人事労務の基礎知識

住民税の普通徴収とは?特別徴収との違いや切替条件、企業の実務対応のポイントなどをわかりやすく解説

監修 北 光太郎 きた社労士事務所

住民税の普通徴収とは?特別徴収との違いや切替条件、企業の実務対応のポイントなどをわかりやすく解説

住民税の納付方法には、普通徴収と特別徴収の2種類があります。普通徴収は納税者本人が自治体へ直接納付する方法で、特別徴収は企業が従業員の給与から住民税を天引きして本人に代わり納付する方法です。どちらが適用されるかは、働き方や雇用形態などによって異なります。

本記事では、住民税の基本的な仕組みから、普通徴収と特別徴収の違い、企業に求められる対応、切り替え時の注意点までわかりやすく解説します。

目次

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住民税の仕組み

住民税とは、都道府県民税と市区町村民税をあわせた地方税のことで、地域の行政サービスを支えるために徴収される税金です。住民税は所得割と均等割の2種類で構成されています。

所得割は、前年の所得金額に応じて課税される税金で、一般的には都道府県民税と市区町村民税をあわせて一律10%(都道府県民税4%、市区町村民税6%)です。一方、均等割は所得額にかかわらず一定額が課税されるもので、標準税率は年5,000円程度となっています。

また、住民税は「前年の所得」を基準に税額が決まる点が特徴です。たとえば、2026年度の住民税は2025年1月~12月の所得をもとに計算され、2026年6月から納付が始まります。そのため、退職や休職によって現在の収入が減少していても、前年に一定以上の所得があれば課税されるケースがあります。

なお、住民税は会社員などの給与所得者だけでなく、個人事業主やフリーランス、自営業者なども課税対象となります。

普通徴収と特別徴収の違い

住民税の納付方法には、普通徴収と特別徴収の2種類があります。主な違いは、下表のとおりです。


項目普通徴収特別徴収
納付者納税者本人企業(給与天引き)
徴収回数年4回年12回
1回の税負担額大きい小さい
事務負担なしあり(義務)
滞納リスク本人負担あり企業が管理
対象者自営業・退職者など給与所得者

ここでは、普通徴収と特別徴収の違いや、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。

普通徴収とは

普通徴収とは、納税者本人が自治体から送付される納付書などを使い、自分で住民税を納付する方法です。主に個人事業主やフリーランス、自営業者、退職者(次の就職先が決まっていない人)などが対象となります。また、一定の条件に該当する場合は、会社員でも普通徴収となるケースがあります。

納付回数は一般的に年 4回で、6月・8月・10月・翌年1月に分けて行われます。自治体によっては、口座振替やスマートフォン決済などに対応している場合もあるため、納付の際は自治体のホームページなどを確認してください。

普通徴収のメリット

普通徴収は、納税者自身で納付スケジュールや資金管理を行いやすい点がメリットです。給与から自動的に天引きされないため、収支を自分で把握しやすく、事業所得者などには適した方法といえます。

また、副業分の住民税を勤務先へ知られづらくしたい場合に、普通徴収を選択するケースもあります。

普通徴収のデメリット

一方で、納付を自分で行う必要があるため、納期限の管理が必要です。納付を忘れると延滞金が発生する可能性もあります。

さらに、1回あたりの納付額が大きくなりやすく、給与天引きに比べると負担を感じやすい点もデメリットです。企業側でも、普通徴収への切り替えには自治体への手続きが必要になるため、適切な管理が求められます。

特別徴収とは

特別徴収とは、企業が従業員の給与から毎月住民税を天引きし、本人に代わって自治体へ納付する方法です。原則として、給与所得者は特別徴収の対象となります。

住民税は毎年6月から翌年5月までの12回に分けて徴収され、企業は徴収した税額を翌月10日までに自治体へ納付します。所得税の源泉徴収と同様に、企業側で継続的な管理が必要となる制度です。

特別徴収のメリット

特別徴収は、毎月の給与から自動的に徴収されるため、従業員自身が納付手続きを行う必要がありません。納め忘れを防ぎやすく、1回あたりの負担額も分散されるため、計画的に納税しやすい点がメリットです。

企業側にとっても、従業員の納付漏れを防止できるほか、自治体とのやり取りを一元管理しやすいという利点があります。

特別徴収のデメリット

一方で、企業側には給与計算や税額管理、異動届の提出などの事務負担が発生します。とくに従業員数が多い企業では、毎月の納付業務や年度更新対応に工数がかかる場合があります。

