人事労務の基礎知識

給与計算のアウトソーシング・代行のメリット・デメリットと相場について解説

最終更新日:2023/02/22

給与計算のアウトソーシング・代行のメリット・デメリットと相場について解説

企業が、自社の従業員の給与計算などを外部に委託するアウトソーシング・サービスを、給与計算代行といいます。

給与計算は専門性が必要である一方、定型的で細かい作業が多いため、アウトソーシング・代行を検討されている方も多いかもしれません。給与計算代行は、委託先を社労士にするかアウトソーシング会社にするかといった委託方法や、どの程度の業務を委託するかなどはさまざまです。

本記事では、給与計算業務をアウトソーシング・代行を検討する際に知っておきたいメリットやデメリット、料金の相場について解説します。

目次

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代行・アウトソーシングの利用率

給与計算代行・アウトソーシングは、もともと専門性の高い業務を外部の弁護士や会計士にアウトソーシングする考え方があったアメリカで発展したサービスですが、日本でも1990年代のバブル崩壊後、急速に注目されるようになりました。

企業の動きがよりグローバルとなり、激しい競争にさらされる中で、従来よりコストダウンを検討せざるを得なくなってきたためです。2000年代になると、企業は本業に専念し、付随する業務は外注するというビジネスモデルが一般化し、給与計算代行・アウトソーシングを成長のための重要な戦略を位置づける企業が多くなってきました。

矢野研究所の報告書によると、2014年日本の企業の20%程度が給与計算代行・アウトソーシングを利用しているといわれています。一方、海外では、北米だと約20%、中南米では約60%の企業が給与計算代行のアウトソーシングを利用しているといわれています。

給与計算代行・アウトソーシングで頼める業務は?

給与計算は、毎月のお給料の計算・支払いから、年末調整や住民税の計算まで、1年を通してさまざまな業務があります。

アウトソーシング・サービスで対応できる範囲について、業務別に解説していきます。

1. 給与計算代行

給与計算代行は、給与計算を外部に委託することです。毎月の給与計算に必要なタイムカードの集計から入退社や人事異動などの情報変更を行い、給与計算を代行するものです。

毎月金額が変動的となり計算が必要な、残業代や社会保険料、雇用保険料、所得税、住民税の計算が含まれます。明細の作成や印刷、封入、郵送など、明細発行関連業務も含まれるケースもあります。

2. 振込・納税代行

給与計算の結果の給与振込データの作成や振込、税金の納付を代行するパターンです。1の給与計算・賞与計算代行に追加する形で依頼することが多く見られます。

3. 年末調整代行

給与計算のなかでも、特に業務が煩雑で、繁忙期が毎年の年末から年初に限られる年末調整を外部に委託するアウトソーシング・サービスです。通常期に給与計算・賞与計算業務を依頼していない場合でも、期間限定で年末調整のみ依頼するケースもあります。

控除申告書類の封入・送付や申告書の内容チェック、従業員からの問い合わせの対応、源泉徴収票や支払報告書、法定調書合計表などの各種必要書類の作成と提出代行などが含まれることが多いようです。

4. 住民税更新代行

住民税の更新は毎月5月から6月に発生します。年末調整と同様に繁忙期が限られています。さらに地方税である住民税は、市区町村とのやり取りのなかで特別徴収額通知書などの紙媒体を大量に扱う必要があります。インターネットの対応が遅れている市区町村も多く、さらに時間的なコストが掛かってしまうのです。

そのため、給与・賞与の計算は自社で行っていても、時期が限られた住民税更新だけはアウトソーシングする企業も多くあります。

給与計算代行・アウトソーシングで、どのレベルまで外部に委託するかはその企業の考え方や、コスト意識によってさまざまです。場合によっては、給与計算代行だけでなく、タイムカードのデータ化や残業時間・有給休暇の計算などの「勤怠管理」、社会保険・労働保険の加入・脱退の手続きまでトータルで外注してしまう場合もあります。

給与計算代行・アウトソーシングのメリット

給与計算を外部に委託するとどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、代表的なメリットをご紹介します。

