人事労務の基礎知識

年末調整いつまでに実施?期限や提出スケジュールを解説

最終更新日:2023/10/24

監修 前田 昂平 前田昂平公認会計士・税理士事務所

年末調整の手続きはいつからいつまで?書類の提出期限や還付金の受け取り時期を解説【令和5年(2023年)版】

年末調整は、例年10月頃から翌年1月にかけて行われる、給与所得者のその年の所得税額と、給与等から天引きされた源泉徴収税額との差額を精算する手続きです。

一般的に従業員が勤務先に年末調整に関する必要書類を提出するのはその年の11月頃で、年末調整後、翌年1月31日までに会社は関係書類を税務署などへ提出します。

本記事では、年末調整の手続きの流れや提出期限に遅れた場合の対応、提出後の修正方法などについて解説します。

目次

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年末調整の手続きはいつからいつまで?

年末調整の手続きは、その年の10月頃から翌年1月にかけて行われるのが一般的です。この期間中、会社側と従業員側のそれぞれに対応すべきことがあります。

年末調整の主なスケジュールは以下のとおりです。


会社の対応従業員の対応
10月中旬〜・従業員に申告書を配布する
11月・中途入社の従業員の源泉徴収票を提出する
・従業員が記入した各種申告書や証明書などを回収する
・源泉徴収票を会社へ提出する
・各種申告書に必要事項を記入し、会社へ提出する
・申告に必要な各種証明書を会社へ提出する
12月・従業員ごとに、源泉徴収税額と確定した所得税額の差額を計算する
・差額を精算(還付または徴収)する
※会社によっては1月に行う場合も
・源泉徴収票を作成する
翌年1月・1月10日(納期の特例の場合1月20日)までに年末調整後の源泉徴収税額を納付する
・各種法定調書を作成し、1月31日までに規定の提出先へ提出する

年末調整は、その年の毎月の給与から天引きされた源泉徴収税額の合計と、本来支払うべき所得税額を比較し、その過不足を精算するための手続きです。

年末調整の対象となるのは「1月1日から12月31日までのその年1年間で支払われた給与」です。

対象となる給与は12月31日までに従業員に支払われている必要があるため、12月分の給与が翌年1月に支払われた場合は、12月分の給与は翌年の年末調整の対象になります。

年末調整の結果、本来納めるべき所得税額より源泉徴収税額のほうが多ければ従業員に差額分が還付され、源泉徴収税額のほうが少なければ不足分が徴収されます。還付や徴収は、12月または1月の給与支払い時に行われることが一般的です。

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年末調整の書類の提出期限はいつ?

年末調整の流れは前述のとおり、その年の10月から翌年の1月までに作業が行われます。

一般的に従業員が勤務先へ申告書等の書類を提出する期限は、その年の11月上旬です。会社によって書類の提出期限が異なる場合があるため、正確な提出期日は担当者に確認しましょう。

その後、従業員から提出された書類をもとに会社側で年末調整を行います。会社は11月中旬〜12月下旬の約1ヶ月半ですべての従業員の年末調整および精算手続きを行うため、作業に遅れが発生しないよう、担当者から通達された提出期限は必ず守りましょう。

なお、従業員が会社に提出する書類は以下のとおりです。


年末調整で従業員が会社に提出する書類
すべての給与所得者が提出・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
対象者のみ提出・給与所得者の保険料控除申告書
・給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告
・給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 兼 (特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書

このうち、控除適用を申告する場合は控除証明書などの添付が必要です。たとえば、生命保険や地震保険、小規模企業共済などに加入している場合、例年10月頃に加入する保険会社から控除証明書が登録している住所(自宅等)に届きます。書類を受け取ったあとは、年末調整の時期まで失くさずに保管しておきましょう。

年末調整の書類の提出が遅れた場合

控除証明書の紛失などのトラブルが原因で書類の提出が遅れる場合でも、翌年1月31日までに会社が各種法定調書を税務署へ提出できれば問題ありません。

控除証明書を紛失した場合、基本的には発行元に問い合わせれば再発行が可能です。しかし、年末調整の時期は再発行の申請が集中するため、申請が遅れると提出期限に間に合わなくなる可能性があります。

ただし、会社への書類提出があまりにも遅れると、年末調整で控除が適用されないおそれがあります。

従業員自身の書類提出の遅れが原因で年末調整で控除が適用されなかった場合は、翌年、従業員自らが確定申告を行うことで控除を受けられます。確定申告の申告書提出期間は、例年2月16日〜3月15日です。


出典:国税庁「年末残高等証明書が年末調整に間に合わない場合」

申告書提出後の修正はいつまで可能?

年末調整の申告書を会社に提出したあとに書類の修正をしたい場合、一般的には翌年1月31日までであれば、会社の担当部署を通して修正できます。

会社側は翌年1月10日(特例の場合は20日)までに源泉徴収税額の納付を行う必要があり、1月31日より前に源泉徴収票が発行される場合もあります。源泉徴収票が発行されてしまうと修正が難しいため、修正が必要だと判明した際には、すみやかに勤務先の担当部署へ修正可能かどうか確認しましょう。

以下のいずれかの場合で年末調整の書類の内容に修正が発生したら、従業員自身が確定申告をして申告内容の修正をする必要があります。

  • 翌年2月1日以降
  • 源泉徴収票の発行後

年末調整の還付や追加徴収はいつ?

