年末調整は、例年10月頃から翌年1月にかけて行われる、「給与所得者のその年の所得税額」と「給与などから天引きされた源泉徴収税額」との差額を精算する手続きです。
一般的に会社員や公務員が勤務先に年末調整に関する必要書類を提出するのはその年の11月頃で、年末調整後、翌年1月31日までに会社が関係書類を税務署などへ提出する流れになっています。
本記事では、年末調整の手続きの流れや提出期限に遅れた場合の対応、提出後の修正方法などについて詳しく解説します。
目次
- 年末調整とは
- 2026年の年末調整はどう変わる?「178万円の壁」と「12月一括精算」の注意点
- 所得税の非課税ラインが「178万円」へ拡大
- 12月の年末調整で一括還付(精算)
- 年末調整の期限はいつからいつまで?
- 【従業員向け】年末調整書類の提出はいつまで?
- 年末調整の書類の提出が遅れた場合
- 申告書提出後の修正はいつまで可能?
- 年末調整の還付や追加徴収はいつ?
- 還付金を受け取れる主なケース
- 生命保険や医療保険に加入している
- 扶養家族が増えた
- 個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入している
- 住宅ローンを返済している
- 確定申告が必要なケース
- 副業による所得が20万円を超える場合
- 年収が2,000万円を超える場合
- 医療費控除や特定支出控除を受ける場合
- 2025年の年末調整を簡単に行う方法
- まとめ
- よくある質問
年末調整とは
年末調整とは、会社員や公務員が1年間に源泉徴収された所得税の過不足を精算する手続きのことです。
源泉徴収とは、給与や報酬を受け取る際にあらかじめその所得にかかる所得税を、一定額給与や報酬から差し引いて納税する制度です。源泉徴収で納税される所得税はあくまで「概算の額」であるため、年末に正確な税額を計算し直す必要があります。
会社員の場合、会社が従業員に代わって手続きを行ってくれるため、確定申告のように自身で申告手続きを行う必要はありません。
従業員は会社から配布される年末調整書類に必要事項を記入し、生命保険料や地震保険料などの控除証明書を添付して提出するだけで手続きが完了します。この手続きによって、払いすぎた所得税があれば還付され、逆に不足していれば追加で徴収されます。
2026年の年末調整はどう変わる?「178万円の壁」と「12月一括精算」の注意点
「令和8年度税制改正の大綱」に基づき、2026年の年末調整では所得税の非課税ライン(課税されない年収の上限)が「178万円」へと拡大されます。この改正は12月1日に施行される予定で、年間を通じた税額調整は12月の年末調整時に一括で行われます。例年とは異なるため、大枠を押さえておきましょう。
所得税の非課税ラインが「178万円」へ拡大
先述の税制改正により、基礎控除(本則62万円+特例最大42万円=104万円)と給与所得控除の最低保障額(本則69万円+特例5万円=74万円)が見直され、所得税がかからない年収ラインが従来の160万円から178万円へと引き上げられました。
| 項目 | 改正前(2025年分) | 改正後(2026年分) |
|---|---|---|
| 基礎控除(最大) | 95万円 | 104万円 |
| 給与所得控除(最低保障) | 65万円 | 74万円 |
| 所得税の非課税ライン | 160万円 | 178万円 |
課税対象となる給与収入(年収)の上限が178万円であることから、「178万円の壁」とよばれます。2024年までは103万円でしたが、2025年に160万円、そして2026年に178万円と段階的に引き上げられました。
なおこの「178万円の壁」については、2026年および2027年の2年間に限定して適用される予定となっています。そのため2028年以降、178万円という金額は変更となる可能性があります。
12月の年末調整で一括還付(精算)
今回の改正は原則として2026年12月1日から施行されます。そのため、1月〜11月までの毎月の給与では従来の税額で源泉徴収が行われ、12月の年末調整時に改正後の新しい控除額を使って年税額を再計算します。
その結果、12月の給与または賞与での精算時には例年以上にまとまった金額が還付されるケースが増える見込みです。会社側の担当者は、12月の計算事務が非常に過密になることを想定し、例年以上に余裕を持ったスケジュールで従業員への回収・確認を進める必要があります。
年末調整の期限はいつからいつまで?
