監修 北 光太郎 きた社労士事務所
変化の激しい現代ビジネスにおいて、従業員のスキルアップは企業の存続に直結します。しかし、研修コストが足かせとなり、教育を躊躇している企業も少なくありません。そこで活用したいのが人材開発支援助成金です。
本記事では、2026年度の最新情報を踏まえ、各コースの受給条件や申請の流れをわかりやすく解説します。
目次
- 人材開発支援助成金とは
- 助成金活用のメリット
- 人材開発支援助成金の主なコース
- 人材育成支援コース
- 事業展開等リスキリング支援コース
- 人への投資促進コース
- 教育訓練休暇等付与コース
- 【2026年度】人材開発支援助成金の改正による変更点
- 経費助成限度額の見直し
- 支給対象の見直し
- 定額制サービスの支給対象の変更
- 教育訓練休暇制度の支給申請タイミング
- 中高年齢者実習型訓練の新設
- 新規採用助成、職務代行助成の追加
- 設備投資加算の新設
- 受講料等の価格設定に関する疎明書の提出が必須に
- 人材開発支援助成金を受給するための共通要件
- 支給対象外となるケース
- 人材開発支援助成金の申請から受給までのステップ
- 1.社内制度の整備
- 2.訓練実施計画届の作成と提出
- 3.訓練の実施
- 4.支給申請書の提出
- 5.審査と助成金の振込
- 助成金申請時に用意する書類
- 訓練計画時:事業計画書、訓練カリキュラム、登記簿謄本など
- 支給申請時:賃金台帳、出勤簿、領収書、訓練修了証など
- 審査を通過するための注意点
- 訓練時間に休憩時間は含まない
- 就業規則の変更と労働基準監督署への届け出を行う
- 審査期間の長期化に備える
- まとめ
- 社会保険の手続きや保険料の計算をラクにする方法
- よくある質問
人材開発支援助成金とは
人材開発支援助成金とは、厚生労働省が管轄する助成制度で、事業主が雇用する労働者に対して職務に関連した専門的な知識や技能を習得させるための「職業訓練(OJT・Off-JT)」を実施した際、その経費や訓練期間中の賃金の一部を助成するものです。
労働者のキャリア形成を促進し、企業の競争力を高めることを目的としています。2026年度現在、社会のDXやGXに伴い、その重要性はさらに高まっています。
助成金活用のメリット
人材開発支援助成金を活用する最大のメリットは、高額な外部研修や資格取得費用が補填されるため、資金力に余裕がない中小企業でも質の高い教育が可能になることです。また、会社が成長機会を提供することで従業員のエンゲージメントが高まり、離職率の低下も期待できます。
高度なスキルを持った人材が増えることで、業務効率が改善し、最終的には企業の生産性向上という大きなメリットを得ることができるでしょう。
人材開発支援助成金の主なコース
人材開発支援助成金には、企業の多種多様なニーズに応えるために複数のコースが用意されています。標準的なスキルアップを支えるコースから、最先端のリスキリング、さらには多様な働き方を支援するものまで多岐にわたります。
人材育成支援コース
人材育成支援コースは、従来の特定訓練・一般訓練を統合・整理したコースです。職務に関連した知識や技能の習得を目指す標準的な訓練が対象となります。OJT(現場訓練)とOff-JT(座学等)を組み合わせた「有期実習型訓練」もここに含まれます。
中堅社員への専門教育から、若手への基礎教育まで幅広く対応しており、もっとも汎用性が高いコースといえるでしょう。
事業展開等リスキリング支援コース
新規事業への進出や、デジタル化、環境対応など、企業の大きな転換期に必要なスキル習得を支援するコースです。
他のコースよりも高い助成率が設定されているのが特徴で、たとえばAI技術の導入や脱炭素化に向けた技術革新に伴う教育訓練に最適です。
人への投資促進コース
デジタル技術の普及に対応した、高度なデジタル人材育成や、サブスクリプション型の研修(定額制訓練)に対応したコースです。
高度なITスキルの習得だけでなく、自発的な学習を促すための「自発的職業能力開発訓練」への支援が含まれる点も大きな特徴です。変化の激しいIT業界や、柔軟な学習形態を取り入れたい現代的な企業のニーズに合致した設計となっています。
教育訓練休暇等付与コース
従業員が自発的に学べる環境を整える企業を支援するコースです。就業規則に「教育訓練休暇制度」を導入し、実際に労働者がその休暇を利用して訓練を受けた場合に助成されます。
企業主導の研修だけでなく、従業員が自身のキャリアパスを考えて自主的に大学や専門学校、資格取得講座へ通うことを後押しする制度として注目されています。
【2026年度】人材開発支援助成金の改正による変更点
