人事労務の基礎知識
有給休暇とは?有給休暇付与日数の計算方法を雇用形態別に詳しく説明します
最終更新日:2020/10/06
2020年9月現在、新型コロナウイルス拡大の影響を受け、さまざまな事業者が休業を余儀なくされています。そのため、従業員に特別休暇や有給休暇の取得をすすめる事業者も多くあります。年次有給休暇は労働基準法で労働者に認められた権利であり、出勤率などの条件を満たしていれば正規雇用、非正規雇用関わらず所定の日数を付与するように有給取得が義務付けられました。この記事では有給休暇の基礎知識、有給休暇の日数や計算方法について解説します。
目次
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有給休暇(年次有給休暇)とは
有給休暇とは、所定の休日以外に労働者が賃金を得ながら取得できる休暇です。事業所の規模や業種を問わず、労働基準法第39条で労働者に認められた権利ですので、就業規則等に規定がなくても、取得することが可能です。有給休暇の取得には事業者側の承認は不要であり、原則として利用の目的に制限はありません。
有給休暇を付与する条件を満たしていれば、企業側(事業主)は、正社員のみならず、契約社員や派遣社員、パートやアルバイトでも与える必要があります。なお、派遣社員の場合は、雇用関係がある派遣元事業主の側に付与する義務があります。
有給取得義務化とは?
働き方改革関連法により、2019年4月から、企業側(事業主)は10日以上有給休暇が付与された労働者に対し、有給休暇を1年以内に5日分取得させる義務が課せられました。
2019年4月からは、5日以上の有給を取得していない従業員に対し、「有給休暇を取得したい」という希望の有無にかかわらず、時期を指定して、業務命令を出して有給休暇を強制的に取得させなければならないのです(有給休暇を5日以上取得済みの従業員に対しては時季指定は不要です)。この義務に違反した場合には、「6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金」という罰則の対象になります。
関連記事:最低でも有給5日消化しないと罰則!? 有給休暇の取得義務化を分かりやすく解説
参考: 厚生労働省 年次有給休暇の時季指定義務
有給休暇を付与する条件
有給休暇を付与する基本的な条件や出勤率の計算方法を説明します。
有給休暇が付与される条件は
- 雇用した日から6ヶ月以上継続して勤務していること
- 全労働日の8割以上出勤していること
の2点です。また、出勤をしていなくても、在籍していれば、「継続して勤務している」とみなされます。派遣社員など短期の契約で雇用されている場合も、更新を繰り返して6ヶ月以上継続した勤務となれば、1の条件を満たすことになります。
出勤率の計算
全労働日の8割以上出勤しているかどうかを確認するため、出勤率を計算します。出勤率を計算するうえでの「出勤日」とは、所定休日を除く、労働をした日です。所定休日に休日出勤していても、全労働日には含まれないため、出勤日としてカウントはされません。
業務上に起因する負傷や疾病によって休業している期間、育児・介護休業法に基づく育児休業や介護休業、産前産後休業、年次有給休暇の取得日は、出勤日に含まれます。
また、生理休暇は労働基準法上は出勤日とされませんが、年次有給休暇の出勤率の計算において、出勤日に含めることは可能です。
雇用形態別有給休暇付与日数の計算方法
通常の労働者(週5日間フルタイム勤務)の場合
有給休暇は、前述のように全労働日の8割以上の出勤という条件を満たすと、雇用した日から6ヶ月後に10日付与されます。
その後の1年間で同様に8割以上の出勤率を満たすと、継続勤務1年6ヶ月で11日の付与となります。
翌年の継続勤務2年6ヶ月では12日、それ以降は毎年2日ずつ増えていき、6年6ヶ月以降の条件を満たした年は、年次有給休暇の付与は一律20日です。 定年退職した社員を嘱託として再雇用した場合は、継続した勤務とみなされるため、勤続年数は通算されます。アルバイトやパートから正社員へ転換したケースなど、雇用形態に変更があった場合も同様です。
通常の労働者の付与日数
継続勤務年数 | 6ヶ月 | 1年6ヶ月 | 2年6ヶ月 | 3年6ヶ月 | 4年6ヶ月 | 5年6ヶ月 | 6年6ヶ月 以上 |
有給付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
引用元:厚生労働省
パートタイム労働者(週4日以下・30時間未満勤務)の場合
アルバイトやパートなど、所定労働日数が少ない労働者も、出勤率などの条件を満たすと、年次有給休暇が比例的に付与されます。
たとえば、所定労働日数が週3日の場合、継続して6ヶ月勤務すると5日、1年6ヶ月の勤務で6日であり、6年6ヶ月での11日が限度です。
年次有給休暇のうち、消化できなかった日数は翌年に繰り越しとなりますが、2年間使用しないと時効により権利が消滅します。
週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の付与日数
週所定 労働日数 |
1年間の所定 労働日数 |
継続勤務年数 | |||||||
6ヶ月 | 1年 6ヶ月 |
2年 6ヶ月 |
3年 6ヶ月 |
4年 6ヶ月 |
5年 6ヶ月 |
6年6ヶ月 以上 |
|||
有給付与日数 | 4日 | 169日〜 219日 |
7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121日〜 168日 |
5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 | |
2日 | 73日〜 120日 |
3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 | |
1日 | 48日〜 72日 |
1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
引用元:厚生労働省
有給休暇は次年度に繰り越しが可能
年次有給休暇のうち、消化できなかった日数はすべて付与された日から2年以内であれば繰り越しが可能です。2年を経過した有給は時効により自動的に消滅します。
有給休暇(年次有給休暇)の管理
年次有給休暇の管理は、個別に管理する方法と、統一して管理する方法があります。個別に管理する方法では、中途入社の社員が多い企業では、年次有給休暇の発生日がそれぞれ異なるため、煩雑になりやすいのが難点です。
統一して管理する方法では、統一日を決めて一斉に年次有給休暇を付与しますが、勤務期間を切り捨てることは認められていません。
たとえば、4月1日を基準日とした場合では、1月1日に入社した人は6ヶ月経過していませんが、10日の年次有給休暇を付与することになります。
ただし、入社日によって不公平感が生まれることになりかねないため、基準日を年に2~3回設けるという方法もあります。
たとえば、「12月1日~3月31日入社は4月1日」、「4月1日~7月31日入社は8月1日」、「8月1日~11月30日入社は12月1日」という形です。
ただし、基準日が多いと事務処理が煩雑になりますので、事業所に合った形をとりましょう。
また、4月1日からの法改正により「年次有給休暇管理簿」の作成と3年間の保管が義務づけられました。会社は労働者ごとに取得日数などを決められた項目に応じて記録する必要があるので、併せて対応できるようにしましょう。
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まとめ
年次有給休暇の取得は労働基準法に基づいた労働者の権利ですので、行使の請求があったときには、希望する時季の取得を原則として認めなければなりません。
また、有給取得義務化により、1年以内に5日の有給取得が必須となりました。罰則が発生するので、企業側はもちろんですが、従業員の方も自身の有給日数を把握し、効率的に消化することを心がけましょう。
現在、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、休業を余儀なくされている事業者が多い状況にあります。出勤できない間は給料も支払われないため、労働者は有給消化などで対応しなければなりません。しかし、労働基準法により、事業者の都合で労働者を休業させた場合は、休業させた所定労働日について、平均賃金の6割以上の手当(休業手当)を支払わなければなりません。
しかし休業手当を受給するためには、労働者自身ではなく会社側の対応が鍵を握る現実が存在します。
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