人事労務の基礎知識

労働三法とは?それぞれの法律の役割・違いや労働三権との関係を解説

監修 北 光太郎 きた社労士事務所

労働三法とは?それぞれの法律の役割・違いや労働三権との関係を解説

労働三法とは、日本における労働者の権利を守るために制定された、最も中心的な3つの法律の総称です。具体的には「労働基準法」「労働組合法」「労働関係調整法」を指します。

本記事では労働三法の基本から、根底にある労働三権との関係、さらに各法律の重要なキーワードまでわかりやすく解説します。

目次

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労働三法(ろうどうさんぽう)とは

労働三法とは、日本における労働者の権利を守るために制定された、もっとも中心的な3つの法律の総称です。具体的には「労働基準法」「労働組合法」「労働関係調整法」を指します。

これらは、個人の生活の安定や適切な労働環境の確保、そして組織としての交渉力を担保するために作られました。日本の労働法制の背骨とも言える存在であり、雇用形態を問わず、すべての働く人に関係するきわめて重要な法律群です。

労働三法を構成する、労働条件の最低基準を定めた「労働基準法(労基法)」、労働組合の結成や活動を保障する「労働組合法(労組法)」、労働者と会社の間で起きた紛争を解決するための「労働関係調整法(労調法)」はそれぞれ異なる目的と役割を持っています。これらが三位一体となり、働く現場のルールを多角的に支えているのです。

労働三法が必要とされる理由は、会社(使用者)と労働者の間に圧倒的な格差があるからです。市場経済において、1人の労働者は会社に対して弱い立場にあります。もし法的な規制がなければ、会社側が有利な条件を押し付け、不当な長時間労働や低賃金が横行しかねません。

こうした立場の非対称性を是正し、労働者が対等な立場で人間らしく働けるようにするために労働三法が作られました。

労働三法と労働三権との関係性

労働三法の根底には、日本国憲法第28条で保障されている労働三権(ろうどうさんけん)があります。憲法は国が守るべき最高法規ですが、そこに記された抽象的な権利を、実際の社会で機能させるための具体的なルールとして落とし込んだのが労働三法です。

つまり、以下の3つの憲法(労働三権)を土台として、具体的な法律(労働三法)が建築されているという関係性があります。

団結権:労働組合を作る権利

労働三権の1つ目が、団結権(だんけつけん)です。これは、労働者が会社と対等に渡り合うために、自主的に労働組合という組織を結成したり、そこに加入したりする権利を指します。

1人の力は小さくても、大勢が集まって団結することで、会社に対して無視できない交渉力を持つことができるようになります。この団結権を具体的に保護しているのが、労働三法の労働組合法です。

団体交渉権:会社と対等に話し合う権利

2つ目の権利が、団体交渉権(だんたいこうしょうけん)です。これは、結成した労働組合が、労働条件の改善などを求めて会社側と対等に話し合う(交渉する)権利を指します。

会社側は正当な理由なくこの交渉を拒否することはできません。個人の直談判では聞き入れてもらえない要望も、組合を通じた団体交渉という形をとることで、公式な議題として会社に検討させることが可能になります。

団体行動権(争議権):ストライキなどを行う権利

3つ目が団体行動権(だんたいこうどうけん)、別名は争議権(そうぎけん)です。これは、団体交渉がどうしても決裂した場合に、業務を一時的に放棄するストライキなどを行う権利です。

会社に経済的な打撃を与えることで、労働者側の要求を受け入れやすくさせる合法的な実力行使です。正当なストライキであれば、会社から損害賠償を請求されたり、刑事罰を科されたりすることはありません。

労働三法それぞれの役割

労働三法を構成する3つの法律は、それぞれがまったく異なるアプローチで労働者を守っています。ここからは「労働基準法」「労働組合法」「労働関係調整法」のそれぞれの役割と、押さえるべき重要なキーワードを解説します。

労働基準法(労基法)

労働基準法は、労働条件の最低基準を定めた法律です。その第1条には「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」と明記されています。

この法律の目的は、会社が労働者を不当に搾取するのを防ぐ、労働者保護にあります。もし労使間で合意して契約を結んだとしても、その内容が労働基準法の基準を下回る場合は無効となり、法律の基準が強制的に適用されます。

絶対に押さえるべき重要項目

労働基準法でとくに重要な項目が、働く時間や休みのルールです。原則として1日8時間・週40時間までという法定労働時間、毎週少なくとも1回の休日、勤続年数に応じて付与される有給休暇などが細かく定められています。

