人事労務の基礎知識

130万円の壁とは?106万・160万の壁との違いと影響を解説

監修 涌井 好文 社会保険労務士

130万円の壁とは?106万・160万の壁との違いと影響を解説

130万円の壁とは、配偶者や親の社会保険の扶養から外れる年収の基準を指します。この基準を超えると、自身で社会保険料を負担する必要が生じ、手取りや働き方に影響が出ます。収入が増えても、社会保険料の負担によって手取りが減少する可能性があります。

年収の壁は、ほかにも「106万円の壁」や「160万円の壁」などがあります。違いを理解せずに働くと、想定外の負担増につながる可能性もあるでしょう。

本記事では、130万円の壁の仕組みや影響、106万円の壁や160万円の壁との違いを解説します。

目次

130万の壁とは

130万の壁とは、社会保険の扶養に入れるかどうかを判断する年収の目安です。扶養に入っている場合は、健康保険や年金の保険料を負担せずに社会保障を受けられます。

働き方や加入先によって負担額や保障内容が変わるため、制度の仕組みを理解しておくことが大切です。

社会保険の扶養から外れる年収基準

原則として年収130万円以上になると、社会保険の扶養から外れます。

「過去の年収」ではなく「今後1年間の見込み年収」で判定される点に注意が必要です。収入には基本給に加え、各種手当や通勤手当(交通費)なども含まれます。

これらを含めた見込み年収が基準を超えると、扶養資格の見直しが行われます。なお、以下の場合は、扶養から外れる年収基準が異なります。

扶養から外れる年収基準

  • 60歳以上、障害者:180万円以上
  • 19歳以上23歳未満:150万円以上

扶養に入っている人の社会保険の仕組み

会社員の配偶者などは、一定の条件を満たすことで「被扶養者」として社会保険に加入できます。

この場合、健康保険料や年金保険料の自己負担はなく、年金も第3号被保険者として扱われます。これは、配偶者が加入する厚生年金制度によって保険料が賄われているためです。

扶養制度は、「生計を同一にしていること」や「収入が一定以下であること」などの条件を満たすことで、保険料の負担なく社会保障を受けられる仕組みです。

130万円を超えると保険料の負担が発生する理由

年収が基準を上回る見込みとなった場合は扶養の対象外となり、自身で社会保険に加入する必要が生じます。勤務先の条件を満たしていれば健康保険・厚生年金に加入し、満たさない場合は国民健康保険・国民年金に加入します。

社会保険料の支払いが発生することで、収入が増えても手取りが増えない点が「130万の壁」と呼ばれる理由です。

2026年に130万円の壁はどうなる?制度改正の最新動向

2026年時点でも、基本的には社会保険の扶養から外れる基準は年収130万円です。しかし、2026年4月より扶養認定の条件に変更が加えられました。

これまでは残業代などを含む実績や将来の見込みで判断されていましたが、給与収入のみの場合、労働契約書(労働条件通知書)に記載された内容で認定の可否が決定されます。この変更により、繁忙期の残業等で予期せず収入が増加しても、それが社会通念上妥当な範囲であれば扶養から外れないようになりました。

認定条件に変更が加えられた一方、制度全体でも税制や社会保険の見直しが進められています。制度の主なポイントは、下記のとおりです。

制度改正のポイント

  • 所得税の非課税ラインが160万円へ引き上げ(2025年~)
  • 将来的には178万円に引き上げを予定(段階的に適用)
  • 106万円の壁は賃金要件の撤廃により、将来的に解消される方向
  • 130万円の壁(社会保険の扶養基準)の金額は維持
  • 一時的な収入増は扶養判定に影響しにくい運用へ

税金に関する「年収の壁」は引き上げが進み、働き方の自由度は高まりつつあります。一方で、130万円の壁については社会保険の扶養基準として残るため、今後も働き方に影響を与える要素となるでしょう。

また、2025年に成立した年金制度改正により、106万円の壁は将来的に撤廃されることが決まっています。社会保険の加入対象となる企業規模の要件は2027年10月から段階的に緩和され、最終的にはすべての企業に適用される予定です。

さらに、106万円の壁の基準となる賃金要件についても、公布から3年以内に撤廃される方針が示されています。これによって、将来的には週20時間以上働く多くの人が社会保険の加入対象となる見込みです。