また、従業員側では給与から自動的に差し引かれるため、手取り額が減少したように感じやすい点もデメリットといえるでしょう。

住民税の特別徴収は企業の義務

住民税の特別徴収は、企業が任意で選択できる制度ではなく、一定の条件を満たす従業員を雇用している場合に原則実施が義務付けられている制度です。

ここでは、特別徴収が企業の義務となる理由や、例外的に普通徴収が認められるケース、納付負担を軽減できる「納期の特例制度」について解説します。

特別徴収が義務となる理由

住民税の特別徴収は、地方税法第321条の4に基づき、原則として給与支払者である企業に義務付けられています。具体的には、前年中に給与の支払いを受けており、かつ当年度の4月1日時点で給与の支払いを受けている従業員が対象です。

企業は、自治体から通知された住民税額を毎月の給与から天引きし、翌月10日までに納付しなければなりません。これは所得税の源泉徴収と同様に、事業者側が担うべき法定義務として位置付けられています。

そのため、従業員から「自分で納付したいので普通徴収にしてほしい」と希望された場合でも、原則として企業判断で自由に切り替えることはできません。自治体が定める普通徴収の要件に該当しない限り、特別徴収として取り扱う必要があります。

例外的に普通徴収が認められるケース

特別徴収が義務である一方、一定の条件に該当する場合は例外的に普通徴収が認められます。具体的な条件は自治体によって多少異なりますが、一般的には以下のようなケースです。

例外的に普通徴収が認められるケース

  • 総従業員数が2名以下の小規模事業所
  • 他社で特別徴収されている従業員(副業・兼業など)
  • 退職予定者や休職者など、継続的な給与支払いが見込まれない場合
  • 毎月の給与額が少なく、住民税を天引きできない場合
  • 日雇いや季節労働者など、給与支払いが不定期な場合

ただし、普通徴収への切り替えは自動的に認められるわけではありません。給与支払報告書の提出時などに、普通徴収へ該当する理由を記載して自治体へ申請する必要があります。

納期の特例制度

従業員数が比較的少ない事業所では、「納期の特例制度」を利用することで、住民税の納付回数を年12回から年2回へ変更できます。

この制度を利用すると、6月~11月徴収分を12月10日まで、12月~翌5月徴収分を翌年6月10日までにまとめて納付できます。毎月の納付業務を減らせるため、バックオフィス業務の負担軽減につながります。

対象となるのは、給与の支払いを受ける従業員が常時10人未満の事業所です。利用する場合は、事業所所在地の自治体へ「納期の特例に関する申請書」を提出します。

なお、納付回数は年2回になりますが、従業員からの住民税の天引き自体は毎月継続して行う必要があります。あくまで自治体への納付頻度が変わる制度である点に注意が必要です。

特別徴収の年間手続きの流れ

住民税の特別徴収では、企業側に年間を通じた継続的な対応が求められます。

ここでは、特別徴収に関する基本的な年間手続きの流れを、時系列に沿って解説します。

給与支払報告書の提出(1月末まで)

企業は毎年1月31日までに、前年1月~12月に給与を支払った従業員の給与支払報告書を、各従業員の住民登録先の自治体へ提出します。

給与支払報告書は、住民税額を算出するための基礎資料となる重要な書類です。年末調整後の源泉徴収票とほぼ同じ内容を記載し、従業員ごとに提出します。

この際、普通徴収に該当する従業員がいる場合は、「普通徴収切替理由書(仕切紙)」に該当する理由の人数を記載し、給与支払報告書とともに提出します。理由の記載漏れがあると、原則どおり特別徴収として扱われる可能性があるため注意が必要です。

特別徴収税額決定通知書の受け取り(5月末)

5月頃になると、各自治体から企業宛に特別徴収税額決定通知書が送付されます。この通知書には、6月から翌年5月までに徴収する住民税額が記載されています。

企業は通知内容を確認し、給与計算データへ反映させる必要があります。従業員ごとの月額徴収税額が異なるため、設定ミスや転記漏れがないよう注意しましょう。

特別徴収開始・毎月10日の納付(6月~)

特別徴収は毎年6月支給分の給与から開始されます。企業は、通知書に記載された住民税額を毎月の給与から天引きし、徴収した税額を翌月10日までに自治体へ納付します。

たとえば、6月給与で徴収した住民税は7月10日までに納付する流れです。納付方法は、金融機関窓口での納付のほか、口座振替や電子納税に対応している自治体もあります。

また、年度途中で退職者や入社者が発生した場合は、異動届出書の提出や徴収方法の変更対応が必要になります。毎月の納付業務だけでなく、人事異動に伴う手続きまで含めて管理することが重要です。

特別徴収から普通徴収へ切り替える際のポイント

住民税の徴収方法は、従業員の退職や転職、働き方の変化などによって変更が必要になる場合があります。特別徴収から普通徴収への切り替えでは、企業側による届出や徴収方法の調整が必要になるため、制度を正しく理解しておくことが重要です。

