人事労務の基礎知識

社会保険とは? 雇用保険とはなにが違う?内容と加入条件の違い

公開日:2020/02/02
最終更新日:2021/05/25

監修 飯塚 知世 社会保険労務士

社会保険とは、健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の総称のことですが、主に会社員を対象とした健康保険や厚生年金保険を指すこともあります。

今回は、健康保険と厚生年金保険をまとめたものを「社会保険」として、「雇用保険」とどう違うのかを確認していきましょう。

社会保険とは? 雇用保険とはなにが違う?内容と加入条件の違い

目次

社会保険の手続きや保険料の計算がラクに

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社会保険と雇用保険の違いとは

社会保険も雇用保険も社会保障制度の一部であり、従業員の生活の一部を保障するという点では同じです。しかし、実際の目的や内容は全く異なります。

取り扱う保険内容の違い

従業員を雇用する際に加入する保険には、代表的なものとして「健康保険」「厚生年金保険」「雇用保険」「労災保険」の4種類があります。

健康保険や厚生年金保険は「社会保険」、雇用保険や労災保険は「労働保険」と呼ばれています。

<社会保険と労働保険がそれぞれで取り扱う保険内容>

社会保険 労働保険
取り扱う保険 健康保険 厚生年金保険 雇用保険 労災保険

雇用保険と労災保険からなる「労働保険」は、労働者の生活と雇用を守るための国の制度です。

なお介護保険は、介護を必要とする高齢者を社会全体で支えるために2000年4月1日に施行された制度です。40歳以上の人は介護保険への加入と保険料の負担が義務化され、介護が必要になった時には自己負担1割(65歳以上の人は所得によって異なる)で介護サービスを利用することができます。

参考:厚生労働省「公的介護保険制度の現状と今後の役割

【関連記事】
労働保険とは?加入対象から加入方法、計算方法まで解説
介護保険とは?計算方法や第1号・第2号被保険者など徹底解説

社会保険(健康保険と厚生年金保険)とは

※ここでいう社会保険とは、健康保険や厚生年金保険のことを指します。

健康保険の恩恵を受けている人は特に多いと思います。例えば、風邪などの病気で病院を受診した場合、その費用の自己負担は3割(小学生未満と70歳~74歳が2割、75歳以上が1割)となり、残りは健康保険が負担してくれます。

日本の医療保険制度の仕組み


引用:日本医師会「日本の医療保険制度の仕組み

また、このように健康保険は医療費の一部を負担してくれるだけでなく、病気やケガ、出産などで一時的に働けなくなった場合にも給付金や保障が受けられるのです。
参考:全国健康保険協会「健康保険の給付について

厚生年金保険は、老後の生活を保障する「老齢年金」が有名です。その他にも、病気やケガで障害を負った人に支給される「障害年金」や、厚生年金を支払っている被保険者が死亡したときに遺族に支給される「遺族年金」などがあります。

これらの年金は、予測できない生活上のリスクに備えるための保障を目的としています。

まとめると、社会保険の目的は、誰にでも起こりうる病気やケガ、そして一定の年齢に達したときの生活を保障することにあります。

参考:
・日本年金機構「老齢年金
・日本年金機構「障害年金
・日本年金機構「遺族年金

雇用保険とは

一方、雇用保険は、労働者が失業した場合や雇用の継続が困難となった場合などに必要な給付を行い労働者の生活と雇用の安定を図ること、労働者の再就職を支援・促進することを目的としています。

一時的に仕事ができなくなったり、就職できなくなったりしたときに、失業時の基本手当や教育訓練給付給付金などが支給されます。

労働者の生活及び雇用の安定と就職の促進のために、失業された方や教育訓練を受けられる方等に対して、失業等給付を支給します。また、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進等をはかるための二事業を行っています。

社会保険である健康保険と同様に、傷病手当金の給付もありますが、医療費の負担軽減を目的としたものではありません。これは、再び働くために一時的に仕事を休んでいる間の生活を保障することを目的としたもので、社会保険とは内容が異なります。

【雇用保険制度の体系】

雇用保険制度の体系


引用:厚生労働省「雇用保険制度の体系

社会保険と雇用保険とでは加入条件も違う

社会保険と雇用保険は、給付内容は似ているが目的が異なると説明してきましたが、目的だけでなく、事業所によって加入条件も異なります。そのため、雇用形態や事業所によっては、雇用保険には加入していても社会保険には加入していないということも珍しくありません。

社会保険の加入条件

社会保険のうち、健康保険では、事業所を単位に適用されます。健康保険の適用を受ける事業所を適用事業所といい、法律によって加入が義務づけられている「強制適用事業所」と、任意で加入する「任意適用事業所」の2種類があります。

強制適用事業所とは、事業主や従業員の加入意思、従業員数や事業の規模・業種に関係なく、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が義務付けられているすべての事業所のことをいいます。

地方公共団体や株式会社、合同会社などの法人は、従業員の数に関係なく「強制適用事業所」となるので、たとえ社長一人のみの企業であっても社会保険に加入する義務があります。

また、個人事業主の場合は製造業、鉱業、土木建築業、電気ガス事業、清掃業、運送業などで従業員を5人以上常時雇用している事業所が強制適用事業所となります。

強制適用事業所は、次の(1)か(2)に該当する事業所(事務所を含む、以下同じ)で、法律により、事業主や従業員の意思に関係なく、健康保険・厚生年金保険への加入が定められています。

(1)次の事業を行い常時5人以上の従業員を使用する事業所
a製造業/b土木建築業/c鉱業/d電気ガス事業/e運送業/f清掃業/g物品販売業/h金融保険業/i保管賃貸業/j媒介周旋業/k集金案内広告業/l教育研究調査業/m医療保健業/n通信報道業など

