監修 北 光太郎 きた社労士事務所
新たな従業員が入社するときには、雇用保険や所得税、住民税などに関する、さまざまな手続きを決められた期日までに完了しなければなりません。また、会社側だけでなく内定者に用意してもらう書類もあるため注意が必要です。
本記事では、社員の入社前に会社が用意するもの、内定者に準備してもらうもの、マイナンバーに関する入社手続きなどについて分かりやすく解説します。
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目次
- 入社手続きに必要な書類
- 会社が入社前に用意するもの
- 内定者に用意してもらうもの
- 入社手続きの全体スケジュール
- 入社前:内定通知・承諾~労働条件の明示・雇用契約の締結
- 入社日:書類の回収・オリエンテーション
- 入社後:社会保険・雇用保険・税関連の手続、法定三帳簿の作成など
- 各種保険の加入手続き
- 社会保険の加入基準と手続き
- 雇用保険の加入基準と手続き
- 労災保険の加入基準と手続き
- 税金の手続き
- 所得税に関する手続き
- 住民税に関する手続き
- 従業員の入社時に作成する法定三帳簿
- 労働者名簿
- 賃金台帳
- 出勤簿
- マイナンバーを提供してもらう方法と取り扱い
- 会社でマイナンバーを提供してもらう目的
- マイナンバーを提供してもらう方法
- マイナンバーの取り扱い
- 人材の定着を促すオンボーディング
- オンボーディング実施のメリット
- 主なオンボーディング施策
- 入退社管理や給与計算などをカンタンに行う方法
- まとめ
- よくある質問
入社手続きに必要な書類
会社と内定者は、入社手続きの際に必要となる入社書類を用意する必要があります。
会社が入社前に用意する書類には、雇用契約書・労働条件通知書、扶養控除等申告書をはじめとした全5種類の書類が必要となります。一方で、内定者は、雇用保険被保険者番号、基礎年金番号、給与振込先の口座情報、源泉徴収票、マイナンバーの5種類の書類を提出しなければいけません。
入社時にどの会社でも提出が必要な書類を中心に、会社が用意すべきものと内定者に準備してもらうものに分けて解説します。
会社が入社前に用意するもの
会社が入社前に用意する書類には、内定者の押印が必要なものや交付義務が生じるものがあります。
入社前に用意する書類には以下のようなものがあります。
会社が入社前に用意する主な書類
- 雇用契約書・労働条件通知書
- 扶養控除等申告書
- 健康保険被扶養者異動届・国民年金第3号被保険者届
- 採用通知書(内定通知書)
- 入社誓約書
これらの書類は返信用封筒を添えて郵送し、署名・捺印をしてもらい、内定者から返送してもらうのが一般的です。
■雇用契約書・労働条件通知書
雇用契約書・労働条件通知書とは、雇用主と従業員間の労働条件の取り決めをまとめたものです。
雇用契約書は双方の署名、または記名押印が必要です。発行しなくても罰則はないですが、認識相違によるトラブルを防止するためにも取り交わす会社が多くなっています。
一方、労働条件通知書は労働基準法で交付が義務化されている書類です。雇用主側の署名または記名押印は法的には義務付けられていませんが、信用性を高めるうえでは署名または記名押印をすることが望まれます。
雇用契約書と労働条件通知書の2つをまとめて「労働条件通知書兼雇用契約書」として発行するケースも見られます。また、直接雇用関係のない業務委託契約の場合は業務委託契約書が必要です。
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■扶養控除等申告書
扶養控除等申告書は、税金関係の手続きに必要な書類で、扶養者の有無にかかわらず従業員からの提出が必要です。扶養控除とは、扶養親族がいる場合に年末調整で一定の控除を受けられる制度です。
なお、扶養控除申告書を提出できるのは1事業所のみなので、2社以上から雇用されている従業員については本業の会社で提出してください。
■健康保険被扶養者異動届・国民年金第3号被保険者届
健康保険被扶養者異動届と国民年金第3号被保険者届は、社会保険加入手続きの際に必要な書類で、扶養者がいる場合のみ提出が求められます。
