人事労務の基礎知識

振替休日と代休の違いとは?割増賃金・給与計算・運用ルールをわかりやすく解説

監修 北 光太郎 きた社労士事務所

振替休日と代休の違いとは?割増賃金・給与計算・運用ルールをわかりやすく解説

振替休日と代休は日常業務で混同されやすい言葉ですが、休日を振り替えるタイミングや割増賃金の要否などに違いがあり、実務上は区別して運用する必要があります。

とくに実務上で大きな違いとなるのが、割増賃金が発生するかどうかです。この違いを理解せずに運用してしまうと、意図せず未払い賃金が発生したり、労働基準法違反に問われたりするリスクがあります。

本記事では、振替休日と代休の定義から、割増賃金の発生条件、具体的な給与計算の方法、就業規則への記載ポイントや実際の運用フローまで詳しく解説します。

目次

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振替休日と代休の違い

振替休日と代休の主な違いを一目でわかる比較表にまとめました。


振替休日代休
定義事前に休日と労働日を入れ替える制度休日労働の代償として事後に休みを与える制度
発生タイミング休日出勤より前休日出勤より後
割増賃金の有無原則なし
(週40時間超えは発生)
あり
(休日労働の割増分が必須)
就業規則規定必須法的義務はないが実務上は必須

比較表からもわかるとおり、最大の違いは休日の変更手続きを事前の入れ替えで行うか、事後の代償として行うかという点です。

振替休日と代休の定義と発生タイミング

まずは、振替休日と代休のそれぞれの定義と発生タイミングについて解説します。

振替休日とは

振替休日とは、あらかじめ休日と定められていた日を労働日に変更し、その代わりに別の労働日を休日とする制度です。

厚生労働省のガイドラインなどでも示されているとおり、振替休日が発生するタイミングは休日出勤日より前となります。あらかじめ休日と労働日を交換しているため、もともと休日だった日に出勤しても休日労働にはなりません。通常の労働日に出勤したこととまったく同じ扱いになります。

代休とは

代休とは、従業員を休日に労働させた後、その代償として別の労働日を休みにする制度です。

厚生労働省の見解にもとづく実務上のポイントは、代休の発生タイミングは休日出勤より後になるということです。事前に休日を入れ替える振替休日とは異なり、休日に働いたという事実は消えません。そのため、法律上は明確に休日労働をしたことになります。

振替休日と代休の割増賃金の有無

振替休日と代休は、割増賃金の有無において異なります。

振替休日では割増賃金が発生しないケース・するケースがある

振替休日は原則として休日労働の割増賃金が発生しませんが、振り替えるタイミングによって時間外割増賃金が発生することがあります。

同一週内の振替であれば割増賃金は発生しません。たとえば、日曜日を休日から労働日に変更し、同じ週の水曜日を休日に振り替えた場合などを指します。この場合、1週間の労働時間の総枠は変わらないため、追加の賃金は不要です。

ただし、週をまたいだ振替の場合は注意が必要です。ある週の休日を労働日にし、翌週以降に代わりの休日を設定した場合、出勤した週の労働時間が週40時間を超えるケースがあります。この週40時間を超えた部分については、休日労働ではなく時間外労働として25%以上の割増賃金を支払う義務が生じます。

代休を取得しても割増賃金が発生する

一方で、代休を取得したとしても、休日に労働した事実がある以上、会社は割増賃金を支払う義務を負います。

労働基準法では、週1回または4週4休の休日である法定休日に労働させた場合、35%以上の割増賃金の支払いが必要です。また、会社が任意で定めた休日である法定外休日に労働させ、週40時間を超えた場合は25%以上の割増賃金が発生します。

代休を取得することで、休日労働分の基礎賃金(100%分)と代休取得日の賃金(100%分)を相殺することは可能です。しかし、割増部分(25%から35%)については相殺の対象にはならず、必ず追加で支払わなければなりません。

振替休日と代休の就業規則規定と法的根拠

振替休日と代休を正しく運用するためには、就業規則への規定が非常に重要です。とくに両者では法律上で求められる規定の要否が異なるため、それぞれの性質に合わせたルール作りが求められます。

振替休日は就業規則への明記が必須

振替休日は労働基準法に直接的な条文の根拠を持つ制度ではなく「休日は必ずしも特定すべきことを要求していない」という、労働基準法第35条(休日)にもとづいた行政通達の解釈によって認められている制度です。

そのため、実務上は就業規則に「業務の都合により、あらかじめ指定した休日を他の日に振り替えることがある」という旨を明記しておくことが必須となります。

規定がないまま会社都合で休日を入れ替えることは契約違反となる恐れがあるため注意が必要です。あわせて、振替を行う際の事前通知の期限や手続きのルールも定めておくと、現場での運用がスムーズになります。

