有給休暇は雇用形態に関係なく、所定労働日の8割以上の出勤を6ヶ月以上継続している全従業員に付与されます。もちろん正社員以外のアルバイト・パートも有給休暇付与の対象になりますが、付与日数や有給休暇使用時の給与計算方法については、就業条件や会社の就業規則によって異なります。
本記事では、アルバイト・パートの有給休暇の計算方法や、運用上の注意点について解説します。
目次
- 有給休暇はアルバイト・パートも取得可能
- 有給休暇を付与する要件
- 有給休暇付与日数の計算方法
- 所定労働時間及び所定労働日数が基準以下の場合
- 有給休暇付与日数の計算における注意点
- アルバイト・パート労働者が有給休暇を取得した場合の賃金の計算方法
- 通常の賃金から算出する
- 平均賃金から算出する
- 標準報酬日額から算出する
- 労働者の有給休暇取得の義務化とは
- 有給休暇の取得義務のある対象者
- 有給休暇管理簿の作成・保存の義務
- アルバイト・パートが有給休暇の取得申請をした際の注意点
- やむを得ない事情で時季変更権を使う場合
- アルバイトやパートが退職時に使い切れなかった有給休暇の消化を申し出てきた場合
- まとめ
- 有給休暇管理をもっとラクにする方法
- よくある質問
有給休暇はアルバイト・パートも取得可能
有給休暇とは、一定の要件を満たす労働者に対して付与する休暇であり、正式名称は「年次有給休暇」といいます。
有給休暇は要件さえ満たしていれば雇用形態に関係なく、アルバイトやパートなどのパートタイム労働者にも付与されます。
従業員が有給休暇を取得した日には賃金が発生します。基本的には1日単位での取得となりますが、会社の就業規則によっては時間単位や半日の取得も可能です。
また、会社側が有給休暇を取得する従業員に対して取得理由を聞いて取得を拒否したり、有給を取得した分の賞与を減らしたりといった従業員に不利益となる行為は禁止されています。
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有給休暇を付与する要件
有給休暇付与の要件は以下の2点です。以下の要件を満たしていれば雇用形態は関係なく、アルバイトやパートも付与の対象となります。
有給休暇を付与する要件
- 6ヶ月以上継続的に勤務している
- 全労働日の8割以上出勤した全ての労働者
有給休暇付与日数の計算方法
有給休暇の付与日数は、就業条件が所定労働時間が週30時間以上、週5日以上であれば基本の日数が付与され、基準以下である場合は比例付与の方式で計算します。
<有給休暇の付与日数(基本)>
勤務年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
所定労働時間及び所定労働日数が基準以下の場合
アルバイトやパートといった、所定労働時間が30時間未満かつ週の所定労働日数が4日以下の短時間従業員は、所定労働日数と勤務年数に応じた日数を付与します。
フルタイムの労働者と同様に「出勤日数÷所定労働日数」で算出し、8割以上(0.8以上)であれば有給を付与します。週の所定労働日数が決まっていない場合は、直近の6ヶ月の労働日数の2倍または前年の労働日数を基準に所定労働日数を計算します。
<短時間従業員の有給休暇の付与日数>
週所定の労働日数 | 1年間の 所定労働日数 | 有給休暇の付与日数(勤務年数ごと) | ||||||
0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年 以上 | ||
4日 | 169日 から 216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121日 から 168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
2日 | 73日 から 120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
1日 | 48日 から 72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