また、法定労働時間を超えて働かせた場合には、一定以上の割増賃金(残業代)を支払わなければならないことも義務付けられています。

違反した場合のペナルティと労働基準監督署の役割

労働基準法は強行法規であり、違反した会社や経営者には懲役や罰金などの重い刑事罰(ペナルティ)が科される可能性があります。この法律が守られているかを監視・指導するのが労働基準監督署(労基署)です。

労基署は、労働者からの申告や独自の判断に基づき、会社への立ち入り調査(臨検)や是正勧告を行う権限を持っており、労働者にとっての味方となります。


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労働組合法(労組法)

労働組合法は、労働者が労働組合を結成し、活動することを保障・支援するための法律です。2人以上の労働者が集まれば、役所の許可なく自主的に労働組合を設立することができます。

この法律により、労働組合の活動は正当な労働関係活動として保護され、企業は組合の自主的な運営に不当に介入したり、組合活動を理由として労働者に不利益な取扱いを行ったりすることが禁止されています。労働者が組織的に意見や要望を表明し、使用者と適切な労使関係を構築するための法的基盤となる制度です。

会社側がやってはいけない不当労働行為の禁止

労働組合法では、会社側が組合に対して行ってはならない禁止行為を「不当労働行為」として定めています。

たとえば、組合に加入したことを理由に解雇や減給をする不利益取扱い、正当な理由なく団体交渉を拒否する団体交渉拒否、組合の結成や運営に資金を出してコントロールしようとする支配介入などがこれに該当し、厳しく制限されています。

労働組合が結ぶ労働協約の強い法的効力

団体交渉の結果、労働組合と会社の間で交わされる合意文書を労働協約と呼びます。

この労働協約は非常に強い法的効力(規範的効力)を持っています。会社の就業規則や、個人の雇用契約書に書かれている内容よりも優先されるため、もし就業規則に「賞与なし」とあっても、労働協約で「賞与支給」と合意していれば、会社は賞与を支払わなければなりません。

労働関係調整法

労働関係調整法は、労働者(組合)と会社の間で意見が対立し、解決がつかなくなった状態(労働争議)を平和的に着地させるための法律です。

ストライキやボイコット、会社側による対抗措置であるロックアウト(作業所閉鎖)などのルールを定めています。争議行為そのものを禁止するのではなく、社会的な混乱を最小限に抑えつつ、お互いが冷静に解決に向かうための交通整理を行う役割を持ちます。

泥沼化を防ぐための調整方法

争議が泥沼化した際、第三者が介入して解決を図るための4つのステップが用意されています。段階に応じて柔軟な解決を目指します。

  • 斡旋(あっせん):話し合いを促す
  • 調停(ちょうてい):調停案を提示する
  • 仲裁(ちゅうさい):裁判のように下された判断に双方が従う義務が生じる
  • 緊急調整:公益に大打撃を与える恐れがある場合に首相が発動する

労働委員会による客観的な仲介システム

これらの調整を行う中心的な組織が、国や都道府県に設置されている「労働委員会」です。労働委員会は、労働者代表・使用者(会社)代表・公益(学者や弁護士など)代表の3者で構成される中立的な行政機関です。

どちらか一方の味方をするのではなく、客観的なデータや双方の言い分をフラットに聞き入れた上で、専門的な見地からトラブルの仲介や審査を行います。

労働三法の比較

労働三法はそれぞれ役割が異なりますが、実務において混同しやすいポイントもあります。ここでは、各法律の対象者や目的、違反時の罰則の違いを一覧表で整理しています。


法律名主な対象者法律の目的違反時のペナルティ
労働基準法すべての労働者(個人)労働条件の最低基準を定め、命と健康を守る懲役や罰金などの刑事罰がある
労働組合法労働組合(組織)団結権を保障し、会社と対等な交渉を可能にする不当労働行為の是正命令など(行政処分)
労働関係調整法労働組合と会社労働争議を平和的かつ迅速に解決する公益事業における争議行為の予告義務違反などに罰金あり

労働二法(労働基準法+労働組合法)との違い

「労働二法」という言葉もありますが、これは労働三法の中から「労働関係調整法」を除いた、「労働基準法」と「労働組合法」の2つを指します。

労働関係調整法はトラブルが起きた際の手続き論がメインであるため、日常的な労働環境のルールづくりという観点から、実務上この2つを重要視して「労働二法」と呼ぶケースがあります。あくまでも、三法が全体像であると覚えておきましょう。

