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社会保険と雇用保険の違いは?内容や加入条件の違いについて解説

最終更新日:2023/03/27

社会保険と雇用保険の違いは?内容や加入条件の違いについて解説

社会保険とは、健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険・労災保険の5つの保険の総称です。その中で雇用保険は、従業員が失業した際に救済を目的とした保険です。

本記事では、社会保険と雇用保険の概要、それぞれの違いや加入条件などを解説します。

目次

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社会保険の制度と目的

社会保険とは、被保険者・被扶養者が病気や怪我をはじめとする出産や高齢、介護、失業、労働災害などのリスクに対して、生活を保障する公的な保険制度です。

社会保険は、健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険・労災保険の5つの保険の総称です(広義の社会保険)。の中で厚生年金保険・健康保険・介護保険の3つを指して「社会保険」と呼ぶこともあります(狭義の社会保険)。狭義の社会保険に対し、雇用保険と労災保険は、まとめて「労働保険」と呼びます。

<社会保険と労働保険がそれぞれで取り扱う保険内容>

社会保険労働保険
健康保険厚生年金保険雇用保険労災保険

以下では、狭義の社会保険に含まれる3つの保険制度について解説します。

健康保険とは

健康保険は、加入者が病気や怪我で病院に行って受診をした際の費用の一部を負担してくれます。なお、加入者が支払う自己負担額は加入者自身の年齢によって変動します。

健康保険の自己負担

  • 小学校入学まで:2割自己負担
  • 小学校入学後から69歳まで:3割自己負担
  • 70歳から74歳まで:2割自己負担
  • 75歳以上:1割自己負担
健康保険の自己負担額
出典:日本医師会「日本の医療保険制度の仕組み」

社会保険は、生計を同一にしている配偶者(内縁関係も含む)と三線等以内の親族が扶養対象です。そのため、被保険者のほか、対象となる配偶者や親族も健康保険の加入者となります。

健康保険は、病気や怪我にかかる医療費の一部を負担してくれるだけではなく、病気や怪我、出産などの休業時にも生活費の補助をしてくれます。

厚生年金保険とは

厚生年金保険とは、被保険者が老齢が原因で働けなくなったり、病気や怪我が原因で障害が残ったり死亡してしまった場合に、被保険者と遺族の生活の困窮を救済する目的があります。

厚生年金にはいくつかの種類があります。

厚生年金の種類

  • 老齢年金:老後の生活を保障するもの(老年基礎年金、老年厚生年金)
  • 障害年金:病気や怪我で障害を負った場合に支給される
  • 遺族年金:厚生年金を支払っている被保険者が死亡した際に遺族に支給される

上記のほかに、被保険者は厚生年金を通じて「国民年金」にも加入しているため、受給条件を満たした際には厚生年金だけではなく国民年金も受け取ることができます。

これらの厚生年金保険は、将来的に起こりうる予測できない生活上のリスクに備えるための保障を目的としています。

出典:日本年金機構「老齢年金」「障害年金」「遺族年金

【関連記事】
厚生年金保険とは?厚生年金保険料の基礎知識と計算方法

介護保険とは

介護保険は、介護を必要とする高齢者を社会全体で支えるために、2000年4月1日に施行された保険制度です。

40歳以上の人は介護保険への加入と保険料の負担が義務化され、介護が必要になった時には自己負担1割で介護サービスを利用できます。ただし、65歳以上の人は、所得によって介護サービス利用時の自己負担割合が異なります。


出典:厚生労働省「公的介護保険制度の現状と今後の役割」

雇用保険の概要と目的

雇用保険は、広義の社会保険に含まれる保険制度のひとつであり、狭義の社会保険においては、労働保険に含まれる保険制度です。雇用保険の具体的な内容は以下の3つとなっています。

雇用保険の目的

  1. 労働者が失業した際の生活を守るために支給される失業給付や、育児休暇中の育児休業給付などを行う
  2. 労働者の新しい知識やスキルなどを習得するために、職業訓練や職業教育を実施して再就職の促進をはかる
  3. 労働者が失業しないよう予防したり、雇用状態を是正して離職防止と雇用機会の増大をはかる

また、雇用保険の中には、健康保険と同様に傷病手当金の給付もあります。

健康保険の傷病手当は被保険者がまだ在職中の間に病気やケガをしたとき、雇用保険の傷病手当は退職してからハローワークで求職の申し込みをした後に病気やケガをした際に支給されます。

つまり、健康保険は従業員の医療費の負担軽減を目的としているのに対し、雇用保険は被保険者が再就職するために一時的に仕事を休んでいる間の生活を保障することを目的としています。

