人事労務の基礎知識

扶養とは? 所得税の扶養と社会保険(健康保険と厚生年金保険)の扶養の違い

最終更新日:2021/03/19

所得税の扶養と社会保険(健康保険と厚生年金保険)の扶養の違い

扶養とは、自分一人の力で生活することが難しいため、家族や親族から経済的な援助を受けることです。

日本の所得税や社会保険(健康保険と厚生年金保険)においては扶養の考えがあり、被扶養者(扶養される人)の有無や人数に応じて、課税所得の軽減や、家族分の保険料が免除される仕組みになっています。

ただし、所得税と社会保険とでは扶養の対象となる家族等の範囲が異なるので注意が必要です。本記事では、所得税・社会保険の扶養の違いについて詳しく解説します。

目次

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所得税の扶養の範囲

所得税の扶養は、扶養控除に関わってきます。扶養親族の数に応じて、一定の金額が所得から控除されます。

扶養の対象になる家族・親族の範囲

所得税の扶養に関する控除には、配偶者が対象になる「配偶者控除」と「配偶者特別控除」、配偶者以外の親族が対象になる「扶養控除」があります。

  • 配偶者が対象:配偶者控除 / 配偶者特別控除
  • 配偶者以外の親族が対象:扶養控除


  • 配偶者以外の親族である扶養控除の対象となるのは、6親等内の血族と3親等内の婚姻によってできた親戚までです。

    これは、自分の兄弟や叔父叔母はもちろんのこと、例えば4親等である祖父母の兄弟、6親等である従兄弟の孫、3親等の姻族である配偶者の兄弟の子どもも含まれることになります。

    (1) 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族をいいます。)又は都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。

    扶養の対象になる年齢

    所得税は、毎年12月31日時点の状況をもとに計算します。そのため、扶養の対象になるのは、所得税の計算上、対象年の12月31日時点で16歳以上の親族に限られます。

    以前は、16歳未満も扶養の対象でしたが、税制改正により16歳以上のみが扶養の対象となったため注意しましょう。なお、年齢の上限はなく、16歳以上という下限のみの制限となっています。

    「控除対象扶養親族」とは、扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人をいいます。

    「なぜ16歳未満は扶養対象にならなくなったのか」と思われるかもしれません。これには児童手当が関係しています。

    2011年以降、16歳未満の子供には児童手当(旧称「子ども手当」)が支給されることになり、児童手当と扶養控除の両方を適用するのは過剰との判断で、児童手当の対象となる16歳未満の子は税法上の控除を受けられる扶養親族ではなくなったのです。

    同居しているかどうか

    扶養にする場合は、原則として同居している必要があります。

    (2) 納税者と生計を一にしていること。

    ただし、学生を扶養にしている場合など、親元から離れて生活している場合も考えられますから、生計を一にしている場合は同居していなくても扶養にすることが可能です。

    所得税と扶養の収入基準と控除

    所得税の計算において、扶養している家族すべてが対象となる訳ではありません。親族の範囲や生計が一かどうか以外にも、収入によって扶養にできるかどうかが決まります。

    配偶者の場合

    配偶者の場合は、「配偶者控除」と「配偶者特別控除」という控除が設けられています。

    「配偶者控除」は、年間所得が48万円以下(給与所得の場合103万円)です。
    ※令和元年までは年間所得が38万円以下(給与所得の場合103万円)でしたが、税制改正により令和2年からは年間所得が48万円以下(給与所得の場合103万円)となっています。

    年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)

    「配偶者特別控除」の場合は、年間所得が48万円を超えて133万円以下の場合(給与所得の場合103万円超から201万6千円未満)を収入基準とします。

    ※令和元年までは年間所得が38万円を超えて123万円以下の場合(給与所得の場合103万円超から201万6千円未満)でしたが、税制改正により令和2年からは年間所得が48万円を超えて133万円以下の場合(給与所得の場合103万円超から201万6千円未満)となっています。

    年間の合計所得金額が48万円超133万円以下(平成30年分から令和元年分までは38万円を超え123万円以下、平成29年分までは38万円を超え76万円未満)であること。

    つまり、配偶者に関する控除については、「配偶者控除」か「配偶者特別控除」、または「適用されない」という3つのケースに分けることができます。なお、配偶者は法律上の配偶者であり、内縁関係などでは適用されないので注意が必要です。

