人事労務の基礎知識

【2023年最新】令和5年分の年末調整の変更点まとめ!注意すべきポイントを解説

監修 宮川真一 税理士法人みらいサクセスパートナーズ

【2023年最新】令和5年分の年末調整の変更点まとめ!注意すべきポイントを解説

2023年分の年末調整の申告内容は、2020年度および2022年度の税制改正により、大きく3点変更されます。

変更点を理解しないまま年末調整の申告書を勤務先へ提出すると、控除が適切に受けられない可能性があります。

本記事では、2023年分の年末調整の変更点や注意事項についてわかりやすく解説します。

目次

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年末調整とは

年末調整とは、給与所得者の給与や賞与から源泉徴収した所得税額と、その年1年間に支払うべき正確な所得税の差額を計算・精算する手続きです。

所得税は、その年の所得に応じて税額が決まりますが、従業員が勤務先から毎月の給与を受け取る際には、あらかじめ所得税が差し引かれています(=源泉徴収)。

源泉徴収税額は概算であり、各従業員の生活状況(扶養家族の有無や保険料の支払いなど)に応じた控除が反映されていません。そのため、年末調整を行い各個人が支払うべき正確な所得税を再計算する必要があります。

年末調整により従業員が多くの税金を納めていた場合はその差額を還付(返金)し、不足していた場合は追加の税金を徴収します。

年末調整は例年11月〜翌年1月に手続きが行われ、従業員は一般的に11月頃、年末調整で必要な申告書や証明書を勤務先に提出します。

従業員は自身が適用の対象となる所得控除・税額控除を把握したうえで、自身が該当する控除が申告できる申告書に必要情報を記入し、勤務先に提出しなければなりません。

年末調整について詳しく知りたい方は、別記事「年末調整とは?概要・手順や確定申告との違いをわかりやすく解説」を参考にしてください。

2023年分の年末調整の変更点

年末調整の申告書や対応内容は、税制改正によって変更点が生じることがあります。

2023年分の年末調整では2020年度および2022年度の税制改正にともない、大きく以下3点について変更が行われます。

2023年分の年末調整の変更点

  • 配偶者や扶養親族に退職所得が見込まれる場合は要申告
  • 扶養控除等が適用される国外居住親族の範囲が一部変更
  • 住宅ローン控除の期間・控除率などが変更

退職所得の申告や扶養控除の適用範囲、住宅ローン控除制度の内容などに変更が生じています。これらの変更に関係する場合は理解を深め、年末調整の書類を正しく作成しましょう。

配偶者や扶養親族に退職所得が見込まれる場合は要申告

税制改正に伴い、2023年分の年末調整から、各種控除の対象となる配偶者または扶養親族に退職所得が見込まれる場合、退職所得を除いた所得の見積額などを記入しなければならなくなりました。それにより、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の記載欄に変更が生じています。


給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

出典:国税庁「令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」

申告書の最下部に「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」の欄が新設されました。該当する配偶者・扶養親族に関する以下の情報の記入を忘れず行いましょう。

退職所得を有する配偶者・扶養親族の記入項目

  • 氏名
  • 個人番号
  • 納税者との続柄
  • 生年月日
  • 住所
  • 非居住者である親族:国外に居住している場合に該当する項目チェック
  • 令和5年中の所得の見積額:退職所得を除いた見積もり額
  • 障がい者区分
  • 異動月日及び事由:転職・退職の月日
  • 寡婦またはひとり親のチェック


出典:国税庁「《記載例》令和5年分扶養控除等申告書」

この変更の背景には、住民税に関する控除の適用漏れへの対応があります。

所得税の計算の際には年間の合計所得額に退職所得を含めるのに対し、住民税の計算時には退職所得が含まれません。退職所得が含まれないことで合計所得額が低くなり、所得税の計算時には適用されなかった控除が住民税の計算時に適用される可能性があります。

よって、控除の適用漏れを防ぐべく2022年度の税制改正で措置が講じられ、2023年分の申告書より項目が追加されました。


出典:国税庁「令和5年1月からの国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)」


出典:財務省「令和4年度税制改正の概要」

扶養控除等が適用される国外居住親族の範囲が一部変更

2023年の年末調整から、扶養控除等が適用される国外居住親族の範囲が一部変更されました。

【変更前の控除適用範囲】

国外居住者(非居住者)の年齢扶養控除等の適用の有無
16歳以上控除が適用される

【変更後の控除適用範囲】


国外居住者(非居住者)の年齢扶養控除等の適用の有無
16歳以上30歳未満控除が適用される
30歳以上70歳未満以下のいずれかに当てはまる場合は控除が適用される
・留学生
・障害者
・扶養者から38万円以上の送金を受けている人
70歳以上控除が適用される

これまでは16歳以上の国外居住者(非居住者)はすべて扶養控除の対象でしたが、2023年分の年末調整からは、国外居住者のうち16歳以上30歳未満、もしくは70歳以上の扶養親族がいる場合に控除が適用されます。

非居住者の扶養親族が30歳以上70歳未満である場合は、「留学生」「障害者」「扶養者から38万円以上の送金を受けている」のうちいずれかに該当すれば、扶養控除の対象となります。

これらの控除適用条件に当てはまる場合は、年末調整の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」において申告する必要があります。申告書の「控除対象扶養家族」の欄にチェック項目が設けられているため、該当する条件にチェックを入れましょう。


