人事労務の基礎知識

年末調整で国民年金保険料は控除できる!対象となるケースや書類の書き方をわかりやすく解説

監修 北 光太郎 きた社労士事務所

年末調整で国民年金保険料は控除できる!対象となるケースや書類の書き方をわかりやすく解説

年末調整において、国民年金保険料は「社会保険料控除」として所得控除が可能です。

本記事では、年末調整で国民年金保険料を控除申告できるケースや申告する際に必要な書類、申告書の書き方までわかりやすく解説します。年末調整で国民年金保険料が正しく控除され、税負担を軽減するための参考にしてください。

目次

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年末調整で国民年金保険料は控除対象になる

年末調整では、その年1月1日から12月31日までに支払った国民年金保険料や国民健康保険料などを「社会保険料控除」として所得から差し引くこと(所得控除)ができます。国民年金保険料は支払った金額の全額が所得控除の対象となり、所得税や翌年から控除される住民税の負担を軽減できます。

そもそも年末調整とは、毎月の給与から源泉徴収された所得税と、本来納めるべき年間所得税との差額を年末に清算する手続きです。

年末調整で各種所得控除(生命保険料控除や配偶者控除など)を申告し、それまでの源泉徴収額と年末調整で確定した所得税を比較して精算します。

年末調整の基本的な仕組みや流れについて詳しく知りたい方は、「年末調整とは?概要・目的・手順から必要書類までわかりやすく解説」をご覧ください。

年末調整で国民年金の控除が必要になる主な3つのケース

会社員は通常、厚生年金保険に加入しており、保険料は給与から天引きされています。

厚生年金保険料の中には国民年金の保険料分も含まれており、会社側が1月から12月分の保険料を把握しているため、原則として年末調整で控除申告は不要です。

しかし、自営業や無職などが自身で納める国民年金保険料は会社側で把握できません。

そのため、以下のような場合には会社員であっても年末調整で国民年金保険料の控除申告を行う必要があります。

1. 年の途中で就職・転職した場合

その年の1月1日から入社日までに国民年金保険料を納付していた場合は、「社会保険料控除」として申告できます。

たとえば新卒で4月に入社したケースでは、それ以前の1月から3月までは国民年金第1号被保険者となり、その分の保険料は自分で納付しなければなりません。同様に、転職により前の会社を退職してから次の会社に入社するまでに空白の期間が生じた場合も、その期間は第1号被保険者として国民年金保険料の支払いが発生します。

このように国民年金保険料を自分で支払っている場合は、年末調整で社会保険料控除が受けられます。ただし、申告を行わなければ所得控除も受けられず、税金の負担が重くなってしまいます。とくに社会人1年目の新入社員は控除申告を失念しやすいため注意が必要です。

2. 家族(子ども・配偶者など)の国民年金を支払った場合

家族が自営業や学生の場合で、代わりに家族の分の国民年金保険料を支払っている場合は年末調整で申告が可能です。

具体的には、「生計を一にする」家族(配偶者や子ども)の国民年金保険料を代わりに支払っている場合は、家族の分を含めて支払者本人が年末調整で社会保険料控除の対象にできます。

なお「生計を一にする」とは、必ずしも同居している必要はありません。別居の場合でも生活費や学費などを常に送金して仕送りしていれば、「生計を一にしている」と認められます。

年末調整で手続きの際は、家族の名義で届いた「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」を申告書に添付すれば控除が受けられます。該当する家族分の国民年金保険料を支払っている場合は、年末調整で忘れずに申告しましょう。

3. 産休・育休などを機に退職し、一時的に国民年金に加入した場合

出産や育児のタイミングで会社を退職し、その後再就職するまでの間に一時的に国民年金第1号被保険者として保険料を納付したケースも申告可能です。

年内に再就職をして年末調整を受けられる場合は、その年の再就職までに支払った国民年金保険料の額を現在の勤務先の年末調整で申告します。

ただし、産前産後休業や育児休業中に会社に籍がある場合は引き続き厚生年金に加入しているため、申告の必要はありません。

なお、年末までに再就職していない場合(その年末調整を受ける会社がない場合)は、個人で確定申告を行って社会保険料の控除を受けることになります。

年末調整で控除対象となる国民年金保険料の範囲

原則として、その年(1月1日~12月31日)に支払ったすべての国民年金保険料が年末調整で社会保険料控除として対象になります。

ここでポイントとなるのは、「支払った年」で判断される点です。数年前の未納分をその年中にまとめて支払えば、支払った金額はすべて当年分の社会保険料控除の対象となります。