社会保険と雇用保険の違い

社会保険(健康保険・厚生年金保険)と雇用保険は目的が異なるほか、雇用形態や事業所によって加入条件も異なります。

社会保険の加入条件

狭義の社会保険のうち、健康保険と厚生年金保険に加入するための条件を紹介します。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入できる事業所の種類

狭義の社会保険のうち、健康保険と厚生年金保険は、事業所単位で適用されるかが決まります。健康保険と厚生年金保険の適用を受ける事業所のことを「適用事業所」といい、法律で加入が義務付けられている「強制適用事業所」と、加入するか任意で決めることができる「任意適用事業所」の2種類があります。

【強制適用事業所とは】
強制適用事業所とは、事業主や従業員が社会保険への加入の意思、従業員数や事業の規模・業種などに関係なく、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が義務付けられている事業所を指します。

株式会社や合同会社、地方公共団体などの法人は、従業員数に関係がなく「強制適用事業所」に該当します。従業員が一人もおらず社長一人のみの企業だったとしても社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入する義務が発生します。

個人事業主の場合でも、製造業、鉱業、土木建築業、電気ガス事業、清掃業、運送業などで5人以上の従業員を常時雇用している事業所は強制適用事業所となります。

強制適用事業所は、次の(1)か(2)に該当する事業所(事務所を含む、以下同じ)で、法律により、事業主や従業員の意思に関係なく、健康保険・厚生年金保険への加入が定められています。

強制適用事業所に該当する事業所

  1. 次の事業を行い常時5人以上の従業員を使用する事業所
    a製造業/b土木建築業/c鉱業/d電気ガス事業/e運送業/f清掃業/g物品販売業/h金融保険業/i保管賃貸業/j媒介周旋業/k集金案内広告業/l教育研究調査業/m医療保健業/n通信報道業など
  2. 国または法人の事業所
    常時、従業員を使用する国、地方公共団体又は法人の事業所
出典:全国健康保険協会「適用事業所とは?」

【任意適用事業所とは】
任意適用事業所とは、事業所主体で申請を行い厚生労働大臣(日本年金機構)の認可を受けることで、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入できる事業所を指します。

任意適用事業所は、常時使用する従業員が5人未満の個人事業主や、従業員の数に関係なく農林水産業や飲食業、理美容業、士業、デザイン業などの個人事業所が該当します。

2022年9月現在は任意適用事業所だったとしても、従業員の半数以上が適用事業所になることに同意すれば、社会保険のうち健康保険と厚生年金保険に事業所単位で加入できます。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入する従業員個人の適用条件

事業所が「強制適用事業所」だったとしても、従業員個人が下記の適用条件に満たされていない場合は、国籍、年齢、雇用形態、報酬額などは問わず、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入対象となりません。

社会保険に加入する従業員個人の適用条件

  • 週の所定労働時間が20時間未満であること
  • 賃金の月額が8.8万円未満であること
  • 学生
  • 1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満、1ヶ月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満、またはその両方

ただし、労働時間が常時雇用者の4分の3の短時間労働者だったとしても、条件を満たせば社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入対象となります。

<被保険者数が常時501人以上の事業所の場合>

  • ・労働時間が週20時間以上
  • ・月額賃金8.8万円以上(年106万円以上)
  • ・雇用期間が1年以上見込まれること
  • ・学生ではないこと

<被保険者数が常時500人以下の事業所の場合>
  • ・労使の合意があること(従業員の半数以上と事業主の同意)
  • ・前項4つの条件を満たすこと

なお、「国に属する事業所」は2016年10月から、「地方公共団体に属する事業所」は2017年4月から、「厚生年金保険の被保険者数が常時501人以上の事業所の場合」に含まれる4つの条件を満たせば、被保険者数に関わらず社会保険(健康保険・厚生年金保険)加入の対象となります。


出典:日本年金機構「事業主の皆さまへ 平成29年4月から短時間労働者に対する適用対象が広がります」

また、「年金制度改正法」や「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」などの施行により、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に関する適用条件が2022年10月から以下に改正されます。

社会保険適用条件の改正内容

  • 特定適用事業所の適用条件:「501人以上の適用事業所」から「101人以上の適用事業所」
  • 短時間労働者の雇用期間の要件:「雇用期間が1年以上見込まれること」から「雇用期間が2ヶ月以上見込まれること」

出典:日本年金機構「令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
2016年10月〜2022年10月〜2024年10月〜
従業員が501人以上の会社従業員が101人以上の会社従業員が51人以上の会社
週の所定労働時間が20時間以上週の所定労働時間が20時間以上週の所定労働時間が20時間以上
雇用期間が1年以上の見込み雇用期間が2ヶ月超の見込み雇用期間が2ヶ月超の見込み
賃金の月額が8.8万円以上
(年収106万円以上)
賃金の月額が8.8万円以上
(年収106万円以上)
賃金の月額が8.8万円以上
(年収106万円以上)
学生ではないこと学生ではないこと学生ではないこと

