監修 北 光太郎 きた社労士事務所
年末調整の計算とは、従業員に支払う毎月の給与などから天引きした源泉徴収税額と、従業員が本来納めるべき所得税額の差分を求めることを指します。
とくに2026年分の年末調整では、基礎控除や給与所得控除の引き上げが行われているため、最新ルールを正しく押さえておく必要があります。
本記事では2026年分の年末調整の計算方法や計算例、必要書類についてわかりやすく解説します。改正後の制度に対応した年末調整の流れを理解し、自社の実務に役立ててください。
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目次
- 年末調整の計算とは
- 年末調整の対象になる人
- 年末調整の年調年税額を求める計算方法
- 1. 給与総額・社会保険料・源泉徴収税額を集計する
- 2. 給与総額から給与所得額を算出する
- 3. 所得控除の金額を計算する
- 4. 2から3を差し引き課税所得額を計算する
- 5. 4から算出所得税を求める
- 6. 5から住宅ローン控除を差し引く(該当者のみ)
- 7. 復興特別所得税を加えて年調年税額を算出する
- 8. 年調年税額と源泉徴収税額の過不足を精算する
- 年末調整の複雑な手続きを効率化
- 年末調整の計算例【2026年対応】
- 計算例1:中途入社(転職)の独身者の場合
- 計算例2:配偶者(収入なし)と16歳の子どもが1人いる既婚者
- 計算例3:ひとり親の場合
- 年末調整の計算で注意すべきポイント
- 扶養親族の人数変更の記載漏れがないか
- 従業員に控除の必要書類の保管を徹底してもらう
- 年末調整の計算に必要な書類
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
- 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 兼(特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書
- 2026年の年末調整を簡単に行う方法
- まとめ
- よくある質問
年末調整の計算とは
年末調整の計算とは、毎月の給与や賞与から源泉徴収した所得税および復興特別所得税の合計額と、従業員が本来納めるべき所得税額(年調年税額)の差分を求めることです。
毎月の源泉徴収税額は、その時点の給与額や扶養親族等の人数をもとに概算で計算しています。そのため、年の途中で給与額や扶養親族等の状況が変わった場合や、生命保険料控除などが適用される場合には、年調年税額との間に差が生じます。
年末調整の計算で求めた源泉徴収税額と年調年税額の差分は、その年最後の給与や賞与で還付もしくは追加徴収します。なお、就業規則で12月の給与を1月に支払うと定めている場合は、その支給時に精算します。
計算方法や基本的な流れは共通ですが、従業員ごとに給与等の支給額や適用される控除とその額が異なるため、実際の計算作業は煩雑になりがちです。計算を間違えることのないよう、年末調整の計算方法や各種控除について正しく理解しておきましょう。
年末調整の対象になる人
年末調整の対象になるのは、原則として勤務先へ「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出し、その年の12月31日時点で在籍している人です。正社員だけでなく、条件を満たせば契約社員やパート、アルバイトなども対象になります。
年の途中で転職した人については、前の勤務先が発行した源泉徴収票を現在の勤務先へ提出すれば、前職と現職の給与などを合算して年末調整を受けられます。前職分の給与額や源泉徴収税額を確認できない場合、現在の勤務先では年末調整ができないため、原則として本人による確定申告が必要です。
また、以下に該当する人は、原則として年末調整の対象外になります。
- その年の給与収入が2,000万円を超える人
- 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していない人
- 災害減免法によりその年の給与に対する所得税および復興特別所得税の徴収猶予や還付を受けた人
- 2ヶ所以上から給与を受け取り、別の勤務先へ扶養控除等(異動)申告書を提出している人
ただし、年末調整の対象外となった人でも、確定申告によって所得税の過不足を精算できる場合があります。
年末調整の年調年税額を求める計算方法
年末調整では、1年間の給与総額から給与所得や所得控除の額を求め、従業員がその年に納めるべき年調年税額を計算します。その後、給与や賞与からすでに源泉徴収した税額と比較し、差額を還付または追加徴収します。
給与総額から年調年税額を求めるまでの主な計算の流れは、以下のとおりです。
また年末調整の計算手順は、従業員ごとに以下の手順で行います。
年末調整の計算方法
- 給与総額・社会保険料・源泉徴収税額を集計する