2026年度(令和8年4月8日より)は人材開発支援助成金が改正され、以下のとおり変更点が生じています。
経費助成限度額の見直し
eラーニングと通信制による訓練における1人1訓練当たりの経費助成の上限額は以下のように変わります。この見直しは「事業展開等リスキリング支援コース」に適用されます。
- 中小企業の場合:30万円から15万円に引き下げ
- 大企業の場合:20万円から10万円に引き下げ
また、この新しい上限額の適用については以下のルールがあります。
- 訓練の時間数にかかわらず、見直し後の上限額が一律で適用される
- 通学制訓練や同時双方向型の通信訓練を、eラーニングや通信制の訓練と組み合わせた場合も、見直し後の上限額が一律で適用される
支給対象の見直し
不正受給を防ぐため、「申請事業主と密接な関係にある者」は経費助成の支給対象外となります。具体例として、訓練の形態や経費の種類に応じて以下のケースが挙げられます。
| 主なケース | 支給対象外の経費 |
|---|---|
| 事業内訓練における部外講師が、申請事業主の代表者等の配偶者や3親等以内の親族である場合 | 講師謝金が対象外 |
| 事業内訓練における施設の提供者が、申請事業主の親会社や子会社である場合 | 施設・設備の借上費が対象外 |
| 事業外訓練における教育訓練機関の代表者が、申請事業主の代表者等や申請事業主が雇用する者である場合 | 受講料等が対象外 |
以上のとおり、身内や関連会社、あるいは自社の従業員が代表を務める機関との間でやり取りされる経費は助成の対象外となります。なお、これら以外にも支給対象にならない経費が存在するため、厚生労働省のHPを確認してください。
定額制サービスの支給対象の変更
定額制サービスによる訓練における、支給対象の要件および申請書類に関する変更点は以下のとおりです。なお、この見直しは「事業展開等リスキリング支援コース」と「人への投資促進コース」に適用されます。
支給対象労働者の要件
| 変更前 | 変更後 |
|---|---|
| 支給申請時において、修了した訓練の標準学習時間が「1時間以上」である者が対象 | 支給申請時において、修了した訓練の標準学習時間が「10時間以上」である者が対象に変更 これにより、標準学習時間が10時間未満の者は支給対象労働者に含めることができない |
支給対象訓練の要件
| 変更前 | 変更後 |
|---|---|
| 各支給対象労働者が修了した訓練の標準学習時間の合計が「10時間以上」 | 要件を廃止 |
申請書類の取扱い
要件変更に伴い、申請手続きも以下のように見直されています。
- 対象労働者が10人以上の場合は任意の10人分、10人未満の場合は全員分の「定額制サービスによる訓練実施結果報告書」の提出が必要。提出しない対象者の書類も、労働局から求められる場合があるため事業所での整備・保管が必要
- これまで提出が必要だった「対象労働者の修了証」や「LMS情報の写し」は原則として提出不要(ただし、労働局から求められる場合があるため手元での保管は必要)
- 修了証等の代わりに、「教育訓練機関が発行する、受講時間が10時間以上である者の一覧表」の提出が必要
教育訓練休暇制度の支給申請タイミング
教育訓練休暇制度(教育訓練休暇等付与コース)における支給申請のタイミングは、申請の迅速化を図る目的で以下のように大きく変更されています。
| 変更前 | 変更後 |
|---|---|
| 制度導入・適用計画期間の終了日(制度導入日から3年)の翌日から起算して2か月以内に行う | 計画期間中であっても、支給要件を満たした場合には制度導入から3年を待たずに支給申請を行うことができる |
ただし、この新しい申請タイミングについては以下のルールや関連する変更点があります。
- 教育訓練休暇制度の定着および活用を図る観点から、導入から3年を経る前の支給申請については、いつでもできるわけではなく「制度導入日から起算して6か月を経過した日の翌日」以降に行う必要がある
- 「制度導入・適用計画期間の初日から1年ごとに被保険者1人以上に休暇を付与する」という要件は廃止。この改正は、令和8年4月8日の改正日より前に計画届を提出している事業主にも適用される
中高年齢者実習型訓練の新設
人材開発支援助成金(人材育成支援コース)に、中高年齢の労働者を対象とした「中高年齢者実習型訓練」が新設されました。これは企業内での人材育成に取り組む事業主を支援する制度であり、主な要件と内容は以下のとおりです。
| 対象者 | 訓練開始日において、45歳以上の雇用保険被保険者 |
|---|---|
| 訓練要件 | OJTとOff-JTを組み合わせた2ヶ月以上の訓練で、6ヶ月換算で425時間以上の実施が必要。また、訓練終了後にはジョブ・カードを用いた職業能力評価の実施が求められる |