■採用通知書(内定通知書)
採用通知書(内定通知書)は内定者に対して正式な採用の旨を通知する書類です。
法律上、採用通知書の交付義務はないものの、採用通知書を交付した後に会社の都合で採用を取り消した場合は違法となるので注意しましょう。
■入社誓約書
入社誓約書は就業規則や服務規律、秘密保持に関することを記載した書類です。
入社の意思確認として、入社承諾書を兼ねている場合もあります。入社後の認識の行き違いやトラブルを未然に防ぐためにも内定者の同意の元、署名捺印をもらっておきましょう。
内定者に用意してもらうもの
内定者が入社前に用意する主なものは以下のとおりです。
内定者が入社前に用意する主なもの
- 雇用保険被保険者番号
- 基礎年金番号
- 給与振込先の口座情報
- 源泉徴収票
- マイナンバー
マイナンバーの取得など、内定者自身に役所で手続きをしてもらわなければならないものもあるため、事前に準備してもらうよう通知しておきましょう。
■雇用保険被保険者番号
雇用保険被保険者番号とは、「4桁-6桁-1桁」で構成される11桁の番号です。過去に雇用保険加入履歴がある内定者には提出を求めましょう。
基本的に雇用保険被保険者証は勤めている会社が保管し、従業員が退職する際に返却します。内定者から紛失の申し出があった場合は、雇用主がハローワークへ雇用保険被保険者番号の確認依頼を行い、前職の会社名からハローワークで照会をしてもらいます。
また、内定者本人(被保険者)からも「雇用保険被保険者証再交付申請書」により申請することで、被保険者証の再交付が受けられます。
なお、アルバイト・パートなどの短時間労働者でも、雇用保険に加入していれば被保険者番号は付与されます。
■基礎年金番号
基礎年金番号とは、社会保険の手続きに必要な「4桁-6桁」で構成される10桁の番号で、年金手帳や基礎年金番号通知書から確認できます。
年金手帳は紛失を防ぐために会社が回収、保管している場合もありますが、2022年4月から年金手帳の交付が廃止されました。それ以降の交付、再発行には基礎年金番号通知書が発行されます。
■給与振込先の口座情報
会社で用意した書類に銀行名や口座番号などの情報を記入してもらう方法や、通帳の口座情報が載っているページのコピーを提出する方法など、口座情報の提示方法は会社側で指定して問題ありません。
■源泉徴収票
源泉徴収票は、1年間に自分がどれだけ収入を得て、所得税をいくらか払ったのか記載された大切な書類です。
年末調整時に必要なため、前の会社を退職の年と入社する年が同じ場合は、内定者に提出を求めます。源泉徴収票は前の会社を退職する際に従業員へ交付されています。
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源泉徴収票とは?見方や発行時期、いつ届くのかについてわかりやすく解説
■マイナンバー
マイナンバーとは、日本に住民票があるすべての人に1人1つ固有の番号を付与して、行政の効率化や国民の利便性を高める制度です。具体的には、税金や保険手続きのために利用されます。
マイナンバーは、個人番号カードや個人番号通知カード、住民票から確認できます。
入社手続きの全体スケジュール
入社前:内定通知・承諾~労働条件の明示・雇用契約の締結
採用選考を終えて内定を出した後は、内定者に「内定通知書」を送付し、本人から承諾を得ることから始まります。内定通知や本人から承諾は口頭だけでなく書面や電子などで記録しておきましょう。
また、内定の承諾後は「労働条件の明示」が必要です。労働基準法により、賃金や労働時間、就業場所、退職に関する事項などは書面(または本人の希望による電子交付)で明示する義務があります。また前述のとおり、雇用契約書は双方の署名、または記名押印が必要です。
入社日:書類の回収・オリエンテーション
入社当日は、事務手続きに必要となる雇用保険被保険者証や年金手帳(基礎年金番号通知書)、源泉徴収票、扶養控除申告書、マイナンバー、給与振込先の口座情報などを回収します。
また、事務手続きと並行してオリエンテーションでは、就業規則に基づいた勤務時間や休暇のルール、福利厚生といった社内規程を周知します。
入社後:社会保険・雇用保険・税関連の手続、法定三帳簿の作成など