- 給与総額から給与所得額を算出する
- 所得控除の金額を計算する
- 2から3を差し引き課税所得額を計算する
- 4から算出所得税を求める
- 5から住宅ローン控除を差し引く(該当者のみ)
- 復興特別所得税を加えて年調年税額を算出する
- 年調年税額と源泉徴収税額の過不足を精算する
なお、年末調整の計算の各手順において使用する各種書類については、記事内「年末調整の計算に必要な書類」をご参照ください。
1. 給与総額・社会保険料・源泉徴収税額を集計する
まずは、従業員一人ひとりの1年間の給与総額や給与から天引きした社会保険料、源泉徴収税額の集計作業を行います。
中途入社者については、前職の源泉徴収票が提出されている場合、前職分も合算します。
給与総額の集計
1年間の給与総額を計算します。ここでの「給与」とは、その年の1〜12月に受け取った給与のほか、賞与や手当も含まれます。年末までの給与・賞与の金額が確定していない段階で計算する際は、これまで支払われた給与・賞与に基づいて見積額を算出します。
一方、一定額までの通勤手当や出張旅費など、所得税がかからない手当(非課税収入)は含めません。通勤手当は、1ヶ月あたり15万円まで非課税となるためです。つまり「基本給 + 通勤手当以外の各種手当の合計」が集計対象となります。
給与から天引きした社会保険料の集計
給与から天引きした社会保険料は、従業員が支払った全額が社会保険料控除の対象です。従業員本人が国民年金保険料や国民健康保険料などを支払っている場合は、申告内容も確認したうえで社会保険料控除へ加算します。
源泉徴収税額の集計
給与や賞与から源泉徴収した所得税および復興特別所得税の合計額を集計します。
中途入社者について前職分を含めて年末調整する場合は、前職の源泉徴収票に記載された源泉徴収税額も合算します。ここで集計した源泉徴収税額と、最終的に算出される年調年税額との差額が、還付または追加徴収する金額です。
2. 給与総額から給与所得額を算出する
次に、先ほど求めた給与総額から給与所得控除を差し引き、給与所得を求めます。
給与総額 - 給与所得控除 = 給与所得
給与所得控除とは、給与所得者の必要経費に相当するものとして、給与収入に応じて差し引かれる控除です。
2026年分の年末調整では、税制改正により給与所得控除の最低保障額が65万円から74万円へ引き上げられました。給与所得額は、下表をもとに求めます。
| 給与等の収入金額の合計額(A) | 改正後の給与所得控除額 |
|---|---|
| 220万円以下 | 74万円 |
| 220万円超 360万円以下 | (A)× 30% + 8万円 |
| 360万円超 660万円以下 | (A)× 20% + 44万円 |
| 660万円超 850万円以下 | (A)× 10% + 110万円 |
| 850万円超 | 195万円 |
また、給与総額が660万円以上の場合は、下記の速算表に基づく簡易的な方法で給与所得額を求めることも可能です。
| 給与総額(給与等の収入金額) | 給与所得額 |
|---|---|
| 660万1円以上850万円以下 | 収入金額 × 90% - 110万円 |
| 850万1円以上2,000万円 | 収入金額 - 195万円 |
このとき、その年の給与総額が850万円を超えており、かつ以下のいずれかの条件を満たしている場合には所得金額調整控除(子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除)が適用されます。
所得金額調整控除の対象となる条件
- 本人が特別障害者
- 23歳未満の扶養親族がいる
- 特別障害者の配偶者または扶養親族がいる
所得金額調整控除は、給与所得から以下の金額を控除します。
{給与収入金額(1,000万円超の場合は1,000万円)- 850万円} × 10% = 所得金額調整控除額(※)
※1円未満の端数がある場合は切り上げ
3. 所得控除の金額を計算する
給与所得額を算出したら、そこから差し引く「所得控除」の合計を求めます。所得控除は全部で16種類あり、どの控除が適用されるかは各従業員の状況によって異なります。主な所得控除は以下のとおりです。
なお、以下の所得控除は、年末調整で対応可能なものに限ります。
年末調整で申告できる所得控除の一覧
- 基礎控除
- 配偶者控除、配偶者特別控除
- 扶養控除
- 特定親族特別控除
- 障害者控除
- 寡婦控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
- 生命保険料控除、地震保険料控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
このとき、「給与から天引きした社会保険料の集計」で算出した社会保険料は、社会保険料控除に含めて合算します。