助成率・助成額は下表のとおりです。
| 項目 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 経費助成率 | 60% (+15%) | 45% (+15%) |
| 賃金助成額 (1人1時間) | 800円 (+200円) | 400円 (+100円) |
| OJT実施助成額 (1人1コース) | 10万円 (+3万円) | 9万円 (+3万円) |
| 1事業所1年度あたりの助成限度額 | 1,000万円 | 1,000万円 |
括弧内の数値は、賃金要件・資格等手当要件を満たした場合に加算される助成率・助成額です。 また、e-ラーニングや通信制による訓練については、経費助成のみが対象となります。 支給申請は、1労働者につき1年度あたり3回までが上限です。
新規採用助成、職務代行助成の追加
人材開発支援助成金の「人への投資促進コース(長期教育訓練休暇制度)」が改正され、中小企業事業主を対象に「新規採用助成」と「職務代行助成」が追加されました。
これにより、有給の長期教育訓練休暇を取得させる際の代替要員確保に関する支援が拡充されます。それぞれの助成の要件と内容は以下のとおりです。
新規採用助成
休暇取得者の業務を処理するために、新たに労働者を雇い入れるか、派遣労働者を受け入れた場合に支給されます。要件は以下のとおりです。
- その雇用する被保険者に対し、有給の長期教育訓練休暇を取得させた事業主であること
- 被保険者の業務を処理するために、新たに必要な労働者を雇い入れ、または新たに労働者派遣の役務の提供を受けた上で当該被保険者に長期教育訓練休暇を取得させた事業主であること
- 代替要員として、次のいずれにも該当する者を確保した事業主であること
- 長期教育訓練休暇取得者と原則として同一の事務所及び部署で勤務し、業務を代替する者であること
- 所定労働時間が長期教育訓練休暇取得者の2分の1以上であること
- 長期教育訓練休暇取得の最初の適用日以前1ヶ月より後に雇用契約(派遣契約)の始期があること
助成額は業務代替期間に応じて以下のようになります。
| 業務代替期間 | 助成額 |
|---|---|
| 30日以上90日未満 | 27万円 |
| 90日以上180日未満 | 45万円 |
| 180日以上 | 67万5千円 |
職務代行助成
社内の他の労働者に業務を代替させ、規定に基づき月1万円以上手当を増額して支払った場合に支給されます。要件は以下のとおりです。
- 長期教育訓練休暇取得者の従事する業務を、他の労働者に代替させていること(業務代替者は複数名でも可)
- 業務分担を明確にし、上司等から代替業務の内容、賃金について面談により説明していること
- 代替業務に対応した賃金制度(例:業務代替手当)を業務代替期間の開始日までに労働協約または就業規則に規定し、実際に賃金が1万円以上増額していること
要件を満たせば、支払った業務代行手当の75%(月額上限16万円)が支給されます。
なお、両方の助成金の要件を満たす場合でも業務代替の期間が重複している部分については、いずれか一方の助成金しか受けられないため注意が必要です。
設備投資加算の新設
人材開発支援助成金の「事業展開等リスキリング支援コース」が改正され、新たに設備投資加算が新設されました。これは、事業展開等に取り組む中小企業の事業主に対して、通常の助成額に追加して支給される制度です。
受給のためには、主に以下の要件を満たす必要があります。
- 訓練終了日の翌日から1年以内に、対象労働者の賃金を5%以上増加させるか、資格等手当を支給して賃金を3%以上増加させること
- 「設備投資加算に係る設備投資実施計画」を作成し、支給申請日までに実技訓練で実際に使用する事業展開促進機器等を導入すること
- 事業展開やDX・GX化に必要な知識・技能を習得させるための、通学制または同時双方向型の通信訓練であること
助成率は設備導入費用の50%で、上限額は労働者1人につき15万円、10人以上の場合は150万円となります。
支給申請期限は、機器等を導入し、要件を満たす賃金または手当を3ヶ月間継続して支払った日の翌日から起算して5ヶ月以内です。
受講料等の価格設定に関する疎明書の提出が必須に
2026年(令和8年)5月14日付けの支給要領改正により、訓練計画届の提出時期を問わず新たに「受講料等の価格設定に関する疎明書(様式第28号)」の提出が必要となりました。対象となるのは、以下のいずれかに該当するケースです。
- 令和8年5月14日時点で支給申請をしていない
