人事労務の基礎知識

社会保険と国民健康保険の違いと切り替える際の対応

最終更新日:2020/12/02

日本では、高額な医療費の負担を軽減するために、全ての国民が公的医療保険に加入すべきという「国民皆保険制度」を採用しています。

公的医療保険には、いくつか種類がありますが、代表的なのは会社員が加入することが多い「社会保険(健康保険)」と、自営業者や年金受給者などが加入する「国民健康保険」の2種類です。

本記事では、社会保険(健康保険)と国民健康保険の違いや、切り替える際の手続きについて解説していきます。

社会保険と国民健康保険の違いと切り替える際の対応

目次

社会保険の手続きや保険料の計算がラクに

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社会保険(健康保険)と国民健康保険の違い

社会保険(健康保険)とは、正社員や非正規社員(一定の条件を満たした場合に限る)が加入する保険のことで、「全国健康保険協会」や「健康保険組合」が運営しています。加入の対象者は、勤め先の会社を通じて、社会保険(健康保険)に加入します。

一方の国民健康保険は、市区町村が運営する健康保険で、自営業者や無職の人・年金受給者など、社会保険に加入していない人が加入の対象となります。そのため、会社を辞めて独立する際などには、社会保険から国民健康保険への切り替え手続きが必要になってきます。

制度 被保険者 保険者 給付理由
医療保険 健康保険 一般 健康保険の運用事業所で働くサラリーマン・OL(民間会社の勤労者) 全国健康保険協会
健康保険組合
業務外の
病気・けが
出産・死亡
法第3条第2項の規定による被保険者 健康保険の運用事業所に臨時に使用される人や季節的事業に従事する人等(一定期間を超えて使用される人を除く) 全国健康保険協会
船員保険
(疾病部門)
船員として船舶所有者に使用される人 全国健康保険協会
共済組合
(短期給付)
国家公務員、地方公務員、私学の教職員 各種共済組合 病気・けが
出産・死亡
国民健康保険 健康保険、船員保険、共済組合等に加入している勤労者以外の一般住民 市(区)町村
退職者医療 国民健康保険 厚生年金保険など被用者年金に一定期間加入し、老齢年金給付を受けている65歳未満等の人 市(区)町村 病気・けが
高齢者医療 後期高齢者医療制度 75歳以上の方および65歳〜74歳で一定の障害の状態にあることにつき後期高齢者医療広域連合の認定を受けた人 後期高齢者医療広域連合 病気・けが

参考:医療保険制度の体系 | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会

社会保険としての健康保険の加入対象や保険料の計算など

まずは、一般的に会社員が加入する健康保険の概要をまとめます。

・加入対象者
社会保険の健康保険には、事業主や従業員の意思に関係なく加入が義務付けられている「強制適用事業所」と、従業員の過半数が加入を希望している場合に加入することができる「任意適用事業所」の2種類があります。

健康保険の適用を受ける事業所を適用事業所といい、法律によって加入が義務づけられている強制適用事業所と、任意で加入する任意適用事業所の2種類があります。

健康保険の強制適用事業所には、国や法人の事業所が指定されています。

たとえ、社長一人の会社であっても、法人であれば加入義務があります。また、従業員が5人以上の個人事業所も強制適用事業所になっているため、その従業員も加入義務が発生します(個人事業主本人は加入できません)。

さらに、週の労働時間が30時間以上あるパート、アルバイトの方も社会保険の対象になります。また、社会保険の加入対象が徐々に広がっており、平成29年4月1日からは以下の5つの条件を満たすパート、アルバイトの方も対象となりました。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上であること
  2. 賃金月額が月8.8万円以上であること
  3. 1年以上雇用されることが前提であること
  4. 学生でないこと
  5. 従業員501名以上の企業で働いていること
    (従業員が500人以下の企業の場合は労使の合意がされていること)