入社後は、社会保険や雇用保険、税関係の手続きを行います。それぞれ書類の提出期限が設けられているため、速やかに手続きを済ませましょう。具体的な手続きについては後述します。
また、社員が入社した場合は法定三帳簿(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿)を作成しなければなりません。人事管理システムを導入している場合は社員の情報を登録し、適切に法定三帳簿が作成されているかなど、記載内容に漏れがないか確認をしましょう。
各種保険の加入手続き
各種保険の加入基準を満たしている場合は、雇用形態にかかわらず加入義務があります。
また社会保険の加入手続きは、従業員を雇用してから5日以内に健康保険・厚生年金被保険者資格取得届を、事務センターまたは年金事務所へ提出する必要があります。
従業員の社会保険加入には、適用基準が存在するので従業員の雇用条件や基準を事前に確認して手続きを進めましょう。
社会保険の加入基準と手続き
健康保険と厚生年金、介護保険をあわせて社会保険といいます。加入基準が同一のため、基本的にすべてセットで加入する必要があります。
例外として、厚生年金は70歳未満の人しか加入できないため、70歳以上の人は健康保険と介護保険の加入となります。
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■会社の社会保険適用基準
社会保険の適用を受ける事業所を適用事業所といい、加入が必須の「強制適用事業所」と任意で加入を選べる「任意適用事業所」の2種類に分けられます。
強制適用事業所とは、事業主や従業員が社会保険への加入の意思、従業員数や事業の規模・業種などに関係なく、社会保険への加入が義務付けられている事業所を指します。
以下のどちらかに該当する場合は強制適用事業所となります。
強制適用事業所に該当する事業所
- 常時5人以上の従業員を使用する事業所
※飲食店や理美容業、農林漁業などの場合を除く
※2022年10月から「法律・会計にかかる業務を行う士業」も追加 - 事業主を含む従業員1人以上の国、地方公共団体または法人の事業所
出典:日本年金機構「適用事業所と被保険者」
一方、任意適用事業所とは、事業所主体で申請を行い厚生労働大臣(日本年金機構)の認可を受けることで社会保険に加入できる事業所を指します。
なお、任意適用事業所の場合は、健康保険・厚生年金のどちらかだけ加入することも可能です。
■従業員の社会保険加入基準
従業員の社会保険加入基準は、一般労働者と短時間労働者の2種類の基準が設けられています。以下の基準を満たす人は加入の対象です。
| 一般労働者 | 所定労働時間・所定労働日数が正社員の4分の3以上、かつ、契約期間が2ヶ月以上の人 |
|---|---|
| 短時間労働者 | 下記要件すべてを満たす人 ・週の所定労働時間が20時間以上 ・賃金が月額8.8万円以上 ・学生以外(定時制や夜学等を除く) ・2ヶ月以上継続して雇用が見込まれる ・従業員が51人以上の事業所 |
また、2024年10月から適用範囲が「従業員が51人以上の事業所」に拡大されました。なお、2026年10月には賃金要件が撤廃されます。また、従業員数の要件も2027年10月から段階的に縮小され、2035年10月には撤廃される予定です。
■社会保険の加入手続き
社会保険の加入手続きを行うには、従業員を雇用してから5日以内に健康保険・厚生年金被保険者資格取得届を、事務センターまたは年金事務所へ提出します。
全国健康保険協会(協会けんぽ)以外の場合は別途、各健康保険組合でも手続きが必要です。詳細は以下の記事に従業員側・雇用主側それぞれの手続きをまとめているのでご確認ください。
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社会保険の加入条件とは?従業員側、事業所側の視点でわかりやすく解説
雇用保険の加入基準と手続き
雇用保険は主に退職や失業の際、失業給付を支給するための保険です。雇用保険は複数の事業所で加入することはできないため、複数の会社で働いている場合は本業となる会社で加入します。
■会社の雇用保険適用基準
