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社会保険とはこんな仕組み!国民健康保険との違いや、切替方法を解説

最終更新日:2023/10/10

社会保険とはこんな仕組み!国民健康保険との違いや、切替方法を解説

社会保険(健康保険)とは、企業勤めの会社員や、条件を満たす短時間労働者(アルバイト・パートなど)が加入する保険です。一方で国民健康保険とは、自営業者や年金受給者などが加入する保険です。

日本には「国民皆保険制度」があり、この制度を支えているのが「社会保険(健康保険)」と「国民健康保険」の2つの保険制度です。

本記事では、社会保険と国民健康保険の概要、2つの保険の違い、切り替えるタイミングや手続きを解説します。

目次

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社会保険(健康保険)とは

社会保険(健康保険)とは、「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」「労災保険」「雇用保険」の5つの保険制度の総称です。

狭義では、健康保険と介護保険、厚生年金保険をまとめて社会保険と呼び、雇用保険と労災保険をまとめて労働保険と呼ぶこともあります。


社会保険の広義と狭義のイメージ

社会保険(健康保険)は、会社に勤める正社員や、一定の条件を満たした非正規社員は加入が義務付けられている公的な強制保険制度で、日本国民が病気やケガ、老齢、労働災害などの事故に備えられる制度です。

社会保険(健康保険)には個人ではなく、勤め先の会社を介して加入します。また、社会保険(健康保険)の特徴として、配偶者(事実婚などの内縁者を含む)や三親等以内の親族も加入することが可能です。
社会保険(健康保険)の運営主体は、「健康保険組合」と「全国健康保険協会(協会けんぽ)」の2種類あります。健康保険の運営主体は「保険者」と呼ばれます。

健康保険組合は、単独の会社で700人以上の大企業や、複数の会社が共同で設立して社員の総数が3,000人以上いて、国の許可を受けて独自で運営しています。

全国健康保険協会(協会けんぽ)は、健康保険組合に加入していない被保険者を対象としています。中小企業の多くは協会けんぽに加入しており、2023年6月時点で約2,515万人が加入しています。

出典:

全国健康保険協会「協会けんぽ月報(総括表)(令和 5年 6月)」

国民皆保険制度の概要

国民皆保険制度は、全ての日本国民が公的医療保険である「社会保険(健康保険)」もしくは「国民健康保険」に加入し、保険料を負担し合うことで個人にかかる医療費を軽減することを目的としています。

「国民皆保険制度」を実現するために、家族や親族の扶養に該当していない以外は必ずどちらかに加入しなくてはいけません。

国民健康保険とは

国民健康保険とは、会社に勤めていないフリーランスや自営業、無職、年金受給者など、社会保険やその他の医療保険制度に加入していない人を対象とした保険制度です。

社会保険(健康保険)とは違い、国民健康保険には扶養という概念がありません。そのため、扶養家族がいたらその人数分の国民健康保険に加入する必要があります。よって、加入者全員の保険料の負担が発生し、所得が上がればその分保険料の負担も大きくなります。

国民健康保険の運営は、被保険者が在籍する各都道府県が主体となって、各市区町村が行っています。

社会保険(健康保険)と国民健康保険の違い

社会保険(健康保険)と国民健康保険は、加入対象や保険料の計算方法が違います。

制度被保険者保険者給付事由
医療保険健康保険一般健康保険の適用事業所で働く会社員(民間会社の勤労者)全国健康保険協会
健康保険組合
(業務外の)
・病気、けが
・出産
・死亡
法第3条第2項の規定による被保険者健康保険の適用事業者に臨時に使用される人や季節的事業に従事する人等
(一定期間を超えて使用される人を除く)
全国健康保険協会
船員保険
(疫病部門)
船員として船舶所有者に使用される人全国健康保険協会
共済組合
(短期給付)
国家公務員・地方公務員・私学の教職員各種共済組合・病気、けが
・出産
・死亡
国民健康保険健康保険・船員保険・共済組合等に加入している勤労者以外の一般住民市(区)町村
退職者医療国民健康保険厚生年金保険など被用者年金に一定期間加入し、老齢年金給付を受けている65歳未満等の人市(区)町村・病気、けが
高齢者医療後期高齢者
医療制度
75歳以上の方および65〜74歳で一定の障害の状態にあることにつき後期高齢者医療広域連合の認定を受けた人後期高齢者医療
広域連合
・病気、けが
出典:全国健康保険協会「医療保険制度の体系 | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会」

