最終更新日:2021/06/24
監修 河島 桃世 特定社会保険労務士
配偶者控除・配偶者特別控除とは、配偶者の所得が一定以下の場合に税金の控除が受けられる制度です。配偶者控除・配偶者特別控除は2018年に見直しがあり、控除額に変更があります。
本記事では、それらの変更点を踏まえ、2021年最新版としての配偶者控除・配偶者特別控除を受ける際の年末調整に必要な書類の申請方法や注意点について解説します。
年末調整について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
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目次
配偶者控除・配偶者特別控除とは?
配偶者控除について
「配偶者控除」とは、控除を受ける納税者本人の1年間の合計所得金額が1,000万円以下で、配偶者の1年間の合計所得金額が48万円以下(2019年分までは38万円以下)の人が利用できる控除です。
なお、配偶者の収入がパートやアルバイトなどの給与収入のみの場合は、給与所得控除として最低55万円(2019年分までは65万円)が控除となるので、年収103万円以下が対象となります。
また、給与所得以外に不動産所得や一時所得、譲渡所得などがある場合でも、その年の合計所得金額が48万円以下(2019年分までは38万円以下)であれば配偶者控除を受けることができます。
参考:国税庁「No.1410 給与所得控除」
控除対象配偶者とは、その年の12月31日の現況で、次の四つの要件のすべてに当てはまる人です。
なお、平成30年分以後は、控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、配偶者控除は受けられません。
(1) 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません。)。
(2) 納税者と生計を一にしていること。
(3) 年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(4) 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
配偶者特別控除について
「配偶者特別控除」とは、配偶者の所得が48万円(2019年分までは38万円)を超え、配偶者控除の対象外となる場合であっても、配偶者の所得額に応じて一定の所得控除を受けられる制度です。
納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下で、配偶者の合計所得金額が48万円を超え133万円以下(2018年分から2019年分までは38万円を超え123万円以下、2017年分までは38万円を超え76万円未満)であれば、配偶者特別控除を受けることができます。
なお、配偶者の収入がパートやアルバイトなどの給与収入のみの場合は103万円を超え201万6,000円未満が対象となります。
(1) 控除を受ける納税者本人のその年における合計所得金額が1,000万円以下であること。
(2) 配偶者が、次の要件全てに当てはまること。
イ 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません)。
ロ 控除を受ける人と生計を一にしていること。
ハ その年に青色申告者の事業専従者としての給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
ニ 年間の合計所得金額が48万円超133万円以下(平成30年分から令和元年分までは38万円を超え123万円以下、平成29年分までは38万円を超え76万円未満)であること。
(3) 配偶者が、配偶者特別控除を適用していないこと。
(4) 配偶者が、給与所得者の扶養控除等申告書又は従たる給与についての扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと(配偶者が年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除きます。)
(5) 配偶者が、公的年金等の受給者の扶養親族等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと(配偶者が年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除きます。)。
配偶者控除申告書の書き方
それでは、実際に配偶者控除申告書の記入方法を見ていきましょう。
