人事労務の基礎知識

所得税の扶養と社会保険(健康保険と厚生年金保険)の扶養の違い

扶養とは、自分の力で生活することが難しい家族などと生活をともにし、面倒を見ることです。所得税や社会保険(健康保険と厚生年金保険)においては扶養の考えがあり、被扶養者(扶養される人)の有無や人数に応じて、課税所得の軽減や、家族分の保険料が免除されるしくみになっています。しかし、所得税と社会保険とでは扶養の対象にできる家族等の範囲が異なるので注意が必要です。

更新日:2019年2月28日

所得税の扶養と社会保険(健康保険と厚生年金保険)の扶養の違い

目次

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所得税の扶養の範囲

所得税の扶養は、扶養控除に関わってきます。扶養している人数によって、所得から一定の額が控除されるというものです。

対象になる家族の範囲

所得税の扶養に関する控除には、配偶者が対象になる配偶者控除と配偶者特別控除、配偶者以外の親族が対象になる扶養控除があります。

配偶者以外の親族である扶養控除の対象となるのは、6親等内の血族と3親等内の姻族までです。つまり自分の兄弟や叔父叔母はもちろんのこと、例えば4親等である祖父母の兄弟、6親等であるいとこの孫、3親等の姻族である配偶者の兄弟の子どもも含まれることになります。

扶養の対象になる年齢

所得税は、毎年12月31日時点の状況をもとに計算します。そのため、扶養の対象になるのは、所得税の計算上、対象年の12月31日時点で16歳以上の親族に限られます。

以前は、16歳未満でも扶養対象にすることができましたが、税制改正によって16歳以上のみが対象となったため注意しましょう。なお、16歳以上という下限のみで、年齢の上限はありません。

「なぜ16歳未満は扶養対象にならなくなったのか」と思われるかもしれません。これには児童手当が関係しています。2011年以降、16歳未満の子供には児童手当(旧称「子ども手当」)が支払われることになったので、児童手当と扶養控除の両方を適用するのは流石に過剰すぎるということで、児童手当の対象となる16歳未満の子は税法上の控除を受けられる扶養親族ではなくなったのです。

同居しているかどうか

原則としては扶養にする場合、同居している必要があります。しかし、学生を扶養にしている場合など、家から離れて生活している場合も考えられますから、生計を一にしている場合は同居していなくても扶養にすることが可能です。

所得税と扶養の収入基準と控除

所得税の計算において、扶養している家族すべてが対象となる訳ではありません。家族の範囲や生計が一かどうか以外にも、収入によって扶養にできるかどうかが決まります。

配偶者の場合

配偶者の場合は、配偶者控除と配偶者特別控除という控除が設けられています。配偶者控除は年間所得が38万円以下(給与所得の場合103万円)、配偶者特別控除の場合は年間所得が38万円を超えて123万円以下の場合(給与所得の場合103万円超から201万6千円未満)を収入基準とします。

つまり、配偶者に関する控除については、配偶者控除か配偶者特別控除、または適用されない3つのケースに分けることができます。なお、配偶者は法律上の配偶者であり、内縁の関係では適用されません。その他、白色申告の事業専従者や納税者本人の合計所得が1,000万円(給与所得のみの場合1,220万円)を超える場合など、条件によっては適用されない場合もあります。

なお、控除額については、配偶者控除、配偶者特別控除ともに、納税者本人の所得に応じて控除額が変わってきます。900万円以下(給与所得のみの場合1,120万円 以下)、900万円超950万円以下(給与所得のみの場合1,120万円超1,170万円以下)、950万円超1000万円以下(給与所得のみの場合1,170万円超1,220万円以下)の3段階で控除額に差が設けられています。

控除を受ける納税者本人の
合計所得金額
控除額
一般の控除対象配偶者 老人控除対象配偶者(※)
900万円以下 38万円 48万円
900万円超950万円以下 26万円 32万円
950万円超1,000万円以下 13万円 16万円
控除を受ける納税者本人の合計所得金額
900万円以下 900万円超
950万円以下
950万円超
1,000万円以下
配偶者の
合計所得金額
38万円超
85万円以下
38万円 26万円 13万円
85万円超
90万円以下
36万円 24万円 12万円
90万円超
95万円以下
31万円 21万円 11万円
95万円超
100万円以下
26万円 18万円 9万円
100万円超
105万円以下
21万円 14万円 7万円
105万円超
110万円以下
16万円 11万円 6万円
110万円超
115万円以下
11万円 8万円 4万円
115万円超
120万円以下
6万円 4万円 2万円
120万円超
123万円以下
3万円 2万円 1万円