平成28年10月から、週30時間以上働く方に加え、従業員501人以上の会社で週20時間以上働く方などにも厚生年金保険・健康保険(社会保険)の加入対象が広がりました。
さらに、平成29年4月からは、従業員500人以下の会社で働く方も、労使で合意すれば社会保険に加入できるようになり、より多くの方が、これまでより厚い保障を受けることができます。

・加入する団体
社会保険の健康保険には「健康保険組合」と「全国健康保険協会(協会けんぽ)」の2種類があります。

健康保険組合は、単独で700人以上、または共同設立で3,000人以上の社員がいる大企業などが国の認可を受け独自で運営しています。

協会けんぽは、健康保険組合を設立しない企業の会社員を対象としており、一般的な中小企業の会社員は協会けんぽに加入することになります。令和2年(2020年)8月時点での協会けんぽの被保険者数は約2,486万人です。

参考:全国健康保険協会「協会けんぽ月報 (総括表)  (令和 2年 8月)」


・扶養の有無
社会保険の健康保険と国民健康保険の大きな違いとして、扶養の有無があります。

健康保険では、配偶者や親などの親族を扶養に入れることができ、被扶養者が複数人いても被保険者の健康保険料は変わりません。

なお、被扶養者に該当する範囲は以下です。

  1. 被保険者の直系尊属、配偶者(事実婚を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人
  2. 被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人
    2-1.被保険者の三親等以内の親族(1.に該当する人を除く)
    2-2.被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
    2-3.「2.2」の配偶者が亡くなった後における父母および子

また、収入の基準もあり、その内容は以下となります。

・年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)

かつ

・同居の場合:被保険者の年間収入の2分の1未満である場合
・別居の場合:被保険者からの援助による収入額より少ない場合

参考:全国健康保険協会「被扶養者とは?」


・保険料の計算
社会保険の保険料は、被保険者本人の収入や年齢によって算出されます。毎年、4〜6月に支払われた基本給や通勤手当・残業手当・住宅手当の平均額をもとに「標準報酬月額」を決定し、該当する等級によって保険料が算出されます。

参考:全国健康保険協会「令和2年度保険料額表(令和2年9月分から)

また、保険料は、加入する保険組合や都道府県によって、保険料率は異なる他、年齢によっては介護保険料も加算されます。例えば、被保険者が40歳以上64歳以下の場合、第2被保険者に該当するため、介護保険料が加算されます。

なお、社会保険の健康保険料は、被保険者だけでなく事業者と折半して払うのが特徴です。


・その他の留意点
国民健康保険になく、社会保険の健康保険にあるメリットが傷病手当金と出産手当金の給付です。
傷病手当金は、病気やケガなどで働けなくなったときに、1年半を上限に標準報酬月額の3分の2が4日目から支給されるというものです。

傷病手当金は、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。

また、出産手当金は出産前後で働けない場合に、産前産後計98日間、標準報酬月額の3分の2が支給されます。

被保険者が出産のため会社を休み、その間に給与の支払いを受けなかった場合は、出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間を対象として出産手当金が支給されます。

国民健康保険の加入対象や保険料の計算など

次に、主に自営業者が加入する国民健康保険の概要をまとめます。加入対象者が異なるのはもちろんのこと、扶養という概念の有無なども社会保険の健康保険とは異なります。

・加入対象者
国民健康保険は、社会保険や共済組合などの健康保険に加入していない人を対象としています。例えば、個人事業主や年金受給者、扶養に入っていない学生などが国民健康保険の対象となります。

・加入する団体
平成30年度から国民健康保険の財政運営の責任主体が市町村から都道府県に変わりました。都道府県が当該都道府県内の市町村とともに、国民健康保険の運営を担います。

「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律」(平成27年改正)に基づき、国民健康保険制度の財政運営が都道府県単位化されました。


・扶養の有無
国民健康保険においては、扶養という概念はありません。たとえ同居家族だとしても扶養にはならず、全員が被保険者となり、それぞれの保険料を支払うことになります。