年末調整の手続きは、その年の10月頃から翌年1月にかけて行われるのが一般的です。この期間中、会社側と従業員側のそれぞれに対応すべきことがあります。
年末調整の主なスケジュールは以下のとおりです。
| 会社の対応 | 従業員の対応 | |
|---|---|---|
| 10月 中旬〜 | ・従業員に申告書を配布する | |
| 11月 | ・中途入社の従業員の源泉徴収票を提出する ・従業員が記入した各種申告書や証明書などを回収する | ・源泉徴収票を会社へ提出する ・各種申告書に必要事項を記入し、会社へ提出する ・申告に必要な各種証明書を会社へ提出する |
| 12月 | ・従業員ごとに、源泉徴収税額と確定した所得税額の差額を計算する ・差額を精算(還付または徴収)する ※会社によっては1月に行う場合もある ・源泉徴収票を作成する | |
| 翌年1月 | ・1月10日(納期の特例の場合は1月20日)までに年末調整後の源泉徴収税額を納付する ・各種法定調書を作成し、1月31日までに規定の提出先へ提出する |
年末調整では「1月1日から12月31日までのその年1年間で支払われた給与」が対象となります。対象となる給与は12月31日までに従業員に支払われている必要があるため、12月分の給与が翌年1月に支払われた場合、12月分の給与が対象となるのは翌年の年末調整です。
年末調整の結果、本来納めるべき所得税額より源泉徴収税額のほうが多ければ従業員に差額分が還付され、逆に源泉徴収税額のほうが少なければ不足分が徴収されます。還付や徴収は、12月または1月の給与支払い時に行われるケースが一般的です。
年末調整の書類の書き方について詳しく知りたい方は、別記事「【2026年版】年末調整とは?書類別の書き方と必要書類の一覧をわかりやすく解説(記入例つき)」をあわせてご確認ください。
なお、会社側の最終ゴールは「翌年1月31日まで」に行う行政機関への各種書類提出です。年末調整を首尾よく完了させるために、1月31日から逆算したスケジュール感を把握しておきましょう。
1月31日までに提出が必要な主な書類
- 税務署へ提出
- 法定調書合計表
- 給与所得の源泉徴収票(一定の役員・従業員分など)
- 各市区町村へ提出
- 給与支払報告書(全従業員分)
1月は総括表の作成や各市区町村ごとの仕分け作業など、事務作業が集中します。12月中に計算ミスや書類不備を解消しておくことが、1月31日の最終期限をスムーズに迎えるための鍵となります。
【従業員向け】年末調整書類の提出はいつまで?
年末調整の作業はその年の10月から翌年の1月までにかけて行われ、一般的に従業員が勤務先へ申告書などの書類を提出する期限は、その年の11月上旬です。ただし会社によって書類の提出期限が異なる場合があるため、正確な提出期日は経理担当者などに確認しましょう。
その後、従業員から提出された書類をもとに会社側で年末調整を実施します。
会社は、11月中旬〜12月下旬の約1ヶ月半ですべての従業員の年末調整および精算手続きを完了しなければなりません。作業に遅れが発生しないよう、従業員は担当者から通達された提出期限を守る必要があります。
なお、従業員が会社に提出する書類は以下のとおりです。
| 種類 | 詳細 |
|---|---|
| すべての給与所得者が提出する書類 | ・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 |
| 対象者のみ提出する書類 | ・給与所得者の保険料控除申告書 ・給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼給与所得者の特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書 ・給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 兼 (特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書 |
このうち、控除適用を申告するには控除証明書などの添付が必要です。
たとえば、生命保険や地震保険、小規模企業共済などに加入している場合は、例年10月頃に加入する保険会社から控除証明書が登録している住所(自宅など)に届きます。書類を受け取ったあとは、年末調整の時期まで失くさずに保管しておきましょう。
年末調整の書類の提出が遅れた場合
控除証明書の紛失などのトラブルが原因で書類の提出が遅れる場合でも、翌年1月31日までに会社が各種法定調書を税務署へ提出できれば問題ありません。控除証明書を紛失した場合、基本的には発行元に問い合わせることで再発行が可能です。
しかし、年末調整の時期は再発行の申請が集中するため、申請が遅れると提出期限に間に合わなくなる恐れがあります。また、会社への書類提出があまりにも遅いと、年末調整で控除が適用されないリスクも生じるでしょう。
従業員自身の書類提出の遅れが原因で年末調整で控除が適用されなかった場合は、翌年、従業員自らが確定申告を行えば控除を受けられます。確定申告の申告書提出期間は、例年2月16日〜3月15日です。
申告書提出後の修正はいつまで可能?