引用元:国税庁

そのほかの親族の場合

配偶者以外の親族の場合、年間所得の条件は38万円以下(給与所得の場合は103万円以下)。さらに、白色申告の専従者でなく、また青色申告の専従者として給与を受け取っていないことなども条件です。

所得税の計算では、扶養親族は19歳以上23歳未満の「特定扶養親族」、70歳以上の「老齢扶養親族」に分けられ、区分によって所得控除の額も変わってきます。

区分 控除額
一般の控除対象扶養親族(※1) 38万円
特定扶養親族(※2) 63万円
老人扶養親族(※3) 同居老親等以外の者 48万円
同居老親等(※4) 58万円

引用元:国税庁


※給与所得103万円は、以下の通り給与所得における65万円の所得控除を考慮した額です。

38万円(基礎控除)+65万円(給与所得控除)=103万円
※詳細は、国税庁のページ「配偶者控除」「配偶者特別控除」「扶養控除」で確認できます。

社会保険の扶養の範囲

社会保険の場合、家族の範囲はもちろんのこと、対象となる年齢、同居の有無についても所得税の扶養の範囲とは大きく異なります。

対象になる家族の範囲

まず対象となる家族の範囲は、配偶者と3親等内の親族です。しかし、所得税と比べると生計をともにしている実態の方が優先され、法律的に家族にはならない内縁関係の配偶者、さらには亡くなった内縁関係の配偶者の父母や子どもも扶養の対象とすることができます。

ただし、内縁関係の配偶者を扶養にする場合は、確認が必要です。被保険者と内縁関係の配偶者2人の戸籍謄本(または戸籍抄本)、被保険者の世帯全員が確認できる住民票が必要となるので注意しましょう。

扶養の対象になる年齢

扶養の対象となるのは、生計を一にしている配偶者(内縁関係も可能)、3親等内の親族です。しかし年齢制限があり、75歳未満の者と限られています。75歳以上になると、後期高齢者医療制度により、75歳以上の対象者自身で健康保険に入らなければならないためです。

同居しているかどうかについて

配偶者のほかに子、弟妹、父母、祖父母については同居していなくても扶養にすることが可能です。しかし、ほかの3親等内の親族については同居の必要があります。兄姉についても同居の要件がありますので、注意が必要です。

社会保険と扶養の収入基準

所得税と社会保険における扶養の収入基準は異なりますが、特に社会保険においては所得税では非課税になるもの(※)も収入に入れる必要があるので注意しなくてはなりません。

※以下のものが代表例です。

  • 障害基礎年金、障害厚生年金
  • 遺族基礎年金、遺族厚生年金
  • 雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)
  • 健康保険の傷病手当金や出産手当金
  • 労災保険の傷病補償給付、障害補償給付、遺族補償給付等

基準は130万円

扶養の収入基準額が年間収入130万円未満です。60歳以上の被扶養者、または被扶養者が障害を持っている場合は年間収入180万円未満に拡大されます。

また所得税の計算の場合は、年間トータルでの所得さえ基準内におさまっていれば、月々の所得に多寡があっても扶養の認定を受けることが可能ですが、社会保険の場合は月々の収入ベースで判断される点に注意が必要です。たとえば扶養にしたい人が給与所得者のみを得ている場合、年間の給与収入130万円未満、月給にすると108,333円未満で扶養の対象になりますが、通年で扶養に入っていたい場合は、いずれの月も108,333円を超えてはならないということです。1月から6月は失業していたので、7月から12月は月給120,000円を得るとうケースにおいては、確かに年間では130万円未満ですが、月々108,333円未満の基準は超えてしまっているので、7月以降は扶養に入ることができません。

被保険者との年収の関係

原則として、被保険者と扶養の対象者が同居する場合、扶養の対象となる人の年収は被保険者の半分未満、別居の場合は被保険者が仕送りしている額に満たないことが条件になっています。

被保険者と扶養者の間に年収の関係があることも忘れてはならない大切なことです。

まとめ

所得税、社会保険、どちらも親族を扶養にできるといっても、親族の範囲や収入の基準は全く異なります。所得税の扶養対象になっても社会保険の扶養対象にならない、またはその逆もありえます。給与や社会保険加入の処理をする際は、扶養範囲の違いにも気をつけましょう。

監修: 榊 裕葵(社会保険労務士)

こんにちは。ポライト社会保険労務士法人マネージング・パートナーの榊です。当社は人事労務freeeをはじめ、HRテクノロジーの導入支援・運用支援に強みを持っています。ITやクラウドを活用した業務効率化や、働き方改革法対応は当社にお任せください。

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