加入対象者が異なる

社会保険(健康保険)は、事業所単位で保険が適用されます。この事業所を「適用事業所」と呼び、適用事業所には、2つのパターンがあります。

一つ目は「強制適用事業所」で、事業主や従業員の意志に関係なく加入が義務付けられています。二つ目は「任意適用事業所」で、従業員の過半数が社会保険(健康保険)への加入を希望している場合に限り加入できます。

また法人であれば、たとえ社長一人の会社であったとしても「強制適用事業所」となり加入が義務付けられます。

従業員が5人以上の個人事業所も強制適用事業所となるため、従業員は加入義務が発生します。ただし、個人事業主本人は加入できません。

ほかにも、週の労働時間が30時間以上のパート、アルバイトも社会保険(健康保険)の加入対象となります。

社会保険(健康保険)の加入対象者が、2017年4月1日に変更となり、以下の5つが条件となりました。

社会保険(健康保険)の加入対象

  1. 週の所定労働時間が20時間以上であること
  2. 賃金月額が月8.8万円以上であること
  3. 2ヶ月以上雇用されることが前提であること
  4. 学生でないこと
  5. 従業員101名以上の企業で働いていること
社会保険とは? 雇用保険とはなにが違う? 内容と加入条件の違い

国民健康保険は、会社に属していないフリーランスや自営業、無職、年金受給者など、社会保険(健康保険)など他の医療保険制度に加入していない人が対象です。

国民健康保険の加入対象

  • 社会保険など他の医療保険制度、もしくは医療費補助制度を利用していない日本国民

保険料の計算方法が異なる

社会保険(健康保険)と国民健康保険では、保険料の計算方法や算出の基準・指標が異なります。

社会保険(健康保険)の保険料は、被保険者の年齢や、4月から6月に支払われた基本給、各種手当の平均額から「標準報酬月額」を決定して算出します。


出典:全国健康保険協会「令和4年度保険料額表(令和4年3月分から)」

社会保険(健康保険)は、加入する保険組合や都道府県によっても保険料率は異なります。そのほか、満40歳になった月から介護保険料も加算されるようになります。

社会保険料は被保険者が全額支払うのではなく、事業者(勤務先の会社)と折半をするという特徴があります。

一方、国民健康保険料は、世帯を単位として被保険者の人数や収入、年齢によって異なります。また、国民健康保険は被保険者の住む市区町村が運営しているため、居住地によっても保険料が異なります。

そのため、自分の保険料率がどれくらいなのかを把握するには、居住する市区町村のホームページを確認する必要があります。

また、一定期間の所得金額が基準を下回る世帯の場合、保険料が減額される制度があります。減額の基準も、被保険者が住む市区町村によって異なります。何かしらの要因で所得が少なくなったという人は、減額制度について市区町村のホームページを確認するか。役所に行って担当者に問い合わせするとよいでしょう。

扶養の有無によって保険料が変わる

社会保険(健康保険)と国民健康保険では、扶養に関する考え方や対応も異なります。

社会保険(健康保険)では、被保険者である自分以外の配偶者や両親、親族を扶養に入れることができます。被扶養者の有無や人数に応じて、被保険者の健康保険料が変わることはありません。

