人事労務の基礎知識

月額変更届とは? 社会保険の随時改定の条件や月額変更届の書き方・提出方法

昇給や降給などにより報酬が増減したとき、パートから正社員に雇用契約を変更したときなど、給与が大きく変わる場合は標準報酬月額の随時改定が必要になります。標準報酬月額の随時改定とは何か、どんなケースで被保険者の標準報酬月額変更届が必要になるのかをまとめました。

なお、健康保険の保険者(運営主体)には全国健康保険協会(協会けんぽ)と健康保険組合がありますが、ここでは協会けんぽのケースを中心にご説明します。

標準報酬月額の随時改定とは?

標準報酬月額の随時改定とは、標準報酬の月額変更のことです。

標準報酬月額は、通常は年に1回、7月に提出する基礎算定届により決められます。これを定時決定といい、4~6月の3ヶ月間の報酬総額から1ヶ月の平均額を求め、標準報酬月額が決定されます。

しかし、年の途中で昇給や降給、雇用契約の変更などで報酬額が大きく変わることがあります。そんなとき、標準報酬月額がそのままでは社会保険料額が実際に受け取る報酬に対して多すぎたり少なすぎたりすることになります。それを防ぐのが、標準報酬月額の随時改定です。随時改定の際には、月額変更届を提出する必要があります。

随時改定の条件

日本年金機構具体的には下記の条件がすべて当てはまれば随時改定の手続きが必要になります。

  1. 昇給又は降給等により固定的賃金に変動があった場合
  2. 変動月からの3か月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた場合
  3. 3か月とも支払基礎日数が17日以上である場合

随時改定の対象になる被保険者の具体例

月額変更届を提出するのは、上述の条件に当てはまり、被保険者の標準報酬が「2等級以上変動」した場合です。

「2等級以上変動」は、具体的には次のような場合に起こります。

  1. 昇給(ベースアップ)、降給(ベースダウン)
  2. 時給制・日給制などから月給制になったなど給与形態の変更があった場合
  3. 時間給・日給などの基礎単価が変わり賃金が変動した場合
  4. 請負給や歩合給制の単価や歩合率の変更があった場合
  5. 資格手当や役付手当、住宅手当、家族手当、通勤手当などの固定的な諸手当が新たに支払われることになった、もしくは支払手当額の変更があった場合
  6. 一時帰休(レイオフ)

随時改定の対象にならない被保険者

固定的賃金に変動はなく、時間外手当や一時的な手当など非固定的賃金の変動による報酬額の増減のみで2等級以上の差が生じた場合は、随時改定の対象とはなりません。

また、固定賃金が下がっても残業手当など非固定的賃金が増加して全体の報酬が増えた、反対に固定賃金が上がっても非固定的賃金が下がって全体の報酬が減ったなどの場合は、結果的に標準報酬月額に2等級以上の差が生じても随時改定を行いません。

2等級以上の差が生じるかどうかについては、全国健康保険協会が提供する保険料額表にてご確認いただけます。

等級表の例

随時改定の対象についての注意

1. 昇給や降給以外に通勤手当や家族手当など固定的に支給される各種手当の変更や、勤務形態の変更なども標準報酬月額を決定する際の対象になるため、日頃から注意しておきましょう。

2. 平成28年10月1日より、週所定労働時間および月の所定労働日数が正社員の4分の3未満の短時間労働者でも、常時501人以上の従業員がいる特定適用事業所に勤務する者は、一定の条件を満たすことにより社会保険の加入することとなりました。これにより被保険者となった人は、支払基礎日数が11日以上で随時改定が適用されることとなっています。

3. 標準報酬月額等級表の上限あるいは下限にあたる等級変更がある場合は、2等級以上の差が生じなくても随時改定の対象となることがあります。条件に当てはまる従業員がいたら、忘れずに「被保険者報酬月額変更届」を提出しましょう。

随時改定の留意事項などは日本年金機構のページを参照ください


月額変更届の提出

上述の通り、随時改定の必要が出た場合、次の定時決定を待たずに報酬月額変更届をできるだけ速やかに提出します。月額変更届を提出することによって本来支払うべき社会保険料額に変更されます。

月額変更届


月額変更届は、「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届」の略で、日本年金機構の都道府県ごとの事務センターまたは管轄の年金事務所に提出します。

提出方法は、郵送または窓口持参、電子申請などで、厚生年金基金や企業年金基金、健康保険組合に加入している事業所は、そちらにも決められた様式で提出します。

添付書類は原則として不要ですが、次のようなケースでは固定的賃金の変動があった月の前月から改定月の前月までの賃金台帳の写しや出勤簿の写しなどが必要です。

  1. 標準報酬月額にして5等級以上低下した場合
  2. 標準報酬月額の改定月の初日から起算して60日以上届け出が遅延した場合

月額変更届の書き方は、日本年金機構の報酬月額変更届用紙および記入方法を参考にしてください。

月額変更届を提出後、新しい保険料率で給与計算するのはいつから?

報酬月額変更届を提出後、標準報酬月額が改定されるのは「固定的賃金の変動があった月から連続する3ヶ月の翌月」から、つまり報酬の変動があったときから数えて4ヶ月目からです。社会保険料は翌月納付となっているので、標準報酬月額改定月の翌月(報酬の変動があった月から5ヶ月目)に支払われる給与から新たな保険料額となります。

ただし、給与からの社会保険料控除を「当月」としている事業所では、報酬の変動があったときから数えて4ヶ月目に支払われる給与から、新たな保険料額となります。

社会保険料が変更になる場合は、標準報酬月額変更により社会保険料が変更になる旨の通知書などを給与明細書に入れておきましょう。

随時改定による変更で改定される標準報酬月額は、改定月が6月以前の場合はその年の8月まで、改定月が7月以降の場合は翌年の8月まで適用されます。

申出書様式・添付書類は日本年金機構のページでご確認いただけます。

まとめ

従業員の報酬に2等級以上の変動があった場合は、随時改定による報酬月額変更届の提出が必要です。提出が遅れると、後から保険料の差額精算が生じる場合があります。そのようなことがないように、随時改定の条件に当てはまる従業員がいないか常に確認するようにしましょう。



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