人事労務の基礎知識

給与所得控除とは? 給与所得控除の意義と計算方法を解説

最終更新日:2021/03/24

年末調整を行う際、生命保険や地震保険などの所得控除と合わせて確認しておきたいのが、社員の給与に応じて控除される給与所得控除です。年度によって給与収入に対する控除率に若干変更があることもありますが、基本的な考え方と計算方法は変わりません。

この記事では、給与所得控除について、詳しく解説していきます。

給与所得控除とは?給与所得控除の意義と計算方法を解説

目次

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給与所得控除とは

まず最初に、給与所得控除とはどのような内容か紹介します。

給与所得について

そもそも給与所得控除に関係する給与所得の収入とは、従業員に支給される給与やボーナスのこと指します。なお、給与所得を算出するための基準の収入には、基本給だけでなく、通勤手当の非課税分や宿直手当の一部、出張などの旅費を除いた職務手当、残業手当、家族手当、住宅手当などの各手当も含まれます。

さらに、給与所得の収入については現金での支給だけでなく、一部を除いた現物支給も収入としてカウントされます。たとえば従業員が会社の商品を無料、または低価格で受け取ったり、土地や家屋を無償、または低価格で会社から借りたりという経済的な利益も現物支給に該当します。

給与所得のうちの収入はこうした現金支給、現物支給などの総計により計算する必要があるので注意しましょう。現金支給分のみが給与所得となる訳ではありません。

ただし、職務の性質上欠かせないもので、使用者が業務を遂行する上で必要だから支給されるものや、換金性に欠けるもの、換金性の評価が困難なものなどは、例外として課税されません。

引用元:国税庁「No.2508 給与所得となるもの

給与所得に関して詳しい情報を知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。

【関連記事】
【2020年最新】給与所得とは?収入との違いや所得税の計算方法をわかりやすく

給与所得控除は会社員の経費のようなもの

給与所得のうち、収入は会社から支給される現金や現物が該当すると解説しました。しかし、この収入部分がそのまま給与所得になる訳ではありません。下記の計算のように、給与収入から給与所得控除額を引いた額が給与所得となります。

給与所得 = 給与収入(現金+現物)― 給与所得控除額

給与収入から給与所得控除額を引いて給与所得を出すという算式は、事業所得の事業収入から経費を引く算式に似ています。このように、給与所得控除とは会社員にとっての経費と考えることができます。

給与所得控除と特定支出控除

給与所得控除は、給与収入にあわせて一律で控除されるものですが、給与所得控除額よりも接待費用や研修費用がかかってしまっているケースもあるでしょう。給与所得者の場合は、給与所得控除以外にも特定支出控除という控除が認められています。

特定支出控除とは、一定の金額を超えた場合に確定申告によって給与所得控除をした後の所得より超過分を控除できるというものです。平成28年から一定の額は、給与所得控除の半分が基準となりました。

給与収入 ― 給与所得控除 ― 特定支出控除 = 給与所得

なお、特定支出控除として認められるのは、通勤費、転居費、研修費、資格取得費、職務に直接必要な衣服費や接待交際費などです。

特定支出控除として認められる項目

項目 内容
通勤費 通勤するために必要であると認められる支出
転居費 転勤の際に発生する転居で必要であると認められる支出
研修費 職務に必要な技術や知識を得ることを目的とした研修のための支出
資格取得費 職務に必要な資格を取得することを目的とした支出
帰宅旅費 単身赴任などで自宅と勤務地、または居所との間の旅行を目的とした支出
勤務必要経費
(図書費、衣服費、交際費など)
図書費:職務に関連した書籍などの購入を目的とした支出
衣服費:作業服などの勤務場所で着用することを目的とした衣服を購入するための支出
交際費:得意先や仕入れ先などの、職務に関係のある方に対する接待などを目的とした支出

引用元:国税庁「No.1415 給与所得者の特定支出控除

給与所得控除の意義

給与所得者の経費計上のため

給与所得者の場合、仕事のために自己負担で筆記用具や会社の制服を用意したり、ときには移動での交通費を負担したりということもあるでしょう。給与所得控除というのは、こうした給与所得者の事情を考慮して設けられているものです。

