人事労務の基礎知識

介護保険料の計算方法まとめ!制度の概要や計算例を解説

監修 染谷 優(そめや ゆう) 社会保険労務士法人 BIZサポート

介護保険料の計算方法まとめ!制度の概要や計算例を解説

介護保険料とは、介護保険制度の運用に必要な費用をまかなうために、40歳以上の国民が納める保険料のことです。介護保険の被保険者は年齢によって「第1号被保険者」「第2号被保険者」と区別され、それぞれで保険料の計算方法も異なります。

本記事では、介護保険の概要とともに、介護保険料の計算方法をパターン別に解説します。

▶︎ 社会保険の計算方法については、まずはこちらの記事!

社会保険料の計算方法まとめ!算出方法や賞与についてもわかりやすく解説

目次

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介護保険とは

介護保険とは、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みをつくるため、2000年4月1日から施行された制度のことです。国内人口の高齢化が進むにつれ、介護に対するニーズが高まったことを受けて創設されました。

介護保険は、要介護認定を受けた対象者が介護サービスを利用した際に給付を受けられる仕組みで、利用者負担が基本的に1割となります。ただし、利用者に一定以上の所得がある場合の負担割合は2割または3割です。

なお、残りの9割の財源は公費50%と保険料50%で構成されています。

第1号被保険者と第2号被保険者の違い

介護保険の被保険者は、以下のとおり年齢によって第1号被保険者と第2号被保険者に区分されます。

  • 第1号被保険者:65歳以上の者
  • 第2号被保険者:40歳から64歳までの医療保険加入者

第1号被保険者と第2号被保険者には、介護サービスを利用できる条件(受給条件)のほか、保険料の算出方法や納付方法などに違いがあります。

それぞれの主な違いは下表のとおりです。


第1号被保険者第2号被保険者
対象者65歳以上の者40歳から64歳までの医療保険加入者
受給条件要介護状態:寝たきり、認知症等で介護が必要な状態
要支援状態:日常生活に支援が必要な状態
要介護、要支援状態が、末期がん・関節リウマチ等の加齢に起因する疾病(特定疾病)による場合に限定
保険料負担市町村が徴収
(原則、年金から天引き)
医療保険者が医療保険の保険料と一括徴収

出典:厚生労働省「介護保険制度の概要」

介護サービスを受けられる要件

第1号被保険者は原因を問わず、要介護あるいは要支援状態と認定されれば介護サービスを受けられます。

一方、第2号被保険者の介護サービスの利用は、末期がんや関節リウマチといった、加齢に起因する疾病(特定疾病)により要介護(要支援)認定を受けたときに限られます。


出典:厚生労働省「介護保険制度の概要」

介護保険料の納付方法

第1号被保険者の介護保険料の納付方法は、原則として年金から天引きする特別徴収です。

第2号被保険者の介護保険料は、加入する医療保険の保険料とともに徴収されます。なお、国民健康保険の被保険者は世帯ごとに介護保険料が徴収されます。

被保険者が第2号被保険者に該当しない場合であっても、被扶養者が第2号被保険者に該当する場合には介護保険で被保険者の扱いになり、介護保険料が発生する場合があります。

介護保険料の計算方法

介護保険料の計算方法は、第1号被保険者と第2号被保険者で異なります。さらに第2号被保険者のなかでも、加入しているのが国民健康保険かそれ以外の医療保険かによって、保険料の計算方法は変わってきます。

それぞれのパターンにおける介護保険料の計算方法を見ていきましょう。

第2号被保険者で国民健康保険以外の医療保険に加入している場合

サラリーマンや公務員のように国民健康保険以外の医療保険(協会けんぽや共済組合など)に加入している第2号被保険者の場合、介護保険料の納付は労使折半となるため、事業主が保険料の半額を負担します。

保険料の金額は、毎月の給与や賞与の金額によって変わるため注意が必要です。

ここからは、給与と賞与にかかる介護保険料の計算方法について解説します。

給与にかかる介護保険料

給与にかかる介護保険料の計算式は「介護保険料 = 標準報酬月額 × 介護保険料率」です。

「標準報酬月額」は、原則として4〜6月の給与の平均額を計算し、健康保険法第40条による「標準報酬月額表」と照らし合わせて求めます。「介護保険料率」は健康保険組合ごとに異なり、毎年見直されています。

