人事労務の基礎知識

サービス残業は違法? なくならない理由やなくすための対策を解説

最終更新日:2023/09/28

サービス残業は違法? なくならない理由やなくすための対策を解説

サービス残業は、賃金を支払わずに残業させるため、労働基準法違反です。しかし、一定数の企業ではサービス残業が行われている現状があります。

労働者にサービス残業をさせても、企業にとってはメリットがないため、経営者や労務担当者はなくすための努力が必要です。

本記事では、サービス残業の違法性やなくならない理由のほか、サービス残業をなくすための対策も解説します。

目次

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サービス残業とは

サービス残業では、タイムカードや勤怠管理外で残業をするため、実際は残業をしていてもその分の賃金は支払われません。

つまり、タイムカードや出勤簿は適正な労働時間になっていても、実際は報告以外の時間も仕事をしている状態のことを指します。

社会問題になってきたサービス残業

近年耳にすることも多くなってきたブラック企業。劣悪な環境で従業員を雇う企業を指しますが、そんな劣悪な環境のひとつとしてあげられるのが、残業代の未払い・サービス残業です。

経営が不安定になりやすい中小企業に限らず、大企業でも、サービス残業による過労死などが問題視されています。

サービス残業の現状

厚生労働省からは、毎年「監督指導による賃金不払残業の是正結果」つまり、サービス残業の是正を行った件数や額に関する報告が行われています。

たとえば令和年度の報告によると、賃金不払残業の是正が行われた企業は1,069社です。前年度と比べ7社の増加、対象労働者数は64,968人と前年度から427人減少しています。


出典:厚生労働省「監督指導による賃金不払残業の是正結果」


日本の労働人口は約7,000万人とされているため、約1,000人に一人がサービス残業を行っている状況です。

サービス残業は当たり前ではない

サービス残業が起きてしまう理由のひとつとして、企業側が費用削減を目的にサービス残業を強要する場合があります。

また上司側の「仕事が終わらなければ残業は当たり前」、部下側の「上司が帰ってないのに帰りづらい」という従業員の心理も一因でしょう。

企業側が賃金未払いで残業を強要することは違法な行為ですが、会社側で社員の意識改革を率先して行うことも大切です。

サービス残業が違法となるのはなぜか

労働基準法では、以下のように示されています。

使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。(労働基準法第32条)


出典:e-Gov法令検索「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)」


労働者は労働基準法によって守られており、使用者は原則として1日8時間、1週間に40時間を超えて労働者に労働をさせてはいけません。

上限を超えて労働をさせる場合は、定められた残業代を支払わなければ労働基準法違反です。

つまり、労働者は適切な労働条件のもとで働く権利があり、サービス残業はこの権利を侵害する行為です。長時間労働は、労働者の健康や安全に影響を与える可能性もあるため、企業には労働者の権利を尊重し、過不足のない労働環境を提供することが求められています。

サービス残業がなくならない理由

サービス残業がなくならない理由には、労働環境のほかに、使用者や労働者が法令を十分に理解していない点などが挙げられます。使用者や労働者が気づかないうちにサービス残業になってしまっているケースもあるので、確認しておきましょう。

早朝の勤務

日本の場合、慣習的に所定の勤務時間よりも早めに出社して仕事を始めることは少なくありません。特に新人の場合は、上司より早めに出社しなければいけないと感じる方も少なくないでしょう。

残業という言葉から、勤務時間が終わってからの仕事をイメージするかもしれませんが、所定の出社時刻よりも早めに仕事に取り組んだ時間分も法律上はサービス残業にあたります。

残業時間の切り捨てや過少報告

実際の勤務時間に対して、会社または上司が少なく報告するように強要することは、サービス残業にあたります。

また「先に帰ると上司に悪い」「自分の仕事が遅いせいだ」など従業員の思うところもあるかもしれませんが、従業員の判断による勤務時間の過少報告もサービス残業がなくならない原因です。

管理職という名ばかりの役職

法律上、会社は管理監督者には残業代を支払わなくてもよいことになっています。そこで問題になってきているのが、実際には管理監督責任のない名ばかりの管理職です。

職務上管理職でない従業員に名前だけの役職を与えることで、残業代の支払いを放棄する会社が存在することも、サービス残業がなくならない原因といえます。

みなし固定残業

みなし固定残業とは、残業時間30時間など従業員の残業時間をあらかじめ見越して、固定の残業代を給与として支給することです。みなし固定残業の時間よりも残業時間が短い場合は問題ありません。

しかし、サービス残業の問題が発生しやすいのは、みなし残業時間よりも実際の残業時間のほうが長い場合です。

実際の残業時間のほうが長い場合は、企業は超過した分を残業代として支払う義務がありますが、超過分が払われていないことも少なくありません。

このように、みなし固定残業が存在することで、サービス残業の実態が隠蔽されてしまうのも、問題が解消されにくくなっている原因です。

サービス残業をするとどうなる?