    配偶者控除の対象となる配偶者とは、民法の規定により効力が生じた婚姻に基づく配偶者をいいます。いわゆる内縁の妻など、事実婚の相手方は、このような民法の規定による配偶者ではありませんから、配偶者控除の対象とはなりません。

    その他、青色申告者の事業専従者として給与の支払いを受けるまたは白色申告者の事業専従者である、納税者本人の合計所得が1,000万円(給与所得のみの場合1,220万円)を超える場合など、条件によっては控除が適用されない場合もあります。

    また、配偶者控除、配偶者特別控除ともに、控除額は納税者の所得額によって異なります。900万円以下(給与所得のみの場合1,120万円 以下)、900万円超950万円以下(給与所得のみの場合1,120万円超1,170万円以下)、950万円超1,000万円以下(給与所得のみの場合1,170万円超1,220万円以下)の3段階で控除額が分けられています。

    配偶者控除額の金額
    控除を受ける納税者本人の
    合計所得金額
    控除額
    一般の控除対象配偶者 老人控除対象配偶者
    900万円以下 38万円 48万円
    900万円超950万円以下 26万円 32万円
    950万円超1,000万円以下 13万円 16万円

    参考:国税庁「No.1191 配偶者控除

    ※令和2年以降は配偶者の合計取得金額の上限が38万円以下から48万円以下に変更となっていますのでご注意ください。

    配偶者特別控除の控除額
    <令和2年以降の控除金額>
    控除を受ける納税者本人の合計所得金額
    900万円以下 900万円超
    950万円以下
    950万円超
    1,000万円以下
    配偶者の
    合計所得金額
    48万円超
    95万円以下
    38万円 26万円 13万円
    95万円超
    100万円以下
    36万円 24万円 12万円
    100万円超
    105万円以下
    31万円 21万円 11万円
    105万円超
    110万円以下
    26万円 18万円 9万円
    110万円超
    115万円以下
    21万円 14万円 7万円
    115万円超
    120万円以下
    16万円 11万円 6万円
    120万円超
    125万円以下
    11万円 8万円 4万円
    125万円超
    130万円以下
    6万円 4万円 2万円
    130万円超
    133万円以下
    3万円 2万円 1万円


    <令和元年までの控除金額>
    控除を受ける納税者本人の合計所得金額
    900万円以下 900万円超
    950万円以下
    950万円超
    1,000万円以下
    配偶者の
    合計所得金額
    38万円超
    85万円以下
    38万円 26万円 13万円
    85万円超
    90万円以下
    36万円 24万円 12万円
    90万円超
    95万円以下
    31万円 21万円 11万円
    95万円超
    100万円以下
    26万円 18万円 9万円
    100万円超
    105万円以下
    21万円 14万円 7万円
    105万円超
    110万円以下
    16万円 11万円 6万円
    110万円超
    115万円以下
    11万円 8万円 4万円
    115万円超
    120万円以下
    6万円 4万円 2万円
    120万円超
    123万円以下
    3万円 2万円 1万円

    参考:国税庁「No.1195 配偶者特別控除

    配偶者以外の親族の場合

    配偶者以外の親族の場合、年間所得の条件は48万円以下であること(給与所得の場合は103万円以下)に加えて、白色申告の専従者でなく、また青色申告の専従者として給与を受け取っていないことなども条件です。

    ※令和元年までは年間所得が38万円以下(給与所得の場合103万円)でしたが、税制改正により令和2年からは年間所得が48万円以下(給与所得の場合103万円)となっています。

    所得税の計算では、扶養親族は19歳以上23歳未満の「特定扶養親族」、70歳以上の「老齢扶養親族」に分けられ、その区分によって所得控除額が異なります。

    区分 控除額
    一般の控除対象扶養親族 38万円
    特定扶養親族 63万円
    老人扶養親族 同居老親等以外の者 48万円
    同居老親等 58万円

    参考:国税庁「No.1180 扶養控除

    ※給与所得103万円は、以下の通り給与所得における55万円の所得控除を考慮した額です。

    48万円(基礎控除)+55万円(給与所得控除)=103万円

    ※令和2年以降の計算式です。詳細は、国税庁のページ「No.1191 配偶者控除」「No.1195 配偶者特別控除」「No.1180 扶養控除」で確認できます。

    【関連記事】
    所得税とは?毎月の給与における源泉所得税の計算方法【2020年版】

    社会保険の扶養の範囲

    社会保険の扶養の場合、親族の範囲はもちろんのこと、対象となる年齢や同居の有無についても所得税の扶養の範囲とは大きく異なります。

    対象になる親族の範囲

    まず対象となる家族の範囲は、配偶者と3親等内の親族です。しかし、所得税と比べると生計をともにしている実態の方が優先され、法律的に家族にはならない内縁関係の配偶者、さらには亡くなった内縁関係の配偶者の父母や子どもも扶養の対象とすることができます。

