人事労務の基礎知識

2024年問題で給料が減る?影響と対策を分かりやすく解説

最終更新日:2024/02/27

2024年問題で給料が減る?影響と対策を分かりやすく解説

2024年問題により運送業・物流業における売上や利益の減少が懸念され、ドライバーの給与が減少することが問題視されています。労働時間などが短くなるメリットはあるものの、給与面が減少するデメリットも見逃せない問題です。

今回は、2024年問題によるドライバーの給与の変化や、ドライバーの給与を上げるために会社が実施すべき対策について解説します。

目次

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2024年問題でドライバーの給与はどう変わる?

2024年4月からトラックドライバーの時間外労働に上限が設定されることに伴い、ドライバーの給料体系に変化が生じる可能性があります。現在、トラックドライバーの給与は時間外労働が常態化していることを前提として設計されているのが一般的です。

そのため2024年問題に関連する規制によって、ドライバーの給与がどのように変動するかは、各ドライバーの働き方や雇用契約によって異なります。給与が増加する可能性もあれば、減少する可能性もあります。

給与が増加するパターン

2024年からの規制改正で、中小企業での月60時間以上の残業に対する割増率が50%になりました。そのため、月60時間以上の残業をしているドライバーのうち、割増率が50%未満の人は給料が増加する可能性があります。

さらに物流業界ではすでにドライバー不足が慢性的な問題となっており、2024年問題に伴う人材不足の解決策として企業がドライバーの給料を引き上げることも考えられます。

給与が減少するパターン

2024年4月から適用される働き方改革関連法により、トラックドライバーの年間の時間外労働時間が960時間に制限されます。これにより、これまで年間960時間以上の時間外労働をしていたドライバーは、残業時間が減少し、結果として給料の減少に繋がる場合があります。

さらに、労働時間の上限設定により、運送できる荷物の量が減少することが予想され、運送企業の売上に影響を及ぼす可能性があります。企業の利益が減少することでドライバーの給料に影響が出ることも考えられます。

ドライバーの給与は何時間分減る?

2024年問題により、ドライバーの給与は何時間分減るのでしょうか。以下の条件で、計算をしてみましょう。

働き方改革関連法適応前の1日の拘束時間の上限を13時間とした場合、まず以下の式で時間外労働の条件が算出できます。

13時間 - 8時間(通常の勤務) = 5時間(時間外労働の上限)

続いて、1ヶ月の勤務日数を22日間と想定し、1ヶ月の時間外労働時間を算出しましょう。

5時間 × 22日 = 110時間

算出した時間外労働時間を1年分(12ヶ月分)の数値に置き換えると、1,320時間という数値が算出されます。

110時間 × 12ヶ月 = 1,320時間

2024年問題に関する改正で年間の時間外労働は上限960時間に変更されるため、以下の式を使って時間外労働時間がどの程度短くなるのかを把握しましょう。

1,320時間 - 960時間 = 360時間

つまり、今まで勤務日に平均5時間の時間外労働をしていたドライバーは、2024年問題により年間で360時間分ほど残業代が減ると想定されます。

2024年問題とは

「2024年問題」とは、2024年4月1日から働き方改革関連法に基づき運送・物流業界に影響を及ぼすさまざまな問題のことです。働き方改革関連法の改正により、ドライバーの年間の時間外労働の上限が960時間に設定されます。

また、この規制が実施されることにより、企業の売上減少やドライバーの収入減少が懸念されています。

時間外労働時間の上限

2024年問題に伴う変更の一環として、ドライバーの時間外労働の年間上限が960時間に設定されます。これにより、1ヶ月あたりの時間外労働の平均は平均して約80時間となりますが、1ヶ月ごとの具体的な時間外労働の上限は規定されていません。

2024年問題で想定されるドライバーのメリット

2024年問題により想定されるドライバーのメリットには、以下のポイントが挙げられます。

2024年問題で想定されるドライバーのメリット

  • 労働時間の明確化
  • 運転の中断は原則休憩となる
  • 休息時間の増加
  • 待機時間の減少

労働時間の明確化

2024年問題の影響で、行政の監査において労働時間管理が以前よりも厳しくチェックされることが予想されます。企業が労働時間を適切に把握し管理していない場合、行政処分の対象となる可能性があります。

この変化により、従来あいまいだった労働時間が、より明確に定義されることが期待されるでしょう。

運転の中断は原則休憩となる

2023年3月末までの法律では、連続運転時間(4時間)の途中で行われる「運転の中断」(合計30分)は「運転から離れていれば作業をしても良い」とされていました。しかし、新しい基準ではこれが「原則として休憩」に変更されます。

これにより、運転の中断時に従来行われていた荷積みや荷卸しなどの作業が軽減される、または休憩時間が別途確保されることが予想されます。

休息時間の増加

新しい改善基準告示により、1日の最大拘束時間(労働時間と休憩時間を合わせた時間)が従来の16時間から1時間短縮され15時間に、また14時間を超えられるのは週に2回まで(目安)に制限されます。さらに、労働基準法の改正に伴い、年間960時間を超える時間外労働が制限されるため、月平均80時間以内の残業を目指すことが必要になります。