所定労働日数が週によって決まっている場合は「週所定労働日数」、決まっていない場合は「1年間の所定労働日数」で判断します。なお、所定労働日数は有給休暇付与時点の週所定労働日数(または一年間の所定労働日数)で計算します。
出典:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得」
フルタイムの労働者などの有給休暇付与日数について詳しく知りたい方は、別記事「有給休暇はいつ・何日もらえる?付与時期や計算方法を解説」をあわせてご確認ください。
有給休暇付与日数の計算における注意点
有給休暇は賃金の発生する休暇のため、出勤日数に含まれます。アルバイトやパートの人でも取得可能な産前産後休暇・育児休暇・介護休暇・労災による休暇も出勤日数としてカウントした上で、有給休暇付与日数を計算します。
欠勤と出勤日数に含まれる休暇を混同し、誤った計算をすることがないよう注意しましょう。
たとえば、10日付与されるはずの有給を半年ごとに分割して付与するなど、労働基準法の事項と比較し労働者の不利益になる変更は、就業規則に明記している場合であっても労働基準法違反となります。
また、有給休暇の有効期限は2年です。1年で使いきれなかった分は翌年に繰り越しが可能ですが、有効期限を超えた分は自動的に消滅します。労働基準法に準じた付与の場合、保持できる有給休暇は最大で35日です。
アルバイト・パート労働者が有給休暇を取得した場合の賃金の計算方法
時給や日給で働くアルバイト、パートの賃金の計算方法は以下の3パターンです。
- 通常の賃金から算出する
- 平均賃金から算出す
- 標準報酬日額から算出する
通常の賃金から算出する
所定労働時間が一定の労働者であれば、所定労働時間×時給など、勤務した場合に支払われる賃金を計算します。シフトが決まっている労働者であれば、勤務予定シフトの時間分で計算することもあります。
勤務予定シフトの時間分による賃金の算出は、1日の労働時間が一定の労働者に多く用いられる計算方法です。
平均賃金から算出する
労働基準法で定められている平均賃金の計算方法で算出された金額が、有給休暇利用時の賃金となります。以下の算出方法①②のうち、金額の高い方が平均賃金となります。
平均賃金の算出方法
① 過去3ヶ月間にその労働者へ支払われた賃金の総額 ÷ その期間の総日数
② 過去3ヶ月間にその労働者へ支払われた賃金の総額 ÷ その期間の実労働日数の60%
出典:厚生労働省「平均賃金(労働基準法第12条)」
標準報酬日額から算出する
標準報酬日額から有給休暇取得時の賃金を算出する場合は、従業員が得た給与などの報酬月額を1〜50の等級で区分した「標準報酬月額」から日割りし「標準報酬日額=標準報酬月額÷30」の計算式で支払う賃金を算出します。
アルバイトやパートの方の標準報酬月額の算定は4月から6月までの3ヶ月の支払基礎日数をもとに算定されます。また、支払基礎日数とは、報酬や賃金の支払い対象となる日数を指し、出勤日および有給取得日が含まれます。
<アルバイト・パートの標準報酬月額の算定>
支払基礎日数 | 標準報酬月額の決定方法 |
3ヶ月すべて 支払基礎日数が17日以上ある | 3ヶ月の報酬月額の平均額をもとに決定 |
3ヶ月のうち 1ヶ月でも支払基礎日数が17日以上ある | 17日以上の月の報酬月額の平均額をもとに決定 |
3ヶ月のうち 3ヶ月とも15日以上17日未満 | 3ヶ月の報酬月額の平均額をもとに決定 |
1ヶ月または2ヶ月は15日以上 17日未満の場合 (1ヶ月でも17日以上ある場合は除く) | 15日以上17日未満の月の報酬月額の平均額をもとに決定 |
3ヶ月とも15日未満の場合 | 従前の標準報酬月額で決定 |
この方法は、上記で紹介した通常の賃金、平均賃金をもとにそれぞれ有給休暇利用時の賃金を算出した場合に対して、有給休暇取得時の賃金が低くなる可能性があります。
そのため、標準報酬日額で有給休暇取得時の賃金を支払う旨、労使協定を締結しなければなりません。
なお、標準報酬月額は各都道府県によって異なるため、協会けんぽのホームページなどから居住している都道府県の標準月額報酬を確認しましょう。
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標準報酬月額とは?決め方や変更方法、計算方法をわかりやすく解説
労働者の有給休暇取得の義務化とは
