社会保険料控除とは、その年の1月1日から12月31日までの1年間に納付した社会保険料の全額を所得から差し引くことで、所得税や住民税を軽減できる制度です。給与から天引きされる分は会社が計算しますが、個人で支払った分はご自身で申告しなければ控除は受けられません。
本記事では、社会保険料控除の対象や年末調整での申告書の書き方、計算方法、注意点を詳しく解説します。この記事を読めば、ご自身が申告すべきかどうかが明確になり、損をしないための正しい手続きができるようになります。
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目次
- 社会保険料控除とは
- 年末調整の書類作成や電子申告を効率化しませんか?
- 社会保険料控除が適用される対象者
- 社会保険料控除の対象となる保険料の種類
- 社会保険料控除の申告方法
- 控除証明書の提出が義務付けられている保険料
- 控除証明書の提出が不要な保険料
- 年末調整における社会保険料控除の申告書の書き方
- ①社会保険の種類
- ②保険料支払先の名称
- ③保険料を負担することになっている人の氏名
- ④あなたが本年中に支払った保険料の金額
- ⑤合計(控除額)
- 社会保険料控除額の計算方法
- 1年間の国民年金保険料を支払った場合
- 年の途中で転職した場合
- 年末調整で社会保険料控除を申告する際の注意点
- 退職後の再就職が年をまたいだ場合
- 被扶養者の公的年金から保険料が特別徴収されている場合
- まとめ
- 2025年の年末調整を簡単に行う方法
- よくある質問
社会保険料控除とは
社会保険料控除とは、その年の1月1日から12月31日までの1年間に納付した社会保険料を所得から控除する制度です。
年末調整では、「給与所得者の保険料控除申告書」の「社会保険料控除」の欄に必要事項を記入し、勤務先に提出することで控除適用の申告を行います。ただし、毎月の給与や賞与から天引きされた社会保険料に関しては、年末調整での申告は不要です。
給与所得者の場合、給与等から天引きされた社会保険料のほかに、個人で社会保険料を支払っていたり、同一生計の親族の社会保険料を支払っていたりした場合のみ、年末調整で申告を行います。
また控除対象となる社会保険料もいくつか種類があるので、自分が支払っている社会保険料が控除対象になるか事前に確認しておきましょう。
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社会保険料控除が適用される対象者
前述のとおり、自身の社会保険料に加えて配偶者や子どもなど、同一生計の親族の社会保険料を支払っている場合には親族分の社会保険料控除も適用されます。
同一生計と判断されるには、以下のいずれかの状態にあることをいいます。
同一生計に該当するか判断するポイント
- 同居の場合
日常生活にかかる費用を共有している - 別居の場合
生活費、学費、療養費などを常に送金している
学校や仕事の無いときには他の親族と同居している
つまり、「生活するために必要なお金を共有している」状態であれば、生計を一にしていると判断できます。
同一生計であり社会保険料を支払っている扶養家族がいる場合、年末調整の際に親族分の社会保険料控除も忘れずに申告しましょう。
子どもに仕送りをしている場合や、子どもが社会人になったばかりで収入が少ないといった事情で国民年金保険料を代わりに支払った場合なども、支払った方の社会保険料控除の対象に含めることができます。
社会保険料控除の対象となる保険料の種類
控除対象となる社会保険料は下表のとおりです。
| 名称 | 内容 |
|---|---|
| 健康保険料(協会けんぽ、健康保険組合) | 会社員などが加入する医療保険制度の保険料 |
| 国民健康保険料 | 主に個人事業主や、会社を退職した無職の期間中などに支払う地域の医療保険料 |
| 後期高齢者医療保険料 | 原則として75歳以上の高齢者が加入する医療保険制度の保険料 |
| 介護保険料 | 40歳以上65歳未満の現役世代や、65歳以上の高齢者が支払う介護介護保障のための保険料 |
| 厚生年金保険料 | 会社員や公務員が加入する公的年金制度の保険料 |
| 国民年金保険料 | 日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する年金保険料 |
| 国民年金基金の掛金 | 国民年金に上乗せして、個人事業主が厚生年金のような厚い年金を受け取るための積立金。 |
| 厚生年金基金の掛金 | 企業が国に代わって厚生年金の一部を運用する基金の掛金 |
| 雇用保険料 | 労働者が失業した際の手当(失業保険)や、育児休業給付などのために支払う保険料 |
| 国家公務員共済組合・地方公務員共済組合の掛金 | 公務員などが加入する共済組合の掛金 |
| 私立学校教職員共済の掛金 | 私立学校の教職員が加入する共済制度に支払う掛金 |
| 船員保険料 | 船員法に規定する船員として働く方が加入する、独自の社会保険制度の保険料 |
| 労働保険料(一人親方や特別加入者等の労災保険料) | 個人事業主(一人親方)や中小事業主などが、国の労災保険に特別加入して支払う保険料 |
社会保険料控除は1月1日から12月31日までに納付した保険料が対象となり、対象期間に実際に支払った金額、または給与や公的年金などから差し引かれた金額の全額が控除できます。