・保険料の計算
国民健康保険の保険料は、世帯を単位として被保険者の人数や収入・年齢によって異なってきます。また、国民健康保険は各自治体によって運営されているため、自治体によっても、保険料が異なってきます。そのため、お住いの地域の市町村のホームページを確認する必要があります。

また、一定期間の所得金額が基準を下回る世帯の場合は、減額の制度があります。何らかの理由で、所得が少なくなった場合などは、これらの減額制度もチェックすることをおすすめします。

社会保険と国民健康保険の切り替えについて

社会保険の健康保険と国民健康保険は加入できる人が違いますので、独立や就職など、雇用環境に変化があった場合、保険の切り替え手続きが必要です。

国民健康保険から社会保険に切り替える場合

国民健康保険から社会保険に切り替えるケースで考えられるのが、健康保険適用事業所に正社員、または正社員並みの労働時間の契約を結んで就職した場合です。

対象者の手続き

対象者である従業員は、各市区町村の役所で国民健康保険脱退の手続きを自身で行う必要があります。

会社側の手続き

一方、会社(事業所)側で行う手続きは、社会保険の加入手続きです。

健康保険および厚生年金保険の加入基準を満たす従業員を新たに雇い入れた場合は、加入資格を得た日(=入社日)から5日以内に「被保険者資格取得届」を管轄の年金事務所に提出します。

また、雇い入れた従業員に扶養家族がいる場合は、「健康保険被扶養者(異動)届」も合わせて提出しなければなりません。

社会保険から国民健康保険に切り替える場合

社会保険から国民健康保険に切り替える際には、会社が社会保険の資格喪失届を提出することになりますが、国民健康保険と国民年金の加入手続きは被保険者がしなければなりません。

会社側の手続き

退職等により社会保険の資格を喪失した方がいる場合、会社側は「被保険者資格喪失届」を資格喪失日から5日以内に日本年金機構に提出しなければなりません。なお、提出の際は対象の従業員とその扶養家族の健康保険証の返却も必要となります。


対象者の手続き

社会保険の資格喪失の手続きは会社側が行いますが、国民健康保険への加入手続きは、対象者である被保険者が市区町村の窓口に出向いて手続きをする必要があります。

社会保険の資格喪失日は、退職日の翌日となります。国民皆保険制度によって、社会保険の資格喪失日から自動的に国民健康保険料が発生するため、早めに窓口で手続きを行うようにしましょう。

任意継続と国民健康保険

社会保険から国民健康保険に切り替える際に知っておきたい制度が、「社会保険の任意継続」です。

2年間という期間の限定がありますが、社会保険の資格喪失日から起算して継続で2ヵ月、つまり入社から退社まで2ヵ月以上社会保険に加入していれば、すぐに国民健康保険に加入するのではなく、社会保険を任意で継続することできます。

任意継続被保険者になった場合は、原則として、在職中と同様の保険給付が受けられます。ただし、退職日まで継続して1年以上被保険者であった方が、退職日時点で傷病手当金や出産手当金を受けているか、受ける条件を満たしている場合を除き、傷病手当金や出産手当金を受けることはできません。


任意保険にも被扶という概念がありますので、被扶養者がいても一人分の健康保険料だけで済みます。しかし、すべての場合において任意継続のほうがいいわけではありません。場合によっては、国民健康保険にしたほうが保険料が安くなることもあります。

さらに、会社員の時は被保険者と事業主が保険料を折半していましたが、任意継続では保険料全額を被保険者が負担しなければなりませんので注意が必要です。

社会保険の任意継続と国民健康保険のどちらがよいかは、人それぞれの状況によります。どちらがよいかわからない場合は、お住まいの市町村の国民健康保険の窓口、協会けんぽや各健康保険組合の窓口に相談してみることをおすすめします。

まとめ

同じ公的医療保険でも、社会保険の健康保険と国民健康保険では対象者から加入する団体、保険料に給付される手当まで異なります。社会保険から国民健康保険に移行する際は、要件を満たせば任意継続することができますので、併せて確認しておくといいでしょう。

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