監修 北 光太郎 きた社労士事務所
依願退職(いがんたいしょく)とは、従業員側からの申し出にもとづき、労働者と使用者の双方が合意することで成立する退職のことです。本人の意思が起点となるため、数ある退職区分の中でも自己都合退職に分類されます。
本記事では、依願退職の基本定義や解雇との違いをはじめ、企業側・従業員側のメリットとデメリット、退職金や失業手当の取り扱いについて網羅的に解説します。
目次
- 依願退職とは
- 依願退職と混同しやすい退職区分の違い
- 依願退職と解雇の違い
- 依願退職と会社都合退職の違い
- 依願退職と希望退職の違い
- 公務員と民間の依願退職の違い
- 依願退職の企業側のメリット
- 合意にもとづく退職のためトラブル・撤回リスクが低い
- 雇用に関する助成金の支給条件をクリアできる
- 依願退職の従業員側のメリット
- 自分のタイミングで退職・転職活動ができる
- 退職理由を「一身上の都合」とまとめられ、転職活動で不利になりにくい
- キャリアアップや生活環境の改善に向けた前向きな選択ができる
- 依願退職の企業側のデメリット
- 退職勧奨を依願退職に誘導しようとした場合、強要とみなされるリスクがある
- 退職強要は不法行為として損害賠償請求の対象になり得る
- 依願退職の従業員側のデメリット
- 失業手当に給付制限期間が発生する
- 給付日数・給付額が会社都合退職より少なくなるケースが多い
- 退職金が会社都合退職より低く設定されるケースがある
- 依願退職した場合の退職金・ボーナス・失業手当・有給休暇の扱い
- 退職金の扱い
- ボーナス(賞与)の扱い
- 失業手当(雇用保険基本手当)の扱い
- 有給休暇の扱い
- 依願退職を申し出られた場合の企業の対応手順
- 1. 退職の意思を確認し、退職日を決める
- 2. 退職願を受理する
- 3. 業務の引継ぎを要請する
- 4.書類の作成と貸与物の回収を行う
- 企業は依願退職を拒否できる?
- 無期雇用の場合
- 有期雇用の場合
- 不祥事を起こした従業員が依願退職するケースの取り扱い
- 依願退職で企業側が気をつけるべき注意点
- 退職勧奨と依願退職の境界線を明確にし、退職強要を避ける
- 試用期間中の退職申し出であっても、正規の手続きを徹底する
- 後日のトラブルを防ぐため、退職合意書の締結を検討する
- まとめ
- 入退社管理や給与計算などをカンタンに行う方法
- よくある質問
依願退職とは
依願退職(いがんたいしょく)とは、従業員側からの申し出にもとづき、労働者と使用者の双方が合意することで成立する退職のことです。
依願退職は、従業員側から労働契約の解除を申し出て、労使双方がそれに合意することによって成立します。法律や実務上は自己都合退職として扱われる、合意退職の一種です。転職や結婚、育児、介護など、個人のライフステージの変化やキャリア形成を理由とする典型的な退職の多くが、この依願退職に該当します。
依願退職の仕組みを正しく理解するためには、退職の意思表示がどのようなプロセスで進み、成立するのかを押さえておくことが重要です。具体的な流れは以下のようになります。
- 従業員からの退職の申出(退職願の提出など)
- 企業側の承諾・受理
- 退職の成立
退職手続きについては、以下記事で詳しく解説しています。
依願退職と混同しやすい退職区分の違い
依願退職には、似たような言葉や混同しやすい退職区分がいくつか存在します。
ここでは、それぞれの根本的な違いについて解説します。
依願退職と解雇の違い
解雇とは、会社側が一方的な意思表示によって雇用契約を終了させる措置です。従業員からの申し出で成立する依願退職とは、根本的に性質が異なります。
解雇には、主に「普通解雇」「懲戒解雇」「整理解雇」の3種類が存在します。労働契約法第16条により、解雇を行うには客観的・合理的な理由と社会的相当性が必要とされており、企業が自由に行えるものではありません。
一方で依願退職は、従業員側の申し出と企業の合意さえあれば、どのような理由であっても成立するという自由度の高さに違いがあります。
依願退職と会社都合退職の違い
会社都合退職とは、倒産や事業縮小、退職勧奨など、企業側の意向が起点となって行われる退職手続きです。
自己都合退職である依願退職と比較すると、退職金が割増されるケースがあるほか、失業手当の受給開始時期や給付日数の面で従業員側に有利に働きます。
依願退職と希望退職の違い
希望退職とは、企業が業績悪化時の人員削減や組織改編などを目的に退職者を募集し、その募集に応じた従業員が退職する制度です。