また、終業から翌日の始業までの休息期間が最低9時間以上に設定されることが義務化されました。長距離運行(450km以上)の場合、一度でも休息期間が9時間未満の運行があった場合、運行後に12時間以上の休息を取ることが義務付けられます。これにより、自宅での睡眠時間が増えることが期待されます。

待機時間の減少

ドライバーの業務において最も非効率的とされる、待機時間の短縮が進むことも期待されています。

労働基準監督署は、待機時間の長い荷主に対して直接ヒアリングし、改善を要請する方針を定めており、既に各県の労働局では「荷主特別対策チーム」が設置されました。

待機時間が減少すれば、ドライバーの負担軽減につながると考えられるでしょう。

2024年問題で想定されるドライバーのデメリット

2024年問題により想定されるドライバーのデメリットとして、収入の減少が挙げられます。その原因として上述した残業時間の減少が挙げられるだけでなく、2024問題に対応する企業の業績減少の可能性が挙げられるためです。

収入の減少

2024年問題によるドライバーの収入減少は、勤務時間の制限と企業の業績変化が主な原因です。

まず、勤務時間に関連して時間外労働の上限が設定されるため、これまでの残業時間に依存していた給与の一部が減少することが予想されます。

企業の業績に関する変化については、ドライバー不足や残業時間の上限による生産性の低下が原因で、売上が減少する可能性があります。

また、月60時間以上の残業に対する割増率が増加することに伴う人件費の増加が、利益減少につながることも懸念されるでしょう。これらの状況により、ドライバーの賃金を上げることが難しくなる可能性も否定できません。

ドライバーの給料を上げるために企業側が行うべき対策

2024年問題には、ドライバーの収入減少という非常に大きなデメリットがあります。ドライバーの給与を上げるために企業が行うべき対策について解説します。

業務効率化を図る

業務効率化への取り組みを行うことで、不要な業務コストを削減し、結果としてドライバーの給与増加を可能にします。特に効果的なのが、IT技術の活用です。

たとえば、配車計画や輸送計画の業務は従来、従業員が多くの時間を費やし作成しており長時間労働の一因にもなっていました。しかし、これらのプロセスをITツールを用いて自動化することで、大幅な時間短縮が可能になります。

加えて、勤怠管理システムを導入することで、労働時間の管理における正確性の向上や、給与計算の効率化に寄与します。このような施策で手間のかかる作業を減らし、全体の業務効率を高めることでその分の予算を給与に充てられるでしょう。

荷主への運賃交渉を行う

企業には、荷主との交渉を通じた運賃の値上げによって利益を増加させ、ドライバーの給与をアップさせることが求められます。

かつては荷主がより強い立場にあり、運送事業者は不利な条件を受け入れざるを得ない状況が多く見られました。しかし、2020年4月に国が標準的な運賃を設定したことで、運送事業者が適正価格での交渉を行いやすくなっています。

さらに、運賃以外にも、従来多くの場合無料で行われていた荷役作業や付帯業務についても、適切な料金を請求することが重要です。これらの取り組みにより、企業はより良い経済的状況を実現し、ドライバーの給与増加に寄与することができます。

雇用条件を改善しドライバーを確保する

雇用条件を改善しドライバーを確保することで、より多くの業務を引き受けることも給料を上げるのに有効な対策です。

物流業界では扱う荷物の量が年々増加しているにもかかわらず、運送業界では人手不足が問題となっています。ドライバーやトラックの確保に成功すれば、仕事を受け入れる機会は豊富にある状況です。

経営上の事情により、ドライバーの給与を上げたり、労働環境を改善したりするのが難しい場合もあるかもしれません。しかし、待遇の向上を図ることでドライバーの確保につながり、結果として多くの業務を受注できるようになり、企業の状況が改善する可能性があります。

特に、若い世代が魅力的な将来性を感じられる雇用条件の提供が重要です。

まとめ

2024年問題は、労働時間の明確化や休息時間の増加といったメリットがあります。一方、運送業や物流業の売上・利益の減少によりドライバーの給与が下がると懸念されているのも、2024年問題の特徴です。割増賃金の増加という側面はあるものの、時間外労働時間が960時間になることで残業時間が少なくなるため、給与が減少する可能性は低くはありません。

2024年問題で懸念されるドライバーの給与減少、およびそれに伴うドライバーの離職を食い止めるため、企業にはさまざまな対策の考案・実践が求められます。IT技術の活用による業務効率化や荷主への運賃交渉、雇用条件の改善によるドライバーの確保など、経営状況も踏まえて対策を行うことが大切です。

よくある質問

2024年問題でドライバーの給料はどう変わる?

時間外労働に上限が設定されることに伴い、ドライバーの給与は増加・減少いずれの可能性も考えられます。

詳しくは記事内「2024年問題でドライバーの給与はどう変わる?」をご覧ください。

ドライバーの時間外労働の上限は?

2024年4月より、ドライバーの時間外労働は960時間が上限とされます。

詳しくは記事内「時間外労働時間の上限」をご覧ください。

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