人事労務の基礎知識

みなし残業(固定残業代)とは?よくあるトラブルまとめ

みなし残業は固定残業代ともいわれる制度で、毎月の固定給に加えて、決まった時間分の残業代を支給します。しかし、実質労働時間がみなし残業時間を上回っても、残業代が出ないとして、トラブルになるケースが少なくないのが実情です。みなし残業とは、どういった制度なのかを解説していきます。[監修:榊 裕葵(社会保険労務士)]

更新日:2019年4月2日

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みなし残業(固定残業代)の概要

みなし残業とは、固定残業ともいわれるもので、あらかじめ固定給の中に残業代が含まれている労働契約です。みなし残業を導入するには、就業規則や雇用契約書などの書面に記載して、従業員に周知を図る義務があります。

みなし残業の導入は「不利益変更」に該当する場合がある

みなし残業の導入で、固定残業代を基本給に上乗せして支払う場合には、従業員の不利益には当たらないため、同意は不要です。

一方、これまでの基本給に固定残業代を含む形での変更では、実質的な賃金の低下となり従業員にとって不利益となるため、基本的に従業員の同意が必要になります。

みなし残業代は、「金額」や「時間数」の明記が必要

また、みなし残業では、決められた残業時間に基づいた固定残業代を支払います。「月給30万円(45時間分の固定残業代8万円を含む)」、あるいは、「基本給22万円 固定残業代(45時間分)8万円」といったように、固定残業代と残業時間がわかる形で明記することが必要です。

明記していないと、残業代未払いで訴訟になった場合、会社が敗訴する可能性が高いので、リスク管理の面からもみなし残業代の明記は必須です。金額・時間数、両方併記しておくことが手堅いでしょう。

みなし残業時間と実際の労働時間が異なる場合

固定残業代として支払っていても、毎月の業務量には変動があるケースが多く、みなし残業時間と実際の労働時間は異なることが想定されます。みなし残業を導入していても、タイムカード等による労働時間の管理は必要です。

みなし残業時間よりも実労働時間が少ない場合

固定残業代のもとになるみなし残業時間よりも、実労働時間が少ない場合でも、支給額を減らすことはできません。固定残業代は規定の額を支払うことになります。

みなし残業時間よりも実労働時間が多い場合

みなし残業時間よりも実労働時間の方が多い場合には、みなし残業として決められた時間を超えた分の残業代の支払いが必要です。固定残業代として支払っていても、実際の残業時間に即して、残業手当を支払う義務があります。

みなし残業時間の上限は?

みなし残業時間の上限は設けられていませんが、法定労働時間を超えて時間外労働をさせる場合に、労使間で締結する36協定の上限は1か月45時間、1年間で360時間です。そのため、36協定に抵触しないように、みなし残業時間は45時間以内に設定している企業が多くみられます。

みなし残業(固定残業代)でのよくあるトラブル

みなし残業による残業代の取り扱いでトラブルが多いケースを紹介します。

超過分の未払い

実労働時間がみなし残業時間を超えても、固定残業代を支払っているので残業代の支払いの義務がないという誤解から、超過分の残業代が未払いというトラブルは少なくありません。みなし残業時間を明記せずに、残業代込みとして給与を支給している企業もみられます。
また、固定残業代を支払うことで、労働時間の管理は不要という誤った認識から、残業時間を把握していないケースもあります。
しかし、みなし残業でも労働時間を管理して、超過分の残業代を支払わなければ違法となります。

休日・深夜の割増賃金の未適用

みなし残業で固定残業代を計算する際には、法定労働時間を超えた時間外労働の割増賃金は上乗せしていても、休日労働や深夜労働の割増賃金を考慮していないことで起こるトラブルも多く見られます。
時間外労働の割増賃金は2割5分ですが、休日労働では3割5分になります。
また、夜10時から朝5時までの深夜労働は2割5分の割増賃金となるため、時間外労働の深夜の勤務では、本来は5割の割増賃金です。

たとえば、所定労働時間が9時から18時で1時間の休憩を除く8時間の場合、23時まで残業すると、18時から22時までの4時間は2割5分の割増賃金が適用されます。一方、22時から23時までの1時間は5割の割増賃金となります。

例: 「固定給22万円 固定残業代(45時間分)7万400円」として表示している場合
固定給が22万円の場合、22日勤務、1日8時間労働とすると、時給は1,250円です。この時給の場合、時間外労働の割増賃金は1時間当たり1,562.5円(1,250円×1.25)となります。この賃金に45時間を乗せば、残業代が算出されるのです。