一時的な残業や繁忙期による収入増については、事業主の証明を前提に扶養を維持できる特例が設けられています。この特例では、収入の増加が一時的か継続的かを踏まえて判断されるため、従来よりも柔軟な運用となっています。原則として契約時点で扶養認定の可否が判断されるように変更されましたが、この特例自体は4月以降も有効です。

130万の壁とほかの年収の壁との違い

年収の壁には複数の種類があり、「税金」と「社会保険」のどちらに影響するかで意味が異なります。

ここでは、106万円の壁、160万円の壁、201万円の壁について解説します。

106万の壁との違い|勤務先の条件による加入義務

106万円の壁は、一定の条件を満たした場合に、勤務先の社会保険へ加入する義務が生じる基準です。主な条件としては従業員数や労働時間などがあり、これらをすべて満たした場合に適用されます。そのため、同じ収入でも勤務先や働き方によって、加入対象になる人とならない人がいます。

130万円の壁は、勤務先の条件に関係なく扶養から外れるかどうかを判断する基準であり、より広い範囲の人に影響する点に違いがあります。

160万円の壁との違い|所得税が発生する基準

160万円の壁は、税制改正後に「所得税がかかりにくくなる目安」とされる基準です。実際の課税は各種控除を差し引いた課税所得によって決まります。

令和7年の税制改正により、従来の103万円から引き上げられました。通勤手当など一定の範囲で非課税となる収入は含めずに判定されます。

130万円の壁は社会保険の扶養に関わる基準であり、交通費や各種手当も含めて判断されるため、税金は非課税でも社会保険で扶養から外れるケースがあります。

201万円の壁との違い|配偶者特別控除が段階的に減少する基準

201万円の壁は、配偶者特別控除が適用されなくなる年収の上限です。配偶者の年収が160万円を超えると控除額は段階的に減少し、201万円を超えると完全に対象外となります。

201万円の壁では、交通費は非課税枠内であれば含まれませんが、130万円の壁では収入として扱われます。この違いが手取りに影響する重要なポイントです。

130万を超えた場合の影響

年収が130万円を超えると社会保険の扶養から外れ、自身で保険料を負担する必要が生じます。これにより手取りや世帯収支に影響が出るほか、加入する保険の種類や税負担にも変化が生じます。

加入する保険の種類

130万円を超えると扶養の対象外となり、自身で社会保険に加入する必要があります。

勤務先の条件を満たす場合は健康保険と厚生年金に加入し、保険料は会社と折半で負担します。一方、条件を満たさない場合は国民健康保険と国民年金に加入することになります。

どちらに加入するかによって、保険料の負担額や将来の年金額、受けられる保障内容が異なります。

社会保険料の目安と手取りへの影響

社会保険に加入すると、健康保険料と年金保険料が給与から差し引かれるため、手取りが減少する可能性があります。

一般的には、給与の約14~15%前後が本人負担の目安です(保険料率や地域により異なる)。そのため、年収が増えても手取りがあまり増えない、あるいは一時的に減ると感じることもあります。

一方で、年金額の増加や給付の対象になる点は、長期的なメリットといえます。

配偶者や世帯全体の税負担への影響

130万円自体は社会保険の基準ですが、収入の増加によって配偶者特別控除に影響する場合があります。

具体的には、配偶者の年収が一定額を超えると配偶者特別控除の控除額が減少し、世帯主の所得税や住民税の負担が増える仕組みです。また、企業によっては家族手当の支給条件に年収制限が設けられており、基準を超えると手当が受けられなくなるケースもあります。

このように、収入が増えても世帯全体の手取りが必ずしも増えるとは限りません。年収だけで判断せず、税金や手当を含めた世帯全体の収支で考えましょう。

扶養を外れるタイミング

扶養から外れるタイミングは、年収が確定した時点ではなく「契約時点で見込まれる収入」が130万円を超えると判断された時点です。労働時間の増加や時給の上昇などにより収入見込みが変わった場合、その時点で扶養の対象外と判断されることがあります。

収入の変化を放置するとあとから手続きが必要になるため、状況が変わった場合は早めに申告・確認しましょう。

保険料が遡って請求されるケース

扶養条件を満たしていないにも関わらず手続きを行っていない場合、保険料を遡って請求されることがあります。数ヶ月分の保険料を一度に請求されるケースもあります。

収入が増えたタイミングで扶養の条件を確認し、必要な手続きを早めに行うことが重要です。

130万の壁を超える4つのメリット

130万円の壁は「手取りが減る可能性」が注目されがちですが、長期的にはメリットもあります。手取りだけで判断せず、「現在の収入」と「将来の安心」の両面で考えることが重要です。