従業員を1人でも雇っている事業所は雇用保険適用事業所に該当します。雇用保険適用事業所は加入条件を満たす従業員全員を雇用保険に加入させる義務があります。
■従業員の雇用保険の加入基準
週の所定労働時間が20時間以上、かつ31日以上継続して雇用される見込みがある人は雇用保険の加入基準を満たします。
■雇用保険の加入手続き
従業員を雇用した月の翌月10日までに雇用保険被保険者資格取得届をハローワークへ提出します。
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労災保険の加入基準と手続き
労災保険の正式名称は「労働者災害補償保険」といい、通勤時のけがや業務中の負傷に対して補償され、雇用保険とあわせて労働保険と呼ばれます。
従業員を1人でも雇用している事業者または事業所が対象となります。雇用されている労働者が対象のため、基本的に事業主は加入できません。中小事業主や自営業者など、特定の条件を満たす場合は特別加入が認められる場合もあります。
加入手続きは、まず事業場の住所を管轄する労働基準監督署へ行き、保険関係成立届を提出します。次に概算保険料申告書を提出し、労働保険番号が振り出されたら、「納入済通知書」を受け取り、保険料を金融機関で納付します。
その後、雇用保険の資格取得対象者がいる場合は、事業所の所在地を管轄するハローワークへ行き、「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。
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税金の手続き
入社に関わる手続きとして、所得税・住民税などの税金についての手続きも行う必要があります。源泉徴収の作成や徴収方法の選択が必要となるため、手続き内容を事前に把握することでスムーズに手続きを進めることが可能です。
所得税に関する手続き
所得税は入社時に従業員から提出された「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」をもとに源泉徴収簿を作成します。
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住民税に関する手続き
住民税は前年の所得に対して課税され、対象者が現在、普通徴収か特別徴収かで手続き方法が変わります。
■普通徴収
普通徴収とは、従業員が個人で支払い手続きを行い、納税する方法です。個人事業主やフリーランスはこの普通徴収になります。
内定者が普通徴収をしていて、特別徴収に切り替える場合は、使用者が未使用の住民税の納付書もしくは納付済みの領収書と「特別徴収への切替申請書」を居住地の各市区町村へ提出します。
市区町村によって期日が異なり、普通徴収の納付期限が過ぎている分は切り替えができません。
■特別徴収
特別徴収とは雇用主が従業員の代わりに、毎月の給与から住民税を天引きし、納税する方法です。
内定者が前職で特別徴収していて、入社後も継続して特別徴収とする場合は、「特別徴収にかかる給与所得者異動届出書」を使用者が居住地の各市区町村へ提出します。こちらも市区町村によって期日が異なるので、注意が必要です。
なお、前年に所得がない場合はその年の5月末まで住民税はかかりません。
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従業員の入社時に作成する法定三帳簿
従業員の入社時には「法定三帳簿」と呼ばれる「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の3つを作成する必要があります。作成の期限は明確に定められていませんが、速やかに作成するのが理想です。
労働者名簿
労働者名簿とは、労働者の氏名、生年月日、性別、雇用した日などを記した書類です。会社の規模にかかわらず、使用者が労働者を雇い入れている場合に、労働基準法第107条によって作成が義務付けられています。
また、労働基準法第109条によって、労働者名簿は労働者の退職や解雇、死亡が生じた場合、その日から5年間の保存が義務付けられています。
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賃金台帳