たとえば、標準報酬月額が30万円で保険料率が1.82%である場合、毎月の給与にかかる介護保険料を求める計算は以下のとおりです。労使折半であるため、最後に「×1/2」を忘れないようにしましょう。

毎月の給与に係る介護保険料の計算方法

30万円 × 1.82% ×1/2 = 2,730円

標準報酬月額について詳しくは、別記事「標準報酬月額とは?決め方や変更方法、計算方法をわかりやすく解説」をご覧ください。

賞与にかかる介護保険料

賞与にかかる介護保険料の計算式は「介護保険料 = 標準賞与額 × 介護保険料率」です。「介護保険料率」は、給与にかかる介護保険料の計算で使ったものと同じです。

「標準賞与額」は、税引き前の賞与総額から1,000円未満を切り捨てて求めます。ただし、標準賞与額の年度累計額の上限は573万円です。

たとえば、6月と12月に300万円ずつの賞与をもらった場合、標準賞与額の年度累計額は600万円で上限を超えているため、573万円(6月の標準賞与額は300万円、12月の標準賞与額は273万円)で計算します。

保険料率を1.82%とすると、それぞれの介護保険料は以下のようになります。

介護保険料の具体的な計算例

  • 6月の介護保険料:300万円×1.82%×1/2=27,300円
  • 12月の介護保険料:273万円×1.82%×1/2=24,843円

第2号被保険者で国民年金保険に加入している場合

国民健康保険に加入している第2号被保険者の場合は、所得割・均等割・平等割・資産割のいずれかを市区町村ごとに組み合わせて介護保険料を計算します。さらに、介護保険料率も各市区町村で異なります。


所得割世帯ごとに被保険者の前年の所得に応じて算出し課せられる
均等割被保険者一人について算出し課せられる
平等割一世帯ごとに算出し課せられる
資産割所有する土地や家屋の固定資産税に応じて算出し課せられる

計算方法は各市区町村で異なりますので、具体的な計算方法についてはお住まいの市区町村に確認してください。

第1号被保険者の場合

第1号被保険者の介護保険料は市区町村によって異なります。1ヶ月分の保険料は、3年に一度、条例で定める基準額に対して所得段階に応じた割合をかけて算出します。

所得段階は9段階が一般的ですが、東京都北区の16段階のように、市区町村によって所得段階は異なるため、居住する市区町村ではどのように設定しているか確認が必要です。

たとえば、東京都北区において、本人に住民税が課税されており「前年の合計所得金額が125万円未満」という第6段階の所得段階に該当する方が負担する介護保険料は、年額で90,600円(令和6年度~令和8年度)となります。


出典:東京都北区「介護保険料の決め方」

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まとめ

40歳以上の国民が納めている介護保険料は、高齢者の介護を社会全体で支える介護保険制度を運用するための重要な財源です。介護保険料を納める被保険者は年齢によって「第1号被保険者」「第2被保険者」に分けられ、保険料の計算方法も異なります。

さらに、第2被保険者の場合は加入している医療保険の種類によっても計算方法が変わってくるため、自身がどのパターンに該当するかを確認したうえで計算する必要があります。この記事で挙げた計算例を参考にして、自身が負担する介護保険料を正確に把握しておきましょう。

よくある質問

介護保険とはどのような制度ですか?

介護保険とは、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みをつくるため、2000年4月1日から施行されました。要介護認定を受けた対象者が介護サービスを利用した際に給付を受けられる仕組みで、利用者負担が基本的に1割となる制度です。

詳しくは記事内「介護保険とは」をご覧ください。

介護保険料の計算方法は?

介護保険料の計算方法は、第1号被保険者と第2号被保険者で異なります。さらに第2号被保険者のなかでも、加入しているのが国民健康保険かそれ以外の医療保険かで、保険料の計算方法は変わってきます。

詳しくは記事内「介護保険料の計算方法」をご覧ください。

監修 社会保険労務士・第二種衛生管理者 染谷 優(そめや ゆう)

東京都出身。大学卒業後、厚生労働省所管の公的機関に入職し、24歳で社会保険労務士試験に合格。退職共済、人事、経営支援等の業務に約15年従事したのち、2021年に社会保険労務士法人BIZサポートに転職。現在は、就業規則作成、雇用契約書作成、厚労省関係の各種助成金の代行申請等に従事。

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