代休は法的義務ではないが実務上は必須

代休についても労働基準法上で義務化されている制度ではありません。しかし、代休は賃金や休日に関する事項であるため、実務上は就業規則に定める必要があります。

ルールが曖昧なまま運用すると未消化の代休が積み上がったり、割増賃金の未払いトラブルにつながったりする恐れがあります。とくに代休については、事後に休日を与えたとしても元の休日労働に対する割増賃金(35%または25%の割増分)の支払いは必要となるため、注意が必要です。

トラブルを未然に防ぐためにも、代休を取得できる期間や具体的な申請手続きのフロー、代休取得時の割増賃金の支払いルールなどを、就業規則に明確に定めておく必要があります。

振替休日と代休の給与計算への影響

ここでは、実務で給与計算を行う際の影響額を具体例を用いて比較します。

振替休日の給与計算例

同一週内で振替休日を実施した場合、追加の賃金支払いはゼロです。

しかし、週またぎの振替を行い、その週の労働時間が合計48時間になったとします。法定労働時間の40時間を超えた8時間分については、基礎時給に対して25%の割増賃金を追加で支給する必要があります。時給1,000円の従業員であれば、1,000円×8時間×0.25=2,000円の時間外割増賃金を支払う必要があるということです。

代休の給与計算例

時給1,000円の従業員が法定休日に8時間働き、後日代休を取得したとします。この場合、休日労働の賃金は「1,000円 × 8時間 × 1.35 = 10,800円」となります。

後日代休を取得した日に本来支払うべき基礎賃金(8,000円)と相殺しても、割増分の2,800円(8,000円 × 0.35)は給与(割増賃金)として必ず支給しなければなりません。もし代休を取得しなかった場合は、10,800円をそのまま全額支給することになります。

また、法定外休日に出勤し、週40時間を超えていた場合は25%の割増分(2,000円)の支払いが必要です。

振替休日のメリット

企業側と従業員側、双方における振替休日のメリットを解説します。

人件費コストを抑えられる

同一週内で振替休日を行えば割増賃金が一切発生しないため、同じ休日出勤であっても賃金コストを最小化できるのが企業にとっての最大のメリットです。とくに休日出勤が定期的に発生する職場では、代休であれば必ず発生する25〜35%の割増分を削減できるため、年間を通じたコスト抑制効果が非常に大きくなります。

36協定の時間外労働時間数を圧迫しない

振替休日は適法な労働日の移動であるため、そもそも休日労働の扱いになりません。そのため、36協定で定めた時間外および休日労働の上限時間を圧迫せず、残業時間の管理が厳しい企業にとって運用しやすい制度です。

従業員の休日をしっかり確保しやすい

事前に代わりの休日を確定させてから出勤するため、従業員が休みを取り損ねるリスクを防げます。とくに同一週内で振り替えるルールにすれば、連勤による疲労の蓄積を防ぐ効果が期待できます。

振替休日のデメリット

コスト面で有利な振替休日ですが、運用上のハードルも存在します。

事前手続きが必要で急な休日出勤には対応できない

振替は事前の取り決めが必須条件です。急なトラブル対応など、当日に決まった突発的な休日出勤が生じた場合は自動的に代休扱いとなります。現場の担当者が事後対応で振替のつもりとして処理しても、法的には代休となりトラブルの原因になります。

就業規則への明記と労使間の周知が必要

制度を有効に機能させるには、就業規則への規定が不可欠です。規定が不十分なまま運用を続けると、労働基準監督署の調査が入った際に通常の休日労働と判断され、過去に遡って割増賃金の未払いリスクが生じます。

週をまたぐ振替は割増賃金が発生するケースがある

同一週内の振替なら追加コストはかかりませんが、週をまたいだ場合は週40時間超の部分に25%の時間外割増が発生しえます。コスト削減を意図した振替が、逆に給与計算の手間やコスト増につながるケースもあるため注意が必要です。

代休のメリット

続いて、代休制度を取り入れることによるメリットを見ていきます。

急な休日出勤にも柔軟に対応できる

事前の振替手続きが不要なため、トラブル対応や納期直前の突発的な業務対応に向いています。休日出勤が終わった後に、業務の落ち着きを見計らって取得日を調整できる柔軟性が強みです。

従業員が取得日を選べるため納得感・モチベーションが高まりやすい

振替休日は会社側主導で取得日が指定されやすいのに対し、代休は従業員自身の都合に合わせて柔軟な取得が可能です。取得の自由度が高い分、社員の納得感が高まりやすく、社員満足度や定着率の維持に貢献します。