労働三法にまつわる現代の労働問題

時代の変化に伴い、労働三法を取り巻く環境や課題も変化しています。

近年の働き方改革による法改正をはじめ、リモートワークの普及、フリーランスといった雇用によらない新しい働き方への法的保護の現状を解説します。

働き方改革関連法による労働基準法の改正

時代に合わせて労働基準法は常に改正されています。とくに近年の働き方改革関連法の施行により、それまで事実上青天井だった残業時間(時間外労働)に法律上の絶対的な上限規制が設けられました。

また、年5日の有給休暇の確実な取得が義務付けられるなど、過労死防止やワークライフバランスの実現に向けた取り組みが進められています。

労働組合の加入率低下と個人の労働トラブルの増加

現代の大きな課題として、労働組合の加入率(推定組織率)の長期的な低下が挙げられます。かつては多くの企業で組合が機能していましたが、非正規雇用の増加などにより、組合の力が弱まっています。

その結果、会社と集団で交渉することが難しくなり、パワハラや不当解雇といった個人の労働トラブルは増えつつあります。

リモートワークや副業・兼業における労働基準法の適用課題

リモートワークの普及や副業・兼業の解禁は、従来の労働基準法が想定していなかった新しい課題を生んでいます。たとえば、在宅勤務時の中抜け時間の扱いや、見えにくいサービス残業の管理方法です。

また、副業をしている場合、本業と副業の労働時間を合算して管理・計算する必要があるため、企業側の管理負担や責任の所在が複雑化しています。

フリーランス新法など、雇用によらない働き方への法的保護

多様な働き方が広がるなか、特定の会社に雇用されないフリーランス(個人事業主)が増加しています。彼らは労働基準法上の労働者ではないため、これまでは労働三法の保護を受けられず、報酬の未払いや一方的な契約解除に泣き寝入りするケースが多発していました。

これを受けて、2024年11月にフリーランス新法が施行されるなど、雇用契約に縛られない新しい働き方を守る法整備が急速に進んでいます。

まとめ

労働三法(労働基準法・労働組合法・労働関係調整法)は、憲法で保障された労働三権を実社会において具体的に実現・保護するための法制度です。労働者の権利を守り、健全な労使関係の維持・発展を支える重要な法的基盤となっています。

会社との圧倒的な立場格差を埋め、対等で人間らしい働き方を実現するためにこれらの法律が存在しています。働き方が多様化する現代だからこそ、労働三法の知識を正しく身につけ、適切な労働環境を守る盾として役立ててください。

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よくある質問

労働三法とは?

労働三法(ろうどうさんぽう)とは、日本の労働者の権利を守るために定められた「労働基準法」「労働組合法」「労働関係調整法」の3つの法律の総称です。

立場が弱くなりやすい労働者が、会社と対等な立場で人間らしく働ける環境を整えるために作られており、日本の労働法制の最も重要な柱となっています。

詳しくは、記事内「労働三法(ろうどうさんぽう)とは」をご覧ください。

労働三法の目的は?

労働三法の目的は、会社(使用者)に比べて圧倒的に弱い立場にある労働者の保護です。

個人の最低限の労働条件を保証するだけでなく、労働者が集団(労働組合)となって会社側と対等に交渉し、万が一トラブルが起きた際にも平和的に解決できる仕組みを提供することで、労働者の地位向上と生活の安定を図っています。

詳しくは、記事内「労働三法それぞれの役割」で解説しています。

労働三法の覚え方は?

労働三法は、それぞれの法律の頭文字を組み合わせた「基(き)・組(そ)・調(ちょう)」というフレーズで覚えるのが一般的です。

「労働環境の『基準』を決め、『組合』を作って、モメたら『調整』する」と、法律の役割の流れに沿ってイメージすると覚えやすいでしょう。

パートやアルバイト、契約社員にも労働基準法は適用される?

パートやアルバイト、契約社員にも労働基準法は適用されます。労働基準法における「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業に使用されて賃金を支払われるすべての人のことです。

したがって雇用形態には関係なく、1日8時間労働のルールや有給休暇の付与、残業代の支払いなどは全く同じように義務付けられています。

公務員にも労働三法はすべて適用される?

公務員には労働三法がそのまま適用されるわけではありません。一般職の国家公務員については労働基準法などの労働三法が原則として適用除外となっており、国家公務員法などの特別法が適用されます。

また、地方公務員(一般職)については労働基準法の一部が適用されますが、労働組合法や労働関係調整法は適用されません。

監修 北 光太郎

きた社労士事務所 代表
中小企業から上場企業まで様々な企業で労務に従事。計10年の労務経験を経て独立。独立後は労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人・個人問わず多くの記事執筆・監修をしながら、自身でも労務専門サイトを運営している。

北 光太郎

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