1,562.5円(割増賃金の時給)×45(時間)=7万321.5円
なお、100円未満は切り上げになりますので「固定残業代(45時間分)7万400円」として表示されます。この場合は、残業は時間外労働の割増賃金で計算されていても、深夜労働や休日労働の割増は考慮していないことになります。

このケースの場合、休日労働や深夜労働が発生した際には、手当を支給するよう対応が求められます。

48_1※図番化予定

引用元:厚生労働省

最低賃金を下回る

固定給が時給換算で最低賃金を上回り、時間外労働の割増賃金はさらに2割5分上乗せした水準以上でなければ、違法です。
たとえば、平成28年度の東京都の最低賃金は932円ですので、時間外労働では時給1,165円が最低水準になります。

しかし、悪質なケースでは、固定残業代が時間外労働の割増を考慮していないばかりか、基本給も無視した残業代の設定をし、最低賃金を下回っていることからトラブルとなっています。たとえば、「固定残業代3万円(45時間分)」と提示されたケースでは、時給666円ほどにしかなりません。

時間外労働の時間でも最低賃金を下回らないよう、適切に賃金を設定することが大切です。

異常な長時間のみなし残業代

最低賃金を下回らなければ、みなし残業代を何時間分でも青天井に設定して良いわけではありません。

会社は労働者に対し安全配慮義務を負っていますし、働き方改革法では36協定で延長できる残業時間数に罰則付きの上限が設けられました。

基本的に45時間分を超えるみなし残業代は設定すべきではありません。

その理由は、臨時的な理由で特別条項が適用される場合を除き、36協定で法定労働時間を超えて延長できる1か月の残業時間数の上限は45時間だからです。

過去の判例を見ても、月45時間分を超えたみなし残業代の有効性が争われた場合、裁判所は安全配慮義務違反や公序良俗違反を理由に、45時間分までのみなし残業代しか認めず差額の支払を命じたり、みなし残業代自体を否定して残業代全額の支払を命ずる判決を出したりしています。

みなし残業代を導入すべき企業・導入すべきでない企業

みなし残業代の導入パターンは「経営戦略型」と「やむなく型」の2種類があります。

まず、「経営戦略型」のみなし残業代ですが、さらに2種類に分かれます。

第1は、「ダラダラ仕事をする人が残業代で稼ぎ、効率良く働いている人のモチベーションを下げたり、賃金の逆転現象が起きないようにするため」です。

どれだけ効率的に顧客対応ができるかが勝負という営業系の会社や、プレゼンテーションの作成業務・リサーチ業務などデスクワーク系の会社は、このタイプのみなし残業代は親和性があるでしょう。

第2は、「本人が自由に働ける職場環境を提供するため」です。

スタートアップ企業ではフレックスタイム制や裁量労働制とセットで導入されることも多く、「本人の就労の自由度を高めつつ、企業としての人件費は一定範囲に固定したい」という場合に用いられます。残業をして良い時間数の上限だけ決めて、あとは本人の自由に任せるという形になりますので、裁量の大きいスタートアップ企業には全般的に親和性が高いと言えます。

以上を踏まえますと、逆に、製造業のライン作業、飲食店のホールスタッフのように、本人の努力や工夫で残業時間数を調整しにくい業種にはみなし残業代はなじまないということになります。

次に「やむなく型」のみなし残業代です。

やむなく型は、上記のような積極的な形ではなく、財務的な事情等で残業代が払いきれないため、やむなく、基本給の一部や諸手当などを、みなし残業代として支払うというパターンです。

未払い残業代を計上し続けることは大きな法的リスクになりますから、就業規則の不利益変更や、従業員との雇用契約の内容の見直しにより、みなし残業代を導入して、形の上だけでも残業代の未払いを無くすことが先決となります。

その上で、経営の立て直しなど、根本対策を進めていく必要があります。

まとめ

みなし残業の導入は、適正な人件費の配分、企業文化に合った働き方の実現、経営リスクの回避など導入理由は様々です。いずれの場合においても、超過分や深夜労働などの割増賃金を支払わず、違法性があるケースもみられますので、導入は慎重に判断し、導入後も正しく制度を運用できるようにしましょう。

監修: 榊 裕葵(社会保険労務士)

こんにちは。ポライト社会保険労務士法人マネージング・パートナーの榊です。当社は人事労務freeeをはじめ、HRテクノロジーの導入支援・運用支援に強みを持っています。ITやクラウドを活用した業務効率化や、働き方改革法対応は当社にお任せください。

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