個人の意思が起点となる依願退職に対し、希望退職は企業の募集が起点となる構造的な違いがあります。そのため、希望退職に応じた場合は原則として会社都合退職として扱われます。
公務員と民間の依願退職の違い
公務員の場合も、本人の申し出に対して国や自治体などの任命権者が承認することで退職が成立するという基本的な流れは民間企業と同様です。
ただし、民間企業と大きく異なる点として、犯罪や不適切な行為といった非違行為があった場合の取り扱いが挙げられます。公務員に非違行為の疑いがある場合、本人が依願退職を申し出ても懲戒処分の手続きが優先されるケースが一般的です。厳正な調査を経て懲戒処分の完了を待ってから依願退職が承認されるため、退職成立までに長期間を要することがあります。
依願退職の企業側のメリット
従業員から依願退職の申し出があり合意に至る場合、企業側には労務管理上の利点が存在します。主なメリットを解説します。
合意にもとづく退職のためトラブル・撤回リスクが低い
依願退職は、双方が納得した上で労働契約を終了させる合意退職です。そのため、解雇の際に起こりがちな、不当解雇としての労働審判や訴訟などの法的なトラブルに発展するリスクが低くなります。解雇権の濫用を問われる心配がない点は、企業にとって大きな安心材料といえるでしょう。
また、退職願や退職合意書という形で書面を残すことで、言った・言わないの水掛け論を防げます。一度正式に合意が形成されれば、原則として後から従業員側の一存で退職を撤回されることもありません。確実かつスムーズに、人員計画の見直しや後任の採用活動へ移行できます。
雇用に関する助成金の支給条件をクリアできる
キャリアアップ助成金や人材開発支援助成金など、国や自治体が支給する雇用関係の助成金の多くは「過去一定期間内に会社都合退職者を出していないこと」を重要な支給要件として定めています。これは、従業員の雇用維持を目的とする制度の性質上、意図的に人員削減を行っている企業への支援を防ぐためです。
依願退職はあくまで労働者側の意思による自己都合退職にあたるため、企業が会社都合で辞めさせたという扱いにはなりません。そのため、現在受給している助成金がストップしたり、今後新たな助成金を申請する際に審査で不利になったりするなどの悪影響を及ぼさずに済むという大きなメリットがあります。
依願退職の従業員側のメリット
依願退職は従業員自身にとっても、今後のキャリアや生活を考えた上で前向きな側面があります。
自分のタイミングで退職・転職活動ができる
企業側から一方的に通告される解雇や、期限が区切られている希望退職とは異なり、自分自身の人生計画に沿って退職時期を決定できるのが最大の強みです。
ボーナスの支給月や業務の繁忙期を避けたり、有給休暇の残日数を計算して最終出勤日を調整したりと、ゆとりを持ったスケジュールを組むことができます。在職中から計画的に転職活動を進めておけば、退職日の翌日から新しい会社に入社し、収入の空白期間を作らずにキャリアを移行することも十分可能です。
退職理由を「一身上の都合」とまとめられ、転職活動で不利になりにくい
履歴書や職務経歴書に退職理由を記載する際、詳細な事情を深掘りすることなく「一身上の都合により退職」と定型文でまとめることができます。
懲戒解雇や会社都合退職などの記載があると、採用担当者に「何かトラブルを起こしたのではないか」「スキル不足でリストラされたのではないか」といったネガティブな先入観を与えかねません。しかし依願退職であればそのようなマイナスイメージを持たれにくく、面接の場でも「今後のキャリアアップのため」といった前向きな理由に転換しやすいため、転職活動において不利になりにくい点がメリットです。
キャリアアップや生活環境の改善に向けた前向きな選択ができる
より高い給与水準や魅力的な業務内容を求めての転職活動はもちろん、結婚や出産、育児、親の介護といったライフステージの変化に合わせたワークライフバランスの改善など、自身の将来に向けた主体的な選択を実現できます。
また、一度完全に仕事を離れて資格取得のための勉強に専念したり、留学を通じてリスキリングを行ったりと、自分自身の価値を高めるための時間を確保する手段としても、依願退職は有効な選択肢となります。
依願退職の企業側のデメリット
依願退職に関連して、企業側が対応を誤ると深刻なリスクにつながるデメリットも存在します。とくに無理な働きかけには注意が必要です。
退職勧奨を依願退職に誘導しようとした場合、強要とみなされるリスクがある