被扶養者の範囲は以下の通りです。

被扶養者に該当する範囲

  1. 被保険者の直系尊属、配偶者(事実婚を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人
  2. 被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人
    (1)被保険者の三親等以内の親族(1.に該当する人を除く)
    (2)被保険者の配偶者で戸籍上婚姻の届出はしていないが、事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
    (3)上記(2)の配偶者が亡くなった後における父母および子

被扶養者となるには収入にも基準があります。

被扶養者の収入の基準

  • 年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)かつ
    • 同居の場合:被保険者の年間収入の2分の1未満である場合
    • 別居の場合:被保険者からの援助による収入額より少ない場合


出典:全国健康保険協会「被扶養者とは?」

一方で、国民健康保険には扶養という概念がありません。たとえ生計を同一にする同居家族だったとしても扶養になることはなく、自身の配偶者や子どもだったとしても、それぞれが被保険者となって保険料も人数分支払うことになります。

社会保険(健康保険)と国民健康保険の切り替え方法

社会保険(健康保険)と、国民健康保険は加入できる条件が違います。そのため、会社員からフリーランスになる人や、個人事業主から非正規雇用になるなどの雇用環境に変化があった場合、加入している保険の切り替え手続きが必要になります。

国民健康保険と社会保険(健康保険)の切り替え方法を解説します。

国民健康保険から社会保険(健康保険)に切り替える場合

国民健康保険から社会保険(健康保険)に切り替えるケースで考えられるのは、フリーランスや個人事業主をしていた人や無職だった人が、社会保険(健康保険)の適用事業所に就職した場合です。

対象者の手続き

対象者は、今まで加入していた国民健康保険から脱退するために、居住する市区町村の役所へ行って手続きを自身で行う必要があります。

会社側の手続き

会社は入社する人全員に対して、社会保険の手続きをする必要があります。

会社は、健康保険および厚生年金保険の加入基準を満たした従業員を雇用した場合、対象者が加入資格を得た日(入社日)から5日以内に「被保険者資格取得届」を管轄の年金事務所に提出します。

雇用した従業員に配偶者や子どもなどの扶養家族がいる場合は、「健康保険被扶養者(異動)届」もあわせて提出する必要があります。

社会保険(健康保険)から国民健康保険に切り替える場合

社会保険(健康保険)の適用事業所に勤めていた会社員が、フリーランスや個人事業主に転身したり、何かしらの事情で失業したりする場合、社会保険(健康保険)から脱退することになります。

会社は社会保険の資格喪失届を日本年金機構へ提出し、国民健康保険や国民年金の加入手続きを被保険者が自身で行う必要があります。

対象者の手続き

対象者は、今まで加入していた社会保険(健康保険)の資格を喪失してしまうため、居住する市区町村の役所に出向き、国民健康保険への加入手続きをする必要があります。

社会保険(健康保険)の資格喪失日は、退職日の翌日です。日本は国民皆保険制度によって社会保険の資格喪失日から自動的に国民健康保険料が発生します。

国民健康保険証が手元に届くのは加入手続きをして1週間程度かかるため、なるべく早めに手続きをしておきましょう。

会社側の手続き

従業員が退職したなどの理由から社会保険の資格を喪失した人がいる場合、会社側は「被保険者資格喪失届」を資格喪失日(退職の場合は、退職日の翌日)から5日以内に、日本年金機構に提出しなければなりません。

なお、被保険者資格喪失届の提出の際には、資格を喪失した従業員とその扶養家族の健康保険証の返却も必要となります。

退職時に選択できる社会保険の任意継続制度とは

社会保険(健康保険)に加入していた会社を退職したとしても、必ず国民健康保険に加入しなくてはならないということではありません。

社会保険(健康保険)は、退職したとしても社会保険(健康保険)の資格喪失日から起算して、継続(入社から退社まで)で2ヶ月以上社会保険(健康保険)に加入していれば、国民健康保険に加入せずに、そのまま社会保険(健康保険)を任意継続できる制度があります。

