人事労務の基礎知識

給与所得控除とは?給与所得の計算方法や所得控除との違いをわかりやすく解説

給与所得控除とは?給与所得の計算方法や所得控除との違いをわかりやすく解説

給与所得控除とは、 会社員やパート・アルバイトなどの給与所得者が受けられる控除です。所得税の課税対象となる「給与所得」を算出する際に適用されます。1年間の給与収入額に応じて一定額が差し引かれ、2025年の法改正により最低控除額が55万円から65万円に引き上げられました。

また、給与所得控除に似た概念の「所得控除」とは、扶養控除や医療費控除など個人的な事情によって発生した金額を自己申告することで控除を受けられる制度のことです。給与所得控除とは全く異なる制度なので、注意しましょう。

本記事では、給与所得控除の基本知識や、2025年の税制改正を踏まえた給与所得控除の計算方法、所得控除との違いについて詳しく解説します。

目次

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給与所得控除とは

給与所得控除とは、所得税の課税対象となる「給与所得」を算出する際に、1年間の給与収入額に応じて一定額を控除できる制度です。会社員やアルバイト・パートなど、企業から給与をもらう給与所得者が受けられます。

給与収入とは、雇用契約のある会社から労働の対価として受け取る給与や賞与などの合計額です。給与所得者は個人事業主のように経費を直接控除できないため、必要経費相当額を差し引ける仕組みとして給与所得控除が設けられています。

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2025年度税制改正における給与所得控除の変更点

2025年度税制改正により、所得税の基礎控除や給与所得控除の見直しが行われました。とくに給与所得控除については、最低保障額がこれまでの55万円から一律65万円へと引き上げられています。

給与の収入金額給与所得控除額
改正後改正前
162万5,000円以下65万円55万円
162万5,000円超~180万円以下収入金額 × 40% - 10万円
180万円超~190万円以下 ※1収入金額 × 30% + 8万円

※1:給与の収入金額190万円超の場合は給与所得控除額に改正はありません

この改正は2025年12月1日より施行されるため、12月に行う年末調整の際は改正後の控除額に基づいて精算する必要があります。

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給与所得控除は「給与収入」にしか適用されない

個人事業主やフリーランスなどの事業所得者は、仕事に関する支出を経費として計上でき、収入から経費を差し引いた「所得」に所得税がかかります。

しかし、給与所得者はスーツや文房具などの仕事上で使用するための支出があっても、税制上経費として計上できません。その代わりに、給与収入から自動的に一定額を差し引ける「給与所得控除」が設けられているのです。

給与所得控除と所得控除の違い

給与所得控除と所得控除は似ていますが、それぞれ内容が全く異なる控除です。給与所得控除とは前述したとおり、企業から給与や賃金をもらう給与所得者が受けられる控除を指します。

一方、所得控除とは個人的事情に応じて課税所得を控除し、支払う所得税を減らす制度です。たとえば、医療費が一定額を超えた場合の「医療費控除」や、配偶者がいる場合の「配偶者控除」など、個人の事情が所得控除の一定の要件に該当する場合、給与所得からさらに所得控除を差し引いて課税所得を算出します。

さらに、課税所得に税率をかけた金額が最終的に支払う所得税額です。

所得税の計算式

所得税 =
課税所得{給与所得(給与収入 - 給与所得控除)- 所得控除}× 税率( - 税額控除)

給与所得控除と所得控除の違い
出典:国税庁「No.1100 所得控除のあらまし」

所得控除は、基礎控除や配偶者控除など全部で15種類に分類されており自己申告制です。

多くの所得控除は年末調整時に申請すれば控除されますが、医療控除・雑損控除・寄付控除は個人で確定申告をしなければ適用されません。

年末調整が主体の会社員は、該当する控除がある場合は確定申告を忘れないよう注意しましょう。

【関連記事】
確定申告の所得控除は15種類! 対象となる条件や控除額、税額控除との違いについて解説

給与所得控除額と給与所得の計算方法

上述のとおり給与所得は、給与収入から給与所得控除を差し引いた金額です。食事など現物で支給されたものは金額に換算して計算します。

給与所得の計算式

給与所得 = 給与収入(現金 + 現物)- 給与所得控除額

出典:国税庁「第2 給与所得の源泉徴収事務」

給与収入の金額は、勤務先から発行される源泉徴収票の「支払金額」の項目に記載されています。

給与所得の源泉徴収


また、給与所得控除額の計算方法は下表のとおりです。

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,625,000円まで65万円
1,625,001円から1,800,000円まで
1,800,001円から1,900,000円まで
1,900,001円から3,600,000円まで収入金額 × 30% + 80,000円
3,600,001円から6,600,000円まで収入金額 × 20% + 440,000円
6,600,001円から8,500,000円まで収入金額 × 10% + 1,100,000円
8,500,001円以上1,950,000円(上限)
出典:国税庁「No.1410 給与所得控除」
出典:国税庁「令和7年度税制改正による 所得税の基礎控除の見直し等について」

上記をもとに、年収450万円の給与所得者を例として考えると、給与所得控除額と給与所得は以下のように計算できます。

給与所得控除額:
4,500,000円(給与収入)× 20% + 440,000円 = 1,340,000円

給与所得額:
4,500,000円(給与収入)- 1,340,000円(給与所得控除額)= 3,160,000円

なお、収入金額が660万円以上の場合は、上記の方法で給与所得控除額を計算するよりも、以下の速算表を利用して給与所得額を直接計算したほうが給与所得額を簡単に算出できます。