企業が業績悪化や能力不足などを理由に退職してほしい従業員に対し、自己都合退職の形をとらせようと執拗に迫った場合、実質的な退職強要とみなされるリスクがあります。
退職勧奨自体は違法ではありませんが、従業員が明確に拒否しているにもかかわらず何度も面談を繰り返したり、大声で威圧したり、他の従業員から隔離した部屋に異動させたりする行為は退職強要やパワーハラスメントに該当し、不法行為となる可能性があります。
退職強要は不法行為として損害賠償請求の対象になり得る
退職強要が客観的に認められた場合、民法上の違法な不法行為として、精神的苦痛を受けた従業員から損害賠償や慰謝料を請求される可能性があります。
実際に裁判へと発展し、企業側に数百万円単位の賠償金の支払いが命じられた判例も存在します。さらに、これらの労働トラブルがSNSや口コミサイトなどで外部に漏えいした場合は、ブラック企業というレッテルを貼られて社会的信用を大きく損ない、今後の採用活動や取引先との関係悪化などに発展する原因にもなり得るでしょう。
依願退職の従業員側のデメリット
従業員にとって、依願退職(自己都合退職)を選択することは、金銭面や生活保障の面でデメリットを伴う場合があります。
失業手当に給付制限期間が発生する
会社都合退職の場合は、ハローワークでの手続きと7日間の待期期間が経過した後、すぐに失業手当を受給し始めることができます。しかし依願退職をはじめとする自己都合退職の場合は、待期期間に加えて原則として1ヶ月の給付制限期間が発生します。
直近5年間に2回以上の自己都合退職をしている場合は、給付制限期間が3ヶ月に延長されるため注意が必要です。この間は雇用保険からの収入が一切なくなるため、あらかじめ当面の生活費を貯蓄で賄えるよう資金計画を立てておく必要があります。
給付日数・給付額が会社都合退職より少なくなるケースが多い
失業手当を受け取れる上限の日数である「所定給付日数」も、会社都合退職などに該当する特定受給資格者と比較して短く設定される傾向にあります。
たとえば、雇用保険の加入期間が5年未満の場合、特定受給資格者であれば年齢によって最大で150日分などの手当を受け取れますが、自己都合退職の場合は年齢に関わらず一律で90日分となります。受給できる期間が短くなる分、結果として受け取れる総受給額が少なくなるケースが一般的です。
退職金が会社都合退職より低く設定されるケースがある
退職金制度を設けている多くの企業の退職金規程において、依願退職のような自己都合退職は、定年退職や会社都合退職よりも退職金の支給係数(掛け率)が低く設定されているケースがあります。
企業側には「長く会社に貢献してくれた方を手厚く評価したい」「自己都合で早期に退職する場合は、支給額に差を設けたい」といった考えがあるためです。とくに勤続年数が3年未満など極端に短い場合は、自己都合退職での退職金自体が不支給となる規定を設けている企業も珍しくありません。そのため、想定していたよりも退職金が少なくなり、退職後の資金計画が狂ってしまう可能性があります。
依願退職した場合の退職金・ボーナス・失業手当・有給休暇の扱い
依願退職が成立した場合、給与以外の金銭や権利の取り扱いがどうなるのかはトラブルになりやすいポイントです。各種制度の扱いを整理します。
退職金の扱い
退職金の支給は法律で義務付けられているものではなく、各企業の就業規則や退職金規程の定めに従います。依願退職(自己都合退職)の場合は、会社都合退職よりも支給額が低く設定されているケースが一般的です。勤続年数が短い場合は減額、あるいは不支給となることもあります。
また、規程に定めがあれば、不祥事を起こして懲戒解雇する従業員に対して支給額を減額または不支給とすることも可能です。
ボーナス(賞与)の扱い
ボーナスについても法的な支払い義務はなく、賞与規程などの定めに従って判断されます。たとえば、規程に支給日在籍要件がある場合、支給日よりも前に退職するとボーナスを受け取ることができません。
また、退職が決定している従業員に対しては、将来の貢献への期待分を差し引いて減額されるケースもあります。ただし、過去の労働に対する対価という性質も持つため、全額不支給とすることは不適切とみなされる可能性が高いといえます。
失業手当(雇用保険基本手当)の扱い
依願退職であっても雇用保険の加入期間を満たせば失業手当を受給可能です。しかし前述のとおり、給付制限期間が設けられており、給付日数も特定受給資格者などと比べて少なくなります。
| 項目 | 依願退職 (自己都合退職) | 会社都合退職 (特定受給資格者) |
|---|---|---|
