雇用保険料率は毎年4月に改定され、そのたびに計算を見直さなければいけません。雇用保険料は雇用保険料率×従業員の賃金で求めることができます。
しかし、残業代や通勤手当などは賃金に含まれる一方で、退職金や出張費、役員報酬などは賃金に含まれないように、すべての賃金が対象となるわけではありません。さらに雇用保険料率も業種によって異なります。
本記事では、雇用保険料の概要や雇用保険料率が引き上げられる理由、実際の計算方法を具体例を交えてわかりやすく解説します。
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目次
雇用保険料や雇用保険料率とは?
雇用保険とはさまざまな雇用に関する支援を目的とした保険制度です。労働者を雇用する事業所に原則として強制的に適用されます。この雇用保険にかかる保険料が「雇用保険料」です。
雇用保険は雇用に関する総合的な保険で、労働者が失業した場合や子の育児のため休業した場合に、労働者の生活を守るため失業等給付や育児休業給付を支給する制度があります。
実際に雇用保険料率も「失業等給付・ 育児休業給付の保険料率」と「雇用保険二事業の保険料率」に分けて定められています。雇用保険二事業とは失業の予防や労働者の能力開発等の雇用対策です。
具体的に、従業員の失業予防対策を行った事業主に支給される雇用調整助成金など雇用安定事業と、在職者や離職者に対して訓練を行う能力開発事業の2事業に分かれています。
雇用保険料の計算方法や対象となる賃金に関して知りたい方は、「雇用保険料とは?雇用保険料の計算方法や対象について解説」をご覧ください。
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雇用保険料率はいつ見直される?
雇用保険料率は、失業等給付費や年度末の積立金などに基づいて、毎年見直しが行われます。保険料率の引き下げ・引き上げが決まった場合、改定されるタイミングは基本的に4月1日からです。
令和8年度(2026年度)の雇用保険料率のほか、今までの保険料率の推移を詳しく解説します。
令和8年度は雇用保険料率が引き下げられる
下表のとおり、令和8年度(2026年度)の雇用保険料率は前年度から引き下げられています。前年度に引き続いての雇用保険料率引き下げとなり、要因としてはコロナ禍で悪化した雇用情勢の改善が続き、財源となる積立金が増えたことなどが挙げられます。
雇用保険料率は、適用される事業所の業種によって割合が異なります。次のとおり、大きく3つの業種に分けられます。
事業の種類
- 一般の事業:農林水産・清酒製造・建設以外のすべての業種
- 農林水産・清酒製造の事業:土地の耕作や動物の飼育、清酒の製造を行う事業所
- 建設の事業:建物の建築や修理、解体を行う事業所
一般の事業の場合、2026年度の失業等給付の保険料率は労働者・事業主ともに5.5/1,000です。
これまでの雇用保険料率の推移
過去10年の雇用保険料率(一般の事業)の推移は、下表のとおりです。
| 年度 | 労働者負担 | 事業主負担 | 雇用保険料率 |
|---|---|---|---|
| 2014〜2015年度 | 0.5% | 0.85% | 1.35% |
| 2016年度 | 0.4% | 0.7% | 1.1% |
| 2017〜2021年度 | 0.3% | 0.6% | 0.9% |
| 2022年度(4月) | 0.3% | 0.65% | 0.95% |
| 2022年度(10月) | 0.5% | 0.85% | 1.35% |
| 2023〜2024年度 | 0.6% | 0.95% | 1.55% |
| 2025年度 | 0.55% | 0.9% | 1.45% |
平成28年度(2016年度)と平成29年度(2017年度)に引き下げられていますが、令和4年度(2022年度)以降は保険料率の上昇が続いています。なお、令和4年度は例外的に4月と10月の2回、雇用保険料率の改定が行われました。
雇用保険料率の適用タイミング
雇用保険料率が改定される際、新料率が適用される期間(4月1日以降)に支払われるべき賃金に対して新しい料率を適用します。
ここで重要になるのが、自社の給与の「締め日」と「支払日」の関係です。
| 月末締め・翌月10日払いの場合 | 4月末締め・5月10日払いの給与から新料率を適用する |
|---|---|
| 月末締め・当月25日払いの場合 | 4月末締め・4月25日払いの給与から新料率を適用する |
| 15日締め・当月25日払いの場合 | 4月15日締め・4月25日払い分は、3月後半の労働が含まれるため旧料率を適用し、5月25日払い分(4月16日以降の労働分を含む)から新料率とするのが一般的。ただし実務上は4月中に支払われる給与から変更するケースも多い |
もっとも確実な判断基準は、「その給与がいつの労働に対するものか」です。厚生労働省の通達を確認し、自社の給与計算ソフトの設定を正しく更新する必要があります。
雇用保険料率の計算方法
雇用保険料を計算する際は、雇用保険料の対象となる賃金に業種ごとに定められた雇用保険料率をかけて計算します。
雇用保険料は従業員負担と事業所負担の割合が定められています。令和8年度は一般事業の場合、従業員負担分の保険料率は5/1000、事業所負担分の保険料率は8.5/1000です。
たとえば、一般の業種で賃金が20万円とすると、下記のように雇用保険料を求めることができます。
雇用保険料率の対象となる賃金、ならない賃金
雇用保険料の対象となる賃金は、労働対価として事業主が労働者に支払うすべての賃金です。基本給のみではなく、手当や賞与なども対象です。
「通勤手当」や「(会社が負担した)所得税や社会保険料」「労働基準法第26条に規定されている休業補償」も雇用保険料の対象となるため注意しましょう。
逆に労働の対価ではない「役員報酬」や「慶弔見舞金」などは雇用保険料の計算の対象外です。
なぜ雇用保険料率が引き上げられる?背景や目的とは?