「コスト削減のため」「社員の実態を知らなかった」「そもそも法律を知らなかった」など、さまざまな理由でサービス残業がなくならないのが現状です。

しかし、知らなかったからや安易な気持ちで強要するサービス残業は、法律的に許されない行為であることを理解しておきましょう。

サービス残業による罰則とは

是正勧告を受けた企業は、サービス残業によりこれまで支払われていなかった残業代分を従業員に支払わなければいけません。

また悪質だと判断された場合は、付加金といいサービス残業代を2倍支払ったり、刑事上の問題に発展したりする可能性もあるため注意が必要です。

「どこの会社もやっているから」「ばれないから大丈夫」と思わずに、サービス残業が分かったら早めに改善する必要があるでしょう。

企業発展のメリットにならない

刑事上の問題に発展した場合は当然ですが、そもそもサービス残業は企業が発展するメリットにはなりません。

たしかに費用の削減など一時的なメリットはあるかもしれませんが、社員の育成に繋がらない・社員の意欲を阻害して生産性を低下させるなど、長期的に見ると多くのデメリットがあります。

サービス残業をなくすための対策

サービス残業は企業にとっても労働者にとってもよい影響を与えません。サービス残業をなくすために企業ができる対策を紹介するので、参考にしてください。

労働時間の適正管理

2019年4月の労働安全衛生法改正によって、使用者は労働者の労働時間を把握し、適切に管理することが法律で義務化されました。

労働時間の適正な把握のために、使用者は労働者の始業・終業時刻の確認および記録をする必要があります。労働時間の確認および記録は、原則、以下のいずれかの方法で行わなければいけません。

労働時間の確認および記録の方法

  • 使用者が自ら現認することにより確認し、適正に記録する
  • タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録などの客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録する

重要なのは、労働時間の見える化です。労働者による自己申告制ではサービス残業の温床になる可能性があります。そのため、自社の状況にあわせて最適な方法で労働時間を適正管理しましょう。

労働環境をより良く改善することで、従業員の満足度や企業の持続的な発展に繋がります。

適切な制度の導入

近年では、多様な働き方に対応できるように、以下のような労働時間制度が導入されています。


制度概要
変形労働制従業員の労働時間や勤務形態を、法定の労働時間内で柔軟に変更する制度
フレックスタイム制従業員が一定のコアタイムを労働することを義務付けつつ、そのほかの労働時間を自由に調整できる制度
裁量労働制労働者が労働時間や勤務形態に一定の裁量を持ち、自らの裁量で労働時間を調整・決定する労働制度

出典:厚生労働省「現行の労働時間制度の概要」

労働時間制度を活用すれば、法定労働時間を月単位・年単位で調整できるため、勤務時間が増加しても時間外労働として扱わなくてもよくなります。

たとえば繁忙期と閑散期で労働時間が大幅に変化するようなら、変動労働制やフレックスタイム制の導入を検討するとよいでしょう。

自社に適切な労働時間制度を導入することで、従業員のワークライフバランスの向上や、労務管理の負担軽減などが期待されます。労働者と企業の双方にとってメリットがもたらされるでしょう。

ノー残業デー・ノー残業ウィークの設置

ノー残業デーまたはノー残業ウィークは、定期的な曜日や期間を設定し、期間中は原則として残業を行わないようにする制度です。残業を行わない日または期間を設けることで「残業しなければいけない」ではなく「残業しづらい」という雰囲気が社内に生まれます。

長時間労働や過度の残業を緩和することにより、労働者の集中力や生産性向上が期待できます。また、健康問題や労働者の離職など長期的な労働問題も防止できる可能性があるでしょう。

ただし、ノー残業デー・ノー残業ウィークの運用は、従業員と企業の双方の利益を考慮して行うようにしましょう。

まとめ

サービス残業は、労働基準法違反となり、企業にとっても労働者にとってもデメリットになる行為です。使用者や労働者が気づかないうちにサービス残業をしてしまっている場合もあるため、サービス残業に該当するケースを把握しておきましょう。

また、サービス残業をなくすためには、労働時間の適正管理や適切な制度の導入が大切です。もしも社内でサービス残業が行われている場合は、自社の状況にあわせて最適な対策を行い、早急に改善するようにしましょう。

よくある質問

サービス残業とは?

サービス残業は、タイムカードや出勤簿が適正な労働時間になっていても、実際は報告以外の時間も仕事をしている状態のことを指します。

サービス残業を詳しく知りたい方は「サービス残業とは」をご覧ください。

サービス残業の違法性は?

労働基準法では、原則として、1日8時間、1週間に40時間を超えて労働者に労働をさせてはいけないことになっています。また、上記の時間を超える場合は一定の割増賃金を支払う必要があるため、サービス残業は労働基準法違反です。

サービス残業の違法性を詳しく知りたい方は「サービス残業が違法となるのはなぜか」をご覧ください。

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