- 支給申請はしているが、支給決定または不支給決定がされていない
支給申請にあたっては、通常の必要書類と併せて「受講料等の価格設定に関する疎明書(様式第28号)」の提出が必要です。すでに支給申請を行っている企業は管轄の労働局より追加提出に関する案内が行われます。
各種様式は厚生労働省の公式ページ「人材開発支援助成金」からダウンロード可能です。
人材開発支援助成金を受給するための共通要件
助成金は公的な資金を原資としているため、受給にあたっては厳しい条件が課せられます。どのコースを選択する場合でも、事業主として満たすべき基盤的な要件や、訓練として認められるためのルールをクリアする必要があります。
大前提として、雇用保険の適用事業所であり、保険料を適切に納付している必要があります。また、職業訓練実施計画届の提出日の前日から起算して6ヶ月前の日から支給申請書の提出日までの間に解雇などの会社都合による離職者が出ていないことも重要なポイントです。
さらに、職業能力開発推進者を選任し、「事業内職業能力開発計画」を策定して、従業員に周知することが求められます。事業の健全性と、計画的な人材育成体制が整っているかが問われます。また、助成対象となる訓練は、原則として業務から離れて行われるOff-JT(オフ・ザ・ジョブ・トレーニング)である必要があります。通常の業務を行いながらの指導は対象外です。
また、訓練時間にも要件があり、たとえばOff-JTの実訓練時間数は10時間以上のカリキュラムが組まれていることが条件となります。趣味教養に近い内容や、単なる精神論の研修ではなく、職務に直接役立つ専門性が客観的に認められる内容でなければなりません。
支給対象外となるケース
過去5年以内に助成金の不正受給を行った事業所や、暴力団関係の関与がある場合は対象外です。また、残業代未払いや最低賃金法違反など、労働基準法に抵触している場合も支給されません。
さらに、訓練の対象者が雇用保険の被保険者でない場合(役員や一部のパート・アルバイトなど)や、申請期限を一日でも過ぎてしまった場合も不支給となるため、法令遵守と期限管理には細心の注意が必要です。
人材開発支援助成金の申請から受給までのステップ
人材開発支援助成金の受給には、長期にわたる計画的な手続きが必要です。訓練を実施して終わるのではなく、実施前の計画届から、実施後の支給申請まで、決められた期限を厳守してステップを踏まなければなりません。
1.社内制度の整備
助成金を申請する前に、社内の人材育成体制を整える必要があります。具体的には、「職業能力開発推進者」を選任し、「事業内職業能力開発計画」を策定して従業員に周知することが求められます(一部コースを除く)。
後述する職業訓練実施計画届の提出までに完了させておきましょう。
2.訓練実施計画届の作成と提出
どのような訓練を誰に実施するかをまとめた「職業訓練実施計画届」を作成します。これを管轄の労働局へ、訓練開始日の6ヶ月前から1ヶ月前までの間に提出しなければなりません。期限を1日でも過ぎると受理されないため、余裕を持った準備が必要です。
計画段階でコース選択やカリキュラム内容が助成要件を満たしているか、しっかりと精査しましょう。
3.訓練の実施
計画に沿って訓練が実施されたら、証拠を残すようにしましょう。出勤簿や出席簿、OJTの訓練日誌、eラーニングであればシステム上の受講履歴などが必須となります。
審査では実際に教育が行われたかが厳格に見られるため、正確な記録を積み上げることが不可欠です。また、OJTを含むコースなどでは、訓練終了後に「ジョブ・カード」を用いて受講者の職業能力の評価を行うことも必要です。
4.支給申請書の提出
訓練がすべて終了し、訓練終了日の翌日から起算して2ヶ月以内に、支給申請書を提出します。訓練にかかった費用の領収書や、訓練期間中の賃金台帳、出勤簿などを一式揃えて提出します。
申請期限を過ぎると、せっかくの訓練が無駄になってしまうため、期限を忘れないようにしましょう。
5.審査と助成金の振込
提出された書類に基づき、労働局による審査が行われます。審査期間は自治体や時期によりますが、おおよそ数ヶ月程度かかるのが一般的です。内容に疑義があれば追加書類の提出や実地調査を求められることもあります。
審査を無事に通過すると「支給決定通知」が届き、その後指定の口座に助成金が振り込まれます。
助成金申請時に用意する書類
助成金の審査には特定の書類の提出が必要です。訓練の実態や経費の支払いを客観的に証明するために、以下のような書類が求められます。
訓練計画時:事業計画書、訓練カリキュラム、登記簿謄本など
