村や都税事務所によって決定されますが、算出方法は全国で統一されています。

固定資産税の特例措置

固定資産税には特例措置があり、所定の条件を満たす場合、税額の減免を受けられます。申告不要で自動的に適用されるケースもあれば、申告や現地確認が必要なケースもあるため、詳細は自治体の公式Webサイトなどでご確認ください。

以下、代表的な特例措置である新築住宅特例・住宅用地特例・耐震改修に伴う減税・バリアフリー改修に伴う減税の4つを紹介します。

新築住宅特例

2026年3月31日までに新築した住宅には、「新築住宅特例」の適用が可能です。

適用を受けると、居住部分の床面積120㎡までの税額が2分の1に減額されます。

適用条件を満たすかどうかを判断するために、現地確認が実施されることがあります。また、長期優良住宅の場合は、適用を受けるには「認定長期優良住宅に係る減額申告書」などを提出しなければなりません。

以下に、住宅の種類と特例期間の関係をまとめました。

住宅の種類特例期間
一般住宅3年度分
3階建て以上で耐火構造または準耐火構造の一般住宅5年度分
一般の認定長期優良住宅5年度分
3階建て以上で耐火構造の長期優良住宅7年度分
出典:総務省「固定資産税(新築住宅特例)」

長期優良住宅とは、長期間使用するための構造や設備を備えている住宅です。認定基準は、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」第6条などで定められています。

出典:総務省「固定資産税(新築住宅特例)」
出典:e-Gov法令検索「長期優良住宅の普及の促進に関する法律(平成二十年法律第八十七号)第6条」

戸建住宅やマンションに適用される住宅用地特例

戸建住宅やマンションなどの敷地である「住宅用地」は、税負担の軽減対象です。住宅用地としての認定を受けるためには、新築・増改築時や、家屋の用途を変更した際に、申告書を自治体に提出しなければなりません。

面積によって軽減割合が異なり、200㎡以下の部分(小規模住宅用地)は、課税標準額が6分の1に軽減されます。また、200㎡を超える部分(一般住宅用地)は、課税標準額が3分の1に軽減されます。

出典:総務省「固定資産税の概要」

家屋の耐震改修に伴う減税

2026年3月31日までに、現行の耐震基準に適合する耐震改修工事を完了した場合、翌年度の固定資産税が2分の1に減額されます。

ただし、1982年1月1日以前に建築された家屋であることや、工事費が50万円(消費税込)を超えていることなど、一定の条件を満たさなければなりません。

また、工事完了日から3ヶ月以内に、固定資産税減額申告書などを家屋が所在する市区町村の窓口に提出する必要があります。

出典:国土交通省「耐震改修に係る固定資産税の減額措置」

バリアフリー改修に伴う減税

新築後10年以上経過した家屋に、所定の基準を満たすバリアフリー改修工事を実施した場合、翌年度分の固定資産税から3分の1が減額されます。

バリアフリー改修に伴う固定資産税減額措置の適用を受けるためには、2026年3月31日までに工事が完了する必要があります。

また、工事完了日から3ヶ月以内に、固定資産税減額申告書などを家屋が所在する市区町村の窓口に提出しなければなりません。

出典:国土交通省「バリアフリー改修に係る固定資産税の減額措置」

固定資産税を滞納した場合に受けるペナルティ

滞納とは、納期限までに納税しないことを意味します。固定資産税を滞納すると、延滞金が発生します。督促状が送付されても納付しない場合は、財産を差し押さえられる可能性があります。

状況によっては徴収猶予を受けられることもあるため、納付が困難な事情がある人は放置せず、早めに納付先である市町村に相談してください。

出典:東京都「税金の支払い」
出典:大阪市「自主納税と滞納」

まとめ

固定資産税とは、固定資産(土地・家屋・償却資産)に課される税金で、地方税の一種です。毎年1月1日時点で固定資産を所有している人が納税義務者で、納付先は固定資産が所在する市町村(東京23区に関しては東京都)です。

各自治体は、総務大臣が定めた基準に沿って固定資産を評価し、課税標準額を算出しています。固定資産税額は、課税標準額に税率(標準税率は1.4%)を乗じて計算します。

固定資産の評価方法や納税額の計算方法を理解せずに納付するのではなく、仕組みや軽減措置に関して正確に把握しておくことが大切です。

固定資産税を納期限までに納付できなかった場合、延滞金がかかります。督促状が送付されても納付しない場合、財産を差し押さえられる可能性があります。納付できない事情がある人は、徴収猶予を受けられるケースもあるため、早めに自治体にご相談ください。

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よくある質問

固定資産税の税率は?

固定資産税の標準税率は1.4%です。ただし、自治体によっては、条例により異なる税率が条例で定められている場合があるため、各自治体の公式Webサイトなどで確認が必要です。

詳しくは、記事内「固定資産税の計算方法」をご覧ください。

固定資産税の対象は?

固定資産税の課税対象とされるものは、大きく分けると「土地・家屋・償却資産」の3種類です。遊休・未稼働状態の償却資産もいつでも稼働できる状態であれば、課税されます。

詳しくは、記事内「固定資産税とは」をご覧ください。

固定資産の評価額(課税標準額)はどのように決まる?

各自治体が総務大臣の定めた基準に基づいて固定資産の評価を実施し、評価額(課税標準額)が決まります。市場価格が変動する土地や家屋については、3年ごとに評価の見直しが行われます。

地目ごとに売買実例価格を基に評価額が算出される仕組みです。宅地については、地価公示価格の7割を目途に評価額が決定されます。

詳しくは、記事内「固定資産税評価額(課税標準額)の決め方」をご覧ください。

監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)

神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。

北田 悠策

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