人事労務の基礎知識

出勤簿とは? 保存期間や書き方まで分かりやすく解説

出勤簿とは? 保存期間や書き方まで分かりやすく解説

出勤簿とは、労働基準法等を根拠とする法定三帳簿のひとつで、労働者の労働日数や出勤・退勤時刻などを記した帳簿です。

労務管理を行ううえで重要な書類と位置づけられる出勤簿は、近年のワークスタイルの多様化により、管理が複雑になっています。

本記事では、出勤簿に記載すべき事項や書式、保存義務期間について、法的根拠とあわせて解説します。

目次

勤怠管理をラクにする方法

freee人事労務 勤怠管理

freee人事労務なら、全作業がクラウドで完結。
紙、エクセルからの転記や給与ソフトへの入力が不要に!

ぜひ一度、お試しください!

出勤簿とは

出勤簿とは、各労働者の出勤日と労働日数、出勤・退勤時刻などを記した書類です。出勤簿を正しく記帳することで、企業は従業員の労働時間を適切に把握できます。

また出勤簿は、労働基準法等を根拠とする、事業場に備えておかなければならない法定三帳簿に位置づけられている重要な書類のひとつです。

法定三帳簿とは、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿を指します。企業は労働基準法で法定三帳簿を付けることが義務づけられており、常に事業所に備えておく必要があります。

労働基準法では出勤簿の作成に関して明確な記載はありません。しかし、厚生労働省のガイドライン「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(第4項)」には以下のように出勤簿の保存についての記述があります。

使用者は、労働者名簿、賃金台帳のみならず、出勤簿やタイムカード等の労働 時間の記録に関する書類について、労働基準法第 109 条に基づき、3年間保存しなければならないこと。

出典:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

出勤簿に記載すべき対象者とは

出勤簿への記載が必要となる対象は、当該企業に勤めている従業員全員です。正社員、パートタイム、アルバイトといった雇用形態に関係なく、全員の勤務状況を記載しなければなりません。

ただし、労働基準法第四十一条第二項に規定されている「管理監督者」に該当する管理職については、必ずしも出勤簿に記載する必要はありません。

管理監督者とは経営者と同様に従業員を管理する人を指し、「自身の判断で出退勤ができる自由裁量を持ち合わせている」と考えられるためです。

なお、管理監督者は会社の役職名ではなく、職場における権限や実際の職務内容といった役割、賃金などによって判断されます。


出典:厚生労働省「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために(PDF)」

タイムカードと出勤簿の関係

出勤簿を作成するには、正確な勤怠管理が必要となります。出勤・退勤の記録としてタイムカードを採用している企業も多いですが、タイムカードは従業員個人が記録を行うことが多いため、必ずしも正確な出勤・退勤時刻を反映しているとは言い切れません。

このため、実際の労働時間を示す証拠書類として、タイムカード単体を出勤簿の代わりにすることはできません。

タイムカードを出勤簿の作成に使用するのであれば、作業日報や残業許可証などの補足資料と照合し、検証をする作業が必要となります。

また、労働基準法の改正により、2019年4月から自己申告型での労働時間把握が禁止となりました。

勤怠管理においては「マクロを組んだエクセルの一括入力」「紙の出勤簿」など主観的な申告のみの運用は認められません。

労働時間を客観的に把握するため、ICカードやスマートフォンといったデジタル端末からの打刻と、出勤簿など労働時間を記録する帳簿を同時に運用することが厚生労働省で定められています。


出典:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(第4項)」

主観的な勤怠管理を採用する場合の条件や改正の背景、YouTubeによる動画解説などは、以下の記事をご参照ください。

【関連記事】
労働時間の客観的把握義務化とは? 変更点や対象者など抑えるべきポイントを解説

出勤簿の書き方

出勤簿を作成するにあたっての書式や記載事項、ルール、違いが分かりにくい用語などを解説します。明確な出勤簿の作成は、思いがけない労働基準法違反の防止につながります。