| 給付制限期間 | 原則1ヶ月(条件により3ヶ月) | なし |
| 所定給付日数 | 最大150日 | 最大330日 |
ただし、依願退職であっても、家庭事情の急変、医師の判断による就業困難、ハラスメント被害などのやむを得ない事情がある場合は特定理由離職者として認められ、給付制限が解除されるケースがあります。
企業側は、従業員の退職後速やかに離職証明書および雇用保険被保険者資格喪失届をハローワークへ提出する義務があります。
有給休暇の扱い
年次有給休暇は従業員の正当な権利であり、依願退職の場合でも退職日までに取得することが可能です。企業側は有給消化を妨げることはできず、むしろ引継ぎ日程を調整したうえで計画的な取得を促す対応が望まれます。取得しないまま退職日を迎えた場合、その有給休暇の権利は消滅します。
依願退職を申し出られた場合の企業の対応手順
実際に従業員から依願退職の申し出を受けた際、企業が取るべき標準的な手続きの流れを解説します。
1. 退職の意思を確認し、退職日を決める
本人から退職の申し出があった場合は、まず面談を実施し、本人の退職の意思が固いことを確認します。民法上、退職の申し出から2週間が経過すれば最短で退職が成立します。
しかし、就業規則で「退職希望日の1ヶ月前までに申し出ること」などと定めている場合、その規定に従って引継ぎ期間を設ける対応が求められるため注意が必要です。実務上は、有給休暇の残日数、業務の引継ぎ期間、給与の締め日などを総合的に考慮し、労使間で相談して退職日を調整します。
2. 退職願を受理する
退職日が決まったら、従業員から退職願を提出してもらいます。退職願は、従業員から退職の意思表示を示す重要な書類です。
就業規則に「退職希望日の〇ヶ月前までに提出」といった期限の定めがある場合は、期限内の提出を促し、退職日や退職理由の認識に相違がないかを確認して受理します。
3. 業務の引継ぎを要請する
退職後の業務に支障が出ないよう、後任者の選定を行い、従業員に対して引継ぎ書の作成と確実な業務移行を要請します。必要に応じて、担当していた取引先や顧客への挨拶の機会も設けます。
4.書類の作成と貸与物の回収を行う
退職の手続きとして、企業から従業員へ渡す書類と、従業員から回収する物品の整理を行います。
企業が従業員に渡す書類
- 離職票
- 源泉徴収票
- 雇用保険被保険者証
- 年金手帳(預かっている場合)
- 退職証明書(本人が希望した場合)
退職日に回収するもの
- 資格確認書(発行している場合)
- 社員証や入館証
- 貸与PCやスマートフォン
- 制服などの貸与品
企業は依願退職を拒否できる?
人手不足などの理由から、企業が従業員の退職を引き留めたいと考えるケースは少なくありません。法的に退職を拒否できるのかどうかを雇用形態別に解説します。
無期雇用の場合
正社員などの無期雇用契約の場合、企業は原則として依願退職を拒否することができません。民法第627条により、従業員が退職を申し出た日から2週間が経過すると、企業の合意の有無にかかわらず自動的に退職が成立します。
なお、多くの企業では就業規則で「退職の1ヶ月前までに申し出ること」など民法よりも前に退職を申し出ることを定めています。この規定は、労働者の自由を著しく制限しない限り 効力が認められる傾向にあります。
ただし、万が一従業員が就業規則の予告期間を守らず、民法に基づき2週間での退職を申し出た場合、2週間経過時点で雇用契約は終了します。企業側が「辞めさせない」と不当に退職を妨げたり、無理やり働かせ続けたりすることはできない点に留意が必要です。
有期雇用の場合
契約社員などの有期雇用契約の場合、原則として契約期間中の退職は認められていません。ただし、労働基準法第137条の規定により、契約期間が1年を超える場合で初年度が経過した後は、いつでも退職を申し出ることが可能です。
また、民法第628条により、病気や家族の介護など「やむを得ない理由」がある場合は、有期雇用であっても即時退職が認められます。
不祥事を起こした従業員が依願退職するケースの取り扱い
戒告、減給、降格、出勤停止などの懲戒処分を受けた従業員が、社内に居づらくなり自ら依願退職を申し出るケースがあります。
この場合、懲戒解雇や諭旨退職(ゆしたいしょく)とは扱いが異なります。諭旨退職は、懲戒解雇相当の事案に対して情状酌量し、退職を勧告して退職願の提出を促す温情的な措置であり、退職金も全額または一部支給されることが一般的です。