(2)国又は法人の事業所
常時、従業員を使用する国、地方公共団体又は法人の事業所

一方、常時使用する従業員が5人未満の個人事業所や、農林水産業や飲食業、理美容業、士業、デザイン業などの個人事業所であれば従業員数に関係なく任意適用事業所となります。

なお、任意適用事業所の従業員の半数以上が適用事業所になることに同意すれば、社会保険に加入することができます。

任意適用事業所とは、強制適用事業所とならない事業所で厚生労働大臣(日本年金機構)の認可を受け健康保険・厚生年金保険の適用となった事業所のことです。

事業所で働く半数以上の人が適用事業所となることに同意し、事業主が申請して厚生労働大臣(日本年金機構)の認可を受けると適用事業所になることができ、働いている人は全員〔被保険者から除外される人を除く〕が加入することになります。(任意適用事業所の場合、健康保険のみ・厚生年金保険のみのどちらか一つの制度のみ加入することもできます。)


次に、従業員個人の適用条件について見ていきましょう。以下の条件を満たさない方は、国籍、年齢、雇用形態、報酬額などは問わず、社会保険の加入対象となります。

  • 週の所定労働時間が20時間未満であること
  • 賃金の月額が8.8万円未満であること
  • 学生
  • 1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満、1カ月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満、またはその両方
また、労働時間が常時雇用者の4分の3未満の短時間労働者でも、以下の条件を満たせば社会保険の加入対象になります。

厚生年金保険の被保険者数が常時501人以上の事業所の場合

  • 労働時間が週20時間以上
  • 月額賃金8.8万円以上(年106万円以上)
  • 雇用期間が1年以上見込まれること
  • 学生ではないこと

厚生年金保険の被保険者数が常時500人以下の事業所の場合

  • 労使の合意があること(従業員の半数以上と事業主の同意)
  • 前項4つの条件を満たすこと

なお、「国に属する事業所」は平成28年10月から、「地方公共団体に属する事業所」は平成29年4月から、前項4つの条件を満たせば被保険者数に関わらず社会保険加入の対象となります。

参考:日本年金機構「事業主の皆さまへ 平成29年4月から短時間労働者に対する適用対象が広がります

また、法改正により、令和4年10月から特定適用事業所の適用要件が「501人以上の適用事業所」から「101人以上の適用事業所」へ、短時間労働者の雇用期間の要件については「雇用期間が1年以上見込まれること」から「雇用期間が2ヶ月以上見込まれること」に改正されます。

参考:日本年金機構「令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大

雇用保険の加入条件

雇用保険は、社会保険に比べて加入条件が広くなっています。まず、労働者を一人でも雇っていれば、その業種や規模などに関係なく雇用保険の加入手続きが必要となります。

従業員個人の適用基準は、以下に該当する場合です。

  • 雇用期間が31日以上見込まれること
  • 労働時間が週20時間以上
  • 学生や顧問など適用除外者でないこと
基本的には、1日~数週間といった短期間の雇用の場合や短時間雇用ではない場合は、雇用保険に加入する必要があります。

(1)31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること。具体的には、次のいずれかに該当する場合をいいます。

  • 期間の定めがなく雇用される場合
  • 雇用期間が31日以上である場合
  • 雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合
  • 雇用契約に更新規定はないが同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある場合 ( 注 )
    (注)当初の雇入時には31日以上雇用されることが見込まれない場合であってもその後、31日以上雇用されることが見込まれることとなった場合には、その時点から雇用保険が適用されます。
(2)1週間の所定労働時間が20時間以上であること。

社会保険と雇用保険それぞれが未加入だった場合

さて、適用事業所であり、従業員が社会保険や雇用保険の加入条件を満たしていれば、各種保険に加入する義務があると説明してきました。しかし、加入義務があるにもかかわらず、加入していなかったというケースも少なくありません。

事業所が社会保険に加入する条件を満たしているにもかかわらず、社会保険に加入しないのは違法です。零細企業などで未加入の企業が少々見受けられますが、年々取り締まりが非常に厳しくなってきています。企業が処罰されるだけでなく、事業主は懲役刑などの刑事罰に加え、延滞金や課徴金が課せられることもあります。

また、年金事務所の調査などで、社会保険に加入義務のある従業員が未加入であることが判明した場合、最大2年間さかのぼって社会保険料をまとめて支払わなければならないリスクもあります。

未加入であるということがわかった場合は、早急に以下の専門機関に相談しましょう。

・社会保険のうち健康保険であれば「全国健康保険協会
・厚生年金保険であれば「日本年金機構
・雇用保険であれば「ハローワーク

雇用に関する問題であれば労働基準監督署なのでは?と思う人もいるかもしれませんが、実際の加入や給付はそれぞれ違った機関が行うことになるため、労働基準監督署では詳細に対応することができません。それぞれの機関へ相談しましょう。

【関連記事】
従業員が入社する際の手続きは? 雇用時の必要書類や保険の加入条件や税金などをまとめて解説

なお、新型コロナウイルス感染症の影響で厚生年金保険料等の納付が一時的に困難となり、猶予制度(「特例」、「換価の猶予」、「納付の猶予」)の利用を希望される方は以下のサイトをご確認ください。

・日本年金機構「新型コロナウイルス感染症の影響による納付の猶予(特例)
・厚生労働省「厚生年金保険料等の猶予制度について

まとめ

社会保険と雇用保険では、目的も異なれば加入条件も異なります。社会保険に比べて、雇用保険は加入対象者の範囲がやや広いのが特徴です。短期間雇用や短時間雇用の従業員がいる場合は、個別に加入条件を確認する必要があります。

もし、従業員が加入していないことがわかったら、早めに専門機関に相談することをおすすめします。

監修 飯塚 知世 社会保険労務士

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