1.世帯年収が増える

130万円の制限を気にせず働けるようになることで、労働時間や収入を増やしやすくなり、世帯全体の収入アップにつながります。

社会保険料の負担は発生しますが、収入が増えれば、税金や保険料を差し引いて手元に残るお金(可処分所得)も増える可能性があります。可処分所得とは、給与などの収入から税金や社会保険料を差し引いた後に、生活費や貯蓄に使えるお金のことです。

また、世帯年収が増えることで住宅ローンの審査や将来の資金計画にも好影響を与える場合があり、家計全体の安定につながります。

2.働き方の選択肢が広がる

年収を130万円未満に収める必要がなくなることで、勤務日数や時間の制限がなくなり、仕事の選択肢が広がります。これまで応募できなかった求人にも挑戦できるようになり、希望条件に合った職場を見つけやすくなるでしょう。

さらに、フルタイム勤務やキャリアアップを視野に入れた働き方も可能になり、スキルや経験を積む機会が増える点も大きなメリットです。

3.将来受け取る年金額が増える可能性がある

勤務先の条件を満たして厚生年金に加入すると、国民年金に加えて厚生年金も受け取れるため、将来受け取れる年金額が増加します。扶養内で働く場合は国民年金のみですが、厚生年金に加入することで報酬に応じた年金が上乗せされます。

老後の生活資金に直結するため、長期的なメリットといえます。

4.傷病手当金・出産手当金など保障が手厚くなる

勤務先の健康保険に加入すると、病気やケガで働けなくなった場合の傷病手当金や、出産時の出産手当金などの給付を受けられるようになります。

扶養内ではこれらの給付は対象外となるため、収入が途絶えた際のリスクに差が出ます。万が一の備えを確保できる点は、安心して働き続けるためのメリットです。

130万の壁で注意すべき収入の範囲

130万円の壁を判断するうえで重要なのが、「どこまでの収入が含まれるか」です。

年収といっても、税金と社会保険では対象となる範囲が異なり、同じ金額でも扶養判定の結果が変わることがあります。とくに交通費や副収入の扱いは誤解されやすく、想定外に基準を超えるケースもあります。

給与に含まれる項目

130万円の壁では、基本給だけでなく各種手当を含めた契約書等に記載の「総収入」で判定されます。そのため、給与収入のみであれば臨時的・突発的な残業の発生による残業手当は総収入に含まれません。主な対象は、下記のとおりです。

給与に含まれる項目

  • 基本給
  • 役職手当
  • 賞与(ボーナス)
  • 通勤手当(交通費)

税金では交通費が非課税となる場合がありますが、社会保険の扶養判定では収入として扱われる点に注意が必要です。給与明細の「総支給額」を基準に年収を把握することが基本です。

事業収入・不動産収入・配当収入の扱い

給与以外の収入も、年収130万円の判定対象に含まれます。対象となる主な収入は、下記のとおりです。

  • 副業による事業収入
  • 不動産収入
  • 株式の配当収入

事業収入は、一般的には必要経費を差し引いた「所得」で判断されます。ただし、健康保険組合によっては収入に近い形で判断される場合もあります。

複数の収入がある場合は、合算した金額が130万円を超えていないかを確認することが重要です。

106万の壁との算定対象の違い

106万円の壁と130万円の壁では、「どの収入を基準にするか」が異なります。

106万円の壁は、勤務先の社会保険に加入するかどうかを判断する基準のひとつで、月収8.8万円以上などの条件をもとに判定されます。この際の対象は基本給や固定手当などの毎月決まって支払われる賃金で、交通費や賞与は含まれません。ただし、実際に社会保険へ加入したあとの保険料計算では、交通費なども含まれるため、判定基準と計算方法が異なる点に注意が必要です。

一方、130万円の壁は1年間の収入を合計して判断され、給与に加えて交通費や賞与なども含めた「総収入」で判定されます。

そのため、同じ仕事・同じ給与水準でも、どの収入が含まれるかによって判定結果が変わることがあります。

130万を一時的に超えた場合の特例措置

年収が130万円以上になる見込みと判断されると、原則として社会保険の扶養から外れます。ただし、人手不足や繁忙期などによる一時的な収入増であれば、「年収の壁・支援強化パッケージ」に基づく特例の対象となる場合があります。