※2020年分以降の「給与所得者の配偶者控除等申告書」は、「給与所得者の基礎控除申告書」と「所得金額調整控除申告書」との兼用様式となり、「給与所得者の基礎控除申告書・給与所得者の配偶者控除等申告書・所得金額調整控除申告書」となりました。
年末調整において、給与所得者が配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受けようとする場合には、給与の支払者からその年の最後に給与等の支払を受ける日の前日までに、「給与所得者の配偶者控除等申告書」(令和2年分以後の「給与所得者の配偶者控除等申告書」は、「給与所得者の基礎控除申告書」及び「所得金額調整控除申告書」との兼用様式となります。
(参考:[手続名]給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除の申告))を給与の支払者を経由して、その支払者の源泉所得税の納税地の所轄税務署長に提出することとなっています(税務署長から提出を求められるまでの間は、提出を受けた給与の支払者が保存するものとされています。)。

給与所得者の配偶者控除等申告書の記入方法

❶ 配偶者の名前、フリガナ、個人番号(マイナンバー)、生年月日を記載します。なお、個人番号(マイナンバー)は記載しない場合もあるので勤め先に確認してください。
また、配偶者と別居している場合は配偶者の住所を、配偶者が海外に住んでいるなどの場合には「非居住者である配偶者」欄に◯を付け、「生計を一にする事実」欄にその年に配偶者に送金した金額の合計を記載します。
❷ 給与所得の収入金額、所得金額、給与以外の所得額を記載し、「配偶者の本年中の合計所得金額の見積額」にその合計額を記載します。
例えば、給与所得のみで収入金額(年収)が95万円であれば、給与所得控除の55万円を差し引いた40万円が給与所得の所得金額となり、「配偶者の本年中の合計所得金額の見積額」も40万円となります。
❸ ❷の「配偶者の本年中の合計所得金額の見積額」に記入した金額と配偶者の年齢をもとに、該当箇所にチェックマーク(✓)を付け、「区分Ⅱ」にその記号(①~④)を記載します。
❹ 「基礎控除申告書」の「区分Ⅰ」と❸の「区分Ⅱ」を表に当てはめ、控除額を確認します。
❺ 「区分Ⅱ」が①または②の場合は「配偶者控除の額」欄に、③または④の場合は「配偶者特別控除の額」欄に、❹で確認した控除額を記載して完了です。
参考:国税庁「令和2年分 給与所得者の基礎控除申告書・給与所得者の配偶者控除等申告書・所得金額調整控除申告書の記載例」
配偶者控除・配偶者特別控除で受けられる控除額
納税者本人の所得が900万円以下の場合、配偶者控除や配偶者特別控除で受けられる控除額は、配偶者の年収(給与所得)が150万円までは38万円です。配偶者の年収が150万円を超えると、配偶者特別控除の控除額は徐々に減っていきます。
なお、その年12月31日現在で配偶者が70歳以上であれば、控除額は48万円になります。これを「老人控除対象配偶者」といいます。
さらに、障害のある配偶者は、配偶者控除の他に障害者控除27万円(特別障害者の場合は40万円、同居特別障害者の場合は75万円)の控除を受けることができます。
また、納税者本人の総所得金額が900万円を超え1,000万円以下(年収1,095万円を超え1,195万円以下)の場合は控除額が減額されます。そして総所得金額が1,000万円を超えると配偶者控除、配偶者特別控除の対象外となります。
詳しくは以下の表でご確認ください。
納税者本人の総所得金額 | 配偶者が給与所得だけの場合の配偶者の年収 | ||||
900万円以下 (1,095万円以下) |
900万円超え 950万円以下 (1,095万円超え 1,145万円以下) |
950万円超え 1,000万円以下 (1,145万円超え 1,195万円以下) |
|||
配偶者控除 | 配偶者の総所得金額が48万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 | 1,030,000円以下 |
老人控除対象配偶者 | 48万円 | 32万円 | 16万円 | ||
配偶者特別控除 | 48万円超え 95万円以下 |
38万円 | 26万円 | 13万円 | 1,030,000円超え 1,500,000円以下 |
95万円超え 100万円以下 |
36万円 | 24万円 | 12万円 | 1,500,000円超え 1,550,000円以下 |
|
100万円超え 105万円以下 |
31万円 | 21万円 | 11万円 | 1,550,000円超え 1,600,000円以下 |
|
105万円超え 110万円以下 |
26万円 | 18万円 | 9万円 | 1,600,000円超え 1,667,999円以下 |