メリット1. トータルコストの削減

給与計算にかかるコストは、給与計算担当者にかかるコストとシステムにかかるコストの2つに大きく分けられます。

担当者にかかるコストには、専門知識をもつ人材の人件費や正しく給与計算を行なうための教育コストが含まれます。システム・ソフトウェアにかかるコストには、通常の利用費や開発費のほかに、毎年のように起こる法令改正・税制改正に対応する費用も含まれます。

たとえばパッケージ型のソフトウェアで給与計算をおこなっている場合、法令改正のたびにソフトウェアの更新料やライセンスの再購入費がかかるケースが多々あります。金銭的な対応コスト以外にも、法令改正へ対応するよう業務フローを変更するコストも考慮したいところです。

アウトソーシングによって、これらの人材面とシステム面の両方のコストをおさえることができます。

メリット2. 法令改正の情報収集と対応

前述のように税制や社会保障関係の法令は、毎年のように改正されます。ソフトウェアの更新だけでなく、担当者も常に法改正の情報をキャッチして、社内で正しく対応する必要があります。専門家でない社内の人材だけで、これらの改正の情報をタイムリーにつかみ、理解して対応することは容易ではありません。

アウトソーシングによって専門家にすべて任せられるので、社内の法令への社員の負担が軽減されます。

メリット3. コアな事業への集中

給与計算には専門知識が必要である一方で、その業務は毎月行なわれる定型的な業務がほとんどです。たとえばタイムカードの集計やソフトへの入力、給与計算、明細の発行などは、ルーティーンの作業となります。ルーティンを回して正しく給与計算が行われることは大切ですが、会社への利益を生み出せないのが実情です。

定型的な業務をアウトソースすることで、利益を生み出す創造的業務に人的・金銭的資源を集中することができるのは、大きなメリットと言えます。

メリット4. 季節的業務の人員確保がスムーズ

給給与計算業務は、季節的な業務が発生し必要人員が大きく増減する業務です。

たとえば年末調整の時期や賞与を出す時期は、業務をスムーズに行なうために通常期よりも人員が必要となります。個人情報を扱い、専門的な知識を要する業務であることから、臨時でスタッフの雇用を雇うとしても慎重になる必要があります。

一方で、季節的な最大人員を通常期も確保しておくと、人件費がかさんでしまいます。アウトソーシングをすると、季節的な人員の増減にもスムーズに対応することができるでしょう。

メリット5. 残業管理をするように

給与計算をアウトソーシングする場合でも、給与計算の元になる最低限の勤怠管理を社内で行なう必要があるケースは多くあります。もともと勤怠管理がしっかり行われていない会社の場合には、タイムカードの導入や勤怠入力の徹底がなされることになります。

アウトソーシングのための勤怠情報の収集によって、勤務時間や残業時間が見える化され、結果的に社内でも生産性について見直す機会になるかもしれません。

給与計算のアウトソーシング・代行のデメリット

メリットが大きいように思われる給与計算代行・アウトソーシングのデメリットにはどんなものがあるのでしょうか。

デメリット1. ある程度の業務負担は社内に残る

コスト削減が給与計算代行のメリットですが、給与計算だけでなく年末調整や住民税の更新まで外注した場合でも、削減できるのは給与計算に関する業務全体の一部となります。

勤怠管理や従業員情報の更新などは、アウトソーシングがしづらく、社内に残ってしまうことが多い業務です。また、アウトソーシングする場合、社内業務の期日が早めに設定されていることが多く、結果的にアウトソーシングする前より期間的に業務の忙しさが増す可能性があります。

デメリット2. 自社にノウハウが蓄積されない

給与計算を全体的にアウトソーシングする場合、それまで社内で給与計算業務を行っていた人材を別の業務にあてるなど、リソースを再分配することになります。

人員配置転換によって、従来社内で培ったノウハウがうまく残せない可能性があるほか、それ以後のノウハウは社内に蓄積されません。もし、アウトソーシング会社に何かあったような場合でも社内では対応が不可能になり、他のアウトソーシング会社を探す必要があります。

また制度や法令改正などについて気軽に聞く機会がなくなると、社内のコミュニケーションスピードが低下する懸念もあります。

デメリット3. 社外でのデータ漏えい

アウトソーシング会社にもよりますが、会社によっては集計などの実作業を行なうのは契約社員やアルバイトであるケースや、アウトソーシング会社から別の会社にさらにアウトソースされているケースもあるかもしれません。