そのほか、以下の方法で支払った社会保険料も、社会保険料控除の対象です。
- 過去の保険料をまとめて支払った場合(その年に支払った社会保険料とみなされる)
- 翌年分の保険料を支払った場合(前納した期間が1年以内)
- 国民年金保険料の「2年前納」制度によって前納した場合
なお、「2年前納」制度で国民年金保険料を前納した場合は、各年分の保険料に相当する額を各年に控除することも可能です。
社会保険料控除の申告方法
社会保険料控除の適用を受けるには、年末調整の際に「給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記入し、勤務先に指定された期日までに提出する必要があります。
通常、給与所得者が給与から差し引かれた健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料については、会社側で把握しているため申告する必要はありません。
ただし、以下のようなケースに該当する場合は年末調整時に申告が必要です。
- 転職して次の会社で働き始める前に自身で社会保険料を支払った
- 国民年金に加入している20歳以上の家族等の国民年金保険料を支払った
上記のように、会社の給与から差し引かれた社会保険料以外で社会保険料や健康保険料などを支払った場合は、申告することで社会保険料控除が受けられます。
なお、個人事業主やフリーランスは、毎年2月16日〜3月15日の確定申告で社会保険料控除を申請します。また、年の途中で退職して年明けに再就職した場合も、自ら確定申告を行う必要があります。詳しくは、「退職後の再就職が年をまたいだ場合」で解説します。
控除証明書の提出が義務付けられている保険料
社会保険料控除のうち、以下の保険料や掛金を年末調整または確定申告で申告する際には、法律に基づき「控除証明書」等の原本を申告書に添付(またはe-Tax等での提示)することが義務付けられています。
| 国民年金保険料 | 毎年10月〜11月頃(その年の10月以降に初めて納付した場合は翌年2月頃)に、日本年金機構からハガキまたは封書で「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」が自宅へ届く |
|---|---|
| 国民年金基金の掛金 | 国民年金基金連合会から、秋頃に「社会保険料控除証明書」が送付される |
これらを申告する際は、証明書の原本が手元にない限り、控除を受けられません。
紛失してしまった場合は、速やかに年金事務所、または国民年金基金連合会の窓口・Webサイトから再発行の手続きを行ってください。再発行には通常1〜2週間程度かかるため、年末調整や確定申告の時期に間に合うよう、早めに行動しましょう。
控除証明書の提出が不要な保険料
一方で、以下の保険料については、年末調整や確定申告の際に控除証明書の添付は不要とされています。
- 国民健康保険料
- 介護保険料
- 後期高齢者医療保険料
また、会社員の毎月の給料から差し引かれている健康保険、厚生年金、雇用保険についても、会社側が把握しているため、年末調整での書類添付や申告の記入自体が不要です。
年末調整における社会保険料控除の申告書の書き方
- 社会保険の種類
- 保険料支払先の名称
- 保険料を負担することになっている人の氏名
- あなたが本年中に支払った保険料の金額
- 合計(控除額)
本記事では、申告者本人が本人とその配偶者の社会保険料を以下のとおりに支払ったケースを想定して解説します。
- 申告者本人
加入保険:健康保険(協会けんぽ)
保険料:15万円(退職後の継続加入分) - 配偶者
加入保険:国民健康保険
保険料:15万円
①社会保険の種類
健康保険、国民健康保険、厚生年金、国民年金、介護保険、高齢者医療保険などの社会保険の種類を記入する欄です。記入例のように「健康保険」「国民健康保険」と記入しましょう。
②保険料支払先の名称
保険料を支払った機関・法人名を記入する欄です。
今回のケースでは、本人分は退職後に継続して加入していた「全国健康保険組合(協会けんぽ)」を、配偶者の分は国民健康保険の支払い先が居住する東京都品川区であるため、「品川区」と記入します。
③保険料を負担することになっている人の氏名
自身の氏名および、同一生計の親族の保険料を支払っていた場合には、その親族の氏名を記入します。
2023年分までは親族との続柄を記載することになっていましたが、2024年分からは、この続柄の記載が不要になっています。
④あなたが本年中に支払った保険料の金額
本年中に支払った保険料の合計額を記入する欄です。その年に自分で支払った社会保険料の金額を確認し、記入しましょう。給与から天引きされた社会保険料の記載は不要です。
2026年度の場合、「2026年1月1日〜12月31日までに自分で支払った社会保険料の金額」を確認・記入します。
⑤合計(控除額)
ここには社会保険料控除分の合計額を記載します。
そのほか、年末調整の各申告書の書き方や、2026年分以降の変更点について知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
社会保険料控除額の計算方法
社会保険料控除は、ほかの所得控除と異なり控除額に上限がありません。1年間に支払った社会保険料の全額が所得から控除されます。
1年間の国民年金保険料を支払った場合