|
110万円超え 115万円以下 |
21万円 | 14万円 | 7万円 | 1,667,999円超え 1,751,999円以下 |
|
115万円超え 120万円以下 |
16万円 | 11万円 | 6万円 | 1,751,999円超え 1,831,999円以下 |
|
120万円超え 125万円以下 |
11万円 | 8万円 | 4万円 | 1,831,999円超え 1,903,999円以下 |
|
125万円超え 130万円以下 |
6万円 | 4万円 | 2万円 | 1,903,999円超え 1,971,999円以下 |
|
130万円超え 133万円以下 |
3万円 | 2万円 | 1万円 | 1,971,999円超え | |
133万円超え | 0円 | 0円 | 0円 | 2,015,999円超え |
配偶者控除で注意すべきポイント
最後に、配偶者控除を受ける際の注意点を5つご紹介します。
1.配偶者は納税者本人と同一生計であること
同一生計とは、納税者本人が配偶者と生活費や学費、医療費などを共有していることを指します。したがって、納税者が単身赴任などで別居していても、配偶者が納税者本人の収入で生活していれば、同一生計を維持しているとみなされます。
2.配偶者が青色申告者の専従給与を受け取っていないこと
配偶者が青色事業専従者給与を受け取っていたり、事業専従者控除の対象となっている場合は、配偶者控除・配偶者特別控除を受けることができません。そのため、納税者本人に個人事業主としての収入がある場合は注意が必要です。
青色事業専従者給与について詳しく知りたい方は「青色申告の専従者給与 家族への給与支払いで節税効果を高める方法」をご覧ください。
3.生命保険や損害保険の満期保険金も収入に含まれる
配偶者控除で定められた年収は、パートやアルバイトで得た所得に限られません。年金や生命保険、損害保険などの収入も含まれます。
つまり、アルバイトで得た年収がちょうど103万円だったとしても、満期保険金や生命保険の給付金から必要経費を差し引いて年末に収入があれば、年収の合計が103万円を超えてしまい、配偶者控除を受けることができません。
給付金が振り込まれることが事前に分かっており、所得となる場合は、配偶者控除を受けるためには、パートやアルバイトのシフトを調整する必要があります。
参考:公益財団法人 生命保険文化センター
「Q.個人年金保険の年金を受け取って所得税がかかるときの計算方法は?」
「Q.満期保険金に所得税がかかる場合の計算方法は?」
4.法律上、婚姻関係が認められていること
配偶者控除や配偶者特別控除は、戸籍上配偶者と認められている場合にのみ利用できます。事実上のパートナー、内縁のパートナー、婚約しているがまだ結婚していないなどの場合は、配偶者控除や配偶者特別控除を受けることはできません。
5.納税者本人の年収が1,195万円(所得が1,000万円)を超えないこと
配偶者控除、配偶者特別控除は、控除を受ける納税者本人が給与所得のみの場合は年収1,195万円以下、総所得金額だと1,000万円以下であることが要件になっていますのでご注意ください。
まとめ
配偶者控除とは、配偶者の年収が103万円以下の場合に最大38万円(老人控除対象配偶者は最大48万円)の控除を受けることができる制度で、配偶者特別控除とは、配偶者の年収が103万円を超え201万6千円未満の場合に控除が受けられます。
配偶者控除、配偶者特別控除の適用を受けるためには、納税者本人と生計を同じくしていること、青色事業専従者給与、事業専従者控除を受けていないこと、民法上婚姻関係にあると認められていること、世帯主の年収が1,195万円以下であることなどが条件です。
パート・アルバイトなどの短時間勤務をしている人がいる家庭では、税金や扶養の制度が働き方に影響します。控除がない場合で年収が約100万円(自治体によって金額は異なります。)を超えると住民税、103万円を超えると所得税が発生し、130万円以上(場合によっては106万円以上)になると社会保険の加入が必要になるなど、さまざまな「壁」があります。
配偶者控除、配偶者特別控除などの申請手続きは簡単ですが所得調整は難しいので、収入計画をしっかり考えましょう。
監修 河島 桃世 特定社会保険労務士
日本年金機構(旧:社会保険庁含む)に15年勤務後、社会保険労務士に。
「人事労務freee認定アドバイザー」社労士事務所。就業規則、労務問題の対応だけでなく、バックオフィス(クラウド給与計算、勤怠管理システムやテレワーク導入など)の効率化の為に積極的にIT導入支援を行っています。
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