年末調整によって毎月給与から天引きされていた源泉徴収税額が、本来支払うべき所得税額よりも多かった場合、差額分が還付されます。一方で、源泉徴収税額が納めるべき所得税額よりも少なかった場合、差額分が追加徴収されます。

年末調整の還付および追加徴収は、年末調整後の最初の給与支給時(その年の12月)に給与と一緒に支給されるケースが一般的です。

不足分を追加徴収される場合も、還付金と同様に基本的には年末調整後に支給される最初の給与支給時に、給与から差し引かれます。

ただ、会社によっては給与支給時とは別のタイミングで振り込まれたり、現金で直接手渡しされたりするケースもあります。還付金がいつ受け取れるか正確な時期を知りたい場合は、勤務先に確認しましょう。

年末調整により還付・徴収された金額を知りたい場合は、還付または徴収がなされた月の給与明細の「年末調整還付金・徴収金」欄や、年末調整完了後に会社から配布される源泉徴収票を確認します。

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還付金を受け取れる主なケース

還付金が発生するのは、その年に徴収された源泉徴収税額の合計額が、本来支払うべき所得税額を上回っていた場合です。

基本的には、「年の途中で扶養対象者の数が減った」などの例外を除いて、本体納めるべき所得税が源泉徴収額よりも少なくなることが多いため、ほとんどの方が還付を受けることになります。

さらに、年末調整で所得控除・税額控除を申告し適用されると、還付金が発生しやすくなります。所得控除・税額控除が適用できる主なケースは以下のとおりです。

年末調整で還付金が受け取れる主なケース

  • 生命保険や医療保険に加入している(生命保険料控除)
  • 扶養家族が増えた(扶養控除)
  • 個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入している(小規模企業共済等掛金控除)
  • 住宅ローンを返済している(住宅借入金等特別控除)

生命保険や医療保険に加入している

生命保険や医療保険の加入者には、生命保険料控除が適用されます。控除額は掛金によって異なりますが、一般の生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料の3つに関する控除額を合計して、所得税では最大12万円の控除が受けられます。


出典:国税庁「生命保険料控除の限度額計算」


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扶養家族が増えた

所得税法上の控除対象扶養家族がいる場合は、扶養家族の人数に応じて一定金額の控除が適用されます。そのため年末調整の対象となる期間に扶養家族(扶養親族)が増えた場合、その分だけ控除額も増えることになります。


出典:国税庁「No.1180 扶養控除」


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個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入している

個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入している場合は、「小規模企業共済等掛金控除」の対象です。掛金の全額が控除されるため、毎月の掛金が多くなるほど控除額も多くなります。


出典:国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」

住宅ローンを返済している

住宅ローンの返済をしている人は、「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」が適用されます。控除額は住宅ローンの年末残高の0.7%分です。住宅ローン控除は所得控除ではなく、税額控除です。税額控除は、所得税額から直接控除額を差し引きます。

なお、住宅ローンの借入1年目は確定申告のみで住宅ローン控除の申告ができます。年末調整での申告は、返済2年目以降に限られます。


出典:国税庁「No.1200 税額控除」


出典:国税庁「No.1212 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」


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上記のほかにも、個人で社会保険料を支払った場合(社会保険料控除)や、年の途中で夫と離婚・死別した場合(寡婦控除)などは、還付金が受け取れる場合があります。年末調整で還付金が受け取れるケースについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

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まとめ

年末調整の手続きは、一般的に10月頃から翌年1月にかけて行われ、従業員が勤務先に年末調整の申告書を提出する期限はその年の11月頃です。

年末調整で従業員がやるべきことは、会社から配布された関係書類に必要事項を記入し、必要な添付書類と一緒に決められた期限内に会社へ提出することです。

万が一、勤務先に申告書を提出した後に記載内容のミスに気が付いた場合は、早期であれば会社の担当部署に修正依頼ができます。修正が間に合わなかった場合には、自身で改めて確定申告を行いましょう。

よくある質問

年末調整はいつ行われる?

年末調整の手続きは、その年の10月頃から翌年1月にかけて行われるのが一般的です。10月中旬〜下旬に勤務先から各種申告書が従業員に配布され、従業員は申告書に必要事項を記入し、11月上旬に勤務先に提出します。

なお、会社によって書類の提出期限が異なる場合があるため、正確な提出期日は担当者に確認しましょう。

詳しくは記事内「年末調整の書類の提出期限はいつ?」をご覧ください。

年末調整はいつからいつまでの給料が対象?

年末調整の対象となるのは「1月1日から12月31日までの1年間で支払われた給与」です。12月31日までに支払いが済んでいることが要件であるため、12月分の給与が翌年の1月に支払われた場合は、12月分の給与は対象外となります。その分は、翌年の年末調整で精算します。

詳しくは記事内「年末調整の手続きはいつからいつまで?」をご覧ください。

監修 前田 昂平

2013年公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人に入所し、法定監査やIPO支援業務に従事。2018年より会計事務所で法人・個人への税務顧問業務に従事。2020年9月より非営利法人専門の監査法人で公益法人・一般法人の会計監査、コンサルティング業務に従事。2022年9月に独立開業し現在に至る。

前田 昂平

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