出勤簿に記載すべき項目と記載例

出勤簿の書式には法的な取り決めはなく、フォーマットは任意です。

ただし、従業員の勤怠管理と正確な給与計算のために、出勤簿には以下の項目を記載していることが一般的です。

出勤簿に記載すべき項目

  1. 各労働者の出勤日と労働日数(出勤・退勤時刻を含む)
  2. 日別の労働時間数と始業から終業時刻、休憩時間
  3. 時間外労働を行った日付と時刻・時間数
  4. 休日労働を行った日付と時刻・時間数
  5. 22時から翌5時までの深夜労働を行った日付と時刻・時間数

出勤簿は、上記の項目が記載された独自のエクセルファイルで作成するほか、出退勤の管理システムを導入し自動で作成するなどの方法があります。

出勤簿に記載すべき項目について、詳細を以下の出勤簿の例とあわせて解説します。

出勤簿の書き方の例

①各労働者の出勤日と労働日数(出勤・退勤時刻を含む)

出勤日(労働日数)を記載します。リモートワーク・出勤問わず、労働している場合には出勤日と判断し、労働日数として計算します。

②日別の労働時間数と始業から終業時刻、休憩時間

日別の労働時間数、始業・終業時刻と休憩時間を記載します。客観的な記録として残す必要があります。

労働時間数の計算には、正確な労働時間を記録するシステムを導入することで、客観性を保つことができます。

労働時間(実働時間)は「勤務時間(拘束時間)から休憩時間を除いた時間」、休憩時間は「始業から終業までの間で、自由に利用できる時間」と理解しておきましょう。

③時間外労働を行った日付と時刻・時間数

原則として1日8時間以上、または1週間で40時間以上働いた場合の時間が該当します。


出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」

④休日労働を行った日付と時刻・時間数

会社で本来なら休日と定められた日に出勤した場合が該当します。また、原則として、休日は「少なくとも1週間に1日」と法律で定められています。


出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」

⑤22時から翌5時までの深夜労働を行った日付と時刻・時間数

夜22時から翌5時までの間に労働した場合に記載します。

出勤簿で記載されやすい項目

その他、退勤管理や給与計算をする上で記載頻度の高い項目は以下のとおりです。

名称内容
勤務時間(拘束時間)始業から終業までの時間
所定労働時間企業が決めた1日の労働時間
法定労働時間労働基準法で決められた労働時間。原則1日8時間、週40時間を超えてはならない
法定内残業時間労働時間のうち、所定労働時間を超える8時間以内の部分。賃金の支払いは必要、割増はしなくてよい

また、変形労働時間制を採用している場合はこの限りではありません。

変形労働時間制とは、繁忙期の所定労働時間を長くする代わりに、閑散期の所定労働時間を短くするといったように、業務の繁閑や特殊性に応じて、労使が工夫しながら労働時間の配分等を行い、これによって全体としての労働時間の短縮を図ろうとするものです。


出典:厚生労働省「変形労働時間制の概要」

勤務時間と労働時間の違い

出勤簿に関する混同して使われがちな用語として「勤務時間」と「労働時間」が挙げられます。

ふたつの違いを明確にするポイントは、休憩時間を含めるかどうかです。以下では、実際のタイムスケジュールを例に「勤務時間」と「労働時間」の違いを解説します。

勤務時間とは

「勤務時間」は、始業から終業までの時間のことで、いわゆる「拘束時間」を指します。

例:10:00〜19:00勤務の場合、途中で休憩が何分あったとしても「勤務時間」は9時間

労働時間とは

一方「労働時間」は、「勤務時間」のうち実際に労働した時間のことで、「実働時間」などとよばれることもあります。

例:10:00〜19:00勤務の場合、途中で30分の休憩が2回あれば、「労働時間」は8時間

なお、休憩時間のルールは労働基準法三十四条に規定されており、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩時間を与えることが義務づけられています。