たとえば、過去に未納・免除となっていた国民年金保険料を就職後にまとめて追納した場合や保険料を前納した場合でも、支払った年の年末調整で控除を受けられるということです。一方、その年の分であっても未納分の保険料は申告できないので注意しましょう。

なお、控除対象となる国民年金保険料には、国民年金第1号被保険者として支払った国民年金保険料のほか、付加保険料や国民年金基金の掛金も含まれます。いずれも社会保険料控除として扱われるため、当年中に支払った金額はすべて控除の対象です。

年末調整前に、自身や家族分の支払った国民年金保険料の金額を把握しておきましょう。

年末調整で国民年金の控除を受けるための手続きフロー

実際に年末調整で国民年金保険料の控除を受けるための手続きを、ステップごとに解説します。

Step1. 必要書類を準備する

まずは年末調整に向けて必要書類を手元に準備します。主な書類は次のとおりです。

  • 給与所得者の保険料控除申告書
  • 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書

「給与所得者の保険料控除申告書」は毎年11月頃に勤務先から配布される書類です。

「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」は、国民年金保険料を支払ったことを証明する書類で、日本年金機構から自宅に郵送されます。例年、1月から9月分までの保険料を納付した人には10月下旬から11月上旬にかけて発送されるのが通常です。10月1日から12月31日の間に納付した場合には、控除証明書は翌年2月中旬に発送されます。

もし控除証明書を紛失してしまっても、年金事務所に問い合わせると再発行が可能なので、必要であれば早めに手続きを行うと安心です。

出典:日本年金機構「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書の発行について」

Step2. 保険料控除申告書に記入する

続いて、「給与所得者の保険料控除申告書」へ必要事項を記入します。

給与所得者の保険料控除申告書


上記の画像で枠で囲った「社会保険料控除」欄に、その年に支払った国民年金保険料を記載します。

社会保険料控除


社会保険料控除欄には以下の情報を記載します。

  • 社会保険の種類:「国民年金」と記入
  • 保険料の支払先の名称:「日本年金機構」と記入
  • 保険料を負担することになっている人:本来保険料を負担する対象者の氏名と続柄を記入(例:自分自身の場合は本人、家族の場合は家族の氏名)
  • あなたが本年中に支払った保険料の金額:その年に実際に支払った金額を記入

Step3. 「控除証明書」を添付して会社に提出する

申告書に必要事項を記入し終えたら、「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」を添付して勤務先へ提出します。

なお、控除証明書は原本の添付が必要です。証明書のコピーでは添付書類として認められず、社会保険料控除が受けられない可能性があるので注意しましょう。

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年末調整と聞くと「紙の書類に記入して証明書を会社に提出する」というイメージを思い浮かべる人も多いかもしれません。しかし、近年はクラウド型の人事労務ソフトを活用することで、年末調整作業をすべてオンラインで完結できるようになっています。

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年末調整の国民年金保険料控除で証明書不要な場合がある

「年末調整で国民年金の控除証明書は提出する必要はないのではないか」と疑問に思う方もいるかもしれません。基本的に、年末調整で社会保険料控除を受ける際には、控除証明書を添付することが義務付けられています。

ただし、控除証明書が手元にない場合でも国民年金保険料を納付した際にもらう「国民年金保険料領収証書」(日本年金機構の発行する半券)を申告書に添付すれば証明書類と認められます。

たとえば10~12月分を納付したものの、控除証明書が年末調整時に間に合わない(2月頃に証明書が届く)ケースでは、その領収証書を添付して提出する対応が考えられます。ただし、領収証書で代用する場合は、事前に勤務先の担当者へ説明しましょう。また、控除証明書に記載されている合計額に加え、追加で納めた場合は控除証明書と領収証書を申告書を添えて申告します。