令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

出典:国税庁「令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」

また、申告書への記入とともに、申告者本人の配偶者または親族であることを証明する以下のいずれかの書類(親族関係書類)の添付も必要です。

  • 戸籍の附票のコピー、その他の国または地方公共団体が発行した書類およびその親族のパスポートのコピー
  • 外国政府または外国の地方公共団体が発行した書類(その親族の氏名、生年月日および住所または居所の記載があるもの)

さらに、扶養親族が30歳以上70歳未満の留学生に当てはまる場合は、留学ビザ等相当書類もあわせて提出します。留学ビザ等相当書類とは、外国政府または外国の地方公共団体が発行したビザに類する書類の写しや、在留カードに相当する書類の写しなどを指します。

38万円以上の送金を受けている30歳以上70歳未満の扶養親族についても、その年の生活費または教育費に充てるための支払いが行われたことを証明する書類の添付が必要です。

なお、以上の添付書類が外国語で作成されている場合は、日本語に翻訳したものを提出しなければならないため注意してください。


出典:国税庁「《記載例》令和5年分扶養控除等申告書」


出典:財務省「令和2年度税制改正の概要」


「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の書き方について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

【関連記事】
年末調整の扶養控除申告書(マル扶)とは?書き方や注意すべきポイントを解説

住宅ローン控除の期間・控除率などが変更

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは、毎年の住宅ローン残高から規定の控除率によって算出された金額を、所得税額から差し引く税額控除制度です。

所得税額から控除しきれない額については、所得税の課税総所得金額等の5%(最高9万7,500円)の範囲内で個人住民税から控除されます。

住宅ローン控除制度は、2022年度の税制改正によって適用期限が2025年12月31日までに延長されました。

それに伴い、2022年から2025年までの期間に入居した場合の控除期間や控除率、借入限度額に一部変更が生じるほか、住宅の性能に応じて借入限度額が設定されました。

借入限度額や控除期間の変更後の数値は、下表の通りです。


新築/既存等住宅の環境性能等借入限度額控除期間
2022年・2023年入居2024年・2025年入居
新築住宅・買取再販住宅
(※1)
認定住宅
(認定長期優良住宅・認定低炭素住宅)
5,000万円4,500万円13年間
(※2)
ZEH水準省エネ住宅4,500万円3,500万円
省エネ基準適合住宅4,000万円3,000万円
その他の住宅
(※2)
3,000万円0円
(※2)
既存住宅認定住宅 等
(認定長期優良住宅・認定低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅)
3,000万円10年間
その他の住宅2,000万円

※1 「買取再販住宅」は既存住宅を宅地建物取引業者が一定のリフォームにより良質化したうえで販売する住宅のこと

※2 省エネ基準を満たさない住宅のこと。2024年以降に新築の建築確認を受けた場合、住宅ローン減税の対象外。ただし、2023年末までに新築の建築確認を受けた住宅に2024年・2025年に入居する場合は、借入限度額2,000万円・控除期間10年間となる


出典:国土交通省「住宅ローン減税の概要について(令和4年度税制改正後)」


出典:財務省「住宅ローン控除の見直し(令和4年度改正)」


住宅ローン控除に関する変更点をまとめると、以下のとおりです。

住宅ローン控除に関する変更点

  • 借入限度額:住宅性能、居住開始年別に設定
  • 控除期間:新築住宅は13年に延長
  • 控除率:1%から0.7%に変更

今回の制度見直しでは、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、省エネ性能が高い住宅に対して借入限度額を上乗せするという優遇措置がとられています。

表のとおり、2024年以降に新築の建築確認を受けた住宅が省エネ性能を持たない住宅であった場合、住宅ローン控除が受けられなくなる点にも注意が必要です。

なお、住宅ローン控除の適用にあたって年末調整時に勤務先への申告が必要となるのは、控除を受ける2年目以降です。

控除を受ける最初の年は、自身で確定申告を行うことで控除が適用されます。

2年目以降、年末調整時に提出する「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」は、税務署から納税者本人へ送付されます。

上述した借入限度額や控除率などの変更点を確認しながら申告書の必要項目に記入し、勤務先へ提出しましょう。

年末調整で提出する各申告書の具体的な書き方について、詳しく知りたい場合は、別記事「【2023年最新】年末調整の書き方を書類別にわかりやすく解説(記入例つき)」をご覧ください。

まとめ

2023年分の年末調整では、「配偶者や扶養親族に退職所得が見込まれる場合は要申告」「扶養控除等が適用される国外居住親族の範囲が一部変更」「住宅ローン控除の期間・控除率などが変更」と3点が変更となります。

適切に各控除を受けるためにも、変更点を理解した上で年末調整の書類を正しく記入し、勤務先に提出しましょう。

よくある質問

2023年の年末調整における変更点は?

2023年の年末調整の変更点は以下の通りです。


  • ・配偶者や扶養親族に退職所得が見込まれる場合は要申告
  • ・扶養控除等が適用される国外居住親族の範囲が一部変更
  • ・住宅ローン控除の期間・控除率などが変更

詳細は記事内「2023年分の年末調整の変更点」をご覧ください。

監修 税理士・CFP® 宮川真一

岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは25年以上に及ぶ。現在は、税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表としてコンサルティング、税務対応を担当。また、事業会社の財務経理を担当し、複数企業の取締役・監査役にも従事。

宮川真一

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