2019年4月の労働基準法改正によって、労働者は付与された有給休暇を取得することが義務づけられました。有給休暇の取得義務がある対象者の要件とそれに伴う注意点について解説します。
有給休暇の取得義務のある対象者
有給休暇取得の義務化の対象となるのは、「年間の有給付与日数が10日以上の全従業員」です。会社は対象となる従業員に年間5日間の有給休暇を必ず取得させなければなりません。
アルバイトやパートを含む週4勤務の従業員も、10日の有給休暇を付与される勤務歴3年半以上であれば取得義務化の対象となります。
年間5日間の取得ができなかった従業員は違反者となり、会社側は違反者1名につき30万以下の罰金が科せられます。
出典:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得」
有給休暇管理簿の作成・保存の義務
会社側は従業員全員の有給休暇の取得状況を把握し、管理しなければなりません。有給休暇の取得状況を把握するには、従業員一人ひとりの有給休暇取得情報を記録する「年次有給休暇管理簿」が重要です。
年次有給休暇管理簿の保存義務期間は3年で、保存に関する罰則はありませんが、年次有給休暇管理簿の作成・保存は会社の義務です。正しい有給休暇管理のためにも、年次有給休暇管理簿の運用を徹底しましょう。
アルバイト・パートが有給休暇の取得申請をした際の注意点
従業員が有給休暇の取得申請をした際は、従業員が希望する日時を承認するのが原則ですが、やむを得ない理由で有給休暇を取得させることが難しい場合もあります。
申請された有給休暇に対して、時季変更権を使う場合や、有給休暇の買取を希望された場合の注意点について解説します。
やむを得ない事情で時季変更権を使う場合
有給休暇は従業員の請求した時季に取得させることが原則です。
しかし、代わりの人員の確保が難しく、正常な事業の運営が妨げられる可能性がある場合などのやむを得ない事情があるときに限り、会社側は従業員の請求した有給休暇の時季を変更させることが可能です。これを「時季変更権」といいます。
時季変更権の行使を判断する場合のみ、従業員へ有給休暇の取得理由の確認が可能ですが、確認の範囲は限られます。
時季変更権を行使した場合も、繁忙期が過ぎた後など、時季変更権を行使した理由が解消され次第、希望に応じて速やかに有給休暇を取得させる必要があります。
すでに繁忙期が定まっている場合は、事前に従業員へ有給休暇の取得が難しい可能性を伝え、繁忙期を避けて有給休暇の取得を請求をしてもらうよう促すことで、トラブル防止につながります。
アルバイトやパートが退職時に使い切れなかった有給休暇の消化を申し出てきた場合
退職などの理由で結果的に取得していない分の有給休暇を会社が金銭的に補償する「有給休暇の買取り」は認められています。有給休暇を買い取った場合、その代金は給料ではなく賞与として扱います。
ただし、あらかじめ有給休暇の買取りを予約することは、仕事を休ませて従業員をリフレッシュさせるという有給休暇の制度趣旨に反するため原則的に認められていません(行政通達による)。
まとめ
有給休暇は正社員だけでなく、要件を満たした全従業員に付与されるものです。
ただし、就業条件や就業規則によって賃金や付与日数が異なります。取得日数の管理不足や計算のミスは、労働基準法違反となる場合や従業員の満足度にも直結します。付与条件や賃金の計算方法をしっかりと把握し、適切な管理を行うことが大切です。
有給休暇管理をもっとラクにする方法
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「有給休暇義務化」に対応可能
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よくある質問
有給休暇を付与する要件とは?
有給休暇を付与する条件は「6ヶ月以上継続的に勤務している」「全労働日の8割以上出勤した全ての労働者」の2つです。詳しくは記事内有給休暇を付与する要件をご覧ください。
有給休暇付与日数はどう計算する?
有給休暇の付与日数は、就業条件が所定労働時間が週30時間以上、週5日以上であれば基本の日数が付与され、基準以下である場合は比例付与の方式で計算します。具体的な日数については記事内有給休暇付与日数の計算方法をご確認ください。