    被扶養者の範囲

    被保険者の直系尊属、配偶者(事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人
    ※これらの方は、必ずしも同居している必要はありません。
    被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人
    ※「同一の世帯」とは、同居して家計を共にしている状態をいいます。

    1. 被保険者の三親等以内の親族(1.に該当する人を除く)
    2. 被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
    3. 2の配偶者が亡くなった後における父母および子

    ただし、内縁関係の配偶者を扶養にする場合は注意が必要です。被保険者と内縁関係の配偶者2人の戸籍謄本(または戸籍抄本)、被保険者の世帯全員が記載された住民票が必要となります。

    扶養の対象になる年齢

    上記に記載した通り、社会保険の扶養の対象となるのは、生計を一にしている配偶者(内縁関係も可)、三親等以内の親族です。

    ただし、75歳以上になると後期高齢者医療制度へ移行することにより、対象者自身が国民健康保険に加入しなければならなりません。そのため、75歳未満という年齢制限があります。

    75歳以上の方または65~74歳の方で一定の障害の状態にあることにつき後期高齢者医療広域連合の認定を受けた方(*)は、後期高齢者医療制度に加入することとなり、現在加入している全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者・被扶養者でなくなります。

    同居しているかどうかについて

    配偶者(内縁関係も可)の他に子、孫、兄弟姉妹、父母、祖父母については同居していなくても扶養にすることが可能です。しかし、他の三親等以内の親族については同居の必要があります。

    社会保険の被扶養者の範囲図
    引用:全国健康保険協会「被扶養者とは?

    社会保険と扶養の収入基準

    所得税と社会保険における扶養の収入基準は異なりますが、特に社会保険においては所得税では非課税になるもの(※)も収入に含める必要があるので注意しなくてはなりません。
    ※以下のものが代表例です。

    • 障害基礎年金、障害厚生年金
    • 遺族基礎年金、遺族厚生年金
    • 雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)
    • 健康保険の傷病手当金や出産手当金
    • 労災保険の傷病補償給付、障害補償給付、遺族補償給付等

    社会保険の収入基準は130万円

    社会保険の扶養の対象となる収入基準額は年間130万円未満で、被扶養者が60歳以上の場合や障害がある場合には180万円未満に引き上げられます。

    認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)

    また、所得税の計算の場合は、年間トータルでの収入が基準内に収まっていれば、月々の収入に多寡があっても扶養の認定を受けることが可能ですが、社会保険の場合は月々の収入ベースで判断される点に注意が必要です。

    例えば、扶養にしたい人が給与所得のみを得ている場合、年間の給与収入が130万円未満、月給にすると108,333円未満で扶養の対象になりますが、通年で扶養に入っていたい場合は、いずれの月も108,333円を超えてはならないということです。

    1月から6月は就労していなかったため収入なし、7月から12月は月給120,000円を得るというケースにおいては、確かに年間収入は130万円未満ですが、月々108,333円未満の基準は超えてしまっているので、7月以降は扶養に入ることができないということになります。

    被保険者との年収の関係

    原則として、被保険者と被扶養者が同居している場合は被扶養者の年収が被保険者の2分の1未満、別居の場合は被扶養者の年収が被保険者からの援助による収入額に満たないことが条件となっています。

    参考:全国健康保険協会「被扶養者とは?

    このように、被保険者と被扶養者の間には年収の関係があることも忘れてはならない大切なことです。

    まとめ

    所得税と社会保険、どちらも親族を扶養にできるといっても、親族の範囲や収入の基準は全く異なります。所得税の扶養対象になっても社会保険の扶養対象にならない、またはその逆もあり得ます。扶養に入りながら収入を得ようとする場合は、所得税と社会保険の収入基準などにも注意を払うようにしましょう。

    監修: 榊 裕葵(社会保険労務士)

    こんにちは。ポライト社会保険労務士法人マネージング・パートナーの榊です。当社は人事労務freeeをはじめ、HRテクノロジーの導入支援・運用支援に強みを持っています。ITやクラウドを活用した業務効率化や、働き方改革法対応は当社にお任せください。

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