年末調整の申告書を会社に提出した後に修正の必要が生じた場合、一般的には翌年1月31日までであれば会社の担当部署を通して修正できます。
ただし、会社側は翌年1月10日(特例の場合は20日)までに源泉徴収税額の納付を行う必要があるため、1月31日より前に源泉徴収票が発行されるかもしれません。源泉徴収票が発行されてしまうと修正が難しくなるので、修正が必要だと判明した際にはすみやかに勤務先の担当部署へ確認しましょう。
なお、以下のいずれかのケースで年末調整の書類修正が発生したら、従業員自身が確定申告をして内容の修正をする必要があります。
- 翌年2月1日以降
- 源泉徴収票の発行後
年末調整の還付や追加徴収はいつ?
毎月給与から天引きされていた源泉徴収税額が本来支払うべき所得税額よりも多かった場合、年末調整によって差額分が還付されます。一方で、源泉徴収税額が納めるべき所得税額よりも少なかった場合は差額分の追加徴収があります。
年末調整の還付は、年末調整後の最初の給与支給時(その年の12月)に給与と一緒に支給されるケースが一般的です。不足分を追加徴収される場合も、還付金と同様に基本的には年末調整後に支給される最初の給与支給時に、給与から差し引かれます。
ただし会社によっては給与支給時とは別のタイミングで振り込まれたり、現金で直接手渡しされたりするケースもあります。還付金がいつ受け取れるか正確な時期を知りたい場合は、勤務先に確認しましょう。
なお、年末調整により還付・徴収された金額を知りたい場合は、還付または徴収がなされた月の給与明細の「年末調整還付金・徴収金」欄や、年末調整完了後に会社から配布される源泉徴収票で確認可能です。
なお、年末調整の追加徴収について詳しく知りたい方は、別記事「年末調整で追加徴収があるケースとは?計算方法や支払い方法を解説」をあわせてご確認ください。
還付金を受け取れる主なケース
年末調整で還付金が発生するのは、その年に徴収された源泉徴収税額の合計額が本来支払うべき所得税額を上回っていた場合です。
基本的には、「年の途中で扶養対象者の数が減った」などの例外を除いて、本体納めるべき所得税は源泉徴収額より少なくなることが多いため、ほとんどの申告者が還付を受けることになります。
さらに、年末調整で所得控除・税額控除を申告し適用されると、さらに還付金が発生しやすくなります。所得控除・税額控除が適用できる主なケースは以下のとおりです。
年末調整で還付金が受け取れる主なケース
- 生命保険や医療保険に加入している(生命保険料控除)
- 扶養家族が増えた(扶養控除)
- 個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入している(小規模企業共済等掛金控除)
- 住宅ローンを返済している(住宅借入金等特別控除)
生命保険や医療保険に加入している
生命保険や医療保険の加入者には、生命保険料控除が適用されます。控除額は掛金によって異なりますが、一般の生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料の3つに関する控除額を合計し、所得税の最大控除額は12万円です。
なお、生命保険料控除について詳しく知りたい方は、別記事「生命保険料控除とは?適用限度額や年末調整の書き方、計算方法についてわかりやすく解説」をあわせてご確認ください。
扶養家族が増えた
所得税法上の控除対象扶養家族がいる場合は、扶養家族の人数に応じて一定金額の控除が適用されます。また、年末調整の対象となる期間に扶養家族(扶養親族)が増えた場合、その分の控除も適用可能です。
控除額は、扶養親族の年齢や同居の有無などによって異なり、38万円〜63万円となっています。
なお、扶養控除について詳しく知りたい方は、別記事「扶養控除申告書の書き方を記入例つきで解説」をあわせてご確認ください。
個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入している
個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入している場合は、「小規模企業共済等掛金控除」の対象です。掛金の全額が控除の対象となるため、毎月の掛金が多くなるほど控除額も多くなります。
なお、小規模企業共済等掛金控除は、iDeCoのほか企業型年金加入者掛金や地方公共団体が実施する心身障害者扶養共済制度の掛金も対象です。
住宅ローンを返済している
住宅ローンの返済をしている人には、「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」が適用されます。控除額は住宅ローンの年末残高の0.7%分で、住宅ローン控除は所得控除ではなく税額控除の対象です。税額控除は、所得税額から直接控除額を差し引く仕組みとなっています。
なお、住宅ローンの借入1年目に控除を受けるには確定申告が必須で、年末調整での申告で控除を受けられるのは返済2年目以降に限られます。
住宅ローン控除について詳しく知りたい方は、別記事「【2026年最新】住宅借入金等特別控除申告書の書き方まとめ!記入例や必要書類を解説」をあわせてご確認ください。