この特例は、収入の増加が一時的である場合に限り適用されるもので、恒常的な収入増には適用されません。

事業主の証明による被扶養者認定の円滑化

一時的に年収が130万円以上となった場合でも、事業主が「一時的な収入増」であることを証明することで、扶養内と判断する制度があります。

対象となるのは、繁忙期の残業増加や人手不足による業務量の増加などです。給与明細や雇用契約書に加え、事業主の証明書を提出することで、扶養認定が継続されるか判断されます。

適用条件

特例の適用は、「収入の増加が一時的であること」が前提です。たとえば、繁忙期による残業増加や人員不足による業務量の増加などが該当します。

また、証明は事業主が行う必要があり、本人の申告のみでは認められません。

利用回数の上限と適用期間

事業主の証明による特例は無制限に利用できるものではなく、同一の被扶養者につき原則「連続2回まで」に制限されています。一般的には、年1回の扶養確認において最大2年連続で適用され、その後は通常の基準にもとづいて扶養判定が行われます。

この特例はあくまで一時的な収入増に対応するための措置であり、継続的な収入増が見込まれる場合には適用されません。そのため、毎年同じように収入が増える場合は、特例に頼るのではなく、社会保険への加入を前提とした働き方の見直しが必要となります。

対象外となるケース

収入が継続的に増える場合は特例の対象外です。

特例の対象外となるケース

  • 時給アップや昇給
  • 契約時間や勤務日数の増加
  • 個人事業主やフリーランス

これらは一時的ではなく継続的な収入増と判断されるため、特例は適用されません。

まとめ

130万円の壁は、社会保険の扶養から外れる年収の目安であり、これを超えると自身で保険料を負担する必要があります。

扶養を外れることで手取りが一時的に減る可能性はあるものの、働き方の自由度が高まり、将来の年金や保障が充実する点はメリットです。また、近年は制度の見直しも進んでおり、収入の考え方や扶養判定の運用にも変化が見られます。

130万円の壁への対応は従業員個人だけでなく、企業側の労務管理にも関わります。


  • 扶養判定や社会保険の手続き
  • 給与計算や控除ミスの防止
  • 従業員ごとの働き方に応じた管理

これらを手作業で行う場合、ミスや業務負担が生じやすくなります。

こうした課題には、労務業務を一元管理できるクラウドサービスの活用が有効です。freee人事労務を活用すれば、勤怠管理・給与計算・社会保険手続きをまとめて管理でき、業務の効率化やミスの削減につながります。

制度改正への対応や労務管理の負担軽減のためにも、導入を検討するとよいでしょう。

よくある質問

2026年に130万円の壁はどうなりますか?

認定の条件は変更されましたが、2026年時点でも社会保険の扶養から外れる基準は年収130万円です。

所得税の基準引き上げや106万円の壁の見直しなど、周辺制度には変化が見られます。

詳しくは記事内「2026年に130万円の壁はどうなる?制度改正の最新動向」をご覧ください。

130万円を超えるメリットはありますか?

130万円の壁を超えることで、下記のメリットがあります。


  • 世帯年収が増える
  • 働き方の選択肢が広がる
  • 将来受け取る年金額が増える可能性がある
  • 傷病手当金・出産手当金など保障が手厚くなる

詳しくは記事内「130万の壁を超える4つのメリット」をご覧ください。

パートの交通費は年収に含まれますか?

130万円の壁の判定では、通勤手当(交通費)も収入に含めて判断されるのが一般的です。税金の計算では一定額まで非課税となるため混同されやすいですが、社会保険では扱いが異なる点に注意が必要です。

基本給だけでなく、交通費や各種手当を含めた総支給額で年収を確認しましょう。

詳しくは記事内「130万の壁で注意すべき収入の範囲」をご覧ください。

参考文献

監修 涌井好文(わくい よしふみ) 社会保険労務士

平成26年より神奈川県で社会保険労務士として開業登録を行い、以後地域における企業の人事労務や給与計算のアドバイザーとして活動を行う。退職時におけるトラブル相談や、転職時のアドバイスなど、労働者側からの相談にも対応し、労使双方が円滑に働ける環境作りに努めている。また、近時は活動の場をWeb上にも広げ、記事執筆や監修などを通し、精力的に情報発信を行っている。

監修者 涌井好文

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