就業規則への明記が法的義務ではなく導入ハードルが低い

代休制度は法律上の規定義務がないため、中小企業など制度整備が追いついていない職場でも運用を開始しやすいという特徴があります。ただし、実務上は賃金の支払いや休日に関することは就業規則において重要事項であるため、記載は必須となります。

代休のデメリット

代休特有の課題やリスクについても説明します。

割増賃金コストが必ず発生する

前述の計算例で示したとおり、代休を取得して基礎賃金を相殺できたとしても、休日労働に対する25〜35%の割増賃金分は必ず発生します。休日出勤が増えるほど確実に人件費を圧迫します。

代休の未消化が積み上がる恐れがある

明確な取得期限を設定していない場合、代休の権利を持ったまま休めない状態が続きます。長期間積み上がった未消化分が、退職時にまとめて未払い賃金として請求されるなどのリスクがあります。

取得が遅れると従業員の疲労回復が損なわれる

休日出勤の直後に代休を取得できないケースでは、実質的に連続稼働が続くことになります。健康管理やメンタルヘルスの観点からも、取得推奨期限を設けて早めの休養を促すことが重要です。

未消化代休の管理が複雑になりやすい

複数の従業員の代休残日数を手作業や表計算ソフトで管理していると、集計ミスや申請漏れが起きやすくなります。勤怠管理システムを活用した自動管理を導入することが、実務上の解決策として有効です。

振替休日と代休の申請・運用フロー

ここでは、実務をスムーズに行うための、振替休日と代休の一般的な運用フローをそれぞれ紹介します。正しい手順を踏むことが、労使トラブルを防ぐ鍵となります。

振替休日の運用フロー

振替休日は、事前の手続きがすべてです。以下の手順を必ず休日出勤の前に完了させる必要があります。

1. 従業員からの事前申請または会社からの打診

休日出勤が必要になった段階で、従業員は上長へ相談したうえで申請を行います。このとき、従業員に対しては単に出勤のお願いをするだけでなく、同時に代わりの休日の候補日もセットで決めておくことが重要です。

2. 会社による承認と振替日の特定

申請を受けた上長や人事担当者は、業務上の必要性を確認したうえで承認を行います。この際、同一週内に振り替えることが原則です。また、法定休日については就業規則で「4週4休制」を定めていない限りは、原則として週1日の確保が必要になるため、法定休日の振替時は注意が必要です。

3. 従業員への事前通知

会社による承認が完了したら、勤怠管理システムや書面など、後から確認できる記録に残る形で通知を徹底します。

4. 勤怠記録への反映および休日と労働日の入れ替え

勤怠管理システム上で、対象となる休日の設定を「労働日」に変更し、振替日を「休日」に変更します。この処理を事前に行っておくことで、給与計算時にシステムが誤って休日割増賃金を計算してしまうミスを防げます。

代休の運用フロー

代休は、休日出勤が事後に確定してからの手続きとなります。とくに給与計算の処理に注意が必要です。

1. 突発的な理由などによる休日出勤の発生

急なシステムトラブルの対応や納期直前の業務など、事前の振替手続きがどうしても間に合わず、やむを得ず休日に出勤した場合に発生します。

2. 休日労働としての割増賃金の計上

休日に労働した事実が確定した時点で、会社には割増賃金の支払い義務が生じます。法定休日であれば35%増し、法定外休日で週40時間を超えていれば25%増しの割増賃金を、その月(当月締め翌月払いの場合は翌月)の給与計算で計上します。

3. 従業員からの代休申請

休日出勤が終わった後日、従業員から代休取得の申請を受け付けます。代休の未消化が積み上がるのを防ぐため、「休日出勤した日から1ヶ月以内に取得する」など就業規則で期限を定めることで、早めの休養を促すことが重要です。

4. 勤怠記録への反映および基礎賃金部分の相殺処理

従業員が代休を取得した日の勤怠記録を更新します。この際、給与計算においては「休日労働分の割増賃金(25〜35%)」はそのまま支給対象として残し、「代休を取得して休んだ日の基礎賃金(100%)」のみを不就労分として控除して相殺する処理を行います。

振替休日・代休に関して企業側が注意すべきトラブル事例

運用上のささいなミスや認識のズレが、労使間の大きなトラブルに発展することがあります。よくあるトラブル事例を紹介します。

事前の振替通知を忘れて代休扱いになってしまった

振替日を決める前に休日出勤をした場合、法律上は代休扱いとなります。担当者が振替休日のつもりで割増賃金を支払わなかった結果、後から労働基準監督署に指摘されたり、未払い賃金を請求されたりする事例は少なくありません。