社員の大切な個人情報や給料などの情報を社外に渡した際に、アウトソース先で安全に扱われるかどうか確認を行い、リスクを認識しておきたいですね。

給与計算のアウトソーシング・代行を検討する目安

メリット・デメリットがある給与計算のアウトソーシングですが、どのような会社・状況の場合に行なうのがよいのでしょうか。ここでは2つの目安をご紹介します。

1. 会社の従業員数が10名以上〜数百名である場合

従業員数10名以下の小規模な会社なら、社内のみで給与計算業務を行ってもある程度対応できる業務量であることが多い状態です。しかし従業員数10名を超えてくると、その業務量は従業員数に比例もしくはそれ以上に増えていきます。

季節的業務に対応することも考え、従業員数を目安にアウトソーシングを検討し始めるケースが見られます。

2. 正確に給与計算を行いたい場合

従業員数が10名以下の場合、経理をはじめ他の役職の人材が兼任で給与計算を行っていることがよく見られます。

社内の給与計算担当者が社労士資格を持っているケースは少なく、勉強しながら業務を行っているケースがほとんどでしょう。誰が担当する場合でも給与計算が正しく行われないと、労務リスクや税務リスクといったリスクが発生します。

正確性を重要視してリスクを回避する場合に、アウトソーシングする選択が考えられます。

給与計算代行・アウトソーシングの料金の相場は?

給与計算は、企業にとっては事務負担が多くなることが多いのですが、アウトソーシングを受託している企業にとっては、すべてをシステム化して行うため、それほどの負担ではありません。ここでは、給与計算代行・アウトソーシングの一般的な相場を見てみましょう。

給与計算代行のみの場合

給与計算のみをアウトソーシングする場合、一般的な料金の相場は、社員50人程度の会社で1ヶ月4万円~6万円程度です。給与計算のみであれば、アウトソーシング会社にとっても年間を通じて業務を標準化できるため、それほど負担ではありません。そのため、数万円程度で委託できるのです。

年末調整代行、住民税更新代行も外注する場合

給与計算のみをアウトソーシングにするだけでも、企業にとっては人的コストの削減につながります。しかし、年末調整や住民税更新の負担が大きいため、こちらの方こそアウトソーシングにしたいと考える企業が多いものです。

その場合の一般的な料金の相場は、社員50人程度の会社で10万円~20万円程度になります。また、勤怠管理や社会保険関係の管理まで依頼した場合には、さらに1ヶ月当たりの料金は高くなります。

給与計算のアウトソーシング・代行を選ぶポイント

実際にアウトソーシング・代行を検討し始めたときは、いくつかのアウトソース先を比較することになります。その際に見るべきポイントをご紹介します。

専門性

給与計算は、正確性が重要です。どの程度の専門的知識を持っている会社か、どの規模の会社の給与計算を行ってきた実績があるかは、まず見るべきポイントとなります。

対応スピードと柔軟性

毎月の給与振込や納税〆切日などから、アウトソーシング先の業務スピードや柔軟性については、事前に確認しておくべきでしょう。振込日に間に合わせるのに、自社内での作業をどこまで・いつまでに行わなければいけないか、スケジュール感は見ておきたいところです。

情報管理の安全性

従業員情報や給与の情報を外部に渡すことになるため、個人情報を守るためにも、アウトソーシング先がどのように情報を扱うか、チェックしておきましょう。

料金

最後に料金と上記3つのポイントを見て、価格に見合うサービスかどうかが必ず確認してみてください。

まとめ

給与計算代行・アウトソーシング・サービスを利用する企業は、以前よりは増えています。しかし、外注するということはそれだけコストが掛かるということなので、削減できるコストと増加してしまうコストを比較して利用するべきでしょう。

市販の給与計算ソフトなどを上手に利用することで、アウトソーシング・サービスを利用するよりもコストの削減ができることもあります。

費用対効果に見合うかを念頭に、アウトソーシング会社の比較はもちろん、ソフトウェアの利用・変更や社内の業務フローの変更といった別の手段とも比較することで、本当に自社に必要な対応は何かを見極めてみてください。

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