任意継続被保険者になった場合は、原則として、在職中と同様の保険給付が受けられます。ただし、退職日まで継続して1年以上被保険者であった方が、退職日時点で傷病手当金や出産手当金を受けているか、受ける条件を満たしている場合を除き、傷病手当金や出産手当金を受けることはできません。

出典:全国健康保険協会 「会社を退職するとき」

ただし、社会保険(健康保険)を継続させるには、退職日の翌日から20日以内に任意継続の申請をしなければなりません。また、加入期間は退職日の翌日から2年間と定められています。

社会保険(健康保険)を任意継続した場合、配偶者や子どもなどの被扶養者も任意継続されることになります。その場合は、被扶養者が何人いたとしても、一人分の健康保険料のみで済むというメリットがあります。

しかし、必ずしも社会保険(健康保険)の方が安くなるとは限りません。人によっては国民健康保険の方が安くなるという場合もあります。

社会保険(健康保険)の保険料は、会社員時代は被保険者と事業者が折半して支払っていました。ですが、任意継続では被保険者が全額負担する必要があります。

以前は、任意継続を選択すると、2年間は以下の事由がない限り資格の喪失ができませんでした。そのため、たとえばフリーランスになって1年目で所得が激減し、国民健康保険料の方が安くなった場合でも、任意継続から国民健康保険へ切り替えることができませんでした。

しかし、2022年1月に健康保険法の一部改正が行われ、任意継続の資格喪失を自己都合で行うことができるようになりました。

2022年1月からの任意継続の資格喪失条件

  1. 任意継続の被保険者となった日から起算して2年を経過
  2. 被保険者が死亡
  3. 被保険者が保険料を未納
  4. 再就職などにより社会保険(健康保険)の被保険者となった
  5. 後期高齢者医療の被保険者となった
  6. 自己都合で資格喪失をしたい(国民健康保険への切り替え希望)

任意継続の資格を喪失したい場合は、加入している全国健康保険協会(協会けんぽ)の都道府県支部で「資格喪失申出書」の提出をしましょう。

注意点として、任意継続の資格を途中で喪失できるのは、全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入していた被保険者のみで、健康保険組合の任意継続をしている人は途中で資格喪失をすることができません。

会社を退職してフリーランスなどになる場合は、自身が勤める会社が全国健康保険協会(協会けんぽ)と健康保険組合のどちらに加盟しているか確認しましょう。

その上で、任意継続するべきか、国民健康保険に切り替えるかは、自身の状況により異なります。お住まいの市区町村の国民健康保険窓口か、協会けんぽ、各種健康保険組合の窓口で相談しましょう。

出典:

全国健康保険協会「健康保険法等の一部改正に伴う各種制度の見直しについて(傷病手当金、任意継続、出産育児一時金)」

まとめ

社会保険(健康保険)と国民健康保険は、同じ公的医療保険でも加入できる対象者や加入する団体、保険料の計算が違います。

会社員であれば、ほとんどの方が社会保険に加入することになりますが、退職をして個人事業主になった場合は、2年間社会保険を引き継ぐ任意継続という制度もあります。

この場合、社会保険と国民健康保険のどちらがお得になるかは、本人に扶養家族がいるかなどで変わってくるため、市区町村の国民健康保険窓口などで相談することをおすすめします。

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よくある質問

社会保険(健康保険)とは?

社会保険とは、「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」「労災保険」「雇用保険」の5つの保険制度の総称です。会社に勤める正社員や、一定の条件を満たした非正規社員は加入が義務付けられている公的な強制保険制度で、日本国民が病気やケガ、老齢、労働災害などの事故に備えられる制度です。詳しくは社会保険とはをご覧ください。

社会保険(健康保険)と国民健康保険はどう違う?

社会保険と国民健康保険は「加入対象者」「保険料の計算方法」「扶養への対応」の3つが異なります。それぞれの概要については社会保険(健康保険)と国民健康保険の違いで詳しく解説しています。

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