一方、不祥事を起こした従業員の依願退職をそのまま自己都合退職として受理した場合、企業側が「重大な就業規則違反があったため、退職金を減額・不支給にしたい」と考えたとしても、就業規則や退職金規程に不支給や減額条項といった明確な根拠がなければ実施できません。
依願退職で企業側が気をつけるべき注意点
実務において、依願退職をスムーズかつ適切に処理するために企業が留意すべきポイントを解説します。
退職勧奨と依願退職の境界線を明確にし、退職強要を避ける
企業側から退職を促す行為は退職勧奨にあたり、これに応じた退職は原則として会社都合退職または合意解約として扱うのが適切です。退職勧奨を行ったにもかかわらず、依願退職(自己都合退職)として処理してしまうと、後になって従業員から「退職を強要された」と主張され、法的なトラブルに発展するリスクがあります。
依願退職として扱えるのは、あくまで従業員本人の自発的な意思による申し出があった場合のみである点を実務担当者の間で共通認識として持っておくことが大切です。
試用期間中の退職申し出であっても、正規の手続きを徹底する
試用期間中であっても労働契約は有効に成立しています。そのため、一般の従業員が退職する際と同様の適切な手続きが必要です。試用期間だからといって口頭のやり取りだけで済ませるのではなく、就業規則に定められている退職申し出の期限を案内し、退職願の提出など所定の手続きを必ず踏むよう丁寧に促すことが重要です。
後日のトラブルを防ぐため、退職合意書の締結を検討する
退職が成立した後に「本当は辞めるつもりはなかった」「会社から無理やり辞めさせられた」といったトラブルを防止するため、書面による退職合意書を締結することが望ましい対応です。具体的な記載事項として、退職日、退職事由、未払い賃金の清算、守秘義務、清算条項などを漏れなく盛り込むことで、労使双方にとって安全かつ確実な形で雇用契約を終了させることができます。
まとめ
依願退職は従業員からの申し出を起点とする自己都合退職であり、企業側の一方的な意思による解雇や会社都合退職とは性質が大きく異なります。
退職金やボーナスなどの金銭的措置は、法律だけでなく自社の就業規則や関連規程の内容にも大きく左右されるため、日頃から内容を正確に整備しておくことが重要です。
また企業側は、必要に応じて退職合意書を活用するなど、リスク管理を意識した適切な実務対応が求められます。実際に従業員から依願退職の申し出があった際は、本記事で解説した手順に沿って、丁寧かつスムーズな対応を心がけましょう。
入退社管理や給与計算などをカンタンに行う方法
入退社時に必要な書類の作成がラクに
よくある質問
依願退職と会社都合退職では、失業手当の受給条件はどう違う?
依願退職は自己都合退職に分類されるため、失業手当の受給開始まで原則1ヶ月の給付制限期間があります。また、給付日数も会社都合退職(特定受給資格者)に比べて短くなります。
ただし、ハラスメント被害や家庭の急変など一定の事情がある場合は「特定理由離職者」として扱われ、給付制限が解除されるケースもあります。
詳細は、記事内の「依願退職した場合の退職金・ボーナス・失業手当・有給休暇の扱い」をご参照ください。
従業員が退職の意思を示した場合、企業は依願退職を拒否できる?
無期雇用の場合、企業は原則として依願退職を拒否できません。従業員が退職を申し出てから2週間が経過すると、企業の同意にかかわらず退職が成立します。ただし、就業規則で「退職希望日の1ヶ月前までに申し出ること」などと定めている場合は、実務上はその規定に従うのが原則です。
また、有期雇用の場合は一定の制限がありますが、やむを得ない理由がある場合は即時退職も認められます。
詳細は、記事内の「企業は依願退職を拒否できる?」をご覧ください。
不祥事を起こした従業員が依願退職を申し出た場合、退職金を減額・不支給にできる?
依願退職として処理する場合でも、退職金の減額・不支給には就業規則や退職金規程上の明確な根拠が必要です。懲戒解雇に相当する行為があった場合の減額規定など、あらかじめ規程に定めておくことが重要です。規程の根拠なく減額・不支給とすると、後日トラブルになる可能性があります。
詳しくは、「不祥事を起こした従業員が依願退職するケースの取り扱い」で解説しています。
参考文献
監修 北 光太郎
きた社労士事務所 代表
中小企業から上場企業まで様々な企業で労務に従事。計10年の労務経験を経て独立。独立後は労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人・個人問わず多くの記事執筆・監修をしながら、自身でも労務専門サイトを運営している。