たとえば、2026年の1月から12月まですべての月で国民年金に加入し国民年金保険料を支払っていた場合、その分の控除額は以下のように計算します。
2026年1~3月:16,520(円) × 3ヶ月 = 49,560(円)
2026年4~12月:16,980(円) × 9ヶ月 = 152,820(円)
49,560(円) + 152,820(円) = 202,380(円)
上記のとおり、2026年の1年間国民年金に加入していた場合、国民年金保険料分の社会保険料控除額は202,380円となります。
年の途中で転職した場合
また、2026年8月(1日から31日の間)に前の会社を辞め、同年の10月に再就職したとします。次の会社に入るまでの2ヶ月間の国民年金保険を自分で支払った場合、控除額の計算式は以下のとおりです。
16,980(円) × 2ヶ月 = 33,960(円)
この場合、転職して次の会社に入る前に国民年金保険料として支払った2ヶ月分の社会保険料(3万3,960円)を、転職先で受ける年末調整で申告することで控除を受けられます。
年末調整で社会保険料控除を申告する際の注意点
社会保険料控除を申告する際には、年末調整で対応できないケースや控除対象外となるケースがあります。とくに以下の2つに該当する場合には、注意が必要です。
- 退職後の再就職が年をまたいだ場合
- 被扶養者の公的年金から保険料が特別徴収されている場合
自分の退職と再就職をした時期、そして被扶養者が公的年金を受給しており、その年金から国民健康保険料や介護保険料などが自動的に差し引かれて(特別徴収されて)いないかを確認することが重要です。
退職後の再就職が年をまたいだ場合
前述のとおり、退職後に自分で国民年金保険料を支払い、その年内に再就職した場合は転職先での年末調整の際に社会保険料控除の申告を行うことで控除が受けられます。
しかし、退職後に年をまたいで再就職した場合は注意が必要です。
たとえば、2026年9月30日に退職した後、翌年2027年3月に再就職するとします。
この場合、転職先に入社した時点で前年の年末調整の期間を過ぎているため、退職後の10~12月末までに自分で支払った社会保険料はもちろん、前職の給与から天引きされた分についても自分で確定申告をしなければなりません。
前職で給与から天引きされた社会保険料(今回の例では2026年1月〜9月分)は、退職時に発行される源泉徴収票を参照します。
確定申告時にその年中に自身で支払った国民年金保険料(今回の例では2026年10月〜12月分)を証明するためには、日本年金機構から届く「控除証明書」を添付する必要があります。証明書は、なくさないよう確定申告の手続きが終わるまで大切に保管しておきましょう。
今回の例の場合、社会保険料控除の申告時期や方法についてまとめると以下のようになります。
| 2026年の社会保険料 ※前職の給与から差し引かれた分(1月〜9月)と、退職後自身で支払った分(10月〜12月) | 自身で確定申告を行う (申告期間 2027年2月16日(火)〜3月16日(火)) |
|---|---|
| 2027年の社会保険料 ※再就職までに自身で支払った分(1月〜2月)のみ | 再就職後の勤務先での年末調整時に申告 |
被扶養者の公的年金から保険料が特別徴収されている場合
介護保険料などの社会保険料が、自身の扶養に入っている人(被扶養者)の公的年金から特別徴収されている場合、その社会保険料を支払ったのは被扶養者であるとみなされます。
つまり、申告者本人が支払った社会保険料ではないため、申告者の社会保険料控除の対象にはなりません。
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まとめ
社会保険料控除は、その年の1月1日から12月31日までに納付した年金保険料や健康保険料などの社会保険料を所得から控除する制度です。対象期間に支払った金額、または給与や公的年金などから差し引かれた金額の全額を控除できます。
控除の適用を受けるためには、年末調整時に申告書を勤務先へ提出する必要がありますが、給与から天引きされた社会保険料については申告しなくても控除対象として精算されます。
年末調整における社会保険料控除の申告は、自分で支払った社会保険料のみが対象となることを理解しておきましょう。
よくある質問
社会保険料控除の金額は?
その年の1月1日から12月31日までに納付した保険料が対象となり、対象期間に支払った金額、または給与や公的年金などから差し引かれた金額の全額が控除されます。
詳しくは記事内「社会保険料控除とは」を参考にしてください。
社会保険料控除の申告方法は?
年末調整の際に「給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記入し、提出すれば控除を受けられます。なお、給与から天引きされた社会保険料については、年末調整時に申告する必要がありません。申告しなくても控除対象とみなされます。
詳細は記事内「社会保険料控除の申告方法」をあわせてご覧ください。
社会保険料控除の対象になるのは?
社会保険料控除の対象になるものは、1月1日から12月31日までに納付した保険料で、対象期間に実際に支払ったもの、また、給与や公的年金などから差し引かれたものが該当します。
社会保険料の詳細は、記事内の「社会保険料控除の対象となる保険料の種類」をご覧ください。