  
給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得額
6,600,001円以上8,500,000円未満収入金額 × 90% - 1,100,000円
8,500,001円以上収入金額 - 1,950,000円
出典:国税庁「No.1410 給与所得控除」

また、給与所得控除の最低保証額65万円を差し引いた給与所得が132万円以下のケースでは、基礎控除を合わせると所得税がかからなくなります。

たとえば、給与収入が160万円の場合、給与所得控除65万円を差し引いた給与所得は95万円です。そこから基礎控除として95万円が差し引かれるため、課税所得がゼロとなり所得税はかかりません。

ただし、基礎控除は合計所得金額に応じて58~95万円と段階的に設定されているため、事前に基礎控除の適用額を確認しておきましょう。

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給与所得の年末調整での申告方法

年末調整で給与所得を申告する際は、勤務先に提出する「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」に記入します。

給与所得の年末調整での申告方法


「給与所得者の基礎控除申告書」は年末調整の対象者全員が提出する必要があります。記載内容に誤りのないように注意しましょう。

また、給与所得者の基礎控除申告書の書き方について詳しく知りたい方は別記事「【2025年最新】年末調整の書き方まとめ!書類別にわかりやすく解説(記入例つき)」をご確認ください。

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給与所得者に認められている「特定支出控除」とは

給与所得者には、給与所得控除のほかに「特定支出控除」が認められています。

特定支出控除とは、仕事のために必要な接待や研修など、自己負担した特定の費用の合計金額が「特定支出控除額の適用判定の基準となる金額」を超えた場合に確定申告をすることで受けられる控除です。

適用判定の基準となる金額とは、負担した金額がその年の給与控除額の1/2を超えた場合の金額になります。

特定支出は7項目あり、内容は以下の表のとおりです。

項目内容
通勤費通勤するために必要であると認められる支出
転居費転勤の際に発生する転居が必要であると認められる支出
研修費職務に必要な技術や知識を得ることを目的とした研修のための支出
資格取得費職務に必要な資格を取得することを目的とした支出
職務上の旅費職場を離れて職務を遂行するために必要な支出
帰宅旅費単身赴任などで自宅と勤務地、または居所との間の旅行を目的とした支出
勤務必要経費図書費職務に関連した書籍などの購入を目的とした支出
衣服費作業服などの勤務場所で着用することが必要とされる衣服を購入するための支出
交際費得意先や仕入れ先などの、職務に関係のある方に対する接待などを目的とした支出
出典:国税庁「No.1415 給与所得者の特定支出控除」

上述したとおり、特定支出控除を受けるためには上記の費用が給与所得控除額の1/2以上であることが必要です。

例:年収が450万円・特定支出額が40万円の給与所得者の場合

給与所得控除額:
4,500,000円(給与収入)× 20% + 440,000円 = 1,340,000円

400,000円(特定支出額)-(1,340,000円 × 1/2)= -270,000円

特定支出控除の対象外

例:年収が1,000万円・特定支出額が300万円の給与所得者の場合

給与所得控除額:

10,000,000円(給与収入)= 1,950,000円

3,000,000円(特定支出額)-(1,950,000円 × 1/2)= 2,025,000円

確定申告をすることで202万5,000円を特定支出控除にすることができる!

特定支出控除の申告方法

特定支出控除を受けるには確定申告が必要です。年末調整では特定支出控除を受けることができないため、給与所得者であっても個別に申告手続きを行う必要があります。

申告の際に必要となる主な書類は以下のとおりです。

特定支出控除申告に必要な書類

  • 給与所得の源泉徴収票
  • 領収書や支出の明細書
  • 特定支出に関する明細書
  • 特定支出の証明書(勤務先の証明が必要)

これらの書類をそろえて確定申告書とともに所轄の税務署に提出します。確定申告の期限は原則として翌年2月16日から3月15日までとなるため、必要書類の準備は早めに行いましょう。

まとめ

給与所得控除とは、会社員やアルバイト・パートなど、企業から給与をもらう給与所得者が受けられる制度です。差し引かれる金額は給与収入に応じて変わりますが、すべての給与所得者が適応となる控除です。

基本的には年末調整で申告が可能ですが、医療費控除など一部の控除は年末調整を受けている給与所得者でも確定申告が必要となりますので申告漏れに注意しましょう。

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よくある質問

給与所得控除とは?

給与所得控除とは、会社員などの給与所得者が所得税の課税対象となる「給与所得」を算出する際に適用できる控除です。年末調整の際、1年間の給与収入額に応じて自動的に差し引かれます。

詳しくは、記事内「給与所得控除とは」をご覧ください。

給与所得控除の控除額はいくら?

給与所得控除額は、65万円から195万円まで給与収入額に応じて段階的に定められています。2025年の税制改正により最低保障額が65万円に引き上げられ、低所得者の税負担がより軽減されました。

詳しくは、記事内「2025年度税制改正における給与所得控除の変更点」をご覧ください。

所得税の計算方法とは?

所得税は【課税所得{給与所得(給与収入 - 給与所得控除)- 所得控除}× 税率 ( - 税額控除)】で求めます。

詳しい計算方法は、記事内「給与所得控除と所得控除の違い」をご覧ください。

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