事業所得者の経費の代わりに給与所得控除を設けることによって、給与所得者も経費として給与収入に応じた一定額を差し引くことができ、事業所得者との公平性が保たれます。

給与所得者増加による公平性のため

給与所得控除は事業所得の経費のような位置づけであると解説しましたが、それでは仕事関係の経費としてかかった分だけ請求すればよいのではないかという意見もあるかと思います。しかし、給与所得者は以前よりも増加傾向にありますし、一人ひとりの経費を確認するとなると税務署での労力の問題もあり難しいのが現状です。

そこで、給与所得控除という一律の基準を設けることによって、個別に経費を判断することなく、かつ公平性を実現しています。

給与所得控除額の変更にはご注意を

令和2年分以降の給与所得控除額について、年間の給与所得の収入額が180万円以下の場合、「収入金額×40%-10万円」が給与所得控除額です。「収入金額×40%-10万円」で算出された値が55万円未満の場合は、一律55万円が給与所得控除となります。ただし年収における給与所得控除額は年度ごとに頻繁に更新されています。

給与所得控除額を確認する際は、変更が多いということを念頭に、計算の度に確認することをおすすめします。

給与所得控除の計算

給与所得控除は年収によって、計算式が異なってきます。年収が低いほど給与所得控除の割合が高いのが特徴です。事業所得者の経費と違って、実際に支出がなくても収入から差し引かれるというのが特徴です。

給与所得控除の考え方

給与所得控除以外の控除には、生命保険控除や扶養控除、地震保険料控除などがあります。これらの控除は「所得控除」と言われるもので、給与所得から控除するものです。

給与収入 ― 給与所得控除 = 給与所得
給与所得 ― 所得控除 = 課税所得

55万円の給与所得控除とは

会社員で配偶者を扶養に入れている場合によく耳にするのが、65万円という控除額ではないでしょうか。実は、令和2年以降は65万円ではなく、55万円に変更になりました。この55万円というのは給与所得控除からきているものです。給与収入180万円以下の場合の給与所得控除は「収入金額×40%-10万円」ですが、「収入金額×40%-10万円」の値が55万円に満たない場合は一律55万円が給与所得控除になります。

103万円の壁というのを耳にすることもあるかもしれませんが、103万円は、55万円の給与所得控除と48万円の基礎控除の合計です。103万までの給与収入であれば、非課税になります。(配偶者が事業所得者の場合は、事業収入が48万円以下であれば非課税になります。基礎控除が48万円だからです。)

年収と給与所得控除について

給与収入180万円以下の場合の給与所得控除は「収入金額×40%-10万円」ですが、この値が55万円に満たない場合は一律55万円が給与所得控除額となります。しかし基本的には給与収入額によって控除額が変わってくるので注意が必要です。

給与所得控除については、源泉徴収税に関わる年末調整のときに必要になってきます。

令和2年分以降の給与所得控除額の一覧表

給与収入(A) 給与所得控除
改正後 改正前
1,625,000円以下 550,000円 650,000円
1,625,000円超
1,800,000円以下
(A)×40%-100,000円 (A)×40%
1,800,000円超
3,600,000円以下
(A)×30%+80,000円 (A)×30%+180,000円
3,600,000円超
6,600,000円以下
(A)×20%+440,000円 (A)×20%+540,000円
6,600,000円超
8,500,000円以下
(A)×10%+1,100,000円 (A)×10%+1,200,000円
8,500,000円超
10,000,000円以下
1,950,000円
10,000,000円超 2,200,000円

引用元:
・国税庁「No.1410 給与所得控除
・藤沢市「令和3年度(2021年度)の税制改正(個人市民税)

まとめ

年末調整に必要になる給与所得控除。年収や年度によって給与所得控除額は変わってきます。給与計算を行う場合、特に年末調整の時期は、給与所得控除が正しいかどうかも該当年の年収ごとの控除額を確認しながら、進めていきましょう。

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