このほか、個人で社会保険料を支払った場合(社会保険料控除)や、年の途中で夫と離婚・死別した場合(寡婦控除)などは、還付金が受け取れる可能性があります。年末調整で還付金が受け取れるケースについて詳しく知りたい方は、別記事「年末調整の還付金はいつ、いくら戻ってくる?計算方法や受取時期を解説(控除別シミュレーション付き)」をあわせてご確認ください。
確定申告が必要なケース
前述のとおり会社員の場合は会社側が年末調整を行うため、従業員が申告手続きを行う必要はありません。ただし、「会社員が確定申告を行わなくてはならないケース」もあります。
副業による所得が20万円を超える場合
本業の給与所得以外に副業による所得があり、それが年間20万円を超える場合は確定申告が必要です。
副業の所得とは、副業の収入から経費を差し引いた金額のことです。
年収が2,000万円を超える場合
年末調整は、年間の給与所得が2,000万円以下の従業員に対して行われます。これを超える場合は会社で年末調整が行われないため、自身で確定申告をする必要があります。
医療費控除や特定支出控除を受ける場合
場合によっては、年末調整で控除の申請ができない項目もあります。
たとえば、年間で多額の医療費を支払った場合や通勤費や資格取得費などが特定の条件を満たす場合は、確定申告で控除の申請ができることがあります。
年の途中で退職し、年末までに再就職していない場合
年の途中で退職すると、最後の給与で年末調整が行われることがあります。
退職後に再就職し、年末時点で企業に所属している場合は、所属している企業で年末調整を行います。再就職しないまま年末を迎えた場合は、自身で確定申告をして税金を精算しなければなりません。
前職の源泉徴収票が期限に間に合わない場合(中途入社者)
年の途中で転職した人が現在の会社で年末調整を受けるには、「前職の源泉徴収票」を会社が指定する提出期限(11月中旬〜下旬頃)までに提出する必要があります。しかし、「前所属会社からの発行が遅れている」「発行を依頼し忘れていた」といった理由で期限に間に合わないケースも珍しくありません。そういった場合は以下の対応を取りましょう。
1. 前職の会社へ発行の催促&自社の担当者へ相談する
源泉徴収票の発行は法律で義務付けられています。まずは前職の会社へ連絡し、「年末調整の提出期限が迫っているため急ぎ発行してほしい」などと伝えましょう。同時に、現在の会社の労務・人事担当者へ「〇月〇日頃に入手予定です」と遅れる旨を報告してください。
2. 最終計算(12月)に間に合わない場合は自身で確定申告をする
会社が税額を確定させる12月の給与計算時期までに前職の源泉徴収票が間に合わない場合、現在の会社では「前職分の給与を含めずに年末調整」をするか、「年末調整そのものを対象外」として処理します。この場合、年末調整で税金の精算が完結しないため、自身で手続きを行う必要があります。
前職の源泉徴収票が間に合わない場合の手続き
1.現在の会社から「令和8年分の源泉徴収票」をもらう(12月〜翌1月頃に発行)
2.前職の会社から「源泉徴収票」を取り寄せる
3.翌年2月16日〜3月15日の間に、両方の源泉徴収票を合わせて確定申告をする
なお、前職の給与収入を合算せずに放っておくと「所得税の不完全な申告」となり、後から追徴課税のペナルティを受けるリスクがあるので注意しましょう。
2026年の年末調整を簡単に行う方法
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まとめ
年末調整の手続きは、一般的に10月頃から翌年1月にかけて行われます。従業員が勤務先に年末調整の申告書を提出する期限はその年の11月頃です。年末調整において従業員は会社から配布された関係書類に必要事項を記入し、必要な添付書類と一緒に決められた期限内に会社へ提出しなければなりません。
なお、万が一申告書を提出した後に内容のミスに気が付いた場合は、早期であれば会社の担当部署に修正を依頼することができます。修正が間に合わなかった場合には、自身であらためて確定申告を行わなければならないため注意が必要です。
よくある質問
年末調整はいつ行われる?
年末調整の手続きは、その年の10月頃から翌年1月にかけて行われるのが一般的です。10月中旬〜下旬に勤務先から各種申告書が従業員に配布され、従業員は申告書に必要事項を記入し、11月上旬に勤務先に提出します。
なお、会社によって書類の提出期限が異なる場合があるため、正確な提出期日は担当者に確認しましょう。
詳しくは記事内の「【従業員向け】年末調整書類の提出はいつまで?」をご覧ください。
年末調整はいつからいつまでの給料が対象?
年末調整の対象となるのは「1月1日から12月31日までの1年間で支払われた給与」です。
ただし、12月31日までに支払いが済んでいることが要件であるため、12月分の給与が翌年の1月に支払われた場合は、12月分の給与は対象外となります。その分は、翌年の年末調整で精算します。
詳しくは記事内の「年末調整の期限はいつからいつまで?」をご覧ください。