賃金台帳とは、従業員への給与の支払い状況や勤務時間を記載した帳簿のことです。正社員や契約社員、アルバイト、パート、短期雇用労働者などの雇用形態にかかわらず記載しなくてはいけません。
また、労働基準法第108条では、従業員を雇用している事業所ごとに作成を義務付けています。そのため、複数の事業所を持つ企業は、各事業所で賃金台帳を作成しなければいけません。
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出勤簿
出勤簿とは、各労働者の出勤日と労働日数、出勤・退勤時刻などを記した書類のことです。労働者名簿や賃金台帳とは異なり、労働基準法に明記はされていませんが、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置 に関するガイドライン」で作成が義務付けられています。
正社員やパートタイム、アルバイトといった雇用形態に関係なく、企業に務めているすべての従業員を出勤簿に記載する必要があります。
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マイナンバーを提供してもらう方法と取り扱い
先述したようにマイナンバーとは、行政手続き等において、社会保障や個人を識別するための12桁の番号です。特定個人情報にあたるため、提供してもらう方法や管理取り扱いには注意が必要です。
会社でマイナンバーを提供してもらう目的
内定者の社会保険や労働保険などの各種保険や税金の手続きを行うために、マイナンバーを提供してもらう必要があります。
なお、扶養家族がいる内定者の場合は、扶養家族のマイナンバーも必要です。従業員からマイナンバーを提供してもらう際は、利用目的を明らかにすることが法律で定められています。
マイナンバーを提供してもらう方法
マイナンバーを提供してもらう場合、口頭や番号を転記したメモでの提供してもらう方法は認められず、書類による個人番号確認と本人確認が求められます。
個人番号が確認できる書類は、以下のいずれかです。
- 個人番号カード
- 個人番号通知カード
- 住民票
個人番号カードは本人確認書類としても利用できるため、個人番号カードのみで提出が可能です。個人番号通知カードと住民票の場合は、本人確認として、運転免許証やパスポートなどの身分証明書の提出が必要です。
マイナンバーの取り扱い
マイナンバーは特定個人情報にあたるため、情報管理には注意が必要です。マイナンバーの取扱者が個人番号を盗用、第三者へ提供した場合、最大4年以下の懲役または200万円以下の罰金が課されます。
社内のマイナンバー取扱者の限定や、管理システムの活用など、情報漏えいが起こらないよう適切な管理を行いましょう。
人材の定着を促すオンボーディング
人事労務担当者にとって事務的な手続きはあくまでスタート地点に過ぎません。重要なのは、入社した社員が早期に本来のパフォーマンスを発揮し、組織に深く根付くための「オンボーディング」です。
オンボーディングとは、新入社員や中途入社者を組織の一員として必要な知識やスキル、考え方を身につけてもらうための一連のサポートプロセスのことです。オンボーディングは入社当日のオリエンテーションとは異なり、基本的には入社後1ヶ月〜半年ほどかけて段階的に実施します。
オンボーディング実施のメリット
オンボーディングの実施は以下のようなメリットが期待できます。
離職率の低下(早期離職の防止)
採用コストをかけて獲得した人材が数ヶ月で離職してしまうことは企業にとって大きな損失です。早期離職の主な原因は、入社前の期待と現実のギャップや、職場での孤立感にあります。オンボーディングは、これらの不安を解消する有効な手段です。
定期的な面談やフォローアップを通じて、入社した社員が抱える悩みや違和感を早い段階で汲み取り、適切な対応を重ねることで、組織へ円滑に馴染めるよう手助けをしましょう。「自分は歓迎されている」「困ったときに頼れる人がいる」という安心感は、組織への帰属意識を強め、結果として離職率の低下につながります。
即戦力化のスピードアップ