令和8年度(2026年度)は前年度に引き続き雇用保険料が引き下げとなったものの、直近では、令和4年度(2022年度)および令和5年度(2023年度)で雇用保険料率の引き上げが行われています。料率が上昇した大きな要因として、新型コロナウイルス感染症拡大の長期化が挙げられます。
コロナ禍での企業の業績不振により従業員の雇用維持が難しくなり、雇用調整助成金の申請が多く行われました。そのため従来の雇用保険料率では、失業給付などの財源が確保できない状況となりました。
雇用保険料を引き上げて給付金などを支給し、雇用維持を推進することが目的です。
雇用保険料率の引き上げによって生じる影響
雇用保険料率を引き上げるとどのような影響が生じるのか、従業員や企業への負担や雇用への影響を説明します。
従業員と企業の保険料負担が増える
雇用保険料は、従業員・事業主がそれぞれ定められた割合の金額を納めます。保険料率の引き上げに伴い、従業員にとっても事業主にとっても負担額は大きくなります。
従業員1人あたりの負担額は、月額にして約数百円から千円程度とそれほど大きくはありません。しかし多くの従業員を雇っている企業などにとっては、保険料支払いの負担が増え、財政にも影響が生じる可能性があります。
正規雇用の求人が減る可能性がある
雇用保険料率が引き上げられると、正規雇用の求人が減少する可能性があります。
基本的に従業員が以下の要件に該当する場合、事業主は必ず雇用保険に加入して雇用保険料を支払わなければなりません。
雇用保険料の支払義務がある従業員
- 31日以上継続して雇用される見込みのある従業員
- 週の所定労働時間が20時間を超える働き方をする従業員
副業やフリーランスなど多様な働き方が認められるようになり、雇用保険料の負担を減らすため正規雇用に拘らない企業も増えています。
雇用保険への加入条件や手続き方法を知りたい方は、「雇用保険の加入条件は?加入手続きの方法や必要書類について」をご覧ください。
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まとめ
令和8年度(2026年度)の雇用保険料率は、前年度に引き続き、引き下げとなりました。毎年4月に雇用保険料率が変更となるため、そのつど雇用保険料の計算を見直す必要があります。
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よくある質問
雇用保険料率とは?
雇用保険料率とは、労働者の生活を守る雇用保険制度を維持するために、給与総額に乗じる計算割合のことです。この料率は「失業等給付」「育児休業給付」「雇用保険二事業」の3つの財源に充てられます。業種によって料率が異なり、毎年国が社会情勢を見て見直すのが特徴です。
詳しくは、記事内「雇用保険料や雇用保険料率とは?」をご覧ください。
令和8年(2026年)4月から雇用保険料率はどうなる?
令和8年度(2026年度)の雇用保険料率は、前年度から合計で0.1%引き下げとなります。一般の事業の場合、合計料率は1.35%となり、労働者負担分は0.5%(0.05%減)、事業主負担分は0.85%(0.05%減)です。給与計算時の設定変更を忘れないよう注意しましょう。
詳しくは、記事内「令和8年度は雇用保険料率が引き下げられる」をご覧ください。