また、2026年分の年末調整では、給与所得控除の最低保障額が74万円に引き上げられたほか、扶養親族や同一生計配偶者などの合計所得金額要件が58万円以下から62万円以下へ変更されました。
基礎控除額も改正されており、従業員本人の合計所得金額に応じて適用額が異なります。従業員から提出された基礎控除申告書に記載された合計所得金額の見積額と控除額を確認しましょう。
そのほか、従業員ごとの所得控除の有無や内容は、年末調整時に各従業員から回収する以下の所得控除の申告書と、生命保険料控除などの証明書をもとに確認・集計します。
従業員から回収する所得控除に関連する申告書
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
4. 2から3を差し引き課税所得額を計算する
「2. 給与総額から給与所得額を算出する」で求めた給与所得額から「3. 所得控除の金額を計算する」で求めた所得控除を差し引いて、課税所得額を算出します。
給与所得額 - 所得控除の合計 = 課税所得額(1,000円未満切り捨て)
計算結果に1,000円未満の端数がある場合は切り捨てます。差し引いた結果が0円を下回る場合、課税所得額は0円です。
5. 4から算出所得税を求める
「4. 課税所得額を計算する」で求めた課税所得額に所得税率をかけて、所得税額を算出します。所得税率は下表の速算表のとおり、課税所得額に応じて段階的に設定されています。このとき、下表に記載されている控除額を差し引くことも忘れないようにしましょう。
上記をまとめて以下の計算を行うと、算出所得税額が求められます。
課税所得額 × 所得税率 - 控除額 = 算出所得税額
速算表は以下のとおりです。
所得税率の速算表
| 課税対象の所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円〜1,949,000円 | 5% | 0円 |
| 1,950,000円〜3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円〜6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円〜8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円〜17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円〜39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
次に説明する住宅ローン控除の適用がない場合には、ここで算出した「算出所得税額」がそのまま「年調所得税額」となります。
6. 5から住宅ローン控除を差し引く(該当者のみ)
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の適用がある従業員は、「5. 算出所得税を求める」で計算した金額から住宅ローン控除額を差し引きます。
算出所得税額 - 住宅ローン控除額 = 年調所得税額
住宅ローン控除は、所得税額から直接差し引く税額控除です。「3. 所得控除の金額を計算する」で計算した所得控除とは、差し引くタイミングが異なります。
年末調整で住宅ローン控除を受ける従業員からは、原則として以下の書類を回収します。
- 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 兼(特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
住宅ローンの控除額は、従業員から提出された証明書に記載されている、年末時点におけるローン残高に控除率を掛けた金額です。
年末時点の住宅ローン残高 × 0.7%(100円未満切り捨て)= 住宅ローン控除額
※2022年1月1日以降に一般住宅や認定住宅の新築などを行った場合
ただし、控除額や限度額は、居住を開始した年、住宅の区分、取得・新築・増改築の別などによって異なります。そのため、一律に「年末残高 × 0.7%」で計算するのではなく、従業員から提出された申告書と年末残高等証明書をもとに確認しましょう。
なお、住宅ローン控除を年末調整で適用できるのは、原則として2年目以降です。適用1年目は住宅ローン控除の申告を従業員自身が確定申告で行うため、年末調整の計算に住宅ローン控除は含まれません。
住宅ローン控除額が算出所得税額を上回る場合、年調所得税額は0円です。所得税から控除しきれなかった金額がある場合は、源泉徴収票の「住宅借入金等特別控除可能額」欄などへ必要事項を記載します。
一定の範囲で翌年度の住民税から控除される場合がありますが、翌年以降へ繰り越して所得税から控除することはできません。
7. 復興特別所得税を加えて年調年税額を算出する