代休の取得期限を設けずに未消化が積み上がった

忙しい部署などで代休を取得するタイミングがなく、未消化の代休が数十日分も溜まってしまうケースです。従業員の健康被害リスクが高まるだけでなく、退職時にまとめて精算を求められる財務上のリスクも生じます。

週をまたいだ振替休日で割増賃金を払い忘れた

振替休日なら割増賃金は一切不要と誤解し、翌週以降に振り替えて週40時間を超えた分の25%割増を支給し忘れるという計算ミスも頻出します。

振替休日の取得が賃金締切日(締日)をまたがってしまった

休日出勤をした日と、代わりの休日を取得した日が異なる給与計算期間になってしまうケースです。この場合、労働基準法の賃金全額払いの原則にもとづき、働いた分の賃金はその月の給与で全額支払わなければなりません。

休日出勤をした月には通常の給与に1日分の労働賃金を上乗せして支給し、実際に休みを取った翌月で1日分の賃金を控除して精算するのが正しいルールです。担当者がこれを相殺して「どちらの月も通常の基本給のまま」として処理してしまうと、法律違反となるため注意が必要です。

休日の種類(法定休日・法定外休日)を混同した

トラブルを防ぐためには、2種類の休日を正しく理解し整理しておくことが不可欠です。

法定休日とは労働基準法で義務付けられた週1日(または4週4休)の休日のことで、ここで働かせた場合の割増率は35%です。

法定外休日(所定休日)とは、週休2日制の企業などが法律の基準を超えて独自に設けている休日のことを指します。ここで働かせた場合、休日割増の35%は不要ですが、週40時間を超えていれば時間外割増の25%が必要になります。これらを混同すると給与計算を間違える原因となります。

法定休日と法定外休日については、以下の記事もあわせてご覧ください。


【関連記事】
法定休日・所定休日とは?違いや割増賃金の計算方法、振替休日・代休との関係までわかりやすく解説

まとめ

振替休日と代休の違いは、休日の変更手続きが休日出勤の前か後かという時間軸と、それに伴う割増賃金の支払い義務が生じるかどうかの2つの軸で整理すると理解しやすくなります。事前に休日を入れ替える振替休日に対し、代休は休日労働の事実が残るため割増賃金が必須となります。

どちらの制度を運用するにしても、適切な労務管理のためには就業規則の整備と現場の担当者への周知徹底が重要です。また、複雑になりがちな給与計算ミスや未消化日数の管理漏れを防ぐため、自社に合った勤怠管理システムを活用することも業務効率化の有効な手段となります。

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よくある質問

振替休日は必ず同じ週に取得しなければならない?

法律上、必ず同じ週内に取得しなければならないという義務はありません。翌週や翌月に振り替えることも可能です。しかし、週をまたいで振り替えた結果としてその週の労働時間が週40時間を超えた場合、超えた部分に時間外割増(25%)が発生します。従業員に休養を促す意味でも同一週内での振替が推奨されます。

詳しくは、記事内の「振替休日では割増賃金が発生しないケース・するケースがある」で解説しています。

代休を取得しても、割増賃金はもらえる?

代休を取得した場合でも、割増賃金分は必ず支払われます。休日に労働した時点で割増賃金の支払い義務が生じるためです。代休取得によって通常賃金部分(100%分)は相殺されますが、法定休日の35%や法定外休日で週40時間を超えた場合の25%といった割増部分は必ず支給される必要があります。

詳しくは、記事内の「代休を取得しても割増賃金が発生する」をご覧ください。

振替休日と代休は、どちらが会社にとってコスト面で有利?

一般的には、振替休日の方がコスト面で有利です。事前に手続きを行って同一週内で休みを振り替えれば割増賃金が発生しないため、コストを抑えやすくなります。一方、代休は事後の手続きとなり柔軟性が高い反面、必ず休日労働の割増賃金が発生するため人件費が増加します。

詳しくは、記事内の「人件費コストを抑えられる」で解説しています。

参考文献

▶︎ 厚生労働省「振替休日と代休の違いは何か。
▶︎ 山梨労働局「代休?振替休日?
▶︎ e-Gov法令検索「労働基準法第三十五条、第三十六条、第三十七条

監修 北 光太郎

きた社労士事務所 代表
中小企業から上場企業まで様々な企業で労務に従事。計10年の労務経験を経て独立。独立後は労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人・個人問わず多くの記事執筆・監修をしながら、自身でも労務専門サイトを運営している。

北 光太郎

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