入社した従業員ができるだけ早く業務に順応し、力を発揮できるよう教育の進め方を段階的に整理しておくことは、早期の戦力化につながります。たとえば、業務に必要なツールや独自のルール、意思決定のプロセスなどを計画的にインプットすることで、手探りの時間を最小限に抑えることができます。
何が正解かわからない状態での業務は、ミスを恐れるあまりスピードが落ちがちですが、オンボーディングによってゴールと進め方が明確になれば、自信を持って自律的に動けるようになります。
エンゲージメントの向上
オンボーディングは、企業のビジョンや価値観を共有する機会でもあります。自分が担当する業務が組織の目標や社会貢献にどのように繋がっているのかを理解することで、仕事に対する意味づけが明確になり、エンゲージメントの向上につながります。
また、初期段階で構築された高いエンゲージメントは周囲と円滑に連携ができるため、長期にわたって組織に良い影響を与える原動力となります。
主なオンボーディング施策
オンボーディングは入社後の事務手続きと並行して、以下のような施策を実施すると効果的です。
- ウェルカムランチ・歓迎会の実施:チームメンバーとの交流で心理的距離を縮め、歓迎の意を伝えて安心感を与える
- 組織図の提供:組織の全体像と各部署の役割を可視化し、誰に何を相談すべきかを明確にすることで不安を解消する
- 自己紹介プロフィールの公開:新入社員の趣味や経歴を全社に発信し、既存社員から話しかけやすいきっかけを作る
- メンター制度・バディ制度の導入:上司以外の相談役を置き、些細な疑問や社内ルールの確認を気軽に行えるようにする
- ミッション・ビジョンの再確認:会社の目指す姿を共有し、仕事の意義への理解を深めることで帰属意識を高める
- 定期的な1on1:節目ごとの面談で不安や理想とのズレを早期に解消し、適切なフォローを行う
企業ごとの文化や環境によって効果的なオンボーディングは異なります。現場の負担を考慮しつつ、まずはできる施策から計画的に取り入れて組織全体の受け入れ体制をアップデートしていきましょう。
入退社管理や給与計算などをカンタンに行う方法
入退社時に必要な書類の作成がラクに
まとめ
入社に必要な手続きと書類は多岐に渡るため、それぞれを整理して理解しましょう。また、マイナンバーは特定個人情報にあたるため、提供してもらう方法や管理取り扱いには注意が必要です。万が一漏洩した場合には罰則が課されます。
入社手続きを理解して、円滑に新たな従業員を迎え入れることができる体制を整えましょう。
よくある質問
社員の入社手続きに必要な書類は?
入社手続きに必要な書類には、会社側が用意するもの・従業員側が用意するものがあります。
会社が用意する主な書類は以下のとおりです。
- 雇用契約書・労働条件通知書
- 扶養控除等申告書
- 健康保険被扶養者異動届・国民年金第3号被保険者届
- 採用通知書(内定通知書)
- 入社誓約書
会社側は、従業員に用意してもらう書類の提出も促す必要があります。詳しくは記事内「会社が入社前に用意するもの」をご覧ください。
入社手続きで会社に提出する書類は?
入社手続きで、従業員が会社に提出する必要のある書類は以下のとおりです。
- 雇用保険被保険者番号
- 基礎年金番号
- 給与振込先の口座情報
- 源泉徴収票
- マイナンバー
詳しくは記事内「内定者に用意してもらうもの」をご覧ください。
雇用保険被保険者証を紛失した場合はどうする?
雇用保険被保険者証を紛失した場合は、再交付の手続きをする必要があります。再発行は本人の居住地にかかわらず、全国どこのハローワークでも再発行が可能です。
窓口で「雇用保険被保険者証再交付申請書」を提出すれば、運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類を提示することで、即日発行が受けられます。また、電子申請や郵送での手続きも可能です。
なお、会社側で行う雇用保険の加入手続きは、書類に被保険者番号の記載がない場合でも前職の社名が判明していれば対応が可能です。「雇用保険被保険者資格取得届」の備考欄に前職の社名を記載することで、ハローワーク側で番号の照合が行われるため、そのまま加入手続きを進めることができます。
年金手帳または基礎年金番号通知書を紛失した場合はどうする?