「5. 算出所得税を求める」もしくは「6. 住宅ローン控除を差し引く」で求めた年調所得税額に復興特別所得税を加えた年調年税額を算出します。
復興特別所得税は、東日本大震災からの復興に必要な財源を確保するため、2013年から2047年まで所得税とあわせて課される税金です。税率は基準所得税額の2.1%です。
年調年税額は、以下の式で求めます。
年調所得税額 × 102.1%(復興特別所得税率)= 年調年税額(100円未満切り捨て)
ここで算出された金額が、その年に従業員が支払うべき所得税額です。
前述のとおり、復興特別所得税は住宅ローン控除を差し引いた後の金額に加算されるので、「6. 住宅ローン控除を差し引く」の時点で金額がマイナスになっていた場合、この計算をする必要はありません。
8. 年調年税額と源泉徴収税額の過不足を精算する
最後に「1. 給与総額・社会保険料・源泉徴収税額を集計する」で集計した源泉徴収税額と、ここまでの手順で算出した年調年税額を比較し、過不足額を計算のうえ追加徴収または還付額の精算を行います。この精算をもって、年末調整における一連の計算作業が完了します。
| 過不足の計算について | |
|---|---|
| 年調年税額 < 源泉徴収税額 | 税金の過払い。差額分を従業員に還付 |
| 年調年税額 > 源泉徴収税額 | 税金の支払い不足。差額分を従業員から追加徴収 |
年末調整の複雑な手続きを効率化
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年末調整の計算例【2026年対応】
ここでは、前述した計算方法をもとに、2026年(令和8年)分の年末調整の計算例を紹介します。
なお、実際の控除額は、従業員本人や家族の所得、年齢、保険料の支払額などによって異なります。以下は計算方法を示すための一例です。
計算例1:中途入社(転職)の独身者の場合
Aさんの場合
- 独身・扶養親族なし
- 前職の給与総額:200万円
- 現職の給与総額:300万円
- 前職の社会保険料:30万円
- 現職の社会保険料:45万円
- 前職の源泉徴収税額:7万5,000円
- 現職の源泉徴収税額:9万円
- その他の所得控除:なし
- 住宅ローン控除:なし
1~5. 算出所得税額の計算
中途入社者の年末調整では、前職の源泉徴収票に記載された給与総額、社会保険料、源泉徴収税額を、現在の勤務先における金額と合算します。
まず、前職と現職の給与総額を合計します。上記の例では給与総額が500万円となり、給与所得額は以下のように求められます。
(500万円 ÷ 4)× 3.2 - 44万円 = 356万円
次に、社会保険料と基礎控除を合計します。Aさんの合計所得金額は489万円以下のため、2026年分の基礎控除額は104万円です。
30万円(前職の社会保険料) + 45万円(現職の社会保険料) + 104万円(基礎控除額) = 179万円(所得控除の合計額)
さらに給与所得額から所得控除の合計額を差し引き、課税所得額を求めます。課税所得額に所得税率を掛けることで算出所得税額が求められます。
- 課税所得額 = 356万円 - 179万円 = 177万円
- 算出所得税額 = 177万円 × 5% = 8万8,500円
6. 年調年税額の計算
Aさんは住宅ローン控除の適用を受けないため、算出所得税額8万8,500円がそのまま年調所得税額となります。この年調所得税額に102.1%を掛け、所得税と復興特別所得税を合計した年調年税額を計算しましょう。
8万8,500円 × 102.1% = 9万358.5円
100円未満を切り捨てるため、Aさんの年調年税額は9万300円です。
その後、前職と現職の源泉徴収税額の合計から年調年税額を差し引くと、還付額は以下のようになります。
16万5,000円 - 9万300円 = 7万4,700円
これにより、Aさんは所得税等を7万4,700円多く納めていることがわかるため、現在の勤務先から同額が還付されます。
なお、前職の源泉徴収票が提出されず、前職分の給与総額や源泉徴収税額などを確認できない場合、現在の勤務先では前職分を含めた年末調整ができません。その場合、原則としてAさん本人が確定申告を行います。
計算例2:配偶者(収入なし)と16歳の子どもが1人いる既婚者
Bさんの場合
- 既婚、配偶者(妻)は収入なし
- 16歳の子ども1名を扶養
- 給与総額:587万円
- 源泉徴収税額:14万595円
- 保険料に関する控除額
・社会保険料控除額:82万9,975円(給与から天引きした社会保険料含む)
・生命保険料控除額:7万1,550円
・地震保険料控除額:4万5,000円
※扶養親族の年齢は、その年の12月31日時点で判定します
1~5. 算出所得税額の計算
まずは、給与総額から給与所得額を求めます。給与総額が660万円未満であることから、「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」より、給与所得額は425万4,400円であることがわかります。