なお、証明書類(控除証明書または領収証書)の添付は必須ですが、「証明書が無いから今回は申告を諦める」という必要はありません。領収証書が手元にあるなら活用し、ない場合でも確定申告で後日対応可能です。いずれにせよ、支払った国民年金保険料を忘れずに控除申告することが大切です。

出典:日本年金機構「控除証明書とは何ですか。」

年末調整で国民年金の控除を忘れた・間に合わなかった場合の対処法

万一、年末調整の提出期限までに国民年金保険料の控除申告ができなかった場合や申告を忘れていた場合でも控除を受けることが可能です。ここでは、具体的な2つの対処法を解説します。

会社の担当者に再年末調整を依頼する

年末調整で国民年金保険料を申告できなかった場合でも勤務先の担当者に相談すれば、再年末調整をしてもらえる可能性があります。

通常、年末調整事務は12月で処理を終えますが、実務上は翌年1月の給与締日までであれば年末調整を再計算して修正することが可能です。

会社の事務手続き上対応が可能であれば、未申告だった社会保険料控除を含めて再年末調整のうえ、過払いの所得税を還付してもらいます。

ただし、1月を過ぎた後は会社で年末調整をやり直すことはできません。その場合は次の「自分で確定申告を行う」方法で対応することになります。

自分で確定申告を行う

勤務先で再年末調整ができない場合や、年末調整自体を受けられなかった場合は、個人で確定申告を行うことで社会保険料控除を申告できます。

確定申告であれば、翌年2月16日から3月15日までの期間に手続きをすれば間に合います。年末調整で提出できなかった控除証明書も、確定申告で改めて提出すれば控除を受けることが可能です。

確定申告で国民年金保険料の社会保険料控除を申請する際に必要な書類は以下のとおりです。

  • 給与所得の源泉徴収票
  • 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書

なお、還付申告であれば5年間は手続き可能ですが、時間が経つと手間も増えるため、忘れていた場合は早めに対応することをおすすめします。

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まとめ

年の途中で国民年金を自分で納付した場合や家族の分を代わりに納付した場合などは、会社員であっても年末調整で社会保険料控除の申告が可能です。

支払った国民年金保険料を申告すれば、全額が所得から差し引かれ所得税・住民税の負担を軽減できます。該当する場合は必要書類をあらかじめ準備し、会社から年末調整の書類が配布されたら忘れずに記入・提出しましょう。

万一、年末調整に間に合わなくても確定申告で後から控除を受けることもできます。自身が国民年金保険料の控除対象に該当するかを確認し、適切に手続きを進めましょう。

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よくある質問

年末調整で国民年金保険料は控除対象になる?

国民年金保険料は年末調整で社会保険料控除の対象として控除できます。ただし、会社員の場合は給与天引きされている厚生年金保険料分は会社側で処理されるため、自分で申告書に記入する必要はありません。

詳しくは、記事内「年末調整で国民年金保険料は控除対象になる」をご覧ください。

なぜ年末調整で国民年金保険料の証明書は不要?

年末調整の際に国民年金保険料の社会保険料控除の適用を受ける場合には、控除証明書や領収証書を申告書に添付することが義務付けられています。ただし、控除証明書の代わりに領収証書を添付することで証明書を提出しなくても済む場合があります。

詳しくは、記事内「年末調整の国民年金保険料控除で証明書不要な場合がある」で解説します。

年末調整で国民年金保険料の控除証明書の用意が間に合わない場合は?

控除証明書が間に合わない場合は、領収証書を申告書に添付して提出できるか会社に確認してみましょう。もし領収証書もない、あるいは会社の指示で証明書がなければ認められない場合は、確定申告で控除申請を行う方法があります。

詳しくは、記事内「年末調整で国民年金の控除を忘れた・間に合わなかった場合の対処法」をご覧ください。

監修 北 光太郎

きた社労士事務所 代表
中小企業から上場企業まで様々な企業で労務に従事。計10年の労務経験を経て独立。独立後は労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人・個人問わず多くの記事執筆・監修をしながら、自身でも労務専門サイトを運営している。

北 光太郎

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