対応が遅れると、住民税の未納や二重徴収につながる可能性もあるため、ケースごとの実務対応を把握しておきましょう。

従業員が退職した場合

従業員が退職した場合、退職時期によって住民税の徴収方法が変わります。

6月1日から12月31日までに退職した場合は、未徴収分の住民税を本人が普通徴収で納付するのが一般的です。企業は「給与所得者異動届出書」を自治体へ提出し、特別徴収の終了手続きを行います。

一方、1月1日から4月30日までに退職する場合は、原則として最後の給与や退職金から残額を一括徴収します(5月中に退職する場合は、最後の給与から5月分の住民税を徴収)。

ただし、給与や退職金が不足する場合などは例外対応となるケースもあります。

異動届の提出遅れは自治体との確認業務が増えることになるため、退職処理とあわせて速やかに対応してください。

中途入社した従業員の対応

中途入社の従業員については、前職での住民税の徴収状況を確認する必要があります。

前職ですでに特別徴収が行われていた場合は、従業員本人から前職の情報が記載された「給与所得者異動届出書」を受け取り、必要事項を記入のうえ自治体に提出することで、新しい勤務先でも特別徴収を継続できます。

一方、すでに普通徴収へ切り替わっている場合は、そのまま本人による納付を継続するケースもあります。ただし、自治体によっては年度途中から特別徴収へ切り替えることも可能です。その際は、「特別徴収切替届出書」を自治体へ提出します。

住民税の徴収方法によって必要な手続きが異なるため、入社時に納付状況を確認する運用を整備しておくと、その後の給与計算や行政手続きを円滑に進められるでしょう。

副業・複数事業所から給与を受けている場合

副業や兼業により、複数の事業所から給与を受けている従業員では、住民税の取り扱いが複雑になる場合があります。

住民税の特別徴収は、原則として主たる給与支払者で実施されます。そのため、副業先では普通徴収となるケースがあります。

また、副業分の住民税額によって本業側の住民税額が増加し、副業の存在に気付かれるケースもあるため、従業員から普通徴収を希望されることがあります。ただし、企業判断のみで自由に普通徴収へ変更できるわけではなく、自治体の運用基準に従う必要があります。

副業が一般的になりつつある昨今は、住民税の徴収方法に関する問い合わせが発生しやすいため、事前に社内ルールや案内フローを整備しておくとよいでしょう。

税額変更通知が届いた場合

住民税額は、年度途中で変更される場合があります。代表的な理由としては、確定申告の修正、更正、扶養情報の変更などが挙げられます。

税額変更が発生すると、自治体から特別徴収税額変更通知書が送付されます。企業は通知内容を確認し、変更後の税額を給与計算へ反映させなければなりません。

変更タイミングによっては、徴収不足や徴収超過の調整が必要になるケースもあります。とくに手作業で給与計算を行っている場合は、反映漏れや設定ミスに注意が必要です。

また、従業員から税額変更について問い合わせを受けることもあるため、通知書の配布だけでなく、必要に応じて変更理由を案内できる体制を整えておくことが重要です。

まとめ

住民税の徴収方法には、本人が納付する普通徴収と、企業が給与から天引きして納付する特別徴収があります。給与所得者については、地方税法に基づき原則として特別徴収が義務付けられており、企業には適切な徴収・納付対応が求められます。

とくに企業の経理・労務担当者は、給与支払報告書の提出、税額通知への対応、毎月の納付業務、退職・入社時の切り替え手続きなど、年間を通じた実務フローを理解しておくことが重要です。

住民税の特別徴収は、単なる給与天引き業務ではなく、法令に基づく重要な企業実務のひとつになります。制度の仕組みや対応ポイントを正しく理解し、ミスのない運用体制を整えることが、業務効率化や従業員対応の円滑化につながるでしょう。

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よくある質問

普通徴収と特別徴収の違いは?

普通徴収は、納税者本人が納付書などを使って住民税を納付する方法です。一方、特別徴収は企業が従業員の給与から住民税を天引きし、本人に代わって自治体へ納付する方法を指します。

詳しくは、記事内「普通徴収と特別徴収の違い」で解説しています。

普通徴収に切り替える際の企業の対応は?

退職や給与支払い状況など、自治体が定める条件に該当する場合は、企業が「給与所得者異動届出書」などを提出して普通徴収へ切り替えます。原則として企業判断のみで自由に変更はできません。

詳しくは、記事内「特別徴収から普通徴収へ切り替える際のポイント」をご確認ください。

参考文献

▶ e-GOV 法令検索「地方税法 第三百二十一条の四

監修 北 光太郎

きた社労士事務所 代表
中小企業から上場企業まで様々な企業で労務に従事。計10年の労務経験を経て独立。独立後は労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人・個人問わず多くの記事執筆・監修をしながら、自身でも労務専門サイトを運営している。

北 光太郎

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