続いて、給与所得額から所得控除の合計額を差し引き、課税所得額を求めます。
Bさんは配偶者と16歳の子ども1名を扶養していることから、配偶者控除38万円、扶養控除38万円を受けられます。そのほか、保険料に関する所得控除と、基礎控除をあわせ、所得控除の合計額は以下のとおり求められます。
829,975円(社会保険料控除)+ 71,550円(生命保険料控除)+ 45,000円(地震保険料控除)+ 380,000円(配偶者控除)+ 380,000円(扶養控除)+ 1,040,000円(基礎控除)= 2,746,525(円)
給与所得額より所得控除の合計額274万6,525円を差し引き、課税所得額を求めます。
4,254,400(円)- 2,746,525(円)= 1,507,875(円)
1,000円未満を切り捨て、課税所得額は150万7,000円です。
続いて、課税所得額から算出所得税額を求めます。計算式は以下のとおりです。
1,507,000(円)× 5% = 75,350(円)
したがって、Bさんの算出所得税額は7万5,350円です。
6. 年調年税額の計算
Bさんの場合、住宅ローンの支払いはないため、住宅ローン控除は対象外となります。最後に、算出所得税額に復興特別所得税の税率をかけ、年調年税額を算出します。
75,350(円)× 102.1% = 76,932.35(円)
算出した76,932.35円から100円未満切り捨てとなるため、年調年税額は76,900円です。
7. 過不足の精算
100円未満を切り捨てた76,900円が、Bさんが納付すべき所得税及び復興特別所得税(年調年税額)となり、すでに源泉徴収された14万595円と比べると6万3,695円の超過となります。この超過分は、12月または翌年1月にBさんに還付します。
計算例3:ひとり親の場合
Cさんの場合
- 独身(ひとり親)
- 18歳の子ども1名を扶養
- 給与総額:420万円
- 源泉徴収税額:11万2,200円
- 保険料に関する控除額
・社会保険料控除額:46万9,956円(給与から天引きした社会保険料含む)
・生命保険料控除額:12万円
次に、18歳の子ども1名を扶養する、ひとり親のCさんのケースについて解説します。
1~5. 算出所得税額の計算
まず、給与総額から給与所得額を求めます。給与総額は420万円のため「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」より給与所得額は292万円ということが分かります。
続いて、所得控除の合計額を計算します。
Cさんは独身で生計を一にする子を有しているため、ひとり親控除35万円が受けられます。
また、18歳の子どもは控除対象扶養親族に該当するため、38万円の扶養控除を受けられます。Cさんの合計所得金額は489万円以下であることから、基礎控除額は104万円です。
所得控除の合計額は、以下のように計算します。
469,956円(社会保険料控除)+ 120,000円(生命保険料控除)+ 350,000円(ひとり親控除)+ 380,000円(扶養控除)+ 1,040,000円(基礎控除)= 2,359,956円
給与所得額から所得控除の合計額を差し引き、課税所得額を求めます。
2,920,000(円) - 2,359,956(円)= 560,044(円)
1,000円未満を切り捨てるため、Cさんの課税所得額は56万円です。課税所得金額が195万円以下のため、所得税率5%を掛けて算出所得税額を計算します。
560,000(円)× 5% = 28,000(円)
6. 年調年税額の計算
算出した所得税額2万8,000円に復興特別所得税率を掛け、年調年税額を算出します。
28,000(円)× 102.1% = 28,588(円)
28,588円から100円未満切り捨て、年調年税額は28,500円となります。
7. 過不足の精算
100円未満を切り捨てた2万8,500円が、Cさんの年調年税額(所得税及び復興特別所得税)です。すでに源泉徴収された11万2,200円と比べると8万3,700円の超過となるため、この超過額をCさんに還付します。
年末調整の計算で注意すべきポイント
年末調整では、従業員の家族構成や所得、保険料の支払状況などを正確に確認する必要があります。申告内容や提出書類に不備があると、控除額を正しく計算できず、年末調整のやり直しや従業員による確定申告が必要になる場合があります。
年末調整の計算では、主に以下の点に注意しましょう。
年末調整の計算で注意すべきポイント
- 扶養親族の人数変更の記載漏れがないか
- 従業員に控除の必要書類の保管を徹底してもらう
扶養親族の人数変更の記載漏れがないか