計画届の際には、企業の基本情報を示す登記簿謄本や、訓練の全体像を示す事業計画書が必要です。また、いつ、誰が、何を、何時間学ぶのかを詳細に記した訓練カリキュラムや、外部研修の場合はそのパンフレットなども用意します。
これらの書類によって、この訓練に助成する価値があるかを労働局が判断します。
支給申請時:賃金台帳、出勤簿、領収書、訓練修了証など
支給申請では、実績を証明する書類がメインとなります。受講者が訓練当日に出勤扱いになっているかを確認する出勤簿、訓練中の賃金が正しく支払われたかを示す賃金台帳、研修会社への振込記録や領収書、そして受講者が訓練を終えたことを証明する修了証などです。
これら一連の書類に矛盾があっても修正を求められるため、正確な対応を行いましょう。また、2026年5月14日以降は、新たに「受講料等の価格設定に関する疎明書(様式第28号)」の提出が必須となっています。
審査を通過するための注意点
せっかく手間をかけて申請しても、細かなミスで不支給となってしまうケースは少なくありません。確実に受給するために押さえておくべき、実務上の注意点を解説します。
訓練時間に休憩時間は含まない
よくあるミスが、訓練時間の計算違いです。助成対象となるのは純粋な訓練時間のみであり、昼休みや途中の休憩時間は除外して計算しなければなりません。
たとえば、9時から17時まで(1時間休憩)の研修は7時間としてカウントします。これが規定の時間数に満たなくなると、その時点で不支給が決定してしまいます。カリキュラム作成時に正味の時間を再確認してください。
就業規則の変更と労働基準監督署への届け出を行う
特定のコースでは就業規則に規定があることが受給の必須要件です。せっかく規則を改定しても、労働基準監督署の受付印がないものは原則証拠として認められません。
また、従業員10人未満で届出義務がない事業所であっても、助成金申請においては届出済みの控えを求められるケースがあるため、手続きを省略せずにしっかりと完了させておくことが重要です。
審査期間の長期化に備える
人材開発支援助成金は、後払いです。先に研修費用を全額支払い、数ヶ月後にようやく入金される仕組みのため、一時的なキャッシュアウトが発生します。審査が混み合うと振込まで半年以上かかることも珍しくありません。
助成金をあてにして資金繰りが悪化しては本末転倒です。あくまで、かかった経費の一部が後で戻ってくるという認識で、手元のキャッシュフローを確保しておくことが肝心です。
まとめ
人材開発支援助成金は、企業の成長を下支えしてくれるものです。申請には緻密な計画と正確な書類管理が求められますが、それに見合うだけの大きなメリットがある制度といえます。助成金を賢く活用し、従業員のスキルアップと企業の持続的な成長を同時に実現しましょう。
社会保険の手続きや保険料の計算をラクにする方法
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よくある質問
人材開発支援助成金とは?
人材開発支援助成金は、雇用する労働者に対して職務に関連した専門的な知識や技能を習得させるための職業訓練を計画的に実施した事業主に対し、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。
労働者のキャリア形成を促進し、企業の生産性を向上させることを目的としており、厚生労働省が管轄しています。
詳しくは、記事内「人材開発支援助成金とは」で解説しています。
人材開発支援助成金の支給制限は?
人材開発支援助成金の主な支給制限として、過去5年以内に助成金の不正受給を行った場合や、労働保険料を滞納している場合は申請できません。
また、職業訓練実施計画届の提出日の前日から起算して6ヶ月前の日から支給申請書の提出日までの間に、会社都合による解雇(離職)が発生している場合も制限の対象となります。
詳しくは、記事内「支給対象外となるケース」をご覧ください。
人材開発支援助成金は他の助成金と併用は可能?
原則として、同一の訓練や同一の経費に対して、複数の公的資金を受け取ることはできません。たとえば、ITシステムの操作研修に対して「デジタル化・AI導入補助金」のサポートを受けつつ、同じ研修を「人材開発支援助成金」で申請することは重複受給(二重取り)とみなされ禁止されています。
ただし、別の目的や別の経費であれば併用可能なケースもあるため、事前に確認が必要です。
参考文献
監修 北 光太郎
きた社労士事務所 代表
中小企業から上場企業まで様々な企業で労務に従事。計10年の労務経験を経て独立。独立後は労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人・個人問わず多くの記事執筆・監修をしながら、自身でも労務専門サイトを運営している。