2022年10月からは、従業員が101人以上、2024年10月からは従業員数が51人以上で、それぞれ雇用期間が2ヶ月超見込まれる方が対象となり、条件緩和により今後さらに多くの方が社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入対象となります。


社会保険に加入する従業員個人の適用条件

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社会保険の加入条件・手続き方法・必要書類

雇用保険の加入条件

雇用保険は、社会保険(健康保険・厚生年金保険・介護保険)に比べて加入条件が広く設定されています。事業所は労働者を一人でも雇っていれば、業種や規模などに関係なく雇用保険の加入が必要です。よって、雇用保険には加入しているが、社会保険には加入していないというケースも珍しくありません。

ただし、全ての従業員が雇用保険に加入できる訳ではありません。従業員個人の適用基準は、下記の通りです。

雇用保険に加入できる従業員個人の適用基準

  • 雇用期間が31日以上見込まれること
  • 労働時間が週20時間以上
  • 学生や顧問など適用除外者でないこと

出典:厚生労働省「雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!」

雇用保険は基本的に、1日〜数週間といった短期間の雇用や短時間雇用でない限りは、加入の必要があります。

雇用期間が31日以上見込まれること

31日以上雇用しないことが雇用契約書などで取り交わされているなど、明確に証明できない限りは雇用保険に加入する必要があります。

雇用契約書の中に31日未満で雇用を止める旨が記載されておらず、「更新する場合がある」などの一文があると「31日以上見込まれる」という意味ことになります。また、更新についての記載がなくとも、過去に31日以上の雇用実績がある場合は、雇用保険の加入が必要です。

労働時間が週20時間以上

通常は20時間未満で、まれに残業が発生して20時間以上働いた週があったとしても、雇用契約書などの所定労働時間が「20時間未満」と記載されていた場合は雇用保険には加入できません。

学生や顧問など適用除外者でないこと

基本的に学生や顧問などは、雇用保険に加入することができません。しかし、卒業見込証明書を有している学生で、就労している企業に内定をもらって卒業前から勤務をし、卒業後も引き続き同じ企業で勤務する場合は、雇用保険加入の対象者となります。

社会保険と雇用保険それぞれに未加入だった場合

狭義の社会保険や、雇用保険に加入義務のある適用事業所で、従業員が加入条件を満たしているにも関わらず、加入していないというケースは少なくありません。ただし、事業所が強制適用事業所にも関わらず、社会保険に加入していないのは違法となります。

社会保険の未加入が発覚すると、企業が処罰されるだけではなく、事業主は懲役刑などの刑罰に加えて延滞金や課徴金が課せられる場合もあります。

たとえば、年金事務所の調査などで、社会保険に加入義務のある従業員が未加入だったことが判明すると、最大2年間にさかのぼって社会保険料をまとめて支払うリスクがあります。未加入であることが分かった場合は、早急に以下の専門機関に相談しましょう。


雇用に関する問い合わせを労働基準監督署に連絡する人もいますが、社会保険の加入や給付はそれぞれ異なった機関が行うようになっています。そのため労働基準監督署では詳細に対応することはできないため、適切な各機関へ相談する必要があります。

【関連記事】
従業員が入社する際の手続きは? 雇用時の必要書類や保険の加入条件や税金などをまとめて解説

なお、新型コロナウイルス感染症の影響で厚生年金保険料などの給付が一時困難となり、猶予制度(特例・換価の猶予・納付の猶予)の利用を希望される方は、日本年金機構や厚生労働省のサイトをご確認ください。


出典:日本年金機構「新型コロナウイルス感染症の影響による納付の猶予(特例)」
出典:厚生労働省「厚生年金保険料等の猶予制度について」

まとめ

狭義の社会保険と雇用保険では、保険制度の目的や加入条件が異なります。強制適用事業所の場合は、従業員が国籍、年齢、雇用形態、報酬額などを問わず加入条件を満たしていれば、社会保険に加入する義務があります。もし、従業員が加入していないことが発覚したら、すぐに専門機関に相談するようにしましょう。

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よくある質問

社会保険と雇用保険それぞれに未加入だった場合は?

事業所が強制適用事業所にも関わらず、社会保険に加入していないのは違法となります。社会保険の未加入が発覚すると、企業が処罰されるだけではなく、事業主は懲役刑などの刑罰に加えて延滞金や課徴金が課せられる場合もあります。詳しくはこちらをご覧ください。

社会保険と雇用保険の違いは?

社会保険(健康保険・厚生年金保険)と雇用保険は目的が異なるほか、雇用形態や事業所によって加入条件も異なります。それぞれの加入条件はこちらで詳しく解説します。

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