扶養控除などの適用可否は、原則としてその年の12月31日時点の状況に基づいて判定します。結婚や離婚、出産、子どもの就職、親族の死亡などによって扶養親族等に異動があった場合は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」へ反映しなければなりません。
たとえば、年の途中で扶養親族が就職し、所得要件を満たさなくなったにもかかわらず申告内容を変更していないと、毎月の源泉徴収税額が少なくなり、年末調整で追加徴収が発生する可能性があります。反対に、扶養親族が増えた場合は、源泉徴収した所得税等の一部が還付されることもあります。
また、2026年分から、扶養親族や同一生計配偶者などに関する合計所得金額の要件は、原則として58万円以下から62万円以下へ引き上げられました。給与収入のみの場合は、年収136万円以下が目安です。
さらに、19歳以上23歳未満の親族については、扶養控除の所得要件を超えても、所得額によって特定親族特別控除を受けられる場合があります。扶養親族の人数だけでなく、年齢や年間所得の見積額も確認しましょう。
従業員に控除の必要書類の保管を徹底してもらう
生命保険料控除や地震保険料控除などを受けるには、原則として保険会社等が発行する控除証明書が必要です。国民年金保険料や小規模企業共済等掛金、住宅ローン控除についても、それぞれ所定の証明書を提出または提示しなければなりません。
控除証明書は例年10月頃から送付されるため、従業員には紛失しないよう事前に周知し、社内の提出期限まで保管してもらいましょう。電子データで発行された証明書を受け付ける場合は、対応するファイル形式や提出方法もあわせて案内します。
証明書を紛失した場合は、保険会社や金融機関などへ再発行を依頼できます。ただし、再発行に時間がかかり、年末調整の期限に間に合わない可能性もあります。勤務先で控除を反映できなかった場合、従業員本人が確定申告を行うことで控除を受けられます。
年末調整の計算に必要な書類
年末調整では、従業員から提出された申告書や控除証明書をもとに、所得控除・税額控除の適用可否と控除額を確認します。
年末調整に用いる主な申告書は、以下の4種類です。
年末調整の計算に必要な申告書
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
- 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 兼(特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書
ただし、すべての従業員から4種類を回収するわけではなく、家族構成や保険料の支払い、住宅ローン控除の適用状況などによって必要な書類は異なります。
ここでは、各申告書の概要を解説します。
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(以下、扶養控除等申告書)は、年末調整の対象となるすべての従業員に提出してもらう必要があります。扶養控除等申告書では、扶養控除や障害者控除、ひとり親控除、寡婦控除などの申告ができます。
扶養控除等申告書で申告できる所得控除や、扶養控除等申告書の書き方についての詳細は別記事「扶養控除申告書とは?2026年版の書き方・記入例や提出期限、注意点などをわかりやすく解説」をあわせてご確認ください。
給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書
「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」は以下の4種類の申告書を兼ねたものです。
- 給与所得者の基礎控除申告書
- 給与所得者の配偶者控除等申告書
- 給与所得者の特定親族特別控除申告書
- 所得金額調整控除申告書
本申告書では、基礎控除と配偶者控除、配偶者特別控除、特定親族特別控除、そして所得金額調整控除を申告できます。従業員は適用される控除がある場合のみ必要事項を記入し提出を行いますが、ほとんどの給与所得者は基礎控除の適用対象となるため、基本的にはすべての従業員が本申告書を提出することとなります。
給与所得者の保険料控除申告書
「給与所得者の保険料控除申告書」は、年末調整での保険料控除の申告に用いる書類です。控除対象となる保険料には、生命保険料、地震保険料、社会保険料、小規模企業共済等掛金などがあります。
従業員の給与から天引きした社会保険料については、本申告書による社会保険料控除の申告は不要です。本申告書の社会保険料控除の欄は、従業員自身が個人で社会保険料を支払った場合や、同一生計の親族分の社会保険料を控除申告する場合にのみ記入を行います。
給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 兼(特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書