年金手帳または基礎年金番号通知書を紛失した場合は再交付申請が必要です。
厚生年金の加入者の場合は、会社を経由して管轄の年金事務所へ「基礎年金番号通知書再交付申請書」を提出します。再発行には概ね1ヶ月程度かかります。
ただし、2022年4月に年金手帳は廃止され、基礎年金番号通知書に切り替わっているため、年金手帳を紛失した場合でも再発行手続きをすれば基礎年金番号通知書が発行されます。
なお、現在では年金番号がマイナポータルと連携しており、従業員本人がスマートフォンから自身の基礎年金番号をオンラインで即時に確認することもできます。会社側が事務手続き上、早急に基礎年金番号を取得する必要がある場合は、従業員本人にマイナポータルから確認してもらうようにしましょう。
社会保険や雇用保険の手続きが間に合わなかったら?
雇用保険や社会保険の手続きが遅れた場合でも、入社日に遡って加入できます。雇用保険は原則として2年前まで遡及できますが、大幅に遅れた場合は賃金台帳や出勤簿など、加入要件を満たしていることを証明する書類の提出が求められる場合があります。
社会保険(健康保険・厚生年金)についても遡及可能ですが、遅延期間中に医療機関を受診していた場合は本人が一時的に全額(10割)を負担し、後日精算するなどの負担が生じるため、できるだけ早く手続きを行いましょう。
また、手続きが遅れると遡及分の保険料精算が発生する可能性があります。もし保険料を徴収していなかった場合は、会社負担分だけでなく従業員負担分も遡って一括で発生するため、従業員本人に対して精算方法を事前に説明をして合意を得るなどの対応が必要になります。
従業員にマイナンバーの提出を拒否されたら?
入社した従業員には、マイナンバーが税や社会保険の手続きの際に書類への記載が法令で求められていることを説明する必要があります。
しかし、マイナンバーは機密性の高い個人情報であるため、提出を拒否される場合があります。もし、マイナンバーについて丁寧に説明をしても提出を拒否された場合は「提供依頼を行ったが拒否された」という記録を残しましょう。
そのうえで、雇用保険関係の書類にはマイナンバー欄を空欄のまま「マイナンバー提出拒否」であることを書類に記載して提出をします。一方、社会保険については個人番号の代わりに基礎年金番号を記入することで対応が可能ですが、備考欄に本人事由によりマイナンバー届出不可である旨を記載しましょう。
外国人を雇用した場合に必要な書類は?
外国人を雇用する際は「在留カード」を確認し、在留資格や就労制限の有無、有効期限をチェックします。そのうえで、ハローワークに対して「外国人雇用状況届」を提出してください。
雇用保険に加入する場合は、被保険者資格取得届が外国人雇用状況届出を兼ねますが、加入対象外(週20時間未満など)の場合は外国人雇用状況届を提出しましょう。また、社会保険の手続きについては、外国籍でマイナンバーと基礎年金番号が紐づいていない場合「ローマ字氏名届」の添付が必要です。
加えて、外国人を雇用した場合でも雇用契約書や労働条件通知書の作成も必須です。トラブル防止のためにも、母国語を併記した雇用契約書や労働条件通知書を用意するのが望ましいでしょう。
参考文献
- 地方公共団体情報システム機構 マイナンバーカード総合サイト「マイナンバー(個人番号とは)」
- 北海道ハローワーク「雇用保険被保険者証を紛失してしまいました」
- 日本年金機構「適用事業所と被保険者」
- 日本年金機構「任意適用申請の手続き」
- 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
- 厚生労働省「法律改正によりパート・アルバイトの社会保険の加入条件が変わります。」
- 厚生労働省 福岡労働局「労働保険の加入手続きはお済みですか?」
- 東京都目黒区「給与からの特別徴収に関する届出様式」
- e-Gov法令検索「労働基準法」
- 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
- e-Gov法令検索「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」
- 東京ハローワーク「被保険者に関するQ&A Q7」
監修 北 光太郎
きた社労士事務所 代表
中小企業から上場企業まで様々な企業で労務に従事。計10年の労務経験を経て独立。独立後は労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人・個人問わず多くの記事執筆・監修をしながら、自身でも労務専門サイトを運営している。