出典:e-Gov法令検索労働基準法「労働基準法」

出勤簿の法定保存期間と法律違反時に課される罰金とは

出勤簿は保存期間などが明確に定められています。タイムカードとの関係や紛失した際の罰則などを解説していきます。

出勤簿の保存期間

現在の労働基準法 第百九条には、「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を5年間保存しなければならない」と規定があります。

出典:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)



出勤簿は「その他労働関係に関する重要な書類」に該当します。以前は3年間の保存が義務付けられていましたが、2020年4月に施行された「労働基準法の一部を改正する法律」にて、賃金請求権が時効によって消滅するまでの期間が5年間へと延長されたことにより、出勤簿の保存期間が5年間となりました。

ただし当分の間は経過措置が適用され、3年間の保存でも問題ありません。


出典:厚生労働省「労働基準法の一部を改正する法律(令和2年法律第13号)の概要」

一方、タイムカードには導入義務はありません。ただし、導入する場合は、出勤簿と同じ労働基準法第百九条に定められている「その他労働関係に関する重要な書類」に該当するため、5年間の保存が必要です。

さらに注意点として挙げられるのは、退職者分の出勤簿も5年以上保存しておく必要があるということです。これは労働基準法第百十五条の規定で、退職金の請求権の時効が5年間と定められたためです。

退職者の出勤簿の記録保存期間は、最後に記載された日を起算日とし、これより賃金支払期日が遅い場合はその支払期日を起算日とします。


出典:e-Gov法令検索労働基準法「労働基準法」

出勤簿の保存に関する罰金制度

万が一、出勤簿を保存義務期間内に廃棄または紛失してしまった場合、労働基準法第百二十条に基づき、30万円以下の罰金が課される可能性があります。出勤簿の管理には細心の注意を払うようにしましょう。


出典:e-Gov法令検索労働基準法「労働基準法」

まとめ

出勤簿は、会社及び事業主が労働者に対して適切に給与等の支払いを行うためにも、重要な書類です。必要事項を正確に明記し、決められた期間内はしっかり保存しておきましょう。

正確な情報を随時記録するため、出勤簿を記す人の工数を減らすのも得策です。また、慎重に扱う必要があるので、改ざんなどを避けるセキュリティ対策として出退勤管理システムの導入を検討してみるのもいいでしょう。

よくある質問

出勤簿とは?

出勤簿とは、労働者の労働日数や出勤・退勤時刻などを記した帳簿です。労働基準法によってすべての企業に作成して記帳することが義務付けられています。

詳しくは出勤簿とはをご覧ください。

出勤簿はどんな書き方?

出勤簿の書き方には法的な取り決めはなく、フォーマットは任意です。ただし、従業員の勤怠管理と正確な給与計算のために、一般的な記載項目があります。

詳しくは出勤簿の書き方をご覧ください。

勤怠管理をカンタンに行う方法

freee人事労務 イメージ図


従業員の打刻情報の収集、勤怠情報の確認、休暇管理に毎日膨大な時間を割いていませんか?

こうした手続きはfreee人事労務を使うことで、効率良く行えます。

freee人事労務は打刻、勤怠収集、勤怠・休暇管理を一つのサービスで管理可能


freee人事労務を使用すればフローが簡略化できる

勤怠打刻はタイムカードやエクセルを利用し従業員に打刻作業を実施してもらったのちにエクセルなどに勤怠情報をまとめ勤怠・休暇管理を行なっていませんか?

freee人事労務では、従業員に行なってもらった勤怠打刻情報を全て自動で収集し勤怠情報の一覧をリアルタイムで作成します。

そこから勤怠情報の確認・修正が行える他に休暇管理も同時に実施することができます。

さらにそこからワンクリックで給与計算・給与明細発行を実施することができるので、労務管理にかける時間を劇的に削減することが可能です。

気になった方は是非freee人事労務をお試しください。

人事労務のすべてをfreeeひとつでシンプルに

freee人事労務は、入社手続きで取得した従業員ごとの保険料・税金と、打刻情報とを紐づけて自動で給与計算し、給与明細も自動で発行します!

ぜひ一度ご覧ください!