「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 兼(特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書」は、従業員が住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を申告する際に必要な書類です。
会社から従業員に交付するのではなく、従業員の居住地を管轄している税務署から従業員宛に本申告書が交付されます。
住宅ローンを借り入れしている従業員は、借り入れを行った金融機関から発行された年末残高等証明書に記載の情報を本申告書に記載し、会社に提出します。
なお、住宅ローン控除は所得控除ではなく税額控除のため、年末調整の計算の際には、算出所得税額から直接住宅ローン控除額を差し引くことに注意しましょう。
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まとめ
年末調整の計算は、従業員ごとに給与額や家族構成、適用される所得控除・税額控除などを確認し、正しい年調年税額を計算する必要があります。限られた期間に多くの確認・計算作業が発生するため、担当者にとって負担の大きい業務といえるでしょう。
年末調整を円滑に進めるには、必要な申告書や控除証明書、提出期限を早めに従業員へ案内し、不備や未提出を減らす体制を整えることが大切です。また、控除額や所得要件、申告書の様式などは税制改正によって変更される場合があるため、国税庁の最新情報を確認し、正確な計算と手続きを行いましょう。
よくある質問
年末調整の計算方法とは?
年末調整の計算方法は、会社が従業員に支払ったその年の支払総額から給与所得控除や所得控除を差し引き算出した課税所得額から所得税を求め、さらに住宅ローン控除額を所得税額から差し引き確定した年調年税額と、源泉徴収税額との差分を求めることで完了します。
詳しくは、記事内「年末調整の年調年税額を求める計算方法」をご覧ください。
年末調整の計算で注意すべきポイントは?
年末調整では、扶養親族の人数変更がある際の記載漏れや、控除証明書の紛失などに注意しなければなりません。正しく処理されない場合は源泉所得税額と年調年税額に差が出て、追加徴収か還付の遅れにつながる可能性があります。
詳しくは、記事内「年末調整の計算で注意すべきポイント」で解説しています。
年末調整の計算に必要な書類は?
年末調整の所得控除・税額控除の計算のために従業員から回収する申告書は以下の4点です。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
- 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 兼(特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書(住宅ローン控除の適用対象者のみ)
詳しくは、記事内「年末調整の計算に必要な書類」をご覧ください。
参考文献
- 国税庁「No.1130 社会保険料控除」
- 国税庁「No.1199 基礎控除」
- 国税庁「No.1410 給与所得控除」
- 国税庁「No.1411 所得金額調整控除」
- 国税庁「No.2260 所得税の税率」
- 国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」
- 国税庁「No.1212 住宅の新築等をし、令和3年までに居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」
- 国税庁「個人の方に係る復興特別所得税のあらまし」
- 国税庁「過不足額の精算」
- 国税庁「令和8年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」
- 国税庁「令和8年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」
- 国税庁「令和8年分 給与所得者の保険料控除申告書」
- 国税庁「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 兼(特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書の記載例」
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱(6/9)」
監修 北 光太郎
きた社労士事務所 代表
中小企業から上場企業まで様々な企業で労務に従事。計10年の労務経験を経て独立。独立後は労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人・個人問わず多くの記事執筆・監修をしながら、自身でも労務専門サイトを運営している。


